vol05.ついに勝利の時を迎えるのよ!

脱原子力 ドイツの実像

イツの電力需給あるいは電力輸出入に関し、脱原子力による電力の穴埋めをどう考えるか?ドイツがCO2 排出量削減目標を達成するための最善策は?

 再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上で、地球温暖化を回避するつもりよ。再生可能エネルギーをもっともっと利用することで、脱炭素化も実現できると思うの。もちろん再生可能エネルギーは、化石燃料輸入への依存度も低減するわ。
 ドイツにはいわゆる再生可能エネルギー法(EEG)があるの。EEGには国内の再生可能エネルギー電源の急速な拡大を資金面で支援するメカニズムが盛り込まれていて、再生可能エネルギー事業者は固定価格買取制度(FIT)で収入が約束されているわ。投資リスクがかなり低いということね。
 EEGは、①FITの価格を再生可能エネルギー電源の種類/容量/送電事業者の託送料によって決定、②再生可能エネルギー電源の送電グリッドへの優先的な接続権、③送電事業者のシステムコストは「EEGサーチャージ」として消費者が負担、④特定の消費者層を対象に別枠のスキームで補助――などが主なポイントよ。
 FITは大企業だけではなく、グリッドに自ら発電した電力を供給したいと思う人であれば誰でも利用できる制度なの。これは私の考えだけれども、EEGは単なる法律ではなく、エネルギー転換に貢献したい、そしてそれによっていくらか収入を稼ぎたいと考えている人々に対する、「提案」のようなものだと思うわ。こうして少数の大手エネルギー企業から徐々に「権力」を奪還して、より分散された、地域密着型の構造に変えることができるのよ。それもまた、エネルギー自立をもたらすわ。
 例えば、私の自宅と選挙区からさほど遠くない場所に「インガースハイム圏エネルギー協同組合」があるの。組合は2012年に、地域レベルでのエネルギー転換への貢献を目的に、設備容量2,000kWの風力発電設備を初めて建設したのよ。組合には360人が加入しているけれども、年間1200戸に電力を供給していて、組合員は収益を配分されているわ。その上、自分たちで発電しているという意識が、人々を省エネに向かわせているの。
 「ゾーラーコンプレックス」という会社の例も紹介するわね。ドイツ南部とオーストリア、スイスの国境に位置するボーデン湖地方の電力需要の大半を、再生可能エネルギー電源で供給することを目的に設立された会社よ。誰でも株主になって新規事業にも参加できるし、もちろん収益も配分されるわ。同社のおかげで雇用も維持されていて、地元経済を活性化させているの。同社役員の一人であるベネ・ミューラー氏がかつてこう言っていたわ。「再生可能エネルギーへの転換は、経済面での転換でもある」って。石油タンカーはドイツへ来る時は石油でいっぱい、ドイツから帰る時は私たちのお金でいっぱいでしょ?自分たちでグリーンかつ持続可能なエネルギーを生み出すことで、こうした経済状況にも転換をもたらすことになるわけよ。
 リューネブルクのウィルヘルム・ラーベ・スクールの例もあるわ。1997年の時点で同校は屋根にソーラーパネルを既に設置していたの。そして固定かつ保障されたFITから得られた収益で、年々パネルを増設し、今では同校のエネルギー消費量を2割を賄っているわ。収益の一部はタンザニアにある姉妹校の援助にも充てられており、ウィルヘルム・ラーベ・スクールはこれまでいくつかの賞を受賞しているの。
 最後にシェーナウ電力会社を紹介するわ。チェルノブイリの大惨事が起こってから、シェーナウ市の市民たちは、原子力フリーで、気候に優しく、持続可能なエネルギー供給を推進することにしたの。市民たちは長い闘いの末に、原子力発電事業者から電力送電グリッドを購入できるようになったわ。1997年のことよ。こうして誕生したシェーナウ電力会社は、今ではドイツ国内で最大規模のグリーン電力供給者になっているの。
実は私も、選挙区のカールスルーエとベルリンで、シェーナウ電力から電気を購入しているの。シェーナウ電力は2009年から、ガス小売り事業も手掛けているわ。
 こうした例だけでなく、実際に太陽光発電システムやバイオマス、風力等を導入してエネルギー消費をまかなっている人々や農場、企業を見ると、ドイツのエネルギー供給システムが明らかに変化しつつあることが実感できるはずよ。


 
 

本もドイツと同じ道を歩むべきだと?

 日本は意志が強く、道徳心とチームワークが素晴らしい国なのだから、グリーン・エネルギーへの転換は十二分に可能なはずよ。日本は第二次大戦後、世界を驚かせるほどの経済成長を遂げて、欧米諸国に追いつくことができたのだから。しかも日本は、強烈に降り注ぐ太陽光、強風の吹く海岸地帯、地熱を広範囲に利用できる地理といった、(再生可能エネルギーへの)エネルギー転換を可能にする上で最高の条件が整っているじゃないの。その上、日本は技術立国であり、エネルギー転換に取り組む優秀な科学者たちも揃っているわ。
 日本国民の大半が脱原子力政策を支持しているというのに、安倍晋三首相は原子力政策を堅持しているわ。安倍首相のサポーターである小泉純一郎氏だって、原発即時閉鎖という社会的要求に応えるよう訴えているじゃない。再生可能エネルギーを着実かつ速やかに拡大することは、特に日本にとって、利益に沿うものだと思うの。小泉氏は最終処分場なしには日本における原子力の未来はないと語っているわ。私は全面的に賛成よ。もちろんご存知でしょうけど、日本は環太平洋火山帯に位置し、地震も火山活動も頻発しているエリアよ。日本の地理的条件は、原子力のような高いリスクを伴うテクノロジーにとってまったく不適格だわ。私に言わせればそもそも原子力発電所を(そうした国で)建設するべきじゃなかったのよ。これは危険な廃棄物の最終処分場にも言えることだけど、少なくとも百万年は安全が確保されないとダメよ。

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