ウクライナの原子力発電所の状況 #72


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 155号(現地時間2023428日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在する国際原子力機関(IAEA)の専門家が、ミサイル攻撃の警告を受けたために今週再び避難を強いられ、サイト付近では地雷1個が爆発したことを明らかにした。

グロッシー事務局長は、ZNPP周辺地域における軍事活動の増加は、ZNPPの保護に合意することの重要性と緊急性を改めて浮き彫りにしていると付け加えた。

IAEAザポリージャ支援/調査ミッション(ISAMZ)チームは再び、ウクライナ戦争の最前線を超え、昨日、8番目のIAEAチームが前任のチームと交代した。IAEAは「原子力安全とセキュリティ確保に関する7つの不可欠な原則」に基づき、ZNPPの原子力安全・セキュリティ状況を評価するため、約8か月間ZNPPに常駐している。

IAEAチームは、ZNPPにおける複雑で困難な人員配置の状況を継続して見守っている。現在のプラント管理者によると、ロシア側のロスアトムと契約しているスタッフの総数は現在3,000人超。さらに1,000人が承認手続き中であるという。ウクライナのエネルゴアトムと契約している約1,000人のスタッフがまだZNPPで働いており、近隣の都市エネルホダルに残る他のスタッフが時々呼び出されている。

プラント管理者は、一部のスタッフが「セキュリティ目的」だとして、アクセスをブロックされていることを認めた。IAEAチームは、人員配置の状況をより理解するための作業を継続する。グロッシー事務局長は、ZNPPの職員とその家族にとって極めて困難な状況であり、それがZNPPの原子力安全とセキュリティに及ぼす影響について、繰り返し深い懸念を表明している。

グロッシー事務局長は、チョルノービリ原子力発電所事故から37周年を迎えた4月26日、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、IAEAがウクライナのすべての原子力発電所でスタッフの医療支援プログラムを新たに展開することを約束し、ゼレンスキー大統領もこれを歓迎した。

なお、ZNPPは外部電源として唯一機能している750kVの送電線に依存し続けている。3月1日に損傷したバックアップ用の330kV送電線は依然として切断されたままである。ISAMZチームによると最新の計画では本日中に再接続される予定であるというが、この2か月の間にこのような日が何度もあり、サイトにとって必要不可欠な外部電源が不安定であることに留意する必要がある。

ISAMZチームは、他の外部電源の復旧に向けた行動を監視しているが、近くのザポリージャ火力発電所(ZTPP)にはアクセスできていない。ZTPPは330kVの開放型開閉所を運営し、過去にはこの開閉所を通じてZNPPにバックアップ電源を供給していた。

2022年12月19日にZTPPの開閉所を最後に訪問した際、ISAMZチームは砲撃による大きな損傷を確認した。それ以来、ISAMZチームは、ロシアが以前に報告したように、損傷した機器を取り除き、ZNPPへの外部電源の送電系統復旧のための進捗状況を評価するために現場を訪問することを要求してきた。2週間前、チームは近日中にアクセスが許可されるとの連絡を受けた。ZNPPの原子力安全とセキュリティへの影響を考えると、ISAMZチームがZTPPの開閉所への必要なアクセスを得ることが重要である。

ISAMZチームが確認し、副次的に報告されたことによると、3号機のタービンホールに運ばれている大型機器は、ZNPPの開閉所にある破損した変圧器の交換機器だった。このカホフカ送電線は、軍事衝突前に稼働していた4系統の750kV線の内の1系統である。この送電線は、ZNPPサイトの南側で現在ロシアが管理する送電網に接続されている。

さらに、ISAMZチームによると、4月21日にZNPPの6号機が冷温停止状態に達したという。冷温停止後、燃料被覆管の健全性を評価するための試験が実施された。その結果、燃料被覆管は損傷がないことが確認された。冷温停止状態に移行したことで、ZNPPは1次および2次冷却回路とポンプの点検を実施することができる。5号機は、排水処理などサイト内に蒸気を供給するために引き続き温態停止状態である。

IAEAは、引き続きZNPPで必要な保障措置活動を実施する。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-155-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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