ベルギー 脱原子力法を廃止
20 May 2025
ベルギー連邦議会(下院)は5月15日、原子力発電の段階的廃止を撤回し、新規建設を認める法案を、賛成100、反対8、棄権31の賛成多数で可決した。M. ビエ・エネルギー相は法案の可決に際し、「脱原子力政策の撤回であり、ベルギーのエネルギー史上画期的な出来事」と称し、「現実的で強靭なエネルギーモデルへの道を開き、20年に及ぶ停滞に終止符を打つものだ。政府はエネルギーの自立性を強化し、競争力のある価格を保障し、脱炭素化を加速させていく」と述べた。
同法案は、同相が議員時代の2024年10月に他の議員らとともに提出したもので、2003年に制定された「脱原子力法」に明記された、原子力発電所の廃止スケジュールおよび新規の原子力発電所の建設禁止に関する規定を排除するもの。現在の地政学的な不確実性に照らして不可欠となるエネルギーミックスを実現するとともに、エネルギー移行に貢献する原子力部門を再活性化し、高レベルの雇用を創出したい考えだ。
2003年の脱原子力法では、原子炉の運転期間を40年に制限。同国北部にあるドール原子力発電所×4基、南部のチアンジュ原子力発電所×3基の原子炉を順次、2025年までに閉鎖することとしていた。しかし政府は2015年、電力供給に懸念が生じたため、2025年の運転終了の条件はそのままに、ドール1-2号機、チアンジュ1号機に40年超の運転期間を承認。さらに、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を受け、翌3月には、最新の2基(ドール4号機、チアンジュ3号機)について、運転40年目となる2025年以降も運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定した。原子力発電事業者であるエンジー社とは2023年7月、運転期間延長の最終合意に向けて交渉していくことで枠組み合意し、同年12月には、2035年11月まで運転期間を10年延長する計画の諸条件について最終合意に達した。これにより、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施し、2025年11月の運転再開を予定している。
ベルギーでは現在、ドール発電所で2基(2、4号機)、チアンジュ発電所で2基(1、3号機)、2サイトで原子炉が稼働中。いずれもPWRを採用し、計4基の合計電気出力は365.3万kW。2024年の原子力発電シェアは約42%。再生可能エネルギー(風力・太陽光)は約30%と、クリーンエネルギーが7割を占める。ドール1、3号機はそれぞれ2025年、2022年に、チアンジュ2号機は2023年に閉鎖された。
今年2月に発足した5党連立政権は連立協定の中で、脱炭素と増大するエネルギー需要に応えるため、再生可能エネルギーと原子力のエネルギーミックスを追求し、短期的には10年ごとに定期検査を実施し、安全基準を満たした既存炉は最大限に活用、長期的には新規建設する方針を示していた。
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