全原協創設50周年で記念行事、エネ調会長の坂根氏による講演他

2018年10月30日

 「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協)の創設50周年記念大会が10月24日、都内で開催された(既報)。大会では、政府関係者他来賓による祝辞披露、大会決議の採択とともに、記念行事として、エネルギー基本計画の策定をリードした総合資源エネルギー調査会会長の坂根正弘氏(小松製作所相談役)の講演および、国際環境経済研究所理事の竹内純子氏と女川町の須田善明町長、高浜町の野瀬豊町長、伊方町の高門清彦町長による座談会も行われた。

講演に立つ坂根氏、「時間軸を長く見据えて」と話す

化石燃料の枯渇 - 再エネだけでは立ち行かない
 「日本の課題とエネルギー政策」と題し講演を行った坂根氏は、冒頭、世界を俯瞰し、「化石燃料を『いかに長く使うか』という時間軸の中で、代替エネルギーを探さねばならない」、「世界の人口は現在75億人だが、2050年には98億人にも上る。凄まじい人口爆発が今の変化の基本」などと、問題を投げかけた。
 「エネルギー問題で2050年は途中段階に過ぎない。最終的に化石燃料がなくなったらどうするか」と坂根氏は述べ、まず人口が急増する途上国については、最後まで残る石炭を効率よく使う技術が必要だと指摘した。その上で、今の世界の技術レベルでは、化石燃料が枯渇したとき、再生可能エネルギーでは「需要をカバーし切れない」として、合わせて使用済み燃料のリサイクルをセットした原子力を利用するしか選択肢はないと強調した。
 一方、日本については、他国と簡単に電力を融通できない地理的特徴や中国における太陽光技術の躍進などに触れながら、震災以降のエネルギーに関する技術自給率の低迷をあげ、「今、若い人たちが技術を学ぼうというとき、どこへ向かえばよいのか」と述べ、将来の技術基盤の維持を懸念した。

立地地域の3町長が登壇し座談会
 座談会に先立ち、講演を行った竹内氏は、2050年における日本のエネルギー事情を展望し、「人口減少、経済成長の鈍化、省エネの進展などにより、最終エネルギー消費は20%程度削減されるものの、徹底した電化が見込まれ、電力需要は2013年度比25%増の約1.3兆kWhになる」と予測した。その上で、電源構成について、再生可能エネルギーを最大限導入し53%、火力35%、原子力10%などと想定し、CO2排出量が同72%削減可能とする試算結果を披露した。また、日本の原子力を巡る(1)政治的不透明性、(2)政策的不透明性、(3)規制の不透明性・訴訟リスク――を課題にあげ、討論に先鞭を付けた。

座談会に臨む竹内氏、須田女川町長、野瀬高浜町長、高門伊方町長(左より)

 続いて3町長が登壇し、高浜町の野瀬町長は、地元の関西電力高浜発電所について、「60年まで運転期間を延長しても、15~20年後には廃炉となる」として、原子力が「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けられた新たなエネルギー基本計画に関し、「実現の可能性をしっかり示して欲しい」などと要望した。
 また、広島高裁による運転差止仮処分命令の取り消し決定など、司法判断に揺れる四国電力伊方発電所を立地する伊方町の高門町長は、地域に及ぼす経済的影響にも触れ、「地元は右往左往するばかり」と憂慮し、訴訟リスクの実感を訴えた。
 一方、東日本大震災で被害の大きかった女川町の須田町長は、交付金制度を例に「そもそも依存しすぎていなかったか」と、原子力立地地域における町づくりのあり方を省み、「自分たちで稼ぐ仕組みも必要」という機運に変化してきたことを述べた。
 原子力を巡る世論に関し、野瀬町長は「好き嫌いで議論されがち」と、須田町長も「二元論になってしまう」との見方を示したが、こうした電力生産地の声を受けて、竹内氏は「消費者も一人一人勉強していかねばならない」などと締めくくった。