vol05.ついに勝利の時を迎えるのよ!

脱原子力 ドイツの実像
ついに勝利の時を迎えるのよ!
ドイツ脱原子力の旗手:コッティング=ウール下院議員インタビュー
ジルビア・コッティング=ウール Sylvia Kotting-Uhl MdB
ドイツ連邦議会(下院)議員。同盟90/ 緑の党の原子力政策
担当スポークスウーマン。独日議員連盟会長。

聞き手|石井敬之

 

子力との関わりは?

 チェルノブイリの大惨事が起きたのは1986 年4 月26 日だったわ。放射能を帯びた雲がヨーロッパ上空を流れ、死の灰はドイツ南部にも降りかかったの。当時私の二人の息子は3歳と5歳だった。私たちは農村で暮らし、野菜はすべて自家栽培だった。自然と調和した生活を目指して、息子たちに環境の美しさを味わうよう教えたわ。まさか息子たちを、汚染された自然から全力で守るはめになるとは思いもよらなかった。息子たちは屋内生活を余儀なくされた。私たちは新鮮なミルクも飲めなくなった。新鮮な野菜もハーブも汚染され、処分せざるをえなかったわ。
 1970年代~1980年代は環境災害のニュースが、新聞などで数多く報道されていたの。例えば、枯れてゆく森林、製薬会社の事故で生じた大きな河川への化学物質の流出、オゾンホール問題などがあった。こうした環境問題の影響を受けて緑の党が生まれたのよ。私個人としては、チェルノブイリが転換点だったわ。私は気づいたの。私が自身と家族のために築き上げようとした「グリーンの楽園」というものは、環境面のリスクから守られないかぎり、成立しないのだということに。チェルノブイリ事故が起こったまさにその年に、私は緑の党に入党し、政治活動を始めたの。

在の活動は? 同盟90/緑の党の原子力政策担当スポークスウーマンとしての役割は?

 私は2005 年からドイツの連邦議会(下院)議員となり、現行の第18 期連邦議会における同盟90/ 緑の党の原子力政策担当として、原子力安全問題、(放射性廃棄物)最終処分場問題、電磁波問題、エネルギー研究等に取り組んでいるの。その他に私は、議会の環境・自然保護・建設・原子力安全委員会の委員と、教育・研究・技術評価委員会の代理委員、そして2014 年からは独日議員連盟の会長も務めているわ。
 現在私が連邦議会で取り組んでいる課題は、ITER のような核融合研究炉や分離変換技術ね。それとドイツ国境に隣接する外国の原子力発電所(スイスのベツナウ、フランスのフェッセンハイム、ベルギーのドールなど)や、世界の原子力開発動向にも関心があるわ。ドイツ国内での最終処分地選定も、重要な活動の一つよ。原子力発電所の解体費用に関して電力会社が負担する二次的責任問題や、国内原子力発電所の安全基準問題にも取り組んでいるわ。

ックエンド問題(高レベル放射性廃棄物処分など)の進展は?

 2014 年5 月に高レベル放射性廃棄物(HLW)に関する委員会が新たに設置され、HLW 最終処分場のサイト選定について、これまでとは全く違うアプローチで取り組んでいるの。数十年間かけたこれまでのサイト選定方法が破綻してしまったからよ。ドイツでは過去のサイト選定が、安全基準ではなく政治的判断に基づいていて、HLW処分問題は政府と国民の「信頼関係の危機」に陥っているの。にっちもさっちもいかない状況というわけよ。新しい委員会は連邦議会議員、大臣、科学者、産業界や市民社会の代表から構成されていて、全員で協力してStandAG(サイト選定手続きに関する法律)を検討し、国民参加が可能なシステムを作り、選定基準(地質学的・社会学的)を規定する作業にとりかかっているわ。2016 年7 月に最終報告書が連邦政府および連邦議会両院に提出される予定なの。報告書に盛り込まれる提言が実現されることを祈るわ。
 委員会では「白地図」という言葉を使うの。つまり、ドイツのどの地方も除外されず、選定基準に最も当てはまるサイトならどこでも構わないというスタンスよ。従って、理論上、現時点ではドイツ全域のどの地方もサイト候補となりうるの。委員会ではすでに詳細に説明されているけれども、深地層(塩、粘土、結晶質岩)を探していて、一定期間の監視/回収可能性も求められているわ。2031 年までに最終処分サイトが選定される予定よ。
 一方、低レベル放射性廃棄物(LLW)と中レベル放射性廃棄物(ILW)については、コンラッド処分場がすでに建設中よ(旧鉄鉱山の坑道を利用した地層処分)。別のサイト「アッセ」に保管された放射性廃棄物は、浸水が発生したので回収しなくてはいけないの。さしあたり回収が技術的に可能かどうか、また、回収後の廃棄物処分についても未知数なの。およそ10年以内に回収を始める計画よ。

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