海外NEWS
26 Jul 2024
221
フランス 極低レベル廃棄物処分場の処分容量拡大
国内NEWS
26 Jul 2024
263
東京電力が新橋で水産物のPR 今日まで
海外NEWS
26 Jul 2024
265
米国 TRISO製造をワイオミング州も計画
海外NEWS
24 Jul 2024
686
ロシア BN-800にMA含有MOX燃料を初装荷
国内NEWS
24 Jul 2024
639
総合エネ調 安定供給と火力の脱炭素化で議論
海外NEWS
24 Jul 2024
672
インドが国産SMRを開発へ 民間も参入可能に
海外NEWS
23 Jul 2024
705
米ミシガン大学 石炭火力から原子力への移行をレビュー
国内NEWS
23 Jul 2024
896
総合エネ調 発電コストの検証開始
フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は7月12日、極低レベル放射性廃棄物(VLLW)処分施設(CIRES)の処分容量拡大認可を地元であるオーブ県から取得した。CIRESは、フランス北東部のオーブ県モルヴィリエに立地し、2003年に操業を開始。原子力施設の解体や、低レベルの放射性物質を扱う非原子力サイトで発生した廃棄物、放射性物質で汚染されたサイトの除染により発生した廃棄物を処分する。今回の認可により、処分面積を増やすことなく、当初認可された処分容量65万m3を95万m3に拡大する。CIRESは、同じくANDRAが管理運営する、オーブ低中レベル放射性廃棄物処分場(CSA)に近接。CSAは原子力発電所と同様、原子力施設に分類され、原子力安全規制当局(ASN)による規制の対象である。一方、CIRESのようなVLLW処分場は、廃棄物の放射能レベルが低いため、原子力施設ではなく環境保護指定施設となり、県知事の委任により地域圏環境・整備・住宅局(DREAL)が建設及び操業に係る許認可や規制を実施する。県知事による認可決定にあたっては、環境庁を含む関係省庁による審査、一般市民と地元当局が参加する共同調査も実施されている。CIRESのサイト面積は46 ha。3つの処分エリア(第1、2、3トレンチ)でのVLLW受入を設計し、認可された。毎年、約3万m3のVLLWが粘土質状の土壌に掘られたトレンチに処分され、第1トレンチはすでに満杯。2023年末までに処分量は、全体の許容量である65万m3の72%に達している。今後数年間の搬入予測によると、2028年~2029年頃には許容量に達する。国の放射性物質・廃棄物管理計画のもとで、代替の管理方法が検討されているとしても更なる処分容量が必要となる。ANDRAが発表した放射性物質・廃棄物国家目録では、現在稼働中の原子力施設の解体中に、210万m3~230万m3のVLLWの発生が予測されている。これを受け、ANDRAは2023年4月上旬、オーブ県に処分容量の拡大を申請。第3トレンチの開発と設備工事費用は、2,100万ユーロ(35億円)と見積もられている。2025年4月から作業を開始し、第2トレンチの運用が終了する前、2028年には最初のセルの運用を開始したい考えだ。
26 Jul 2024
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米国のワイオミング州エネルギー公社は7月18日、同州でのTRISO燃料製造施設の立地評価に向けて、BWXテクノロジーズ(BWXT)社の子会社であるBWXTアドバンスド・テクノロジーズ社と協力協定を締結した。今後、約1年半かけて、州内の建設候補地や施設の設計、コスト、人材、サプライチェーン、許認可などの観点から、立地評価を実施する予定。ワイオミング州は米国最大のウラン埋蔵量を誇り、今年3月には米ウル・エナジー社が同州に、新たにシャーリー・ベイスン鉱山の建設を決定。また2022年に同州隣接するアイダホ州のアイダホ国立研究所(INL)と先進的原子力技術の開発等に関する覚書を締結しており、原子力分野に力を入れている。今回の協力協定について、同州のM. ゴードン知事は、「原子力は、ワイオミングのエネルギー・ポートフォリオの中核。ワイオミング州で採掘されたウランを、ワイオミング州で加工し、ワイオミング州で使用することができる。いわば三位一体の構造だ」と強調した。BWXT社とワイオミング州は、2023年から同州でのBWXT社製マイクロ原子炉「BANR」(HTGR、1,000~5,000kWe)の建設、配備に向けた実行可能性を検討中だ。両者は今年6月に、BANR導入実現に向けた可能性評価に関する新たな契約を締結、7月にはBWXT社がBANRの設計、システム開発および周辺機器などで、カンザス州の建設会社バーンズ&マクドネル社と協力協定を締結している。 BWXT社は2022年12月、国防総省(DOD)が軍事用に建設を計画している米国初の可搬式マイクロ原子炉用の燃料として、TRISOの製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始した。HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を3重に被覆した粒子燃料であるTRISO燃料について、米エネルギー省(DOE)は高温に耐え、腐食に強いTRISOを「地球上で最も堅牢な核燃料」と高く評価している。なお、現在テネシー州で計画されている米Xエナジー社のTRISO燃料工場建設プロジェクトを対象に、1億4,850万ドル(約230億円)の連邦税額控除の適用が今年4月に明らかになっている。
26 Jul 2024
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ロシア国営原子力企業のロスアトムは7月10日、ベロヤルスク原子力発電所4号機(FBR=BN-800、88.5万kWe)に、マイナーアクチノイド(MA)を含むMOX燃料の先行試験用の燃料集合体を初装荷したことを明らかにした。試験用の燃料集合体3体は、クラスノヤルスク地方にある鉱業化学コンビナートで2023年12月に製造された。燃料集合体には、原子炉の使用済み燃料内の最も放射性毒性の強い長寿命のMAであるアメリシウム241とネプツニウム237を含み、約1年半をかけて、通常より短い3サイクルで燃焼させる。「MAの消滅は高速炉の利点であり、燃料サイクルの全体のインフラで放射性廃棄物の量を減らすことが可能」と、ベロヤルスク発電所のI. シドロフ所長は強調する。MAを含むMOX燃料製造技術は、ロスアトムの燃料部門であるTVEL社が開発。TVEL社のA.ウグリュモフ研究開発担当上級副社長は「MAを再燃焼する高速炉燃料の使用は、世界の原子力産業界にとって新たな試み。MOX燃料は燃料供給ストックの基盤を拡大し、使用済み燃料の再利用により、放射性廃棄物を減容する。さらにMAを燃焼させることで廃棄物の放射能を大幅に減らし、将来的には地表面近くでの処分を可能にする」と指摘する。ロスアトムの原子力発電部門、ロスエネルゴアトム社のA. シュティコフ社長は、「高速炉は、濃縮ウランだけでなく、劣化ウランや使用済み燃料から取出したプルトニウムなどの核燃料サイクルの二次生成物を燃料とすることができる。高速炉でのMAの燃焼は、クローズド・サイクルを堅持する、ロシア原子力産業の次なるステップ。現在、ベロヤルスク3号機(BN-600)及び4号機の高速炉の運転経験に基づき、ベロヤルスク発電所では、後続の5号機として建設予定の第4世代の高速炉『BN-1200M』の事前設計開発作業が進行中。原料としてのウランのエネルギーポテンシャルを最大限に活用し、高いレベルの安全性を有する」とコメントした。また、ロスアトムはトムスク州のセベルスク市で、オンサイトのクローズド・サイクルの確立を目的に、第4世代の鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」(30万kWe)、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料製造モジュール、使用済み燃料の再処理モジュールを含む、パイロット実証エネルギー複合施設(ODEK)を建設中だ。
24 Jul 2024
686
インドのN. シタラマン財務大臣は7月23日、2024年度(2024年4月~2025年3月)予算を発表し、そのなかで、同国のエネルギーミックスにおける原子力シェアの拡大に向け、民間部門と提携して、小型炉の設置や小型モジュール炉(SMR)の研究開発等を支援していく方針を明らかにした。インドで、原子力プロジェクトに民間の参入を認める方針が示されたのは今回が初めて。発表資料によると、原子力は、N. モディ首相が掲げる「先進インド構想(ヴィクシット・バーラト)」に向けた、エネルギーミックスの土台となっている。今後、政府は民間部門と提携し、研究・イノベーションのために新たに設けられた1兆ルピー(約1兆8,500億円)の研究開発資金を活用して、①バーラト小型炉(PHWR)の設置、②バーラトSMR(BSMR)の研究開発、③原子力に関する新技術の研究開発――を推進していく方針だ。原子力など科学技術を担当するJ.シン閣外専管大臣は2023年8月、議会下院における答弁の中で、政府が海外との協力やSMRの自主開発の選択肢を模索しているほか、民間部門の参入を可能にするため、1962年原子力法の改正を検討中と答弁していた(既報)。1962年原子力法は、民間部門が原子力発電に参加することを認めておらず、これまでインドの商用原子力発電所を所有、運転するインド原子力発電公社(NPCIL)と提携が許されていたのは、インド国営火力発電公社(NTPC)といった政府系公社だけだった。今回、民間部門の提携が認められたことで、新規原子力発電所の資金調達に新しい道が開かれることになる。日本原子力産業協会の調査によると、インドでは2024年1月1日現在、23基・748.0万kWが運転中で、10基・800.0万kWが建設中(このうち、カクラパー4号機が2024年3月31日に営業運転を開始している)。インド原子力省(DAE)は、原子力発電設備容量を2031年までに2,248万kWに増強する目標を設定している。インドはまた、2024年3月、同国南部のタミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初の高速増殖原型炉「PFBR」(50.0万kW)で、モディ首相立ち合いの下、燃料装荷を開始している(既報)。
24 Jul 2024
672
米ミシガン大学の研究者らは7月9日、米国で稼働中の245基の石炭火力発電所(CPP)を先進的な原子炉に移行する実現可能性を格付けした研究評価を発表した。この研究は、米エネルギー省(DOE)原子力局の原子力大学プログラムを通じた資金提供によるもの。米国で大幅な脱炭素化を実現するには、クリーンエネルギーの急速な展開が不可欠。米国では温室効果ガス排出の主要因であるCPPの新たな建設計画はなく、多くの電力会社が今後15年以内にすべてのCPPの廃止を目指している。米国のCPPは2022年時点で発電電力量の20%、電力部門のCO2排出量の55%を占める一方、原子力発電はCPPと同様に安定したベースロードの電力供給が可能で、CO2排出量はゼロ。新規で原子力発電所を建設するよりも、既存のCPPを原子力発電所へ移行する方が、送電線や発電システム設備などの既存インフラを活用できるため、時間とコストを節約でき、またCPPの廃止に伴う雇用と税収の減少を防ぐメリットがある。そのため、ミシガン大学の研究チームは、先進原子力開発のための立地ツール(Siting Tool for Advanced Nuclear Development:STAND)を用いて、米国における石炭から原子力への移行(C2N)の可能性を体系的に評価した。但し、立地の許認可に必要となる詳細なサイト調査や環境評価は考慮されていない。同チームは対象となるCPPを、設備容量に基づき、2グループ(100万kWe以上とそれ以下)に分類。先進的な原子炉についても、マイクロ炉、中型炉、小型モジュール炉(SMR)などに分類した上でツールを運用した。その結果、設備容量が小さいグループ(100万kWe以下)の実現可能性スコアは100点満点中51.52点から84.31点の範囲にあり、中央値は66.53点。設備容量が大きいグループ(100万kWe以上)の実現可能性スコアは47.29点から76.92点の範囲にあり、中央値は63.97点だ。なお、エネルギー価格や原子力政策などの地域的特性は、適合性に大きな影響を与えたという。
23 Jul 2024
705
中国東北部の遼寧省で7月17日、中国核工業集団公司(CNNC)の徐大堡原子力発電所2号機(PWR=CAP1000、129.1万kWe)が着工した。徐大堡(Xudabao)原子力発電所は、遼寧省最大のクリーンプロジェクトの1つ。1、2号機は、米ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」の中国版標準炉モデルである「CAP1000」を採用している。1号機(125.3万kWe)は2023年11月に着工した。両機の投資総額は480億元(約1兆円)を超え、それぞれ2028年と2029年に運転を開始する予定だ。3、4号機は、ロシア型PWRである「VVER-1200」(各127.4万kWe)を採用し、それぞれ2021年、2022年に着工済み。両機とも設備設置段階に入り、2027年と2028年の運転を開始予定だ。全4基合わせて、年間約360億kWhの発電電力量が予想されている。
22 Jul 2024
598
ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は7月上旬、新たに国内3か所の自治体と、小型モジュール炉(SMR)の立地可能性調査に関する協力で合意した。ノルスク社は7月8日、ノルウェー南部のアグデル(Agdel)県リュングダール(Lyngdal)自治体とSMR立地可能性を調査するため協力合意を締結した。リュングダールは、地域貿易の中心地であり、国内有数の産業や企業も多い。U. フソイ同自治体首長は「議会が全会一致で協力合意への締結に賛成した。産業界および消費者は、安定して、手頃な価格の電力供給を必要としている。土地の所有面積が少なく、温室効果ガスの排出が少ないエネルギー源である原子力に依存したい」と述べ、今後の調査への期待を示した。なおノルスク社は、7月4日には、同アグデル(Agdel)県のファーサンド(Farsund)自治体とSMR立地の可能性に関する初期調査を共同で実施する協力合意を締結している。同自治体では、電力集約型産業やエンジニアリング産業などで、大量の電力需要が見込まれる。I.ウィリアムセン同自治体首長は「原子力発電所立地の可能性調査の実施について、ファーサンドの幅広い政治的多数の賛成を得た。ファースンが原子力発電の適地となれば喜ばしい」と語った。また同社は、7月1日には、ノルウェー南西部のルーガラン(Rogaland)県ルンド(Lund)自治体と、原子力発電所立地に関する調査の協力合意を締結。同自治体では、持続可能な産業計画による電力需要の大幅増加が見込まれ、G. ヘレランド同自治体首長は「本合意により、SMR建設の適切なサイトの特定や影響評価の開始など、当自治体における原子力発電の実現に向けた一歩となりうる」と評価した。ノルスク社は、ノルウェー国内の複数の自治体や電力集約型産業と連携したSMRの立地可能性調査を実施し、SMRの建設・運転を目指している。同社のJ. ヘストハンマルCEOは、SMRをノルウェー国内に大規模導入させたい考えだ。同CEOによると、国内では原子力発電導入に向けた調査に率先して取組む自治体の数が急速に増加しているという。また、ノルスク社が40%出資するハルデン・シャーナクラフト社がこのほど発表した報告によると、SMR×4基構成の発電所の発電電力量は、年間100億kWhであり、これは、ノルウェーの総発電電力量の約7%に相当し、約400人もの雇用を生み出すという。
22 Jul 2024
534
チェコ政府は7月17日、新規原子力発電プラント建設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を、韓国水力・原子力会社(KHNP)に与えると決定した。検討対象となるプロジェクトは、ドコバニ発電所5、6号機増設のほか、テメリン発電所3、4号機増設で、フランス電力(EDF)とKHNPの2社が入札していた。ドコバニ発電所の増設契約の締結は来年第1四半期中を予定し、2029年までに建設許可を取得、2036年末までに試運転を開始、2038年に営業運転を開始させたい考えだ。今回の決定を受け、チェコのP. フィアラ首相は、「チェコは、可能な限りエネルギー自給率を高め、手頃な価格でエネルギー安全保障を達成することを目指している。増設プロジェクトは、チェコの質の高い生活、繁栄、競争力向上を約束するものだ。KHNPの提案は、これらの条件を満たすと同時に、チェコの産業界がプロジェクトに約60%関与し、経済発展に大きな弾みをつけるものとなる」とコメントしている。2社の入札評価には、国際原子力機関(IAEA)の評価モデルの勧告に従い、約200人の専門家が携わり、メガワット時あたりの電力価格を比較評価。同サイトに同時に2基を建設する場合、総事業費は1基あたり推定約2,000億コルナ(1.35兆円)となると試算されている。Z. スタニュラ財務相は、「現在、原子力発電はチェコの電力消費の3分の1以上を賄っているが、将来的には50%まで高めたい。また、既存のサイトに2基増設するとの選択肢は、作業の多くを2度行う必要がなく、スケールメリットを得られ、1基あたり約20%のコスト削減が可能。増設への投資はさらなる投資を生み、チェコ経済に3倍になって戻ってくるという試算結果もある。熟練した雇用創出も国家財政にとり不可欠な収入源になる」と言及した。ドコバニ発電所5号機増設の入札は2022年3月に開始され、同年11月末にEDF、KHNP、米ウェスチングハウス(WE)社は、最初の入札文書(ドコバニ5号機の増設、追加の3基:ドコバニ6号機とテメリン3、4号機の拘束力のない増設提案)を提出した。2024年1月末、政府は追加の3基も拘束力のある入札への変更を決定。WE社を除く、2社(EDFとKHNP)を入札に招聘した。同2社による応札を経て、ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)は6月中旬、優先交渉権を得るサプライヤーに関する政府の最終決定のベースとなる評価報告書を産業貿易省に提出していた。KHNPにとって、欧州では初めての建設契約となる。同社のJ. ファンCEOは、今回の選定は、国内外での原子力発電所建設プロジェクトにおける能力が評価されたものとし、「原子力事業は、建設から運転まで100年にわたる長期協力」と語った。なお、建設プロジェクトへのチェコ企業の関与はKHNPの最優先課題の一つであり、すでに200社以上の潜在的なチェコのサプライヤーを特定し、将来の協力を念頭に、76もの覚書を締結しているという。KHNPは、引き続きチェコ産業の現地化の期待に応えるために尽力するとしている。
19 Jul 2024
669
フランスとイタリアの産学が7月16日、原子力分野での研究活動および人材育成に関する協力協定を締結した。締結したのはフランス電力(EDF)のイタリア法人であるエジソン社、仏フラマトム社、イタリアのミラノ工科大学の3者。ノウハウを共有し、原子力分野の研究開発を共同で進める方針だ。今回の協定では、インターンシップや修士および博士号論文の作成協力、セミナー、ワークショップ等の取り組みを通して、共同プロジェクトを推進することが規定されているほか、学生や社員によるフラマトム社の生産拠点やミラノ工科大学、エジソン社の研究室への相互訪問も可能となっている。今回、協力協定を締結したミラノ工科大学は、1950年代から原子力分野の教育と研究を開始したイタリア初の国立大学。同大学のM. リコッティ教授(原子力工学)によると、同大学では至近5年間で、原子力分野を専攻する学生が3倍に増えたという。今回の協力協定について、エジソン社のL. モットゥーラ副社長(人材戦略、イノベーション、研究開発、デジタル担当)は、学生が企業に直接アクセスし、交流できるメリットを強調、「イタリアにおける新規の原子力発電に必要な専門知識向上に向けた新たな一歩となる」と期待を寄せた。1990年に脱原子力を達成したイタリアだが、近年のエネルギー危機や脱炭素の風潮の中で、現在のメローニ政権は原子力発電再開の検討を本格化させるなど、原子力に対して前向きな姿勢を見せている。7月1日にイタリア政府は、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)を提出、同計画には原子力発電再開を想定したシナリオが盛り込まれており、原子力再導入の将来的な可能性を見据えている(既報)。
19 Jul 2024
562
南アフリカの国営電力会社であるエスコム(Eskom)は7月15日、同社のクバーグ原子力発電所1号機(PWR、97万kWe)の運転を2044年7月21日までさらに20年間延長する認可を国家原子力規制委員会(NNR)から取得したと発表した。クバーグ2号機(PWR、97万kWe)についても現在、NNRは20年間の運転期間延長に係る申請を審査中だが、同機の運転認可期限である2025年11月9日前にも、運転期間延長に関する決定を行う見込み。なお、エスコムは2021年、両機の運転期間を20年延長する申請書をNNRに提出していた。クバーグ発電所は現在、アフリカ大陸で唯一稼働する発電所。同1、2号機は1984年と1985年にそれぞれ運転を開始。2019年、国のエネルギー・インフラ開発計画である統合資源計画(Integrated Resource Plan: IRP)で2024/2025年以降、エネルギー供給を引き続き継続するため運転期間を延長する方針が示されたこと受け、エスコムは各機で蒸気発生器3台の取替作業を含む、運転期間延長に向けた作業を重点的に進めてきた。エスコムは今回の認可を受け、クバーグ発電所を40年間にわたり安全に運転し、今後も安全運転の継続を確実にするため、安全性の向上と広範なメンテナンスにこれまで投資してきたことに言及。同社のK.フェザーストーン原子力部門責任者は、「クバーグ発電所は長年にわたり、フランスと米国の原子力発電所の運転経験から安全性の改善策を特定し、実施してきた。その結果、通常は新しい近代的な原子力発電所でしか達成できないレベルまでリスクを低減することができた」と胸を張った。
18 Jul 2024
662
フィンランド国営の「VTT技術研究センター」は7月5日、フィンランドをはじめ欧州の地域暖房市場における原子力利用によるカーボンフットプリント(CFP)((商品やサービスなどのライフサイクル全体(原材料調達から製造・販売・使用・リサイクル・廃棄まで)で排出される温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算した指標。))の調査結果を発表。原子力は他のエネルギー源よりもライフサイクル全体での環境影響が少ないことを明らかにした。冬の気候が寒く厳しい国では、住宅やその他の建物の暖房に多くのエネルギーを消費し、欧州では6,000万人が、3,500の地域暖房ネットワークを利用している。VTTは、暖房はCO2排出の主要な要因でもあるため、エネルギーシステムの徹底的な脱炭素化には、化石燃料に代わる幅広い代替燃料が必要であると指摘。エネルギーの生産、流通、消費が発電分野とは異なる暖房分野において、代替エネルギーとして原子力を含めた環境影響について調査を行った。調査にあたり、原子力による地域暖房には、小型モジュール炉(SMR)「LDR-50」(PWR、熱出力5万kW)を採用して分析。2023年にVTTからスピンオフしたステディ・エナジー(Steady Energy)社がフィンランドと欧州市場向けの地域暖房用に2030年代の商業利用を目指して開発中の原子炉だ。標準的なライフサイクル分析(LCA)手法を用いて環境影響を分析したところ、LDR-50は設計段階のプラントのため、建設段階に関連した大きな不確実性が残るものの、暖房に利用した場合のCFPは2.4gCO2/kWhと算定。原子力による地域暖房のCFPは最も少なく、化石燃料の場合は、天然ガス282gCO2/kWh、泥炭450gCO2/kWh、硬質石炭515gCO2/kWhであると示している。また、電力を使用する直接電気暖房やヒートポンプと比較した場合、原子力による地域暖房は、スウェーデンやフランスなど、クリーンな電力ミックスを持つ国のヒートポンプによる暖房と同等のCFPになるという。その一方、化石燃料による電力生産の割合が大きいポーランド、チェコ、ドイツ、エストニアにおいては、直接電気暖房やヒートポンプは各段に大きなCFPとなり、暖房に電力を使用するのは悪い選択であると指摘する。さらに、原子力による地域暖房と従来の暖房燃料の環境への悪影響を12の異なるカテゴリーで分析。原子力による地域暖房による環境影響はほとんどのカテゴリーで、平均を大きく下回る。ウラン採掘と粉砕が環境に悪影響を及ぼすとしても、熱生産量当たりの全体的な影響は代替燃料と比較して小さいという。これらの結果を受けVTTは、地域暖房では、化石燃料から原子力へのリプレースによりCO2排出を著しく削減でき、原子力による地域暖房はバイオ燃料やヒートポンプと並んで実行可能な選択肢であると結論づけている。なお、ステディ・エナジー社がこのほど公表した意識調査結果によると、フィンランドの自治体首長の多くはSMRの建設に極めて前向きで、大都市の自治体首長の86%がSMRを支持しており、反対はわずか11%だった。
17 Jul 2024
912
米国のドミニオン・エナジー社(以下、ドミニオン社)は7月10日、バージニア州で所有、運転するノースアナ原子力発電所(PWR、100万kW級×2基)での小型モジュール炉(SMR)導入の実現可能性を評価するため、SMR開発企業を対象に「提案依頼書(RFP)」を発行した。RFPは、同サイトでのSMR建設を確約するものではないが、将来的なエネルギー需要を見据えた対応だという。バージニア州のG.ヤンキン知事は、将来の電力需要を満たすために、信頼性の高い、手頃でクリーンなエネルギーを利用できる技術を模索することが不可欠であるとした上で、「SMRによって、バージニア州は原子力イノベーションのハブとなる」と強調した。 ドミニオン社は今秋にも、バージニア州の規制当局である州企業委員会(SCC)に対して、SMR開発コストの回収ができるよう申請する考えだ。バージニア州議会は今年初め、SMR開発のコスト回収に関する超党派の法案を可決しており、ヤンキン知事が7月10日、同法案への署名を行った。同法はコスト回収額に上限を設けているが、ドミニオン社の見積りでは、申請額はこの上限を大幅に下回るという。バージニア州経済開発機構(VEDP)によると、バージニア州には米マイクロソフト社、米アマゾン・ウェブ・サービス社をはじめ、世界の巨大データセンターのうち、約35%にあたる約150施設が立地しているという。そのため、電力需要に対する関心は高く、2022年にはヤンキン知事がエネルギー計画を発表し、原子力イノベーションのハブを目指すことを明らかにしていた。 なお、ドミニオン社はノースアナ発電所以外に、バージニア州内にサリー原子力発電所(PWR、89.0万kW×2基)を所有、運転しており、2021年5月には80年運転の認可を取得したため、1号機が2052年5月まで、2号機が2053年1月までそれぞれ運転継続することが可能。一方のノースアナも80年運転をめざし、現在2回目の運転期間延長の審査が米原子力規制委員会(NRC)により進められている。
17 Jul 2024
874
福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出が開始して、間もなく1年。一部の海外諸国による日本産水産物の輸入停止措置などを踏まえ、東京電力では、全国各地でのイベントや販売促進会、社内販売などを通じ、全社員・全グループが一丸となって国産水産物の消費拡大に取り組んでいる。一方、北海道では2024年上半期の水産物輸出額が前年同期比で半減しており、依然として厳しい状況だ。こうした中、同社はこのほど、東京・JR新橋駅前SL広場を中心に毎年開催される「新橋こいち祭」に初めて出店。7月25、26日の期間中(両日とも、15時~20時30分)、「常磐もの」を使った「さんまのポーポー焼き」(サンマのすり身に味噌と薬味を混ぜて団子にした漁師飯)や福島の酒を提供する「発見!ふくしま」の他、昨年11月にSL広場で行われた復興応援イベント「ホタテ祭り」でも盛況だった「ホタテ応援隊」のブースを設け、福島県・北海道の美味を振る舞う。開催初日の25日には小早川智明社長が応援に駆け付け、「ホタテ串焼き」の調理・販売に当たった。「ホタテ応援隊」のブースは、JR新橋駅日比谷口を出てすぐ。駅のコンコースにも香ばしさが漂う。15時の開場後、小早川社長がブースに立った16時半頃には、ホタテを求める来場者の列ができ、仕事帰りの人たちが繰り出す19時半過ぎには既に売り切れとなる人気ぶりだった。ブース対応後、取材に応じた小早川社長は、これまでの国産水産物販売支援に対する謝意を繰り返し強調。7月16日に通算7回目(今年度3回目)を完了したALPS処理水の海洋放出については、「これからもしっかりと安全を第一に進めていき、海域の放射能測定データを示していく」と述べた。会場内、C11形SLの脇に設置された温度計は34℃。17時頃からは小雨がぱらつきながらも、さらに賑わいを増し、「かにみそ甲羅焼き」、「うに貝焼」の他、福島特産の桃を用いたアイス「ふしぎなピーチバー」(竹内まりやのヒット曲に因んだ命名)など、様々な美味が食欲をそそった。同氏は、まず「食べてもらう」ことと強調し、今後も着実に応援していく姿勢を示した。「新橋こいち祭」は、バブル崩壊後の90年代半ば、新橋界隈に務めるサラリーマンらに「“小一”時間楽んでもらう」思いで地元商店会が始めたもの。近年では、若者連れも多く、27回目となる今回、2日間で約14万人の動員を見込む。
26 Jul 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は7月23日、安定供給の現状・課題と火力の脱炭素化のあり方について議論した。〈配布資料は こちら〉同分科会は5月15日、エネルギー基本計画の見直しに向け検討を開始。7月23日の会合で、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、これまでの議論を振り返り、「需要が増加していく中で、脱炭素電源を最大限増加していかねばならない」と強調。去る6月6日の会合では、通信ネットワーク関連企業からの発表も受け、データセンターの拡大など、AI技術普及に伴う電力需要増に関し議論されている。村瀬長官は今回、オイルショックを受け半世紀前に設立された資源エネルギー庁の理念に立ち返り、「安定供給をしっかり確保していく必要がある」との使命感をあらためて示した上、引き続き有意義な議論を期待した。脱炭素電源の現状と課題については、前回、7月8日の会合で議論。各電源のCO2排出量比較などが示された上で、委員からは、原子力の安全性、再生可能エネルギー設置に伴う環境影響、国民理解の必要性などをめぐり意見が出された。一方で、日本の一次エネルギー供給・電源構成における化石エネルギー比率(2021年)は83%と、G7各国と比較し、依然と高いレベルにある。今回、火力の脱炭素化に係る議論に際し、資源エネルギー庁は「日本は最も化石燃料のリスクにさらされている」と危惧。さらに、電力需給に関しても、7月8日には、首都圏で最高気温37℃を記録し、東京電力管内では中部電力からの電力融通が行われるなど、需給バランスは予断を許さぬ状況にある。実際、夏季・冬季の電力最大需要発生時の予備率見通しについては、2015年度以降の推移から、特に、近年では、東日本の予備率が相対的に低くなっている。安定供給に関連し、資源エネルギー庁は、近年で電力需給がひっ迫した2020年度冬季(継続的な寒波/LNG在庫減少)、2022年3月(真冬並みの寒波/福島県沖地震)、2022年6月(異例の暑さ/発電設備の補修)について、要因・対応策を整理したほか、化石燃料輸入に伴う国富流出にも触れた上で、委員より意見を求めた。委員からは、東京湾岸に集結する火力発電の電源脱落リスクに関し、「高度成長期の産業政策『太平洋ベルト地帯』は今や、首都圏直下型地震のリスクからもレジリエンス上のネックとなっている」と懸念し、火力プラントの移設とともに、原子力発電の早急な再稼働を求める意見があった。また、地域の立場から、杉本達治委員(福井県知事)は、新たなエネルギー源として期待される水素・アンモニアに関し、敦賀港を中心とした貯蔵タンクの拠点整備の一方で、「日本海側は都市が点在しており、大規模な需要が存在しているわけはない」と、産業振興の課題を述べた上で、日本海側と太平洋側が相互に連携し合う体制が構築されるよう国の支援策を求めた。
24 Jul 2024
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総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は7月22日、発電コストワーキンググループ(座長=秋元圭吾・地球環境産業技術研究機構主席研究員)を始動した。同分科会では、5月よりエネルギー基本計画の見直しを開始しており、その参考とすべく、各電源の発電コストについて試算し検討に資するもの。〈配布資料は こちら〉議論開始に先立ち、資源エネルギー庁が現行のエネルギー基本計画策定に向け行った「2021年の発電コスト検証」について説明。石炭火力、LNG火力、原子力、風力(陸上/洋上)、太陽光(事業用/住宅)など、15の電源別に、新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWh当たりのコストを、一定の計算式に基づき、2020年時点と、2030年時点で機械的に試算したもの。今後、燃料費の見通し、設備の稼働年数・利用率、再エネの導入量の他、実際の発電設備建設に際し立地点ごとに異なる条件を勘案する必要など、不確定要素が関わることから、あくまで参考モデルとして評価・分析している。それによると、原子力(設備利用率70%、稼働年数40年)は11.7円/kWh~で、LNG火力の10.7~14.3円/kWh、太陽光(事業用)の8.2~14.9円/kWhなどと比して遜色ない水準が示されている。今回、新たな発電コスト試算に際し、有識者の立場から日本エネルギー経済研究所特別主幹研究員の松尾雄司氏が発表。同氏は、「基本的な考え方は前回から大きく変えることはない」との前提に立ち、LCOE(均等化発電原価)手法による評価結果を紹介した。OECD/NEA、IEAなどの試算も参考としたLCOE手法では、各電源の稼働年数・設備利用率を通常運転で可能な最大値を想定。原子力については、それぞれ60年、85%と設定し評価した。その結果、事業用太陽光11.2円/kWh、陸上風力14.7円/kWh、原子力11.7円/kWh、LNG火力10.7円/kWh、石炭火力13.6円/kWhとのベースラインを示した上で、電気自動車やヒートポンプの普及など、今後の電力システムの柔軟性向上に応じ変化する可能性を図示。まとめとして、LCOE手法以外の有用な指標も有効活用し、電源ごとの経済性の変化や、各指標の比較などを行い、「将来のエネルギーシステムの中での各電源の特性や役割を把握し正しく国民に伝える努力が求められる」と指摘し、今後の議論に先鞭をつけた。委員からは、新たなエネルギー源として注目される水素・アンモニアに係るコスト検証を求める意見も出された。資源エネルギー庁は、発電技術そのものの評価に適した「モデルプラント方式」による試算を提案。また、中東情勢の緊迫化に伴う不確実性の高まり、GX推進など、現行のエネルギー基本計画策定以降の動きが発電コストに与える影響を考慮する必要性も示した。基本政策分科会は、概ね隔週の頻度で開催されており、エネルギー価格に対する関心が高まる昨今、WGでの検討状況がエネルギー基本計画見直しの議論に反映されていくこととなりそうだ。
23 Jul 2024
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日本原子力研究開発機構東濃地科学センターの研究グループは7月19日、マグニチュード6~7級の大地震の原因となる「隠れ活断層」検出の手がかりとなる研究成果を発表した。〈原子力機構発表資料は こちら〉同研究グループによると、「隠れ活断層」は地表まで到達していない活断層で、断層運動に伴い地表に明瞭なズレが現れることで、その存在が認識されるという。今回の研究では、1984年の長野県西部地震(マグニチュード6.8)に着目。長野県王滝村で甚大な土砂災害をもたらしたこの地震の発生で、「隠れ活断層」の存在が明らかとなった。地震データの解析から、地下約1kmの存在が解明している「隠れ活断層」について、同村で精緻な地質調査を実施。岩盤の割れ目表面に観察されるすり傷状の「滑り痕」全344箇所のデータを収集した上、複数の応力を復元する「多重逆解法」と呼ばれる方法で、調査地域の13領域で応力の復元を行った。一方、研究グループでは、地表まで到達せず、地形からは認定しにくく、地震発生前に把握することが現状で極めて困難な「隠れ活断層」の性状から、断層運動に伴い小規模な割れ目が形成される「ダメージゾーン」に着目。「ダメージゾーン」は、活断層が地下に隠れている場合でも、地表まで到達している可能性がある。今回の「滑り痕」の応力解析から、「隠れ活断層」の直上付近の領域と、「ダメージゾーン」との間に、存在の整合性を示唆する結果が得られた。研究グループでは、この他、1997年に発生した鹿児島県北西部地震(マグニチュード6.6)の震源域についても調査を行ったところ、同様の結果が得られたとしている。一方で、「隠れ活断層」と「ダメージゾーン」の領域の広がりの関係は現段階では、まだ十分解明されておらず、さらに広範な調査・解析が課題だという。元旦に発生した能登半島地震も記憶に新しく、現在も復旧に向けた取組が進められている。また、6月16日には、1964年の新潟地震(マグニチュード7.5、新潟県民の14%に当たる33万人が被災)から丁度60年の節目を迎え、あらためて都市型地震災害における防災・減災の重要性が認識されている。今回の研究成果は、「ハザードマップ」作成に向けた調査のほか、高レベル放射性廃棄物地層処分の概要調査など、大規模な地下環境利用にも有効な手法となるものと期待される。
22 Jul 2024
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エネルギー基本計画改定に向けた議論が本格化する中、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏は、7月16日の記者会見で、9日に開かれた新潟経済同友会「30周年記念行事」への出席などに触れながら、エネルギー政策に対する考え方について発言。その中で、同氏はまず、「今後策定される第7次エネルギー基本計画については、第6次エネルギー基本計画の振り返りをきちんとして欲しい」と強調。現行計画における蓋然性、予見性、具体性の乏しさを厳しく指摘した上で、「エネルギーの問題解決なくして日本の将来は明るくない」と述べ、年末に向け、総合資源エネルギー調査会における有意義な議論を期待した。同調査会基本政策分科会では5月より、エネルギー基本計画改定に向けた検討を開始しており、7月23日には5回目の会合が行われる予定だ。同友会では2023年12月、カーボンニュートラル実現や将来のエネルギー需要の観点から、これまでの「縮・原発」の方針から、新たな考え方「活・原発」を提唱。今回の会見で、新浪氏は、現在、地元の判断が大詰めとなっている柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関し、「新潟県内では『安心』はしていないことが実態」と述べるとともに、元旦に発生した能登半島地震にも鑑みた原子力防災における防護措置の課題も憂慮した。一方で、首都圏への電力供給の貢献に関し、大正時代に新潟県内の水力発電が山手線の走行を支えてきた実績を紹介。電力消費地の理解に向けて、同氏は「正に新潟県は首都圏の電気のふるさとだ。地元ではなく、首都圏で使う電気であることをしっかり理解した上で、今、どのような議論がされているのか、恩恵を受ける首都圏は、新潟県に対しありがたいと思っているのか、という点が重要なポイントだ」と、強調した。柏崎刈羽原子力発電所に関しては、7月15日より、国の取組に関する「県民説明会」が長岡市を皮切りに開始しており、今後、8月上旬にかけて、県内7か所で開催される予定だ〈既報〉。
19 Jul 2024
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太平洋・島サミット(PALM10)が7月16~18日、都内で開催された。同サミットは1997年以降、日本と太平洋島しょ国とのパートナーシップを強化することを目的として、3年ごとに日本で開催されているもの。前回、2021年は、コロナの影響によりテレビ会議方式で行われた。〈外務省発表資料は こちら〉岸田文雄首相は、会期中、17日までに、ツバル、バヌアツ、ニウエ、パプアニューギニア、パラオ、マーシャル諸島、フィジー、サモア、クック諸島、トンガ、ソロモンの各首脳と会談。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出に関し、岸田首相が「今後も安心を高めていく」旨、発言したのに対し、各国首脳からは歓迎の意が示された。ALPS処理水の海洋放出に関しては、2023年7月4日、IAEAラファエル・グロッシー事務局長より、安全性レビューを総括する「IAEA総括報告書」が、日本政府に対し手交された。それを受け、8月24日に海洋放出が開始。2024年7月16日には、都合7回目の海洋放出が完了した。なお、IAEAは、ALPS処理水取扱いに関し、同年4月23~26日に海洋放出開始後2回目となる国際専門家からなる安全性レビューミッションを日本に派遣した。7月18日、現地調査、関係機関との議論などを通じた調査結果として、「国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されなかった」とする報告書が公表された。
18 Jul 2024
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「柏崎刈羽原子力発電所に係る国の取組に関する県民説明会」が7月15日、新潟県長岡市で始まった。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働をめぐっては、現在、地元の判断が焦点となっている。県主催による同説明会は、内閣府(原子力防災)、資源エネルギー庁、原子力規制庁が説明を行い、県民からの質疑に応じるもので、今後、8月上旬にかけて、十日町市、小千谷市、見附市、上越市、燕市、出雲崎町と、県内7か所で開催される。〈配布資料は こちら〉柏崎刈羽原子力発電所については、2023年12月27日に、一連の核物質防護事案を受け原子力規制委員会により発出されていた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が解除。同日、既に新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可が発出済み(2017年12月)の同7号機について、東京電力に対する「原子炉設置者としての適格性の再確認」もクリアした〈既報〉。県は、再稼働に関し、地元判断のカギとなる技術委員会による議論が佳境にある中、2024年6月13日に花角英世知事らが齋藤健経済産業相を訪問〈既報〉。資源エネルギー庁より、「柏崎刈羽原子力発電所に係る国の取組について、県民の皆様に直接説明する機会を設けたい」との依頼を受け、説明会の開催となった。長岡市の説明会では、関係3府省庁の課室長クラスらが出席。規制庁は、去る2月にも県主催の説明会の場で、東京電力の核物質防護に係る追加検査および原子炉設置者としての適格性判断の再確認について、県民との質疑に応じているが〈既報〉、6月12日までに、東京電力が同7号機への燃料装荷を完了し健全性確認を一通り実施した現状を踏まえ、あらためてこれまでの流れを説明。その中で、混同されがちな原子力施設における「セキュリティ」と「セーフティ」に関する対応課題について、発電所を自動車に例え、それぞれ、「カギがない、免許証がないことで、不審者により盗取される」、「ブレーキが利くか、ガソリンが漏れていないか、タイヤが摩耗していないか、により安全運転に影響を及ぼす」ことと、両者の区別を説いた。内閣府は、柏崎刈羽地域における原子力防災の取組、国の支援体制の検討状況について説明。複合災害時の避難に係る基本的考え方としては、「複数の避難経路の設定」、「海路・空路避難、屋内退避の継続」、「実動組織(警察、消防、海上保安庁、自衛隊)による住民避難支援」をあげた。一方で、県民からは、2007年3月の能登半島地震、同年7月の中越沖地震に鑑みた不安の声も多く、また、屋内退避については、現在、規制委の専門家チームが効果的な運用方法を検討しているが、「夏にライフラインが途絶した状態で、窓を閉めておくことはできない」といった指摘もあった。資源エネルギー庁は、エネルギー・原子力政策の現状について説明。その中で、東京電力管内の電力需給に関し、今夏7月の予備率が4.1%と、予断を許さぬ状況にあることを懸念した上、柏崎刈羽7号機が再稼働することで、「約2.4%の予備率向上に寄与する」との試算を示した。首都圏で最高気温37℃を記録した7月8日、東京電力は中部電力より最大20万kWの電力融通を受けている。県民からは、説明会の趣旨に直結しない発言も多く、核燃料サイクルの停滞、損害賠償や避難指示解除の基準に係る疑問、再生可能エネルギーのポテンシャルの他、「そもそも再稼働が前提となっており、答えになっていない」といった非難の声もあった。今回の説明会には、オンライン・サテライト会場(県内7か所)も含め、計120名が参加。花角知事は、7月17日の定例記者会見で、「特定の人しか関心を持ってもらえないのでは困る」などと述べ、今後、他会場の状況を注視していく考えを示した。
17 Jul 2024
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原子力規制委員会は7月16日、特定原子力施設監視・評価検討会を開き、福島第一原子力発電所における廃炉作業の改善策等について東京電力から報告を受け、今後の取り組みなどをめぐって議論した。東京電力は福島第一の廃炉作業において、昨年10月から今年4月にかけ、作業員の負傷などを含むトラブルが相次いで発生したことを重視し、5月初旬から作業員全員が参加する形で作業点検を実施、6月7日に完了していた。作業点検件数(再開件数)は995件、うち防護措置の改善件数は675件だった。先の特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合(6月20日開催)において、作業点検の分析結果について報告した同社は、重大な見直しが必要な事案は確認されなかったが、廃炉の現場は通常炉より複雑な作業が多く、人への依存が高いという面があり、リスクアセスメントの強化やリスクアセスメント教育の強化等の改善策が必要であるとの認識を示していた。その際、規制委から背景要因を深堀りし、さらに踏み込んだ分析が必要との指摘がなされていた。指摘を踏まえて同社は、共通要因分析を通じて得られた改善策と今後の取り組みについて、この日の検討会で報告した。要因分析については、昨年10月に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染、今年2月に発生した高温焼却炉建屋からの放射性物質を含む水の漏洩など4つの事案を対象とし、分析を通じて運用・設備・教育の面での改善策を6つに整理した。また、得られた改善策を現場に活かすための今後の取り組みについて同社は、必要な手順書の見直しや危機意識を高めるための安全教育の強化、CR(Condition Report)のさらなる活用、「変化があった場合は必ず立ち止まること」のワンボイスによる浸透をはかる等の取り組みを進める、とした。報告を受け、規制委からは福島第一の廃炉現場は通常の発電所とは異なることが常態化しており、作業の幅も広いため、CRの活用についても膨大な数になる可能性がある等の指摘がなされ、サイトの状況を考えて効果的に実施する必要があるとの認識が示された。東京電力は、「通常の発電所とは異なることを踏まえ、ひとつひとつトライし、実効性ある改善を図りたい」などと応じた。検討会を担当する伴信彦委員は「福島第一では膨大な作業が同時並行し、複雑な作業もある。再発防止対策をつくるだけでなく、実効的に機能しているかまで確認する必要がある」とし、今後も検討会で福島第一の作業改善について必要な議論を続けたいとの考えを示した。
16 Jul 2024
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放射線技師の育成・資質向上を目指す大学が2027年4月、横須賀市に開学する。〈発表資料は こちら〉学校法人中央医療学園が運営する「中央医療技術専門学校」(東京都葛飾区)が企業の研究施設を擁する「横須賀リサーチパーク」(YRP)に移転し、「中央医療大学」(仮称)としてリニューアルするもの。「中央医療技術専門学校」は、放射線技師育成に特化した専門学校として、60年以上の実績を持つ。夜間部を開設しているのも特筆される。医療技術は日進月歩で躍進し、昨今、「診療放射線機器類は、飛躍的な進歩をしており、診療放射線技師も知識および技術の習得にさらなる向上が求められている」ことなど、高学歴化が進みつつある背景から、中央医療学園では、2022年より横須賀市に対し大学進出の打診を行っていた。一方、YRPは、1997年に電波・情報通信を中心としたICT技術の研究開発拠点として、同市の他、郵政省(現総務省)、京浜急行電鉄の3者が一体となって開設。近年では、他業種も進出し、異業種間の連携・協業による新産業創出に期待が高まっている。新たに開設される大学は、YRPに所在するNEC技術センターの土地・建物を利用するもの。2024年3月に中央医療学園とNECとの間で売買契約が締結された。今後は、2025年度にリニューアル工事を実施し、2026年夏に学生の募集を開始。2027年4月に開学となる運び。医療科学学部(仮称)下、診療放射線学科単科でスタートし、以降、放射線技術学科を併設する予定。今回の開学決定に際し、7月10日、横須賀市の上地克明市長、中央医療学園の森重美三男理事長、YRPの鈴木茂樹社長が市役所内で記者会見に臨んだ。YRPでは、「市域を支える人材育成のための大学誘致推進」をビジョンの一つに掲げていた。大学進出に至った決め手として、同市の豊かな自然とYRPの静穏な学習環境、都心からのアクセスの良さ、学生にとっての暮らしやすさ、企業・研究機関との多様な連携への期待があげられている。横須賀市は、ペリー来航のモニュメントを始めとする史跡の他、海軍カレーやネイビーバーガーなどのご当地グルメ、80年代を席巻したマリンルックといった若者を引き付ける魅力も多い。一方で、近年は人口減少の兆しがみられており、3月の定例市議会の所信表明で上地市長は、「もう到底抗うことはできない」と憂慮している。今回の新大学開学を通じ、医療福祉の充実とともに、将来の地域を支えていく若い理系人材を生み出す推進力となることも期待できそうだ。
12 Jul 2024
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文部科学省の有識者会議は7月10日、核融合エネルギーの早期実現を目指し、発電実証を行う原型炉の研究開発に向けた方針を見直す考えを示した。〈配布資料は こちら〉現在の原型炉研究開発の方針は、2017年に決定。原型炉への移行判断やチェック&レビューの時期については、建設中にあるITER計画の運転段階にも留意している。今回、見直しに当たっては、ITER計画の進捗状況の他、諸外国が取り組む核融合開発の目標も踏まえ、社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現する原型炉目標(以下1~3)や原型炉段階への移行判断を見直す数十万kWを超える定常かつ安定した電気出力実用に供し得る稼働率燃料の自己充足性を満足する総合的なトリチウム増殖を実現するITER計画/BA(幅広いアプローチ)活動の知見や新興技術を最大限活用する原型炉実現に向けた基盤整備を含めたバックキャストに基づくロードマップを策定する――ことがポイント。今後、有識者会議下の原型炉開発総合戦略タスクフォースで検討を進めていく。核融合エネルギーの産業化に向けては、内閣府(科学技術政策)が2023年4月に策定した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を踏まえ、2024年4月には「フュージョンエネルギー産業協議会」(J-Fusion)が設立。原型炉研究開発に関して、最近の官邸レベルの動きとしては、6月に、「2030年代の発電実証の達成」を目指す方向性が、「統合イノベーション戦略」、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」に盛り込まれたことがあげられる。また、現在、見直しが進められているエネルギー基本計画における位置づけの明確化を求め、自由民主党プロジェクトチームが提言をまとめるなど、各界で核融合エネルギーの実用化を見据えた動きが見られている。今回の有識者会議では、ITER機構副機構長の鎌田裕氏が出席し、ITER計画の進捗状況を説明した。建設工事の進捗率は85%だが、ファーストプラズマ達成は、当初の2025年から2034年頃に遅れる「新ベースライン」が検討されている状況だ。ITER計画の遅れに関しては、ITER理事会開催を受けて既に報道されているが、日本経済団体連合会の十倉雅和会長は7月8日の記者会見で、「地球温暖化は待ったなしの課題」と、核融合を含む脱炭素エネルギー開発の必要性を強調した上で、「これまでに得た知見をもとに、各国が独自に実用化に向け切磋琢磨すればよいもの」と、前向きな考えを示している。また、高市早苗内閣府科学技術担当相は、7月5日の記者会見で、7月9~11日にイタリア・ボローニャで開催されるG7科学技術大臣会合への出席について紹介。今回、議論を集約するコミュニケに、核融合エネルギーについて初めて盛り込まれる見通しを明らかにした。高市大臣は、日本がG7議長国となった昨年、同会合(5月、仙台)の議論をリードしている。
11 Jul 2024
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関西電力では、美浜3号機、高浜1-2号機が40年超運転に入っている。これに加え、高浜3-4号機(PWR、各87.0万kW)についても、5月29日に、運転開始から60年までの運転期間延長が原子力規制委員会により認可された。それぞれ、2025年1、6月に法令に定める40年の運転期間を満了する。両機の運転期間延長に対し、2024年7月9日、立地地域の福井県および高浜町は理解を表明。これを受け、同社では、「地元をはじめとする皆様の理解を得ながら、原子力発電所の一層の安全性・信頼性の向上に努めていく」とのコメントを発表した。今後、経年劣化に鑑み、長期的な信頼性を確保する観点から、高浜3-4号機については、蒸気発生器一式を取り替えることとしており、規制委による認可を受け、それぞれ2026年6~10月、同年10月~27年2月に実施予定の定期検査で取替工事を行う計画だ。この他、関西電力では同日、高浜1-2号機の炉内構造物の取替計画について、福井県および高浜町より、原子炉設置変更許可の申請手続きを進めるための了承を受領。今後、準備が整い次第、規制委への申請を行う予定。それぞれ、2028年6~12月、11月~2029年4月に工事を実施する計画。なお、関西電力3基の他、今夏、7月4日には、新規制基準下での再稼働で先陣を切った九州電力川内1号機が国内4基目の40年超運転に入っている。
10 Jul 2024
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日立ハイテクは7月9日、同社が成田記念病院(愛知県豊橋市)に納入した画像誘導型高精度X線治療装置「線形加速器システム OXRAY」による治療が開始されたと発表した。「OXRAY」では、初めての臨床使用となる。〈発表資料は こちら〉「OXRAY」は、日立グループが培ってきた照射技術と画像技術を統合し、2023年7月に国内販売を開始した新しい画像誘導型高精度X線治療装置で、装置の回転に自由度を高めた「O-リング型ガントリー構造」が特長。正常組織へのダメージを低減し、呼吸などに合わせて動く腫瘍に対し高い精度で治療用X線を照射することが可能なほか、患者寝台を動かすことなく多方向から連続的に照射でき、線量分布の改善とともに、患者の精神的・身体的負担の軽減にもつながる。成田記念病院では、こうした「OXRAY」の特長を評価し導入。2024年6月17日より治療を開始した。日立では、放射線治療領域において、粒子線とX線の両方で事業を展開。粒子線治療では、これまで陽子線がん治療システムで多くの海外納入実績を積んでおり、呼吸に伴う臓器の動きを捉える動体追跡技術や、がんの形状に合わせて照射できるスポットスキャニングなど、革新的技術を開発し市場に投入してきた。今後も、「『がんを恐れることのない社会』に向けて、患者一人ひとりに寄り添った、低侵襲かつ経済性に優れた放射線治療システムを提供し、患者のQOL(Quality of Life)の維持・向上と、がん治療のさらなる発展に貢献していく」としている。
09 Jul 2024
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