
国内NEWS
18 Jun 2026
196

JAEA カザフスタン共和国国立原子力センターと高速炉の安全研究を継続 協力覚書を締結
海外NEWS
18 Jun 2026
134

米ABS MIT海事コンソーシアムによる船舶共同開発設計にAiPを発給
国内NEWS
17 Jun 2026
381

福島 内堀知事 復興・創生に向け国に要望 赤沢大臣『福島復興と廃炉は最重要課題』
海外NEWS
17 Jun 2026
505

スウェーデン 新規建設プロジェクトに英ロールス・ロイスSMRを選定
国内NEWS
16 Jun 2026
405

日本原子力産業協会 2026年度定時社員総会を開催
海外NEWS
16 Jun 2026
572

イタリア議会下院 原子力発電再開に向けた法案を可決
国内NEWS
16 Jun 2026
901

自民党 高市首相に原子力規制に関する提言提出
海外NEWS
15 Jun 2026
527

米TMI-1 2027年運転再開の準備が着実に進展

米国船級協会(ABS)は6月5日、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、韓国のHD現代(ヒュンダイ)傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)社、およびギリシャの船舶運航会社Capital Maritimeグループが共同開発した貨物船向け原子力推進システムについて、船舶への原子炉統合設計に対する基本設計承認(AiP)((認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すもの。))を発給したことを明らかにした。同システムでは、炉心で発生した熱を運ぶ媒体として特殊な合成流体を採用し、熱出力1万~2万kWのマイクロ炉の搭載を想定。炉内圧力を大気圧に近い水準に抑えることで、原子炉容器の薄肉化、軽量化を可能とし、モジュール化による製造や輸送の効率化が期待されている。今回のAiPは、MIT海事コンソーシアム(MIT Maritime Consortium)を通じて承認された初の事例。同コンソーシアムにはABS、HD KSOE、Capital Maritimeグループが創設メンバーとして参加しており、ABSは船級規則に基づき、原子炉と機械システムとのインターフェースについて評価した。MIT海事コンソーシアムは、学術界と産業界が連携し、代替燃料、新型原子力技術、データ駆動型の運航戦略、サイバーセキュリティなど、海事産業の将来を大きく左右する技術の研究開発を推進する組織。共同代表兼MIT海洋技術担当教授のT. サプシス氏は、「商船隊の近代化に向けた課題解決のため、学術界と産業界の主要プレーヤーが連携して革新技術、業界標準、政策立案を目指す独自の組織であり、今回の原子炉設計は商船への原子力推進導入に向けた協力体制から生まれた最初の具体的成果である」と指摘した。ABSのP. ライアン上級副社長兼最高技術責任者(CTO)は、「海運業界が将来に向けた新たな選択肢を模索する中、MITが開発した原子炉設計は、モジュール化製造や船舶への統合に適した特徴を備えており、安全かつ実用的な次世代商船の実現に向けた有力なアプローチの一つとなり得る技術」と評価した。ABSはこのほど、現在はディーゼルやバッテリー電気推進など従来の動力システムで運航する船舶についても、将来的な原子力推進への転換を前提とした設計であることを証明する業界初の新たな船級認証制度(Nuclear-Ready Notation)を導入した。評価項目には、原子炉設置のためのスペース確保、船体構造、機器との接続インターフェース、安全設備などが含まれる。2023年7月、国際海事機構(IMO)加盟国は、2050年頃までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出をネットゼロとする新たな削減目標に合意。脱炭素化を背景に原子力への関心が海運業界で高まる中、同制度により原子力という将来的な選択肢を残しつつ、今後の大規模な設計変更や改造に伴うリスクやコストの低減が期待されている。
18 Jun 2026
134

スウェーデンの新規原子力発電プロジェクト会社「ビデバーグ・クラフト(Videberg Kraft)」は6月15日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所3-4号機(PWR、各110万kWe級)に隣接して進める新規原子力発電計画のベンダーに、英国のロールス・ロイスSMR社を選定したことを明らかにした。今後、同サイトに3基のSMR建設に向けた詳細な計画策定が進められる。ビデバーグ・クラフト社は、スウェーデン国営電力会社バッテンフォールが、ヴェーロー半島における新規建設に向けて2025年4月に設立したプロジェクト会社。同国の産業コンソーシアムであるインダストリクラフト(Industrikraft)も株主である。バッテンフォールは過去4年にわたり、当初70社以上を対象とした評価・選定プロセスを実施。最終候補は、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と英ロールス・ロイスSMR社の2社に絞り込まれ、ビデバーグ・クラフト社はGVH社製SMR「BWRX-300」であれば5基、ロールス・ロイスSMRであれば3基、合計出力約150万kWeを建設する予定としていた。そして今回、独立した第三者評価を経て、ロールス・ロイスSMRがプロジェクト成功に向けて最も優れた条件を備えているとして正式に選定された。ロールス・ロイスSMRは、リングハルス発電所で採用されているPWR技術を基盤とし、主要部品を工場でモジュール化して製造・組立てる方式を採用、現地工事の遅延リスク低減を目指している。バッテンフォールは、新規建設がスウェーデンのエネルギー供給と産業の脱炭素化を支える重要な基盤であり、40年以上ぶりとなる新規建設に向けた大きな前進であると位置付けている。計画では、出力47万kWeのSMR×3基の建設により、60年以上にわたり年間約120億kWhの電力供給が見込まれ、同国南部の電力の安定供給に貢献すると期待されている。ロールス・ロイスSMRは、英国・北ウェールズのウィルヴァ(Wylfa)で3基の建設が計画されており、英国で初めて導入される炉型を対象とした設計認証審査である包括的設計審査(GDA)の最終段階となるステップ3(詳細評価)に進んでいる。スウェーデンにおける初号機は2030年代半ばに稼働開始予定。なお、ビデバーグ・クラフト社は2025年12月、同国で同年8月に施行された新制度に基づく初の国家補助申請を行っており、政府との契約締結に向けた準備が進められている。
17 Jun 2026
505

イタリア議会下院は6月4日、持続可能な原子力発電再開に向けた法令整備に関する権限を政府に委任する法案を賛成155票、反対86票、棄権8票で可決した。法案成立後12か月以内に、政府に一連の施行令を発令する権限を付与するもの。これにより法的枠組みが確立され、政府は原子力発電の段階的廃止を開始してから約40年ぶりに原子力発電再開に向けた計画策定ができるようになる。法案はすでに上院での審議に送られ、政府は早ければ夏季休会前の7月末までに法案の成立、年内の施行令の公布を見込んでいる。施行令では、持続可能な原子力発電のライフサイクル全体を網羅する包括的な制度が整備される。モジュール炉の新設計画、サイト選定、建設、運転に加え、循環型経済(circular economy)の考え方をベースに燃料製造や再処理などを盛り込んだ国家プログラムの策定のほか、既存設備の廃止措置や放射性廃棄物および使用済み燃料管理、核融合に関する研究開発やその利用も制度設計の対象。独立した原子力安全規制機関の設置など、行政体制の再編も想定している。2025年10月、イタリア閣僚評議会は、持続可能な次世代原子力技術の導入支援に向けて政府に立法措置を策定するための権限を委任する法案を最終審査で承認した。この法案は、G. メローニ首相およびG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相の提出によるもの。持続可能な原子力発電および核融合を組み込んだ、「イタリアのエネルギーミックス」を実現することを目的としている。2050年を視野に入れた欧州の脱炭素化政策の枠組みの中で、小型モジュール炉(SMR)や先進モジュール炉(AMR)、核融合のような先進技術を再生可能エネルギー源の補完とする戦略的手段として位置付け、エネルギー供給の継続性の保証とエネルギー自立の促進、脱炭素化目標の達成、エネルギーコストの削減と国内産業の競争力の確保を目指している。イタリアでは1960年初頭から4サイトで合計4基の原子力発電所が稼働していたが、チョルノービリ原子力発電所事故後の1987年、国民投票によって既存の全発電所の閉鎖と新規建設の凍結を決定。最後に稼働していたカオルソ(BWR、88.2万kWe)とトリノ・ベルチェレッセ(PWR、27万kWe)の両発電所が1990年に閉鎖し、脱原子力を完了した。2009年になると、EU内で3番目に高い電気料金や世界最大規模の化石燃料輸入率に対処するため、原子力復活法案が議会で可決された。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、同じ年の世論調査では国民の9割以上が脱原子力を支持。当時のS. ベルルスコーニ首相は、政権期間内に原子力復活への道を拓くという公約の実行を断念した。
16 Jun 2026
572

米原子力規制委員会(NRC)は6月9日、同国東部ペンシルベニア州にあるクレーン・クリーン・エネルギー・センター(CCEC: 旧スリーマイル・アイランド(TMI)原子力発電所1号機 PWR, 88.0万kWe)の運転再開について、周辺環境に「重大な影響なし(FONSI)」とする環境アセスメント(EA)案を発表した。NRCは運転再開に関する最終決定を2027年に行う見込みであり、CCECの2027年中の運転再開が現実味を帯びてきた。同機は安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。所有者であるコンステレーション社は2024年9月、米マイクロソフト社とデータセンター向けの20年間の売電契約を締結。当初は2028年の運転再開を目指していたが、ペンシルベニア州を含む地域を管轄する系統運用者PJMが早期接続を承認したため、最短で2027年までに前倒しする方針を示していた。NRCは実施中のパブコメ(7月8日締切)を経て、EAを決定する。並行して、安全審査および現地検査が実施されている。TMI2号機は1979年に炉心溶融事故を起こし、現在、別所有者による廃止措置が進められている。なお、PJMの管轄地域では、データセンターの増加や電化の進展により電力需要が高まり、送電網の容量不足が顕著になっている。コンステレーション社は2027年後半にはCCECの発電は可能とする一方で、PJMは送電容量確保に必要な送電線工事の完了を待ち、CCECがフル出力で送電網接続が可能となるのは早くて2031年の可能性が高いとする調査結果を発表した。これを受け、コンステレーション社は3月31日、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)に対し、同社がペンシルベニア州フィラデルフィア郊外で同社が所有・運転するエディストーン(Eddystone)天然ガス火力発電所(76万kWe)の系統連系容量権(Capacity Interconnection Rights: CIR)をCCECへの移転を要請。6月1日、FERCが移転を承認している。
15 Jun 2026
527

米X-エナジー社は6月2日、開発中の高温ガス炉「Xe-100」について、英国の包括的設計審査(GDA)を申請した。GDAは、英国で初めて導入される炉型を対象とした設計認証審査で、審査は2029年末までに完了する見込み。今回の申請は、X-エナジー社と英エネルギー企業セントリカ(Centrica)社が英国で最大600万kWe規模の導入を目指す計画の一環で、最初のプロジェクトとして同国北部のハートルプールへ12基、総出力96万kWeのXe-100発電所の建設を計画している。Xe-100は出力8万kWeの高温ガス炉。発電だけでなく産業向けに高温の熱や蒸気の利用も可能。X-エナジー社は2024年から英規制当局と事前協議を続けている。米国ではダウ・ケミカル社とともに2025年3月、テキサス州メキシコ湾沿いにあるシードリフト・サイトにおいてXe-100を採用したロング・モット(Long Mott)発電所の建設許可を申請。米原子力規制委員会(NRC)が審査中である。両国規制当局間による2025年9月の先進炉審査の迅速化に向けた合意に基づく協力体制の活用により、英国での審査効率向上が期待されている。さらに、X-エナジー社は英政府の「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund: FNEF)」による支援下で、国内製造やサプライチェーン整備などの検討を進めており、関連プロジェクトが最終的に少なくとも400億ポンドの経済効果をもたらし、そのうち最初のプロジェクトだけでも約120億ポンドに達する可能性があると想定されている。今回のGDA申請を、英国のエネルギー安全保障の強化や脱炭素化、雇用創出に向けた取組みを前進させる重要な一歩として位置づけている。
15 Jun 2026
372

ウラン濃縮会社のウレンコUSA社は6月2日、米国ニューメキシコ州ユーニスにある同国唯一の商業用ウラン濃縮施設の生産能力を約50%拡張する計画を明らかにした。数十億ドルを投資し、新たに遠心分離式の濃縮プラント施設を建設、カスケード最大24基、2,100 tSWU/年の生産能力を追加する。2032年から順次稼働し、2036年までの完成をめざす。既存の濃縮プラントの生産能力は4,300tSWU/年で、米国の濃縮ウラン需要の約1/3を占める。現在、700 tSWU/年の拡張プロジェクトも進行中で、2027年に完了予定。今回の拡張計画と併せると、2030年代には生産能力が7,000 tSWU/年以上となる見込みである。米国での拡張計画は、ウレンコ社がオランダ、ドイツで所有・操業する濃縮プラントの拡張計画と併せ、合計4,600 tSWU/年を拡張するプログラムの一環。今回の計画は、米国で原子力発電の利用拡大が進む中、原子燃料の安定供給体制を強化し、海外、とりわけロシアへの依存低減を目的としている。また、既存の軽水炉向け低濃縮ウラン(LEU)だけでなく、将来の先進炉向け燃料需要にも対応できる体制を整えたい考えだ。米国では、今後拡大する原子力発電向け燃料需要やエネルギー安全保障への対応を目的に、低濃縮ウラン(LEU)の供給能力の増強など、国内燃料サプライチェーンの再構築をめざす動きが本格化している。一例として、仏オラノUSA社は50億ドルを投資し、米国テネシー州オークリッジに遠心分離方式によるウラン濃縮工場「Project IKE」の建設を計画中で、初期の生産能力は4,000 tSWU/年を見込んでいる。同社は2026年3月に米原子力規制委員会(NRC)に建設・操業認可を申請し、NRCは5月21日、これを受理。NRCは、2025年5月の「NRC改革に関する大統領令」に従い、通常より短い12か月で審査する方針を示している。なお、オラノUSA社は2025年1月、米エネルギー省(DOE)より、国内のウラン濃縮能力強化を目的とする9億ドルの助成の対象に選定されているほか、テネシー州の原子力基金からも支援を受けている。
12 Jun 2026
579

米ニューヨーク州のK. ホークル知事は6月1日、同州北部で少なくとも100万kWe規模の先進原子力発電開発計画の具体化に向け、州営ニューヨーク電力公社(NYPA)が二つの公募を開始したと発表した。一つは原子力発電所の開発・建設・運営に実績を持つ原子力発電開発事業者を対象とした資格審査(RFQ)であり、もう一つは州内の教育機関や労働組合などを対象とした原子力人材育成を目的とした助成事業への公募(RFA)である。今回の取組みは、州内での新規原子力発電の開発規模を500万kWeに拡大することをめざし、ホークル知事が2026年施政方針演説で掲げたイニシアチブ「原子力信頼性基盤」(Nuclear Reliability Backbone)の一環。現在、ニューヨーク州で稼働する約340万kWeの原子力発電設備容量と併せて将来的に合計約840万kWe規模を確保することで、電力系統の安定化や電気料金の抑制、クリーンエネルギーへの移行を実現したい考え。同州では現在、米大手電力会社コンステレーション社が3サイトで計4基の原子炉を運転している。NYPAは、2025年10月に先進原子力プロジェクトの開発事業者と潜在的なホストコミュニティを対象とした情報提供要請(RFI)を実施しており、今年1月、開発事業者候補から23件、同州北部のコミュニティから8件の回答を得たことを明らかにしている。開発事業者向けのRFQでは第3世代+(プラス)または第4世代の大型炉または小型モジュール炉(SMR)、あるいはその組合わせによって100万kWe以上の発電能力を実現できる事業者を対象としており、2033年までに建設開始できる実現可能性を重視。SMRについては、初号機(FOAK)段階は原則除外で、マイクロ炉も対象外としている。その他、技術成熟度、立地・許認可戦略、建設スケジュール、コスト見積もり、所有形態や提携モデルなどについて具体的な計画が求められている。RFQは将来的な提案依頼(RFP)に向けた事前選定の位置づけで、応募締切は6月26日。一方、人材育成向けRFAでは、今後4年間で最大4,000万ドルの資金を投入し、原子力産業を支える人材基盤の強化を図る。州内の技術系高校、コミュニティカレッジ、大学、業界団体、労働組合、地域団体などを対象に、訓練プログラム、実習、インターンシップ、就職支援など、人材育成を促進する事業への支援を行う。この取組みは、「ニューヨーク州の次世代原子力(NextGen Nuclear New York)」プログラムの一環として、将来の原子力産業を支える人材を州内で育成することを目指している。応募締切は7月31日。NYPAは2025年12月にカナダ・オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)との協力を発表しており、技術革新や資金調達、人材育成などの分野で連携を進めている。今回の公募はこうした取組みを補完するものであり、ニューヨーク州における次世代原子力発電の推進に必要な専門知識と準備を強化するものと位置づけている。
11 Jun 2026
791

米エネルギー省(DOE)は6月4日、DOEの先進炉設計の開発・試験・認証の迅速化を目指した「原子炉パイロットプログラム」の一環として、原子力新興企業アンタレス・ニュークリア(Antares Nuclear)社が開発した先進マイクロ炉「Mark-0」(ナトリウムヒートパイプ冷却炉)が、アイダホ国立研究所(INL)においてゼロ出力臨界((原子炉において、熱出力がほぼゼロ(核分裂による熱がプラントの温度に影響を与えない極めて低い出力レベル)の状態で、核分裂の連鎖反応が持続する状態(臨界)に達すること。))試験に成功したと発表した。今回の実証試験にはDOE、INL、BWXテクノロジー(BWXT)社に加え、将来的な利用者となる米陸軍も協力。「Mark-0」は、商用モデル「R1」マイクロ炉(電気出力100kW~1,000kW)の性能検証を目的とするもので、DOEの原子炉パイロットプログラムで進められている複数の先進炉の中で、最初に臨界達成に成功した。またMark-0は、1951年以来、INLで臨界を達成した53基目の原子炉となった。DOEは2025年8月、同年5月発令の大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」を受け、先進炉の設計試験を迅速に進めるため、DOEの管理権限の下で「原子炉パイロットプログラム」を開始した。大統領令で示された期限(2026年7月4日、独立記念日および建国250周年)までに少なくとも3基の試験炉で臨界達成を目指す目標が示され、同プログラムには10社11件の先進炉プロジェクトが選定されており、アンタレス社はその一つである。アンタレス社は、「2026年に臨界達成、2027年に『Mark-1』でのフル出力発電実証、2028年に軍事施設への実用配備を目指す」との目標を掲げている。同社のJ. ブランブルCEOは、構想開始からわずか12か月で臨界状態の原子炉を実現したとして、先進炉の迅速な認可・実証を可能にする新たなライセンスモデルを示したと強調している。Mark-0には、軍事作戦用の可搬式プロトタイプのマイクロ炉「プロジェクト・ペレ」向けにBWXT社が開発したTRISO燃料が使用されており、今回得られたデータはプロジェクト・ペレにも還元され、将来の軍用マイクロ炉開発に活用される予定。また、炉心物理特性や計装・制御システムの挙動などを検証し、商用炉の設計高度化に必要なデータも収集。同社によると、この経験を通じて設計・認可・建設・試験までを短期間で実施できる体制を構築し、原子炉技術だけでなく、規制対応やサプライチェーン構築の知見も大きく向上したという。C. ライトDOE長官は今回の成果について、「40年以上ぶりに米国で民間開発の非軽水炉が臨界に到達した歴史的な出来事」であり、「米国の原子力産業復活の象徴となる瞬間だ」と評価。T. ガリッシュ原子力エネルギー担当次官補は、「1年足らずで臨界達成は不可能だと考えられていたが、それを実現したことは原子力の未来を切り開く成果である」と述べた。DOEは今回の臨界試験について、原子炉設計の安全性と運転性能を実証するだけでなく、将来の商用炉の設計や米原子力規制委員会(NRC)の認可手続きにも役立つ重要なデータを提供すると説明している。実用化されたマイクロ炉は、地上での分散型電源だけでなく、宇宙開発や軍事施設など安定した電力供給が求められる分野での活用も期待されている。
10 Jun 2026
920

米中西部ユタ州を拠点とするエネルギーインフラ開発会社のブルーキャッスル(Blue Castle)社とフルクラムポイント(Fulcrum Point)社は5月28日、同州東部のエメリー郡グリーンリバー市で計画されているブルーキャッスル原子力プロジェクトを合弁事業化して推進することを発表した。ブルーキャッスル社が過去19年にわたり準備を進めてきた同プロジェクトについて、今後は共同でサイト開発、米原子力規制委員会(NRC)の認可取得、建設・運転開始に向けた開発を進める計画である。今回の提携は、ユタ州が今後10年間でエネルギー生産倍増に向けて推進する、先進エネルギー政策「オペレーション・ギガワット」の一環。フルクラムポイント社の創設者C. ヘイター氏は、「ブルーキャッスル・プロジェクトを長年の基礎作業から次の実行段階へと進めるために、当社の技術、運営、プロジェクト開発能力を活用する。このプロジェクトはユタ州のエネルギー供給を強化、農村経済の成長を支援し、今後数十年にわたる電力供給が可能になる」と述べた。2007年、ブルーキャッスル社(当時はトランジション・パワー・デベロップメント社)はグリーンリバー市に原子力発電所の建設計画を提案。2014年8月には、ウェスチングハウス(WE)社製AP1000×2基の建設に向けた協力覚書(MOU)をWE社と締結し、NRCへの事前サイト許可(ESP)申請に向けた準備作業を進めていたが、計画は事実上、中止となった。グリーンリバー・サイトでは、これまでに気象および地震データの収集、地質調査、地下水モニタリング、生態学調査など、広範な技術的および環境分析が実施され、既存の水利権、鉄道や高速道路へのアクセス、送電網との接続性など、発電所立地に有利な条件を備えている。ブルーキャッスル社のA. ティルトンCEOは、「過去19年間、原子力発電導入に向けたリスク軽減の基盤を築いてきた。ユタ州および周辺地域のエネルギー需要に応え、ユタ州農村部で高レベルの雇用と経済効果を生み出していく」と抱負を述べた。同サイトでは、米ホルテック・インターナショナルが開発する小型モジュール炉(SMR)「SMR-300」(PWR, 30万kWe)の導入が想定されている。ホルテック社によると、同炉は独自の空冷式復水器(ACC)を採用できるため、水資源が乏しいユタ州のような乾燥地帯での運用が可能になるという。ホルテック社は、ユタ州北部にあるブリガムシティを基盤とした先進原子力イニシアチブにおいても、フルクラムポイント社の関連会社であるハイテクソリューションズ(Hi Tech Solutions)社と提携してSMR-300の導入を計画しており、ユタ州で拡大しつつある原子力エコシステムの構築を支援している。ユタ州には現在、原子力発電所はないが、S. コックス知事は同州のエネルギーポートフォリオの大幅な拡大を推進し、特に原子力発電に重点を置いている。5月22日には、同知事主催による「オペレーション・ギガワット・サミット」が開催され、連邦および州、エネルギー関係事業者の幹部が出席。人工知能(AI)インフラ、製造業、先端産業による米国の電力需要増に原子力が果たす役割について議論された。
10 Jun 2026
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英ロールス・ロイスSMR社は5月27日、小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクト向けの原子炉設備(Nuclear Island)の主要機器のサプライヤーとして、チェコのシュコダ(Škoda)社と韓国の斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)社と契約したと発表した。原子炉圧力容器などの長納期機器の供給体制を早期に構築し、欧州におけるSMR事業の展開を加速する考えだ。ロールス・ロイスSMR社は、両社について、原子炉圧力容器をはじめとする原子炉設備の主要機器を世界各地の原子力発電所に供給してきた豊富な実績を有すると評価。重要機器の製造をスムーズに始められるよう、両社が設計から製造準備までを事前に進めることで、建設スケジュールの短縮につなげる方針である。同社はまた、これまでの原子力技術に加え、モジュール化や工場製造方式(ファクトリービルト)の活用により、原子力プロジェクトの進め方そのものを革新できると強調している。同社はまず、英国・北ウェールズのウィルヴァ(Wylfa)とチェコのテメリン原子力発電所サイトの隣接地へのSMR配備を計画。これらの事業を支える大規模なサプライチェーンの構築に向け、鍛造品メーカーなど幅広いサプライヤーの確保を進め、現地調達率の最大化を目指す方針だ。さらに将来的なグローバル展開も視野に、サプライチェーンの長期的なビジネス機会の拡大につなげたい考えである。同社のR. トッド・サプライチェーン担当ディレクターは、「原子力発電所建設において最重要となる長納期品目について、戦略的パートナーシップにより製造準備を前倒しできる。これにより、プロジェクトリスクを低減し、予定どおりの納入が可能になる」と述べ、今回の契約の意義を強調した。ロールス・ロイス社は2025年6月、英国初のSMR導入を目指す英政府から優先権者に選定され、同社製SMR(PWR, 47万kWe)×3基の建設を北ウェールズのウィルヴァで計画している。また、英政府系機関Great British Energy – Nuclear(GBE-N)と今年4月、SMR導入に向けた技術設計契約を締結している。さらに同月には、チェコ電力(ČEZ)とテメリン・サイトに隣接して建設するSMRプロジェクトの先行作業契約(Early Works Contract: EWC)を締結。サイト固有設計や許認可準備など、初期エンジニアリング作業を進めている。
09 Jun 2026
585

ウズベキスタン東部のジザク州ファリシュ地区で6月4日、ロシア国営原子力企業ロスアトムの協力により建設予定のロシア製小型モジュール炉(SMR)初号機が着工した。記念式典はウズベキスタンの建設現場とロシア・サンクトペテルブルク会場をオンラインで結んで開催。ロシアのサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに参加中の両国大統領の立会いの下、ウズベキスタン初となる原子力プラントの基礎工事となる初コンクリートが打設された。初打設では、133㎥のコンクリート混合土が流し込まれた。必要なコンクリート量の総体積は10,000㎥にのぼる。同国の産業・放射線・原子力安全委員会は6月4日、原子力庁(ウザトム, Uzatom)傘下の「原子力発電所建設総局」に対し、ロシア製SMR「RITM-200N」(PWR, 5.5万kWe)を採用した発電ユニットの建設許可を発給。それに先立ち、3月下旬にサイト許可が発給されている。当初、2024年5月の建設契約に基づき、RITM-200N×6基の建設を予定していたが、2025年9月、RITM-200N×2基ならびに大型炉VVER-1000×2基を建設する原子力発電所プロジェクトとし、同プロジェクトへの燃料供給も含めて合意された。低出力の先進炉と実績ある高出力の原子炉の両方が同サイトで稼働する。建設プロジェクトでは、資材供給、輸送などで地元の請負業者が施工に関与し、建設現場では15,000人の雇用が期待されている。全基稼働後には年間172億kWhを発電し、国内の電力需要の最大14%を賄う見込み。
08 Jun 2026
930

アルゼンチン原子力規制庁(ARN)は5月20日、国営原子力発電運転事業者のニュークリアエレクトリカ(Nucleoeléctrica, NA-SA)に対し、アトーチャ原子力発電所2号機(独シーメンス社製PHWR, 74.5万kWe)の運転期間を10年間延長し、2036年5月26日までの運転を認可した。アトーチャ2号機は2016年5月に営業運転を開始。2021年以降、支持構造物の不具合対応に伴い短期間の更新が繰り返されてきたが、今回初めて2036年までの10年間の長期運転認可を取得した。同国には、NA-SAが所有・運転する3つの原子炉があり、すべて加圧重水炉(PHWR)。ブエノスアイレス州リマ近郊にあるアトーチャ原子力発電所は独シーメンス製の2基構成で、1号機(36.2万kWe)は1974年に運転を開始した。現在、20年間の運転期間延長に向けて改修作業が進行中。コルドバ州では、エンバルセ発電所(加AECL製Candu-6, 65.6万kWe)が単機で1984年から運転中である。全3基でアルゼンチンの総発電電力量の約7%(2024年実績)を占めている。NA-SAは2022年2月、中国核工業集団(CNNC)とアトーチャ3号機に華龍一号(PWR=HPR1000, 120万kWe)採用のエンジニアリング・調達・建設(EPC)契約を締結した。契約規模は83億ドル。中国が85%を融資するが、アルゼンチンは中国に100%融資を求めて金融契約の合意に至らず、2023年10月、両者はEPC契約の有効期限を2025年4月とする契約延長を決定した。その後の計画は明らかではない。このほか、アトーチャ・サイトに隣接して、国産の小型モジュール炉(SMR)原型炉のCAREM25(PWR, 3.2万kWe)が2014年8月からCNEA(原子力委員会)によって建設中。原子力発電所の開発および運転開始における国内能力の強化を目指しており、資材、部品、および関連サービスの少なくとも70%を、自国企業から調達する。2019年に政府の支払遅延や設計変更等により工事は中断。2021年に新建設契約の締結により工事は再開され、2022年末時点で77%まで進捗していたが、その後設計見直しに伴い2024年9月から再び工事が停止している。2025年5月に開催されたCNEA創設75周年記念式典において、NA-SAのD. ライデル社長(当時)は、同国リオネグロ州政府所有のハイテク企業INVAPによる独自設計のSMR「ACR-300」(30万kWe)4基をアトーチャ・サイトに建設し、同国の原子力発電設備容量をほぼ倍増させ、さらに同炉を国外でライセンス供与する方針を示した。INVAPはビジネス機会の開拓と輸出を視野に2018年、米国特許商標庁へ同炉の特許を出願し、2024年に承認されているという。
08 Jun 2026
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は6月3日、カザフスタン共和国国立原子力センター(NNC RK)と、高速炉実証炉のシビアアクシデント対策に関する共同研究計画「EAGLE-4」の実施に向けた協力覚書を締結した。調印はカザフスタン・アルマトイ市で行われ、NNC RKのバティルベコフ総裁とJAEAの小口正範理事長が署名した。次世代革新炉の一つである高速炉の安全性強化に係る試験研究の推進が目的。両機関は2000年代初頭から20年以上にわたり、高速炉の炉心安全性試験「EAGLE計画」を進めてきた。これまで実施した第1期から第3期までの計画(EAGLE-1~3計画)では、シビアアクシデント(原子力施設の設計想定を大幅に超えて炉心の溶融などを伴う過酷な状態に至る事故)時に溶融した燃料が炉心から速やかに排出されることで事故の拡大を回避できることを、NNC RKが保有する試験用原子炉IGR(黒鉛減速型パルス型試験炉)を用いた実験により確認できたという。IGRを用いた試験では、シビアアクシデント時を模擬し、IGR炉心からの中性子照射により試験燃料を溶融させ、排出経路を通じて炉心外へ流出する現象を確認することで、安全機能の有効性を検証している。今回JAEAとNNC RKは、EAGLE-1~3計画に続く第4期目の共同研究計画(EAGLE-4)を実施することに合意し、高速炉の社会実装に向けた炉心安全性試験を着実に進めるために、今後、両機関の連携を一層深める方針だ。EAGLE-4では、試験用原子炉IGRとその関連施設を活用し、高速炉実証炉向けの炉心安全性試験を実施し、実証炉への導入が検討されている「溶融燃料排出機構」の有効性を裏付けるデータや知見の取得を目指す。今後、試験内容の詳細を定める実施取決めを締結し、共同研究を本格化させる方針だ。
18 Jun 2026
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福島県の内堀雅雄知事は6月9日、経済産業省を訪問し、「ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望」を赤沢亮正経済産業大臣に手交した。政府が2026年度からの5年間を「第3期復興・創生期間」と位置付ける中、福島第一原子力発電所の廃炉の着実な推進、帰還困難区域の復興と再生、県内の産業振興等について国の支援と取組みの強化を求めた。なお、今回の要望は、福島県が国に対して行っている復興・創生に関する総合的な要望活動の一環として実施されたもの。経済産業省だけでなく、復興庁ら他の関係省庁にも、さまざまな施策の推進や財源確保などを求めている。内堀知事は同要望書の中で、東京電力福島第一原子力発電所事故から15年が経過した現在も、約2万人の県民が避難生活を続けており、多くの課題を抱えていると指摘。また、人口減少や物価高騰への対応に加え、中東情勢の緊迫化に伴う燃料価格の上昇など全国的な課題にも直面しているとし、福島の復興・再生に向けた取組みを切れ目なく進める必要性を強調した。その上で、福島県の浜通り地域の産業基盤の再構築を目指す「福島イノベーション・コースト構想」の更なる推進に向けた支援継続を要望。さらに、今後5年間の「第3期復興・創生期間」は、避難者の帰還・移住促進や生活環境の整備、産業基盤の再生を一層進める重要な期間だと指摘したほか、これら期間が過ぎた後も、福島復興再生計画に基づく十分な財源の確保と制度的支援、地域の実情に応じたきめ細かな対応を求めた。 これに対し赤沢大臣は、「福島の復興はいまだ途上にある」とし、福島の復興と福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉を経済産業省の最重要課題として取り組んでいく考えを強調。今年3月には双葉町の帰還困難区域を視察した赤沢大臣は、「震災から15年近くが経過した今なお荒廃した農地が残る現状を確認した」と述べた上で、将来的には帰還困難区域全域の避難指示解除を目指し、復興・再生に取組む決意を示した。また、福島第一原子力発電所については、廃炉現場へのAIの導入など先端技術の活用を進め、「福島を我が国のAX(AIトランスフォーメーション)の始まりの地にしたい」との考えを明かした。
17 Jun 2026
381

日本原子力産業協会は6月12日、2026年度定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2025年度決算および事業計画、2026年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計318名の会員が出席した。新理事には三菱重工業の泉澤清次氏、丸紅の市ノ川覚氏、日本原燃の大柿一史氏、中部電力の豊田哲也氏、三菱原子燃料の大和矢秀成氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「国際的な地政学リスクが高まる中で、我が国では現在15基、約1,260万kWの原子力発電所が安定的に運転し、電力供給をしっかりと支えている事実は誇るべきことだ」と述べた。その上で、エネルギー安全保障や電力需要の観点から原子力の重要性が一層高まっているとして、業界一丸となって原子力の最大限活用に向けた施策に取組む必要性を強調した。三村会長は、原子力の最大限活用に向けた課題として、①事業予見性向上に向けた事業環境整備、②サプライチェーンの維持・強化と人材育成、③最終処分を含むバックエンド対策、④福島復興への継続的な取組み―の4点を挙げた。特に、先般の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で示された2040年代までに最大5基、2050年代までに最大14基の建て替え目標案に言及し、その早期具体化に期待を示した。また、安全で高品質なプラント建設を実現するためには、サプライチェーンの維持・強化と人材育成が不可欠だと強調。あわせて、日米間の戦略的エネルギープロジェクトに複数の原子力案件が盛り込まれたことに触れ、国内産業基盤や人材確保への波及効果にも期待を示した。さらに、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の竣工、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組みの重要性を強調した。また、福島復興への取組みについては、今年度の原産年次大会で若い世代から「廃炉は失敗の後始末ではなく、未来への責任をどう果たすかという挑戦だ」との発言があったことを紹介し、「新鮮な感動を覚えた」と述べた。その上で、「これからも福島とともにあり続け、地域の復興に貢献していく」と強調した。また、来賓として挨拶に立った清水真人文部科学大臣政務官は、次世代革新炉の研究開発や人材育成の推進について言及。日本原子力研究開発機構(JAEA)による革新軽水炉や小型モジュール炉(SMR)の安全性・経済性向上に向けた研究開発機能の強化や、ANEC(未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム)を中心とした人材育成機能の強化を進める考えを示した。一方、赤沢亮正経済産業大臣の挨拶を代読した資源エネルギー庁の龍﨑孝嗣次長は、人材育成や産業基盤強化、技術開発支援、海外展開の促進などを通じて次世代革新炉への建て替えや再稼働を後押ししていく考えを示した。また、若い世代の原子力分野への参画が重要との認識を示し、産業界と緊密に連携しながら原子力政策を着実に推進していく方針を示した。
16 Jun 2026
405

自民党の原子力規制に関する特別委員会は6月8日、「原子力安全規制・原子力防災の充実・強化等に関する提言(中間報告)2026」を取りまとめ、高市首相に提出した。今回の提言は①規制の合理化と改善、②将来を見据えた環境整備、③原子力防災と有事への備え④信頼確保・基盤強化――の4本柱と12の提言で構成。規制に関して、IAEAのIRRSでも指摘された、リスクや重要度に応じたグレーデッドアプローチを取り入れることや、リスク評価を踏まえた定期検査の間隔延長などが盛り込まれている。AI等新たな技術の活用の検討も進言した。小型モジュール炉(SMR)、高温ガス炉、高速炉などの次世代革新炉に対する安全審査や規制制度の予見性向上については、世界の開発動向を見ながら、事業者が開発・設計を進める上で必要な安全規制の考え方を、適切な時期に示すことを求めた。更に、原子力立地地域振興特措法の道路に対する補助率の問題について指摘。2018年の道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(道路財特法)改正により、一般道路に比した優遇措置が実質的に失われたため、避難道路整備への補助率引き上げを求めた。また、原子力専門人材育成の維持・強化を喫緊の課題とし、人材育成に関する政策が分野ごとに縦割りになっている現状を解消すべく、産官学全体での原子力人材育成を担う司令塔機能の整備や、長期的な人材確保策の策定を求めた。提言の最後では、2012年に設立された原子力規制委員会(規制委)のこれまでの努力を評価しつつ、世界情勢の変化から原子力の重要性がより一層高まる中、規制委・原子力規制庁ともに、設立当初の「信頼回復を最優先する行政組織」から「効率的かつ実効的な行政機関」へと進化すべき時期であるとした。
16 Jun 2026
901

原子力規制委員会(規制委)は6月5日、「令和7年度年次報告」を公開した。原子力規制委員会設置法第24条により、規制委は毎年、国会に所掌事務の処理状況の報告を行う義務がある。資料の中で規制委は、昨年度の活動を①独立性・中立性・透明性の確保と組織体制の充実、②原子力規制の厳正かつ適切な実施と技術基盤の強化、③核セキュリティ対策の推進と保障措置の着実な実施、④東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の安全確保と事故原因の究明、⑤放射線防護対策及び緊急時対応の的確な実施――の5項目に分けて報告。分かりやすい情報発信や双方向コミュニケーションの実施例として、美浜発電所および川内発電所の周辺地域住民との対話活動や山中委員長と福島県立安積高校の生徒との対話を紹介した。更に先日行われたIAEAによるIRRSミッションの報告についてまとめ、ミッションでも指摘されたグレーデッドアプローチ(施設や活動が持つリスクや安全上の重要度に応じて、規制や審査の程度を合理的に調整する考え方)に関して、原子力規制に適用するための討議や意見交換を行ってきたが、今後も引き続き検討を進めるとしている。福島第一発電所の廃炉については、これまでの10年以上の経験を審査効率化に繋げる取り組みを紹介し、改善を強調した。また、核融合発電の規制について、国内のみならず米国・フランスなどの海外の関係者とも意見を交換。トリチウムの「閉じ込め」機能について放射線影響を評価する考え方を検討。今後の開発の進捗に応じて意見交換などを行う。このほか、核物質防護への取り組みをより効果的・効率的なものにするための規制の見直しや、六ヶ所再処理施設およびMOX燃料加工施設を対象とした保障措置活動の検討、放射線モニタリングプラットフォームの運用開始なども報告されている。
15 Jun 2026
470

新潟県の花角英世知事は6月9日、経済産業省を訪問し、柏崎刈羽原子力発電所の安全対策の徹底と実効性ある原子力防災対策の構築などを求める要望書を、赤沢亮正経済産業大臣へ手交した。同要望は、新潟県が国に提出している2026年度の「政府に対する新潟県の要望」の一環。花角知事は冒頭、昨年12月に、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働同意の前提として国へ要請した7項目について改めて対応を求めた。要望書では、約14年ぶりに営業運転を再開した柏崎刈羽6号機の安全対策や原子力防災への県民理解は依然十分ではないと指摘。東京電力の信頼性確保や安全対策の徹底、防災対策の実効性の向上に向け、国の責任下で着実に対応するよう求めた。具体的には、原子力発電の必要性や安全性に関する分かりやすい情報発信の継続、安全性向上に向けた不断の取組み、避難計画の実効性向上などを要請。また、避難路の整備促進や除排雪体制の強化、屋内退避施設の整備促進など、原子力災害と自然災害の複合災害を見据えた防災インフラ整備の加速も求めた。そして、使用済み燃料対策や風評被害対策、原子力発電所への武力攻撃対策など県民の関心が高い課題についても、国が責任を持って取り組むよう要望。東京電力に設置された「監視強化チーム」についても、実効性ある運用と活動状況の周知を求めた。また、今年4月に「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」において、立地地域の指定範囲がUPZの市町村(柏崎市、刈羽村、長岡市、小千谷市、十日町市、見附市、燕市、上越市、出雲崎町)に拡大された一方で、財政上の特例措置が適用される特定事業の対象は未だ限定的であると指摘し、対象事業の拡充や財源確保を要請した。さらに、近年の豪雨災害の激甚化や複合災害リスクの高まりを踏まえ、防災・減災対策に加え、地域振興や産業基盤整備に対する支援の強化を求めた。これに対し赤沢大臣は、新潟県から示された7項目の要望を重く受け止め、関係省庁と連携しながら対応を進めていると説明。柏崎刈羽原子力発電所に関しては、政府の監視強化チームを通じて東京電力の取組状況を確認するとともに、地域への丁寧な説明を続ける考えを表明。あわせて、立地地域振興や避難路整備についても、関係省庁と連携しながら着実に進める方針を示した。さらに、自身が4月に柏崎刈羽原子力発電所を視察したことに触れ、「緊張感を持った訓練や高いレベルのセキュリティ対策を確認できた。原子力発電は安全確保と地域理解が大前提だ」と述べ、東京電力に対して継続的な信頼向上の取組みを求めた。
12 Jun 2026
501

福井県の石田嵩人知事は6月2日、経済産業省を訪問し、「令和9年度政府予算に対する要望書」を越智俊之経済産業大臣政務官に手交した。要望書では、全8項目のうちエネルギー政策・原子力分野に関する要望を2項目に盛り込み、第7次エネルギー基本計画に基づく原子力政策の着実な実行や将来像の明確化、エネルギー教育の推進、原子力発電所立地地域の振興、使用済み燃料対策や原子燃料サイクルの推進などを求めた。また同要望書には、「もんじゅ」の廃止措置を契機に敦賀エリアを原子力研究・人材育成の拠点として発展させるため、新試験研究炉の早期整備や研究開発・人材育成基盤の維持強化についても言及。新試験研究炉を軸とした同地域の活性化へつなげていく考えを示した。福井県は15基(7基が運転中、7基が廃止措置中、1基が停止中)の原子炉が立地する全国有数の原子力発電所立地地域であり、原子力政策の動向が同県の地域経済や産業基盤に大きく影響することから、これまでも国に対し、継続的な要望を行ってきた。石田知事は4月に赤沢亮正経済産業大臣へ要望書を手交した際も、半世紀以上にわたり国策である原子力政策に積極的に協力してきた県の首長として、現場の声や課題を踏まえたエネルギー政策の推進を要望していた。また石田知事は、会談の公開部分で、政府が進める地域未来戦略の推進に向けた産業人材の育成・確保や産業クラスター形成への支援を要請したほか、中東情勢の影響による燃料費や原材料価格の高騰への継続的な支援を国に求めた。これに対し越智政務官は、地域未来戦略について、関係省庁と連携しながら投資促進策とインフラ整備を一体的に進め、地域全体の発展につながる施策を推進していく考えを示した。また、中東情勢への対応については、燃料価格高騰対策を継続しながら、原材料調達やサプライチェーンへの影響も注視し、引き続き必要な支援に取り組む考えを示した。
11 Jun 2026
584

東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が6月9日、再稼働後初の定期検査を完了し、営業運転を再開した。同機は2024年11月に再稼働(発電再開)し、同年12月に営業運転に復帰していた。定期検査は今年1月14日から行われ、発電を停止して原子炉本体、原子炉冷却系統施設、原子炉格納施設などの点検に加え、燃料集合体や制御棒の一部取替えを行った。同機は1995年7月に営業運転を開始。2010年10月に定期検査入りし、2011年3月の東日本大震災により起動作業中のところ、自動停止した。2013年12月に新規制基準適合性に係る審査を申請し、2020年2月に原子炉設置変更許可を取得。2024年5月の安全対策工事完了を経て、同年11月に新規制基準施行後初のBWRとして発電を再開し、同年12月から営業運転を再開した。特定重大事故等対処施設(特重施設)などの設置期限が、現行制度では本体施設の「設計及び工事の計画認可(設工認)」取得日から5年以内とされている。同機は期限の2026年12月までに特重施設の設置が間に合わず、東北電力が完成を見込む2028年8月まで再度運転停止を余儀なくされる状況にあった。しかし、原子力規制委員会による規則改正が現在進んでおり、改正されれば、設置期限は2029年12月となるため、次回の定期検査が始まる2027年6月頃まで運転を継続できる見通しだ。
10 Jun 2026
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経済産業省・資源エネルギー庁の原子力小委員会は6月5日、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の改定案を議論。改定案では、既設炉の運転終了を見据え、2040年代までに大型炉約2~5基分、2050年代までに同約11~14基分の建て替え需要が生じるとの試算を提示した。既存炉の活用だけでは2040年以降に供給力の大幅な低下が見込まれることから、改定案では原子力発電の見通しや将来像を新たに前段に位置づけ、原子力産業界における長期的な投資判断や人材確保、サプライチェーンの維持・強化に向けた事業予見性の向上を図った。同改定案では、原子力発電が2040年代から2050年代にかけて総発電電力量の約20%を担うケースを前提に、必要な設備容量を試算。その場合、2040年代までに約220万~550万kW(約2基~5基)、2050年代までに累計約1,270万~1,600万kW(約11基~14基)分が不足する見込みだという。なお、建て替え基数は大型炉換算で算出しており、SMRの場合はさらに必要な基数が増加する。また、試算には建設中の3基(大間、島根3号機、東京・東通1号機)を含む一方、電気事業法に基づく運転延長認可制度は考慮しておらず、年途中で運転開始から60年を迎えるプラントについては、当該年の設備容量に含めていない。改定案では、行動指針の6本柱という基本構造は維持しながらも、再稼働が一定程度進捗してきたことを受け、原子力の長期利用を前提とした構成へ見直した。具体的には、「原子力を長期的に活用していく上での大前提」を新たな柱として設けるとともに、再稼働関連施策を「再稼働の加速・既設炉の最大限活用」に集約。さらに、次世代革新炉の開発・設置や、バックエンドプロセスの加速化、サプライチェーン・人材基盤の維持強化などを明記している。各委員からは、原子力発電の見通し・将来像を具体的に示した点を評価する意見が相次いだ一方、ファイナンス支援の具体化やバックエンド施策、燃料サプライチェーン整備、人材・技術継承等について、さらなる検討を求める意見も出された。バックエンド分野では、竹下委員(東京科学大学)が同改定案を評価した上で、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の本格稼働を見据えた保障措置体制の強化を要望。併せて、プルトニウム管理や核燃料サイクルの実効性向上、ウラン燃料供給の安定化に向けた国内基盤整備の必要性を指摘した。また、水田専門委員(関西電力/電気事業連合会)は、中長期的な原子力の将来像や見通しが具体化されたことについて、「事業予見性の向上や業界の活性化、技術継承、人材確保の好循環につながる」と評価。その上で、次世代革新炉の開発・建設を着実に進めるための事業環境整備の継続的な見直し、また、バックエンドを含む人材・サプライチェーン基盤の強化を着実に進める必要性を訴えた。そして、日本原子力産業協会の増井理事長(専門委員)は、同改定案について「原子力産業を巡る現状や本委員会での議論を踏まえ、適切に取りまとめられている」と評価。特に、2040年と2050年を見据えた原子力発電の見通し・将来像が示されたことについて、「産業界として未来への希望と長期的な展望を持つことができる」と述べた。あわせて、日米間で検討が進む大型原子力案件は日本企業にとって大きな機会になるとの認識を示す一方、過度な負担が生じないよう政府の適切な対応を求めた。また、同志国との連携やサプライチェーン強化など国際協力の重要性を強調し、原子力国際協力センター(JICC)等と連携し、海外産業界との連携強化に引き続き取り組む考えを示した。
09 Jun 2026
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原子力規制委員会は6月4日、特定重大事故等対処施設(特重施設)および所内常設直流電源設備(3系統目)の設置期限に関する規則改正案を公表。パブリックコメントの募集を開始した。特重施設は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故後に導入された新規制基準に基づき整備が求められている施設で、航空機衝突やテロ攻撃などによって原子炉の制御機能が失われた場合でも、炉心損傷や放射性物質の大量放出を防ぐためのバックアップ機能を担う。現行制度では、特重施設などの設置期限は、本体施設の「設計及び工事の計画認可(設工認)」取得日から5年以内とされている。しかし、実際には設工認取得から運転開始までに長期間を要するケースが多く、規制委によると5年以内の完成が困難となる事例が相次いでいる。改正案では、この5年間の経過措置期間の起算点を、現行の設工認認可日から「使用前確認日」に変更する。規制委は、5年間という猶予期間そのものは維持しつつ、実際の運転開始時期に合わせた制度へ見直すとしている。安全面について規制委は、使用前確認が行われる時点では原子炉内の使用済み燃料が十分に冷却されており、特重施設が必要となるような事態が発生する可能性は低いと説明。現行制度と比較しても安全上の大きな差異はないとしている。今回の改正案は、現時点で経過措置期間が満了していない実用炉が対象となる。このため、すでに期限を迎えている柏崎刈羽7号機や東海第二は対象外となる。一方、大間、島根3号機、東京・東通1号機など建設中のプラントについては、施設全体の使用前確認日が起算点となる。規制委は4月、現在経過措置期間中にある女川2号機と島根2号機を有する、東北電力と中国電力からヒアリングを行った。両社は、制度改正が行われた場合でも特重施設の早期完成に向けて取り組む方針を示しているという。パブリックコメントはwebか郵送で受け付けており、募集期間は7月3日まで。
08 Jun 2026
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原子力・放射線利用分野で働く女性で構成される「WiN-Japan」の2026年度総会・年次大会が5月29日、都内で開催された。総会には約100名が出席し、最新の会員動向と2025年度の活動・収支報告、そして2026年度の活動計画と予算案、また、役員改選などを行った。総会後に開かれた年次大会では、「原子力とともに拓く、私たちのキャリアと挑戦」をテーマに、女性活躍やジェンダーバランスの向上をテーマとした講演や意見交換が行われ、参加者が今後のキャリア形成について考える場となった。WiN-Japanは、「原子力の価値向上」「原子力専門家としてのネットワーク構築」「原子力分野におけるジェンダーバランスの向上」の3つを柱に活動している団体で、「WiN Global」の日本支部に該当する。WiN Globalは世界各地に約80の支部、約35,000名の会員を擁する団体で、原子力産業界、規制当局、医療機関、大学、研究機関など、原子力や放射線に関わる幅広い分野で専門的に活動する女性によって構成されている。総会の冒頭、WiN-Japanの石橋すおみ会長(電気事業連合会広報部部長)は、3月30日から4月3日の日程で韓国・慶州にて開催された直近のWiN Globalの年次大会への参加を報告。同大会でWiN Globalのメリーナ・ベリンコ会長が「原子力業界の未来はイノベーションだけでなく、社会との信頼を築く能力にかかっている。だからこそWiNが必要とされている」と発言したことを紹介し、石橋会長は「この言葉に深く共感した」と語った。その上で、WiN-Japanとしても原子力分野における女性活躍の推進や社会との対話を通じた信頼醸成に、引き続き取り組んでいく考えを示した。来賓として出席した国民民主党の竹詰仁参議院議員(エネルギー調査会長)は、国民民主党が原子力発電所のリプレースや新増設、次世代革新炉の開発推進を掲げていることに触れ、「原子力に携わる皆さんには誇りを持ってほしい」と激励。「原子力を応援する立場として、今後も皆さんとともに学び、支えていきたい」と述べ、WiN-Japan会員らにエールを送った。続く年次大会の冒頭、原子力発電環境整備機構(NUMO)の山口彰理事長が登壇し、原子力分野における女性活躍の重要性に言及。「多様な考え方やバックグラウンドを持つ人々がともに働くことが、より良い技術や組織につながる」と述べ、WiN-Japanの活動にさらなる期待を寄せた。その後の基調講演では、文部科学省原子力課長の有林浩二氏が「文部科学省のリケジョ支援策から考える今後の原子力人材育成」と題して講演し、女子中高生の理系進学支援や原子力人材育成に向けた文部科学省の取り組み等を紹介したほか、産学官が連携した人材育成の重要性を強調した。また、原子力分野における女性人材の確保・育成のあり方について問題提起し、参加者との活発な意見交換を行った。続いて、関西電力執行役常務の野地小百合氏は、「多様な視点が、組織の判断を変える~女性活躍の本当の意味」と題して講演を行い、同業界が抱える女性活躍を阻む構造的な課題にも触れながら、多様な視点を生かした組織変革の必要性を訴えた。
05 Jun 2026
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6月5日に開催された総合資源エネルギー調査会・原子力小委員会において、朝野賢司委員(電力中央研究所 社会経済研究所 副研究参事)は、経済産業省が示した「今後の原子力政策の方向性と行動指針」改定案について、事業環境整備の具体化を歓迎する一方、「なお不十分」と指摘。自由化された電力市場では、原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であり、民間企業の投資判断を後押しするためには、国によるリスク分担の明確化が必要との考えを示した。朝野委員はまず、行動指針案について、原子力投資に伴うリスク要因を明確に整理したことや、事業環境整備を政策の柱として位置付けたことを評価した。具体的には、初期投資負担の大きさやリードタイムの長期化、市場価格変動による収入見通しの不確実性、バックエンドや許認可に関するリスクなどが明記されたことを評価。また、長期脱炭素電源オークションの改善に加え、英国サイズウェルC建設プロジェクト(SZC)で導入された規制資産ベース(RAB)モデルの教訓、原子力損害賠償制度の見直し、地元合意形成や許認可手続きの円滑化などが盛り込まれたことについても、「これまでの小委員会での議論を受け止めた内容」と述べた。一方で、将来像として示された原子力利用の見通しを実現するための事業環境整備としては、なお不十分との認識を示した。朝野委員は、政府の信用力を活用した融資制度の検討は重要としながらも、「借入を増やすだけでは原子力への投資判断には足りない」と指摘。その理由として、自由化された電力市場において原子力発電は「発電事業者にとって我が国における最大級のリスク資産」であると説明した。具体的には、1兆円を超える初期投資、10年以上に及ぶ建設期間、運転開始まで収益を生まない事業構造に加え、規制変更に伴う追加投資、バックエンド対策、原子力損害賠償制度、地域合意形成など、多様なリスクが重層的に存在すると指摘。「他産業を見渡しても、これほど巨大かつ長期にわたり、政治・社会・技術のリスクが一体となった資産はほとんどない」と述べた。さらに、こうしたリスクに見合う収益を市場で確保することが難しい点も問題視した。電力市場では電気は電源を問わずすべて同質の商品として取引されるため、原子力特有のリスクを、販売価格へ反映させることが困難であると説明。脱炭素の価値や容量としての価値の評価制度は存在するものの、「原子力特有の巨大なリスクを十分に価格化できているわけではない」と指摘した。その結果として、「発電事業者が競争環境の中で自社のバランスシートにこうしたリスクを抱え込む動機は極めて乏しい」ことから、むしろ投資を見送る方が、取締役会や株式市場に対して合理的に説明しやすい状況にあるとの見方を示した。また朝野委員は、エネルギー安全保障や脱炭素、電力システムの強靱化、経済安全保障といった公益的価値が原子力に期待されている一方で、それらの価値を事業者の収益として十分に評価されていないことが問題の本質であると指摘。「公益的には必要だが、民間企業の投資対象としては合理的な投資判断を行いにくい。このギャップを埋めることこそ事業環境整備の核心だ」と強調した。その上で、必要なのは旧来の総括原価方式への回帰ではなく、「民間の事業者にとって原子力を、巨大なリスク資産として放置するのではなく、エネルギー安全保障や脱炭素、レジリエンス、経済安全保障に資する国家インフラ資産として位置付け直す制度設計」であると提言。建設期間中の費用回収や規制変更リスク、バックエンド対策、原子力損害賠償法など、民間では負いきれないリスクについては、一定の範囲を超えた部分を、国が引き受ける仕組みを明確化すべきとの考えを示した。そして、「原子力を含む大規模かつ安定的な電源については、民間企業に使命感で投資を求めるのではなく、投資することが合理的だと説明できる制度を整えることが重要だ」と述べた。 ※同小委会合については、後日詳報
05 Jun 2026
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