福島第一原子力発電所3号機の燃料取り出し開始にあたって

2019年4月15日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 福島第一原子力発電所事故から約8年が経過し、今なお4万人を超える方々が避難生活を余儀なくされており、あらためて心よりお見舞いを申し上げます。こうした中、立地自治体である大熊町でも4月10日に避難指示が一部解除され、新しい町役場の開庁式が4月14日に行われるなど、復興に向けた環境整備も着実に進められています。

 福島第一原子力発電所の廃止措置は中長期ロードマップに沿って進められているが、その中で最大の課題の一つが使用済燃料プールからの燃料取り出しである。2014年12月に4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しを完了しているが、本日3号機において燃料取り出しが開始された。
 3号機は炉心溶融を起こしており、燃料を取り出す原子炉建屋のオペレーティングフロア(オペフロ)は高線量で、これまでの準備作業には除染や遮へいに加え遠隔操作による数多くの無人作業が求められた。
 最初に水素爆発によってオペフロに積み重なった大小さまざまな瓦礫の撤去が行われた。使用済燃料プール上の20tを超える燃料交換機等の重量物も、プール内に貯蔵される燃料を損傷させることなく撤去しなければならず、瓦礫を把持するツールの開発、カメラによる詳細調査、繰り返しの手順見直し、モックアップ試験など、慎重の上に慎重を期し実施された。
 続いて線量の低減のためオペフロの除染、遮へい作業が行われた。この除染においても瓦礫の集積・吸引、床面のはつり機能を備えた遠隔操作型の装置が使われた。その結果有人作業も可能となる1mSv/hオーダーまで線量を低減することができた。
 最後に燃料取扱装置と燃料取り出し用カバーを設置したが、このカバーには作業性を良くするため内部の作業空間を広くとりながら軽量化するためにドーム型を採用するという工夫も施された。
 なお、厳しい作業環境下で、オペフロの線量低減工事、燃料取り出し用カバー設置工事に取り組んだ作業チームには、4月14日に内閣総理大臣感謝状が授与された。これまでの困難な作業に対し、その苦労と功績が評価されたものとして敬意を表したい。

 燃料取り出しはリスクの低減や、地域、国民の皆さまの不安解消につながる大事な一歩である。今後の作業はカメラの映像を見ながらの遠隔操作で進めることになるので、これまでの準備作業で培ったノウハウを活かし、慎重に、着実に作業を進めていただきたい。また、今回の知見、経験が活かされ、次の1,2号機の燃料取り出し準備が進むことを期待したい。

以 上


「完成した燃料取り出し用カバー」(出典:東京電力ホールディングス)

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