ATOMEXPO-2018参加および高速増殖炉BN800視察報告(2018.5.14~18)

 5月14日(月)~16日(水)、ロシアROSATOM社主催によりソチで開催された第10回ATOMEXPO-2018に当協会の服部フェローが参加しました。また、ATOMEXPO-2018に併せて、5月18日(金)にエカテリンブルグにある高速増殖炉BN800を視察しました。

1.ATOMEXPO2018参加
 2009年から始まったATOMEXPOも今回で10回目を迎えました。今回はサッカー・ワールドカップがロシアで開催されることもあり、開催地をこれまでのモスクワからソチに変更されました。ソチは2014年の冬季オリンピックの開催地でもあり、大規模な会議のためのインフラが整備されており、会議は冬季オリンピックのメディアセンターを使って開催されました。
 会議には68カ国から4000人を超える関係者しました。今回の会議のテーマは、「Global Partnership & Joint Success」でした。ロシアは近年積極的に海外展開を図っており、世界もパリ協定を受けて原子力発電の拡大が期待されていますが、その将来展望は必ずしも楽観できないことから、世界が連携協力してウィン・ウィンの関係を維持しながら如何に難局を乗り切っていこうという意図が読み取れました。
 オープニングセレモニーでは、IAEA天野事務局長、IAEAチュダコフ次長(NE)、OECD/NEAのマグウッド事務局長、WANOレガルド総裁、WNAリーシング事務局長、およびロシア議会の代表がROSATOMリハチョフ総裁と挨拶しました。会議2日目の朝には、30分という短い時間ではありましたが、特別セッションとして東京電力ホールディングスの増田副社長による「震災時の福島第二原子力発電所の教訓」と題した講演がありました。発災から100時間後に4基のプラントの冷温停止に至る発電所の対応がビデオ等を使って生々しく報告されました。講演終了後に多くの人に取り囲まれ、質問されていました。
 ATOMEXPOは今回10回目という節目でもあり、表彰制度(ATOMEXPO Award)が新たに設けられました。以下の5分野について参加企業から公募し、会議前日の表彰審査委員会で審査を経て、会議初日の夕刻に多くの出席者の下でポップミュージックの生演奏を織り込みながら、盛大に表彰式を行われました。

    • ⅰ.新規導入国でのプロジェクトの開始
      ⅱ.非発電分野での原子力技術の適用
      ⅲ.将来に向けての革新的技術の開発
      ⅳ.大衆とのコミュニケーション
      ⅴ.人材育成への取組み

 メディアセンターの広い会場には140を超える参加各社・各機関の展示ブースが並びました。海外からも、仏国(CEA、FRAMATOM、Schneider Electric、GIIN*、BUREAU VERITAS)、中国(CNNC)、英国(Rolls-Royce)、チェコ(Czech Power Industry Alliance)、フィンランド(Fennnovoima、FINNUCLEAR)、ドイツ(TUV NORD)、WNA、トルコ、ベラルーシ、スロバキア、カザフスタン等からも出展していました。*GIIN : French Nuclear Suppliers Association

2.高速増殖炉BN800視察
 ウラル山脈の東、エカテリンブルグ市の東約40㎞にあるスヴェルドフスクにあるベロヤルスク原子力発電所4号機(高速増殖炉BN800)を視察しました。
 今回視察したBN800 は出力880MW、ベロヤルスク発電所4号機として2016年に運開した世界最大の商業用高速増殖炉です。ベロヤルスク発電所にはすでに運転停止した1号機(AMB100、1964年運開1981年停止)および2号機(AMB200、1967年運開1989年停止)があり、現在廃炉作業の準備中です。3号機のBN600は1980年に初送電を開始し、2010年に30年の運転を経過した時点で機器の材料劣化等の評価をし、10年間の運転期間の延長が認められていますが、既に蒸気発生器の取り換えも実施したこともあり、更に5年間(2025年まで)の運転延長を計画中です。
 ベロヤルスク4号機(BN800)は3号機から1㎞ほど離れた地点に立地しており、2016年10月31日営業運転を開始しました。今回は原子炉ホール、タービン発電機ホール、中央制御室を視察しました。BN800は基本的にはBN600の設計を踏襲していますが、主な改善点(福島事故前に実施したもの)は以下のとおりです。

    • -設計基準事故を超える事象への対応力の強化
      -溶融炉心(コリウム)のトラップ
      -外部事象(衝撃波、ハリケーン、航空機落下、地震等)の対応力強化
      -大気への自然冷却による崩壊熱除去機能確保(冷却空気循環のための3本の排気塔)

 BN800はBN600の冷却系の設計を合理化し、3ループ、10モジュール/ループ、2熱交換器(蒸気発生器、過熱器)/モジュール、合計60基の熱交換器(蒸気発生器)からなります。またタービン発電機は1台、サンクトペトロブルグにあるパワーマシン社製で3000rpm、高圧タービン1基、低圧タービン3基の構成です。復水器は河川水による直接冷却によります。
 BN800は海外からの視察者も多いらしく、建屋内の清掃は行き届いており、アドミビルとタービン建屋をつなぐ通路には建設から試運転、運転開始に至るまでの写真を展示する等、世界最新の高速炉運転に対する誇りが感じられるとともに、所員の意識高揚と理解活動に工夫が見られました。

オープニングセレモニーの様子

巨大な会場内に広がる展示ブース

BN800の外観

BN800 中央制御室の主盤の前で

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)