ウクライナの原子力発電所の状況 #65


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 148号(現地時間2023228日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)近郊で砲撃が発生し、唯一残っているバックアップ電源が一時的に喪失した。これは軍事紛争中に絶えることない原子力安全とセキュリティのリスクを再び強調している。

事務局長はまた、欧州最大の原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEA専門家チームの交代が引き続き遅れていることについて懸念を表明した。

事務局長は、人員交代が最終的には今週後半に行われることを期待していると述べ、これを実現するためにすべての関係者による建設的な努力を改めて訴え、IAEAのザポリージャ支援ミッション(ISAMZ)の取り組みが世界にとって重要であると述べた。

1月初旬からZNPPに駐在しているIAEAの専門家は、2月27日午後、激しい戦闘地域の最前線にある発電所近郊で、約20回の「爆発音」が聞こえたと本部に報告した。

グロッシー事務局長によると、過去数週間にわたって、ZNPPのセキュリティが脅かされている。「これは、ZNPPに原子力安全およびセキュリティ保護エリアを設定する緊急性と重要性を示している」と述べ、エリアに可及的速やかに同意し実施するための外交努力を続けていることを強調した。

またIAEAチームによると、発電所の330 kVの予備電源は、遠くで爆発音が聞こえた後、土曜日の早朝に切断され、その後一時的に復旧したが、すぐに再び喪失した。断線は、ドニプロ川の対岸にある発電所から少し離れた場所で発生し、日曜日の午後、送電線が再接続された。

グロッシー事務局長は、ZNPPの脆弱な外部電源状況を改めて表していると述べた。ZNPPは現在、原子力安全とセキュリティに必要な外部電源を、唯一残っている運用中の750 kVオフサイト電源に依存している。これは、紛争以前から運用されている4ラインのうち1つである。

加えてグロッシー事務局長は、ZNPPに冷却水を供給するドニプロ川の一部である主要な貯水池の水位は、以前に報告されたカホフカダム保有水量の減少に続いて、ここ数週間で安定したと述べた。設計上、ZNPP原子炉ユニットの隣にある大きな冷却池は、貯水池の高さより上位に保たれている。

ウクライナのNPPに駐在している5つのIAEAチームは、武力紛争中の原子力安全とセキュリティ確保に関するIAEA の7つの不可欠な原則に照らして、すべてのサイトの原子力の安全性とセキュリティの状況を引き続きチェックし、原子力施設へのさらなる支援の特定に注力している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-148-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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