
国内NEWS
05 Dec 2025
336

高市首相 福島第一を初視察 復興・廃炉を「内閣の最重要課題」と強調
海外NEWS
05 Dec 2025
305

台湾 國聖と馬鞍山発電所の運転再開計画を提案へ
海外NEWS
05 Dec 2025
302

オクロ社マイクロ炉「オーロラ」主要設備調達へ シーメンスと設計契約
海外NEWS
05 Dec 2025
223

韓国電力 UAE・バラカ発電所の実績踏まえ協力拡大
国内NEWS
04 Dec 2025
565

東京電力 東通ヘッドオフィスの運用開始 地域と繋がる拠点に
海外NEWS
04 Dec 2025
436

南ア PBMR開発計画の再開を閣議決定
海外NEWS
04 Dec 2025
576

米陸軍 マイクロ炉で陸軍基地の電力レジリエンス強化へ
海外NEWS
03 Dec 2025
468

ベルギー ドール2号機が永久閉鎖

台湾の経済部(経済省)は11月27日、台湾電力による原子力発電所の現状評価報告書を承認した。同報告書によると、金山発電所1-2号機(BWR、60万kWe級、各2018年12月、2019年7月閉鎖)は重要な設備の多くがすでに撤去されており、運転再開の実現可能性はないと評価されたものの、國聖発電所1-2号機(BWR、100万kWe級、各2021年12月、2023年3月閉鎖)、ならびに馬鞍山発電所1-2号機(PWR、90万kWe級、各2024年7月、2025年5月閉鎖)については、運転再開の可能性があると評価。台湾電力は今後、自主的安全検査の開始と運転再開計画の策定を同時に進め、両発電所の運転再開の計画を2026年3月に、核能安全委員会(原子力安全委員会)に提出する予定である。経済部によると、台湾電力は今年5月に改正された「核子反応器設施管制法(原子炉等規制法に相当)」とその施行細則に基づき、①プラント設備、②人員配置、③燃料の乾式貯蔵、④同型プラントの運転期間延長の状況、⑤地質耐震、⑥安全検査整備の状況、⑦電力供給効率の7つの観点から、閉鎖済み3サイトの原子力発電所の現状評価を実施した。評価の結果、金山発電所の2基はそれぞれ停止から11年以上、8年以上経過しており、設備は老朽化が進んでいるうえ、重要な発電設備の多くが撤去されている。また多くの計器類と電気部品で交換とアップグレードが必要となるほか、福島第一原子力発電所と同型であり、日本でも廃止状態に入っているため、運転再開の可能性はないと判断された。國聖発電所の安全および支援システムは、運転期間中と同様に定期的な大規模点検と保守を継続。一方、発電システムは停止期間が2年を超えており、長期の大規模点検と復旧管理計画の実施、機能確認が必要となる。ただし初期評価では、運転再開の条件を備えていると判断された。馬鞍山発電所では機器設備はまだ撤去されておらず、すべて運転期間中の基準に基づいた定期的な大規模点検と保守が実施されている。使用済み燃料は炉内から取出し済みであり、燃料プールにも余裕があるため、初期評価では運転再開に向けた条件を備えていると判断された。台湾電力は老朽化や耐震性などに関する自主的安全検査により、各プラントの運転期間延長の可能性と必要な補強について評価するが、馬鞍山発電所での安全検査は約1.5~2年かかる見込み。國聖発電所では、使用済み燃料の乾式貯蔵施設の稼働が約10年遅れており、完成後に炉内の使用済み燃料の搬出を行うため、安全検査の期間は馬鞍山発電所より長くなると予想されている。経済部は台湾電力に対し、厳格に安全検査作業を行い、国際基準に沿った安全確保を求めており、海外の専門機関による技術審査も必要だとしている。台湾ではこれまで大停電が頻発しており、産業界は安定的な電力供給を求め、政府に対しエネルギー政策の見直しを要請してきていた。ネットゼロ排出の気候目標と国内のエネルギー供給構造の安定を維持するため、立法院(国会)で「核子反応器設施管制法」の第六条条文のうち、原子力発電所の運転期間を最長で20年延長とする改正法案が審議、今年5月に可決された。今年8月には、馬鞍山発電所の運転再開の是非を問う、国民投票を実施。賛成多数となったが、成立要件を満たさず不成立となった。頼清徳総統は本投票結果を受けて、脱原子力政策の見直しにあたっては、①原子力安全、②放射性廃棄物問題の解決、③社会的コンセンサスの三つの原則の遵守が大前提であり、運転再開の可否については、まずは5月の改正法に基づき、核能安全委員会が安全審査の方法を定め、第二に、台湾電力がその方法に基づいて自主的安全検査を行う必要があるとの談話を発表している。
05 Dec 2025
305

米国の先進炉と燃料リサイクルの開発企業、オクロ社は11月19日、独シーメンス・エナジー社とマイクロ炉「オーロラ」向け電力変換システムの設計契約を締結した。両社は2024年8月に優先サプライヤー契約を結んでおり、協業は実行段階へと移行した。今回の契約では、シーメンス社が蒸気タービンや発電機を中心に、関連機器の詳細設計と設備配置の策定を担う。主要機器の製造開始が可能となり、初号機建設の具体化へ前進した。オクロ社は、産業分野で実績のある既製機器を活用する設計方針が、建設コストや開発期間の圧縮につながると説明。シーメンス社も、高効率で信頼性の高い発電設備の提供を通じ、次世代炉の事業化を支援する姿勢を示した。オーロラは金属燃料を用いるナトリウム冷却高速炉で、出力は1.5万〜5万kWeの範囲で調整可能。HALEU((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))燃料により20年以上の連続運転を想定し、高い熱効率を生かした分散型電源としての利用も見込む。同社は米アイダホ国立研究所(INL)敷地内に建設する初号機を商業展開に向けた実証炉と位置づけ、開発を進めている。さらにオクロ社は11月11日、INL内で計画するオーロラ燃料製造施設(A3F)について、米エネルギー省(DOE)アイダホ事業局から原子力安全設計契約(NSDA)の承認を得たと発表。DOEの先進燃料製造ライン整備を後押しするパイロットプログラムで最初の承認例で、審査は提出からわずか2週間で承認された。A3Fでは使用済み燃料を再処理して得た金属燃料をオーロラ向けに製造する。初号機の商業運転に向け、燃料供給と発電所建設の整備が並行して進んでいる。
05 Dec 2025
302

韓国電力公社(KEPCO)は11月18日、UAEの原子力事業会社ENEC社と、原子力分野およびデジタル技術分野での協力を拡大するための覚書(MOU)を締結した。韓国・UAE首脳会談に合わせて締結され、既存の連携をさらに発展させる。合意は、原子力技術分野での協力と、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を導入した運転・保守分野の高度化の二本柱で構成される。原子力技術分野では、次世代炉やSMR(小型モジュール炉)の共同評価、技術情報の共有、共同研究、人材育成を進める。AI・DX分野では、予知保全や運転最適化、設備の仮想モデル(デジタルツイン)の活用を含む新たな運用技術の導入を目指す。両社は共同で「ENEC–KEPCO AIイノベーション・ラボ」を設立し、機械学習を用いた運転効率向上システムの開発にも取り組むとしている。さらに、両国は韓国初の原子力輸出案件であるUAEのバラカ原子力発電所(APR1400、140万kWe×4基)で得た経験を生かし、第三国での潜在的な原子力プロジェクトに関する協力も推進する方針だ。署名は11月18日の韓国・UAE首脳会談に合わせて行われた。翌19日には、KEPCO社のK.ドンチョルCEOとENEC社のM.アルハマディCEOが個別に協議し、国際原子力事業での協力可能性を検討。M.アルハマディCEOは「世界の原子力分野は新たな局面を迎えており、協力の機会を見出すことは双方に価値をもたらす」と述べた。韓国はUAE初の原子力発電所であるバラカ発電所の建設を主導し、同発電所は4基すべてが2021~2024年にかけて商業運転を開始した。運転・保守はKEPCO社とENEC社が出資する合弁企業「NAWAHエナジー社」が担っている。今回の協力枠組みは、これらの実績を基盤として両国の関係を発展させるもので、国際原子力市場における両国の競争力強化を目指す考えだ。
05 Dec 2025
223

南アフリカのK. ラモホパ電力・エネルギー相は11月16日の記者会見で、同国独自のペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の開発計画を再開する方針を閣議決定したことを明らかにした。また、PBMR技術の国産化と輸出産業化を目指して1999年に設立されたPBMR社について、国営電力会社エスコム(Eskom)から南アフリカ原子力公社(Necsa)へ移管することも発表。同大臣は、これにより南アフリカが小型モジュール炉(SMR)技術と燃料サイクル分野の「主要プレイヤーに立ち戻る」と強調した。PBMRは3重被覆層・燃料粒子(TRISO)燃料を使用し、ヘリウムを冷却材とするSMRの高温ガス炉(電気出力16.5万kW、熱出力40万kW)。750℃の蒸気供給が可能で、炉心溶融の心配が無いなど高い安全性を特長とする。大型炉と比べて初期投資が少なく、送電インフラが未整備の地域にも適した炉とされる。エスコムは1993年からドイツの技術をベースに開発プロジェクトに取り組んできたが、顧客・投資パートナーの確保難航や当時の経済不況により、政府は2010年9月にPBMR開発計画の中止を発表。以降PBMRは、知的財産権保持のため保存整備(Care and Maintenance: C&M)状態に置かれていた。ラモホパ大臣は今年10月、統合資源計画(IRP)2025を発表。2039年までに約520万kWeの原子力発電設備を新設する計画に言及したうえで、「アフリカでは、6億人が電気にアクセスできない。アフリカ大陸の工業化、脱炭素化計画を支えるうえで、クリーンなベースロード電源となる原子力は非常に重要な役割を果たす」と述べ、原子力の重要性を改めて強調した。さらに、今回のPBMRのC&M解除の決定により人材回帰が期待されるとし、「大学や研究機関と協力して原子力科学者のパイプラインを再構築する。燃料開発研究所も再開し、高温ガス炉燃料の世界的供給に向けた商機を作っていく」と意欲を示した。同大臣はまた、今年8月に林業・水産・環境省が西ケープ州ドイネフォンテインを新規建設サイトとして承認したことに触れ、少なくとも240万kWeを建設できると説明。ドイネフォンテイン・サイトはクバーグ原子力発電所サイトに隣接しており、他サイトについても東ケープ州で調査中であるという。Necsaは、2010年から休止していたPBMR開発プロジェクトの復活を歓迎。様々な用途向けのSMRを中心とした原子力発電開発が世界的に拡大していることは、PBMR技術の復活にとっても良い兆しであると評価した。そのうえで、NecsaのL. タイアバッシュCEOは、「Necsaはこの燃料製造技術を活用し、技術と知的財産の開発に向け、戦略的パートナーと協力する用意がある」と述べ、南アフリカが再びSMR研究の最前線に立つ展望を示した。現在、南アフリカではアフリカ大陸で唯一稼働する原子力発電所であるクバーグ1、2号機(PWR、各97万kWe)がそれぞれ1984年と1985年から運転中。1号機は国家原子力規制委員会(NNR)から2044年7月までの20年間の延長認可を取得。同2号機についても、2045年11月までの延長認可を取得している。
04 Dec 2025
436

米陸軍は11月18日、陸軍が10月に開始したマイクロ炉導入プロジェクト「ヤヌス計画(Janus Project)」の最初のステップとして、マイクロ炉発電所の設置候補地を発表した。拠点の特性や電力需要、既存インフラの状況を踏まえ、全米9つの陸軍施設を特定した。米陸軍は、配備先は1拠点に限らず、条件を満たす複数拠点への導入拡大も視野に入れている。選定されたのは以下の9施設。・フォート・ベニング(ジョージア州)・フォート・ブラッグ(ノースカロライナ州)・フォート・キャンベル(ケンタッキー州)・フォート・ドラム(ニューヨーク州)・フォート・フッド(テキサス州)・フォート・ウェインライト(アラスカ州)・ホルストン陸軍弾薬工場(テネシー州)・ルイス・マッコード統合基地(ワシントン州)・レッドストーン・アーセナル(アラバマ州)陸軍は今後、各施設の環境・技術的要件の追加評価を進め、最終決定に向けた検討を行う。ヤヌス計画は、2025年5月にトランプ大統領が署名した大統領令「国家安全保障のための先進原子炉技術の配備」に基づき、10月14日に公表された。近年、軍事作戦領域ではAI(人工知能)の導入や次世代兵器システムの稼働により電力需要が急増しており、基地の電力レジリエンス強化が課題となっている。計画では、米エネルギー省(DOE)と協力し、民間の送電網から独立したマイクロ炉を陸軍基地に設置することで、任務遂行に不可欠な電力の確保を図る。初号機の設置は2028年までを目標にしている。さらに米陸軍は、国防イノベーション・ユニット(DIU)と協力し、民間企業から幅広く技術提案を募る枠組みを整備した。DIUは、必要な技術分野を示す関心領域通知を公開し、産業界にマイクロ炉の導入に向けた提案を募集している。両者は、NASAが民間宇宙輸送で採用した方式を参考に、開発の進捗に応じて企業を段階的に支援する契約モデルを構築している。陸軍は燃料サイクルや関連サプライチェーンの監督を担いながら、民間技術を取り込む形で初期配備に向けた検討を進める方針だ。
04 Dec 2025
576

ベルギーでドール原子力発電所2号機(PWR、46.5万kWe)が11月30日、永久閉鎖した。同機は1975年12月1日に営業運転を開始し、50年間稼働した。運転期間を通じ、合計約1,500億kWhを発電。これは、1975年から2025年までの年間約85万世帯の電力消費量に相当する。平均設備利用率は82%だった。ドール1号機と2号機は当初、2003年の連邦法により運転期間が40年となる2015年に閉鎖される予定であったが、エネルギーの安定供給やCO2排出抑制の観点から、2015年6月の法律の一部改正により、運転期間が10年延長された。ドール2号機の閉鎖は、ドール3号機(2022年閉鎖)、チアンジュ2号機(2023年閉鎖)、ドール1号機(2025年2月閉鎖)、チアンジュ1号機(2025年9月閉鎖)に続き、5基目。なお、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を契機とした、エネルギー不足への懸念から、ドール4号機(PWR、109万kWe)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kWe)の2基(合計出力217.9万kWe)の運転期間は2035年まで10年延長された。ベルギーの全原子力発電所は、仏エンジー社が傘下企業のエンジー・エレクトラベル社を通じて所有・運転している。
03 Dec 2025
468

韓国の原子力安全委員会(NSSC)は11月13日、古里原子力発電所2号機(PWR、65万kWe)の2033年までの運転期間延長を承認した。同機は韓国で2番目に古く、1983年の商業運転開始以降、当初の40年の運転認可が満了した2023年4月から運転を停止していた。韓国水力・原子力(KHNP)は2022年4月、古里2号機の継続運転安全評価書を提出し、2023年3月には、放射線環境影響評価と公聴会の結果を含む運転変更許可の申請書類を提出した。これを受け、NSSC傘下の韓国原子力安全技術院(KINS)は、2022年4月から約3年4か月にわたり安全審査を実施。外部専門家で構成する原子力安全専門委員会が予備審査を行い、「審査結果は適切」と結論づけた。NSSCは11月の委員会で、古里2号機が「十分な安全裕度を維持している」と判断し、2033年4月までの運転期間延長を認めた。KHNPは現在、定期検査と設備改修を進めており、安全性が確認されれば2026年2月の再稼働を見込んでいる。KHNPは「安全対策により、継続運転期間中の安全性と性能はさらに向上する」としている。1978年に営業運転を開始した韓国最古の古里1号機(PWR、58.7万kWe)は、運転認可30年に追加10年の延長を経て2017年6月に永久閉鎖され、同国で初めて廃炉が進められている。3号機は2024年9月、4号機は2025年8月に運転認可期限を迎え停止しており、いずれも運転期間延長に向けた審査手続きが進行中だ。今回の2号機の運転期間延長の承認は、同国における他号機の審査にも影響を与えうる「判断基準を示す先例」となる可能性がある。
03 Dec 2025
350

ベラルーシのV. カランケビッチ副首相は11月14日、ベラルシアン原子力発電所に3号機増設が決定したことを明らかにした。同日のA. ルカシェンコ大統領との会議において、同発電所の運転状況、増設の必要性などについて討議された後に決定された。また増設と同時に、電力需要の増加を鑑み、東部のモギリョフ州で新たな原子力発電所のサイト候補地を調査することも明らかにした。ベラルーシの電力消費は急増しており、2024年、ベラルーシの電力消費量は433億kWhを超え、過去5年間で60億kWh増加している。その背景に、国内電力システムに電気ボイラーが設置され、主要な居住地で、暖房や給湯のために天然ガスを電気に置換していることや、農業部門における冬季の温室の運用、電気自動車台数の増加、データセンターや鉱山開発による電力需要の増加がある。現在、フロドナ州オストロベツで同国初のベラルシアン原子力発電所1-2号機(ロシア製VVER-1200、各119.4万kWe)が稼働中。両機は、福島第一原子力発電所事故直後の2011年3月に、ルカシェンコ政権がロシアと政府間協定を締結、総工費の90%をカバーする100億ドルの低金利融資など、ロシア政府の全面的な支援を受けて建設された。1号機は2020年11月、2号機は2023年5月に送電を開始しており、2024年の総発電量に占める原子力シェアは約36%、原子力発電量は157億kWhであった。両機の稼働後、電力輸入を完全に放棄。145億㎥以上の天然ガスを代替し、外貨負担を16億ドル以上軽減。温室効果ガス排出量2,600万トンの削減に貢献しているという。
02 Dec 2025
475

スウェーデン国営電力会社バッテンフォールは11月10日、同国の産業コンソーシアムであるインダストリクラフト(Industrikraft)と、リングハルスサイトでの新規原子力発電の実現に向け、共同投資および協力を行うことで合意した。インダストリクラフトは新規原子力発電プロジェクト会社「ビデバーグ・クラフト(Videberg Kraft)」の株主となる。インダストリクラフトは、スウェーデンの脱炭素電源による電力供給を支援し、40年ぶりの新規原子力発電開発を後押しする目的で、2024年6月に設立。ABB社、アルファ・ラヴァル社、ボルボ・グループなどの国内主要企業17社から構成される。今回の合意では、責任分担、影響力、資金調達などの枠組みを定め、17社のうち9社がプロジェクト会社株式の20%を保有する。政府も同社への出資意向を示している。また、インダストリクラフト会長兼アルファ・ラヴァル社CEOのT. エリクソン氏は、本プロジェクトに4億スウェーデンクローナ(約66億円)を出資することで合意したと明らかにした。プロジェクトへの共同投資に加え、プロジェクト管理や炉型選定においてノウハウ提供などで協力する計画だ。バッテンフォールのA. ボルグCEOは、「スウェーデンの産業界は、新規建設の実現に欠かせないパートナー。これら企業がヴェーロー半島の新規建設プロジェクトの共同オーナーとなる意欲とコミットメントを示したことは、脱炭素電源に対する需要があることの現れ。プロジェクト会社は現在、国の資金調達・リスク分担制度への申請準備を進めている」と述べた。スウェーデン議会(リクスダーゲン)は今年5月、国内の新規原子力発電プラントの建設を検討する企業への国家補助に関する政府法案「新規原子力発電プラント建設の資金調達とリスク分担に関する法案」を採択した。新法は今年8月1日に施行されており、申請が可能となっている。本制度は、低利の借入コストである政府融資の利用により、資金調達コストの削減、ひいては原子力発電自体のコスト削減を目的としている。国家援助申請には、別のプロジェクト会社が必須であるため、バッテンフォールは今年4月、プロジェクト会社であるビデバーグ・クラフト社を設立した。バッテンフォールは今年8月、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所3-4号機(PWR、各110万kWe級)に隣接して建設を計画している新規炉について、供給候補4社から米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と英ロールス・ロイスSMR社の小型モジュール炉(SMR)を最終候補に絞りこんでいる。GVH社製であれば5基、ロールス・ロイスSMR社製であれば3基の合計出力約150万kWeのSMRを建設する予定である。
02 Dec 2025
414

米ウェスチングハウス(WE)社とハンガリーのMVMパクシュ原子力発電所は11月7日、燃料の長期供給契約を締結した。ハンガリー唯一の原子力発電所であるパクシュ発電所(ロシア型PWR=VVER-440, 50万kWe×4基)へ、欧州製のVVER燃料を供給する計画で、契約額は1億1400万ドル(約178億円)。同日のV.オルバーン首相とD.トランプ米大統領の会談の場で締結された。燃料供給は規制当局の認可を前提に、2028年から開始予定。MVM社は2024年10月、仏フラマトム社ともVVER-440向け燃料の供給契約を締結しており、こちらは2027年からの供給開始を見込む。従来、パクシュ発電所はほぼ全面的にロシア製燃料に依存してきたが、欧米企業との提携により、調達先の多様化を進める。今回の協力は燃料供給にとどまらず、使用済み燃料の国内貯蔵に関する米国技術の導入や、小型モジュール炉(SMR)分野での協力に向けた協議も開始される見通し。米国務省は声明で、首都ブダペストを中欧におけるSMR市場のハブと位置づける方針を示した。パクシュ1〜4号機は1982~87年に運転を開始し、現在も国内総発電量の約5割を担う。既存炉の運転期間は20年延長されており、敷地に隣接した5、6号機(VVER-1200, 120万kWe)の建設計画が進行するなど、ハンガリー政府は原子力を中長期的な基幹電源として位置づけている。
02 Dec 2025
380

英国の原子力規制タスクフォースが11月24日、最終報告書を公表。「英国における過度に複雑な規制が、原子力分野における世界的なリーダーとしての地位の相対的な低下の一因である」と指摘した上で、「抜本的なリセット」が必要であると結論。政府が新たな原子力建設プロジェクトを低コストかつ予定どおりに進めるための47の勧告を示した。同タスクフォースは、K. スターマー首相の委託を受けた、独立した専門家パネル。今年4月、元公正取引局長で同国の戦略的政策研究機関「UKリサーチ&イノベーション(UKRI)」の役員であったJ. フィングルトン氏がタスクフォースのリーダーに任命された。英国では、かつて原子力が総発電量の 25%(1990 年時点)を占めていたものの、近年の原子力建設プロジェクトはコスト高と遅延が課題となっている。こうした状況を受け、政府は 新規原子力発電所建設に必要な規制改革を加速するため、タスクフォースを設置した。同タスクフォースは、計画策定から承認に至るプロセスをどうすれば迅速化できるかを検討する使命を負っており、これらの取り組みは、クリーンで自国発祥の電力を確保するための政策パッケージ「変化に向けた計画(Plan for Change)」の一環として位置づけられている。フィングルトン氏は最終報告書の公表にあたり、「問題点は、不必要な複雑さと、結果よりもプロセスを優先する考え方に根ざしていること。抜本的な改革により規制を簡素化し、安全基準を維持または強化しつつ、最終的に安全かつ迅速に手頃な価格で原子力を実現することができる」と強調。許認可手続きの遅れをなくし、自然・環境調査を実際に効果のあるものに置き換え、さらに放射線規制も国際基準に合った合理的なものにすることで対処できると主張している。勧告には、統一的な意思決定を行う「ワンストップショップ」となる原子力規制委員会の設立、過剰に官僚的でコストのかかるプロセスを簡素化し、規制の合理化や、許容できるリスクの範囲・妥当性を明確にした安全基準への改善が含まれている。改革によって1,500億ポンドと見込まれる原子力施設の廃止措置コストだけでも数百億ドルを節約でき、消費者や産業部門のエネルギーコストの削減と、近未来の投資促進や生産性向上が可能になるとしている。英原子力産業協会(NIA)のT. グレイトレックスCEOは、「報告書の提言が実現されれば、プロジェクトをより迅速に安価に実施できる。これまで多くの場合、コストと官僚的なプロセスが、原子力を必要とするエネルギー安全保障、気候危機との闘いの妨げとなってきた。政府がタスクフォースの勧告をできるだけ早く採択するよう求める。規制が国民の信頼維持を確実にするために、業界が果たす役割と責任を認識している」と述べた。一方、英原子力規制庁(ONR)のM. フィナーティ主任原子力検査官は、「ONRは、眼前の原子力ルネサンスを認識しつつ、英国の原子力規制の将来を形作るためにタスクフォースと緊密に協力してきた。タスクフォースの作業は、ONRの新戦略の策定に反映されており、来月には公開される。戦略草案は、国民の信頼と原子力安全とセキュリティの強力な基準を中心に据えた、現代的で迅速かつ生産的な規制アプローチを示している。ONRは、厳格な安全基準を維持しつつ、規制の枠組みから不必要な負担を取り除く勧告を実施する用意がある」と述べた。
01 Dec 2025
681

アジア開発銀行(ADB)は11月24日、アジア地域で急増する電力需要に対応するため、エネルギー政策を改定し、原子力発電への支援(初の投資を含む)を可能とする新方針を発表した。原子力を「信頼性の高い基幹電源」と位置づけ、加盟国のエネルギーアクセス拡大とエネルギー安全保障の強化を後押しする。翌25日には、国際原子力機関(IAEA)とアジア・太平洋地域での原子力の平和的、安全かつ持続可能な利用促進に向けた協力覚書(MOU)を締結した。地域開発銀行がIAEAとMOUを交わすのは初めて。ADBの神田眞人総裁は、「ADBの改定されたエネルギー政策では、原子力発電をベースロード発電用の化石燃料に代わるものとして認めている。今回のMOU締結により、原子力発電を選択する開発途上の加盟国が、強固な保障措置、強力なガバナンス、および持続可能性に対する明確なコミットメントをもって原子力発電を選択することが保証される」とその意義を強調。原子力への支援は厳格な評価、安全・保安、環境・社会面での最高基準の遵守を前提としながら、急増する地域のエネルギー需要に対応するため、各国の取り組みを支援する考えを示した。両機関は今後、小型モジュール炉(SMR)の導入可能性を含めた原子力発電を模索する国々を支援し、原子力のライフサイクル全体にわたる知識基盤と技術能力の構築に向けて協力する。IAEAはまた、安全、セキュリティ、保障措置およびステークホルダーの関与に係る指針の提供などの支援を行う。さらに、ADBとIAEAとの協力は、エネルギー分野のみならず、海洋環境の保全や、深刻化する地域のマイクロプラスチック問題への対処などにも共同で取組むとしている。IAEAのR. グロッシー事務局長は、「ADBの融資能力とIAEAの技術的リーダーシップは強力な組み合わせだ」と述べ、地域全体の国々の増大するエネルギー需要に対応する協力分野を特定するために迅速に行動する意欲を示した。ADBは1966年設立の国際開発金融機関で、69の加盟国・地域(うち50はアジア太平洋地域)が参加。インフラ整備、電力・交通などの基盤開発、環境対策への融資を通じ、アジア太平洋地域の経済発展を支援している。
28 Nov 2025
631

高市首相は12月2日、就任後初めて福島第一原子力発電所とその周辺施設を視察し、廃炉の進捗状況や帰還困難区域の現状を自ら確認した。高市首相はまず、大熊町の中間貯蔵施設を訪れ、土壌貯蔵施設や、除染土壌を道路盛土に再生利用する実証事業の取組みを確認。その後、福島の復興・環境再生の取組みを発信している中間貯蔵事業情報センターに移動し、職員から説明を受けた。午後には双葉町の帰還困難区域と荒廃農地を視察し、未だ復興途上にある地域の現状に理解を深め、特定帰還居住区域制度を活用しながら、避難指示解除に向けた取組みを加速させる考えを示した。また、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任をもって取り組む決意を示した。そして、高市首相は、除去土の中間貯蔵施設を受入れた大熊町・双葉町、そして福島県に対し、改めて深い謝意を表明。福島県内で発生した除去土を2045年3月までに県外で最終処分を行うという国の方針について、「法律に基づく国の約束であり、責任をもって実現すべきものだ」と強調した。政府はこれら除染土の処分量を減らすために、放射性物質の濃度が低い土を、全国の公共工事の盛り土等に用いて再生利用する計画を進めている。すでにその第一歩として、総理大臣官邸の前庭や、霞が関の省庁の花壇などで除染土の利用が開始されている。さらに今年8月、政府は県外処分へ向けたロードマップを策定。2030年頃に最終処分場候補地の選定を開始し、2035年を目途に処分場の仕様を具体化、候補地選定につなげる計画を示した。高市首相は、「責任を持ってロードマップの取組みを進めるとともに、段階的に2030年以降の道筋も示していきたい」と述べ、改めて国の責任を明確にした。高市首相は今回の視察を通じ、福島の復興が依然として長い道のりであり、震災と事故の記憶を決して風化させない姿勢を強調。「『全ての閣僚が復興大臣である』との決意のもと、復興に向けた取組みを一層加速させる方針で、福島の再生を内閣の最重要課題として責任を持って進めていく」と強い意志を示した。
05 Dec 2025
336

東京電力は12月1日、青森県の東通村に地域共生の拠点として、「東通ヘッドオフィス」を開設した。東京電力は、東通1号機(ABWR、138.5万kW)の工事再開に向けた準備を進めているほか、同2号機(ABWR、138.5万kW)を計画中である。同社の青森事業本部は、2019年7月の設置以来、東通原子力建設所内のオフィスを間借りして業務を行ってきたが、機能・人員の一層の強化が必要と判断。今回のヘッドオフィス開設により、地域に根ざした原子力事業の推進、地域の持続的な発展への貢献を目指す。オフィス棟と社員寮の入った住居・交流施設棟から成る同施設は、それぞれ、「nooqu-OFFICE(ノークオフィス)」、「nooqu-LIVING(ノークリビング)」と名付けられた。施設名の「nooqu〈ノーク〉」とは、n(=next 次なる)、∞(=infinity持続可能な)、q(=quest 探求・追求)、u(=unite つなげる、まとめる)を組み合わせた造語だ。「これからの持続可能な地域づくりを追求し、地域とつながる施設でありたい」という想いを込めて、この名称に決定したという。ノークオフィスには、オフィス機能に加え、シェアオフィスや屋内広場など多目的に利用できる空間を設けた。屋内広場には、約200インチの大型LEDスクリーンを備え、季節に応じたイベントなど、多様な用途に対応する。誰もが気軽に集まり、地域とのつながりを育む拠点としての活用を見込む。また、災害対策として、太陽光パネルや蓄電池、非常用発電機を設置し、有事の際には地域防災にも活用できる設備を備えている。ノークリビングの2・3階は社員寮となっているが、社員食堂やコインランドリーなど一部施設を地域住民に開放する。同社は同施設のオープンを機に、地域住民のさらなる利便性向上と交流促進に貢献し、地域に根ざした原子力事業の展開、地域の持続的な発展に向けた取り組みを進めていく。
04 Dec 2025
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原子力規制委員会は11月26日の定例委員会で、「原子力規制庁職員に係る研修の現状及び今後の取組」について、原子力安全人材育成センターの竹本亮副所長より説明があり、今後の展望を含め意見交換を実施した。原子力安全人材育成センターとは、審査官や検査官らを育成するために創設された人材育成の専任機関のこと。2014年の開設以来、昨年度末までに累計1,405コース、2,366回の研修が実施されてきた。同センターは常勤職員が44名、非常勤職員が23名の計67名体制(2025年11月現在)で運営されており、行政基礎研修、国際性向上研修、eラーニング、基本知識習得研修、専門性向上研修の5つのカテゴリーに分け、計183コースを提供している。竹本副所長によると、新規採用職員には、「職員間のコミュニケーションの土台となる共通の言語が必要」という規制委の人材育成方針に基づき、法令、放射線、原子力技術などの体系的な教育を入庁初期から実施しているという。2年目以降は、規制対象施設に係る原子力規制事務所での業務経験を通じて実践力を養い、3年目以降は、階層別の研修プログラムを通して、継続的な人材成長を支える仕組みを整えている。また、語学研修にも重点を置き、国際会議の参加レベルとされる英語力を目指す体系的教育を実施していると説明した。さらに同センターでは、原子力発電所の中央制御室を模したプラントシミュレータ(PWR・BWRどちらにも対応)が導入されている。昨年度、このシミュレータを活用した研修を、延べ246名が受講したという。座学に加え、通常運転から設計基準事故、過酷事故までの挙動を体系的に学ぶ仕組みが整備されている。なお、規制委では11月28日に閣議決定された2025年度の補正予算案にて、これら人材育成のためのプラントシミュレータ更新に向け、10.9億円が新たに計上された。竹本副所長は今後の取組として、検査や審査など規制能力の向上のために、「引き続き、総合的かつ実践的な研修プログラムを行う」と語った。そのために、外部の専門的・多角的な視点を積極に取り入れた研修、シミュレータや模型を用いた実践教育の継続、基本・中級・上級の資格制度に基づく段階的スキル向上を進める考えを示し、「原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守る」という使命を実践できる職員の育成に全力で取り組むと結んだ。その後の質疑応答では、自然ハザード、とりわけ地震・津波に関する研修の位置付けに関した質問があり、竹本副所長は「耐震・津波審査部門の協力により、原子力規制庁全職員向けの基礎研修と、審査官向けの高度な専門研修を体系的に実施している」と述べ、大学教授による応用研修などを含め手厚い教育体制が整っていることを示した。
03 Dec 2025
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北海道の鈴木直道知事は11月28日の定例道議会で、泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)の再稼働について、「原子力発電所の活用は当面取り得る現実的な選択である」と述べた。北海道ではこれまで、さまざまな経済団体や市民団体との対話に加え、岩宇4町村や後志管内、道内6圏域で住民説明会を開催し、意見交換を重ねてきた。再稼働に対する不安や懸念の声も寄せられる一方で、地元4町村(泊村・神恵内村・共和町・岩内町)の議会が早期再稼働を求める意見書を採択し、4町村長が再稼働への理解を表明したことを受け、鈴木知事は地元の判断を重く受け止め、同3号機の再稼働を進める姿勢を示した。さらに知事は、「道内の電気料金が全国的にみても高水準にあり、道民の生活や道内経済に大きな影響を与えている」と指摘。また、北海道電力の齋藤晋代表取締役から3号機再稼働後の料金の値下げ見通し<既報>について、直接説明を受けたことも明らかにした。鈴木知事が、「現実的な選択」と判断する根拠として挙げた点は以下の通り。①泊3号機が新規制基準に適合していると認められたこと<既報>②国が北海道およびUPZ(緊急防護措置準備区域)内13町村の防災計画と避難計画を一体化した泊地域の緊急時対応を取りまとめ、原子力防災会議が了承したこと③再稼働により電気料金の引き下げが見込まれること④電力需要増加が見込まれるなか、安定供給の確保に寄与すること⑤脱炭素電源の確保が道内経済の成長や温室効果ガス削減に資すること今後鈴木知事は、3号機を視察し、現地で安全対策について直接確認する予定となっている。また、地元4町村長から改めて話を聞き、定例道議会での議論を踏まえて最終判断を下すとしている。赤澤亮正経済産業大臣は同日の記者会見で、「泊3号機の再稼働は、エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの実現に寄与する観点から重要だと考えている。今後も地域の理解が得られるよう、我々も努力をしていきたい」と語った。また、最先端半導体の量産を目指すラピダス社の工場の建設や、データセンターの集積が進む北海道において、産業競争力の観点から原子力発電所の再稼働が持つ意義を記者から問われた赤澤大臣は、「経産省では『ワット・ビット連携』を掲げ、安定した電力を必要とするデータセンターを発電所周辺に集積させることで産業クラスターの形成を図る政策を進めている。泊発電所3号機の再稼働が実現すれば、それら政策の一助となる。大変好ましいことだ」と強調した。
01 Dec 2025
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原子力規制委員会は11月26日の定例会合で、原子力施設上空および周辺空域の設定に向け、関係省庁との協議状況や今後の検討方針について議論した。併せて、原子力施設付近を飛行する航空機に関する事業者からの情報提供手続きを明確化し、運用を強化する方針を示した。現在、原子力施設付近で航空機の飛行が確認された場合、事業者は、関係省庁へ情報提供する取り決めがあり、昭和40年代から運用されてきた。また、国土交通省が発行する航空路誌(AIP:乗務員に提供される航空機の運航に必要な情報)には、原子力施設の位置や概要が掲載され、航空関係者が参照している。しかし近年、原子力施設の安全確保(防災訓練や緊急時対応等)や救命救護、警備活動といった業務上必要な飛行以外にも、ヘリコプター等による不必要な飛行事例の報告が増加しており、リスク低減に向けた新たな対応が求められていた。規制庁は今回、①飛行状況を写真や動画で記録し証拠として保存、②統一様式による報告、を事業者に求める方針を示した。提出された情報は規制庁から関係省庁に共有され、業務上必要でない飛行であれば関係省庁が当該関係者に注意喚起を実施する。また、規制庁は公表した情報について、後に業務上必要な飛行と確認されても取り下げない方針を明らかにした。飛行制限区域を設定するにあたり、「航空法第80条」の位置づけが論点となっている。これまで、2012年の省庁打ち合わせでは、「第80条は機内被ばく防護を目的とした規定であり、一般的な原子炉上空の飛行禁止には適用できない」とされていた。しかし、2016年のG7伊勢志摩サミットを契機に、警備上の理由から飛行制限区域設定の必要性が高まり、関係省庁との協議を重ねた結果、警備当局からの要請を受けて飛行制限区域を設定(G7広島サミット・東京五輪等)するなど、柔軟な対応へと転じてきた経緯がある。今回の会合では、国土交通省航空局が安全上および警備上の観点から、原子力施設上空に行制限区域を設定できるとの立場を示し、関係省庁の要請を踏まえた具体的検討を進める方針が説明された。また、「原子力施設やその付近上空」の範囲について、高さや対象外となる航空機など詳細は、今後検討していく。現在、原子力発電所の敷地と、その周囲約300メートルを「敷地周辺」と位置付けており、前述のAIPにおいては範囲のみ示され、高さの規定は無い。そのため、今後飛行制限を設ける場合、高度基準の検討が必要になる。規制庁では、航空機特性や気象条件を考慮しながら、より余裕ある距離の確保が望ましいとしている。今回の議論で対象となるのは、有人航空機であり、ドローン(無人航空機)は別法令で規定されているため本制度には含まれない。
28 Nov 2025
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新潟県の花角英世知事は11月26日の記者会見で、来月開会する県議会の定例会に総額約73億円の補正予算案を提出すると発表した。これらは原子力複合災害時の避難道路整備費や鳥獣被害対策など幅広い分野で使われる予定だ。そのうち約3,100万円は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)の再稼働に関する広報費等に充てられる。これら広報費について花角知事は、県議会で議論がしやすくなるよう、通常の補正予算案と議案を分けることにしたという。国の再稼働交付金を活用し、原子力発電所の安全・防災対策を県民に周知する冊子等を作成し、理解促進を図る。また、安全協定に基づき、これまでも実施してきた自治体職員による原子力発電所のチェック体制をさらに強化し、外部の専門家を交えたチームを新たに創設する。記者団から、これら理解促進事業にどのような効果を期待するかと問われた花角知事は、「定量的な数値目標は定めていないが、県民公聴会や意識調査では、安全対策に関する認知が十分に浸透していない現状が明らかになった」と述べ、「県や各市町村が長年にわたり取り組んできた防災対策を県民に正しく伝えることは我々の責務だ」と語った。これまでの意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働に肯定的であること、また、20~30代の若年層は再稼働に賛成している傾向が強いことが明らかとなっている。また、発電された電力の多くが首都圏に送られている点について問われた花角知事は、「生産地と消費地の非対称性は、電力に関わらず多くの場面で存在する。ただ新潟県民がどういった思いで原子力に関する諸問題に向き合ってきたのか、電力を使う側に知ってもらいたいとも思う」と語った。赤沢亮正経済産業大臣は11月21日の記者会見で、花角知事のこれまでの取り組みに敬意を表した上で、「国として原子力防災の充実・強化、東京電力のガバナンス強化、地域振興策の具体化を進め、丁寧な情報発信に努める」と強調。さらに、UPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したにもかかわらず、電源立地対策交付金制度が見直されていない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請した花角知事の発言に触れ、「地域の持続的発展に向け、見直しに向けた議論を深めていく」と述べた。また、赤沢大臣は「まだ再稼働が決まったわけではないが、柏崎刈羽原子力発電所6号機が定格出力で稼働したと仮定すれば、2%程度、東京エリアの需給を改善する効果がある」と電力供給面での再稼働の重要性を示した。
26 Nov 2025
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新潟県の花角英世知事は11月21日の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)の再稼働に同意する意向を表明した。判断は12月の新潟県議会に諮った上で、国へ正式に報告する。知事は同意の前提として、国に対して次の7項目を確実に対応し、責任を持って確約するよう求めた。国へ求めた7項目①県民への丁寧な説明の徹底原子力の必要性・安全性について、取り組み内容が県民に十分伝わっていないとの意識調査結果を踏まえ、国と東京電力に対し改めて丁寧な説明を要請。②新たな知見に基づく安全性の再確認最新知見が得られた場合、迅速に安全性を再確認するよう要請。③緊急時対応での国の関与強化避難・屋内退避で民間事業者では対応困難なケースに備え、国の実動組織が確実に行動できるよう、平時から関係機関の連携強化を要請。④避難道路・退避施設、豪雪対応の集中的整備原子力関係閣僚会議が示したインフラ整備を、新潟の豪雪事情も踏まえ早期かつ集中的に実施するよう要請。⑤使用済み燃料処分、武力攻撃対策、損害賠償の確保県民の大きな懸念である課題へ、国が責任を持って対応するよう要請。⑥東京電力の信頼性回復依然として十分に信頼が回復していないと指摘。国が設置する「監視強化チーム」の実効性と、活動成果の確実なフィードバックを要請。⑦UPZ拡大と交付金制度の見直しUPZ(緊急防護措置準備区域)が30km圏に拡大したにもかかわらず、電源立地対策交付金制度が見直されていない点を問題視し、公平な制度運用のため早期の見直しを要請。花角知事は容認判断の理由として、同6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格し安全性が確認されたこと、原子力発電が優れた安定供給力と国産化率を有し、国が原子力の最大限活用を推進する方針を示していること、同発電所の再稼働が東日本の電力供給構造の脆弱性や電気料金の東西格差を是正し、脱炭素電源を活用した経済成長にも寄与するとの見通しを示し、「国民生活と国内産業の競争力を維持・向上させるためには、柏崎刈羽原子力発電所が一定の役割を担う必要があるとの国の判断は、現時点において理解できる」と述べた。このタイミングで容認となった背景について花角知事は、「昨年3月に経済産業省から理解要請を受けて以来、長い時間をかけて関係各所と議論した。リスクを完全にゼロにはできないが、ただ漠然とした不安や合理性のない理由で再稼働を止めることはできないと考えていた」と説明。また、県民意識調査では、安全・防災対策の認知度が高いほど再稼働を肯定する意見が増加する傾向や、20~30代の若年層で賛成する傾向が強いことが示された一方、依然として原子力に不安を抱えている県民が多いことも明らかになった。その上で知事自身が、今月半ばに福島第一原子力発電所を視察し、事故の影響や復旧作業の現状を直接確認した事を踏まえ、「原子力規制委員会が新規制基準を策定し、その知見と教訓が柏崎刈羽原子力発電所にも適用されている」と強調。19日の定例知事会見では発電所内の新しい技術や設備の改善にも触れ、「災害発生時の柔軟な対応を可能にする可搬型(モバイル型)設備の充実は、多重防護の観点からも教訓が反映されている」と評価。また、現場で働く東京電力社員の努力についても言及し、「約5,000人の職員や協力企業の方々がチームで動く意識を持ち、コミュニケーションを重視していた。『ワンチーム』という言葉が繰り返され、意識の高さを感じた」と語っていた。また、花角知事は、自身の判断が県政全体の信頼の上に成り立つべきだとの姿勢を示し、県議会に対し、知事職継続への信任を求める意向を示した。
25 Nov 2025
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四国電力は11月20日、伊方発電所1号機(PWR、56.6万kWe)の廃止措置計画について、第2段階の実施に向けた計画変更認可申請書を原子力規制委員会に提出し、愛媛県および伊方町に対して安全協定に基づく事前協議の申し入れを行った。使用済み燃料の搬出や管理区域内設備の解体計画の作成など、第1段階の作業が計画通り完了したことを受け、廃止措置作業は次の工程へ進む。第2段階では、管理区域内設備のうち、原子炉領域周辺のポンプ・タンクなど放射能レベルが比較的低い設備の解体撤去に着手する。作業にあたっては、作業員の被ばく低減と放射性物質の飛散防止を重視し、密閉型の囲いや局所排風機を活用するほか、粉じん抑制のための適切な工法が採用されるという。また、解体撤去物のうちクリアランス制度の対象となり得るものは一時保管し、国の認可を得て一般廃棄物として再利用または処分する。クリアランス処理できない撤去物は固体廃棄物貯蔵庫で適切に管理される。伊方発電所は現在、3号機(PWR、89.0万kWe)が運転中で、1・2号機はそれぞれ2017年、2021年より廃止措置作業に着手している。廃止措置の全体工程は、第1段階「準備作業(約10年)」、第2段階「1次系設備の解体撤去(約15年)」、第3段階「原子炉容器や蒸気発生器等の原子炉領域設備の解体撤去(約8年)」、第4段階「建屋等の解体撤去(約7年)」の順で進められ、約40年をかけて実施される。同1号機の廃止措置完了は2050年代半ばを見込む。また四国電力は、同発電所の事故を想定した原子力総合防災訓練を11月28日~30日にかけて実施する予定だ。複合災害時の対応等、半島で孤立地域が発生したというシナリオで、自衛隊、警察、消防らと連携し、住民の避難経路を確保する手順などを検証する。原子力総合防災訓練は、原子力防災体制や緊急事態における連携確認、住民理解の促進等を目的として、国が主催し毎年度実施しているもの。
21 Nov 2025
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原子力規制委員会は11月19日、第14回「緊急時活動レベル(EAL)の見直し等への対応に係る会合」を開催した。EALは、原子力災害時に、原子力事業者が原子力施設の状況に応じて緊急事態レベルを判断するための基準で、2011年の福島事故を受け、国際基準を踏まえて2013年に導入された。その後、段階的な見直しを経て現在の体系に至っている。具体的には、放射線の線量変化・設備機能の喪失・格納容器の状態に応じて、「警戒事態」、「施設敷地緊急事態」、「全面緊急事態」の3区分に分類される。緊急時にはこのレベルに応じて、周辺住民の被ばく低減のための避難、屋内退避、ヨウ素剤の服用等の防護措置が実施される。今回の会合では、日本と米国およびIAEAにおけるEALの考え方を比較検証した結果が示された。その中で、日本の基準では設備機能が喪失した段階で全面緊急事態へ移行するケースが多く、実際のプラントの状態と緊急事態区分の深刻度が一致しない可能性が指摘された。結果として、避難の早期化や、緊急度の低い避難指示の発出を招くおそれがあると懸念された。いわゆる、日本のEALは設備の機能喪失に起因する発出条件が多く、今後はプラントの状態そのものに応じた実際のリスクの大きさに基づき判断する手法(放射性物質放出のリスク状態に応じる必要性)に切り替えるべきだとの意見が挙がった。EALの見直しの必要性は以前から議論され、必要な知見の蓄積が規制委の重要な研究課題となってきた。次回会合(12月中旬予定)では、屋内退避解除の判断基準を取り上げ、議論を深める予定だ。
20 Nov 2025
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北海道・東北の水産業を応援する「シーフードフェア」が11月20日、東京・JR新橋駅前SL広場で始まった。福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出を契機にスタートした取り組みで、今年で3回目を迎える。会場には浜焼きの香ばしい香りが漂い、初日から多くの来場者でにぎわった。実行委員会の一員である東京電力は、ALPS処理水の海洋放出以降、販売促進を目的とした「ホタテ応援隊」の活動を継続。今年から対象地域を北海道・東北全体に広げ、イベント名を「ホタテ祭り」から「シーフードフェア」に改めた。会場には9つのブースが並び、うち4つが初出店。青森県産ホタテ焼き、福島県産メヒカリやアンコウのから揚げ、宮城県産ホヤのほか、水産加工品、日本酒、クラフトビールなど多彩な品が提供された。約400席が設けられているが、実行委員会によると例年2日間ほぼ満席状態が続き、昨年は全店合わせて8,500食を完売したという。午後3時の開場と同時に、多くの来場者が足を運んだ。福島県の海産物専門店「おのざき」の担当者は「多くの方に常磐もののおいしさを知ってほしい」と話す。販売現場の実感として、来場者の関心の中心は「処理水問題」よりも水産物そのものの品質に向いているという。来場した女性は「SNSで知って立ち寄った。メヒカリのから揚げは初めてなので楽しみ」と笑顔を見せた。一方、水産業は課題も抱える。中国による日本産水産物の輸入停止措置が実質継続しているほか、海面水温の上昇による漁獲量の減少も懸念されている。ホタテ焼きを販売する青森県漁業協同組合連合会の担当者は「例年は7~8万トン獲れていたホタテが、今年は1万トン程度に減少している。たくさん食べてほしいが、出せるものが少ないのが現状だ」と話していた。フェアは明日21日まで開催される。開催時間は午後3時から午後8時。
20 Nov 2025
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日本製鋼所(JSW)は11月14日、松尾敏夫社長がオンラインで行った第2四半期決算説明会において、火力・原子力発電関連製品の増産に向けた約100億円規模の設備投資を発表した。室蘭製作所の発電機部材の製造設備を増強し、発電機用ロータシャフトや蒸気タービンの設備能力を2028年度末までに現在の1.5倍に引き上げる。なお、今回の投資には人員の増強なども含まれる。同社の素形材・エンジニアリング事業では、電力・原子力製品や防衛関連機器が想定を上回る受注を確保し、売上や営業利益が前年同期比で増収・増益となった。特に、電力・原子力分野の需要拡大が顕著であり、市場の回復基調が明確になっていることから、2026年度末の受注高・利益見通しを上方修正した。松尾社長は会見で「特に欧米で原子力発電の新設計画や運転期間の延長が進んでいる。フランスは改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を計6基新設するほか、カナダではSMRの建設計画が進んでいる。米国でも既設炉の運転期間延長や小型モジュール炉(SMR)の新設計画が本格化しており、将来の市場の一つとして期待している」と展望を語った。記者から「資料にはAP1000やSMRに関する記載があるが、受注状況はどうか」と問われた松尾社長は「SMRは昨年度に受注済みである。AP1000は建設が決まり、機器製造メーカーが固まれば、当社にとって大きなビジネスチャンスになるだろう」と答えた。また、日本国内でも原子力の最大限活用方針の下、既存炉の運転期間延長や次世代革新炉の開発が進む中、「使用済み燃料の輸送・保管用のキャスク部材の需要が顕著だ」と述べ、「長期的な需要増に対応する体制整備を急ぎたい」と意欲を示した。今回の設備投資では、原子力・高効率火力向け大型部材製造に必要な二次溶解装置(ESR)の更新・大型化に加え、鍛錬工程の効率を向上させる鋼材搬送装置(マニプレータ)を増設する。さらに、大型ロータシャフト需要の高水準な継続を見込み、超大型旋盤を新たに導入し、生産能力の拡大を図る。
20 Nov 2025
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MOX燃料を搭載した輸送船「パシフィック・ヘロン号」が11月17日、フランスから福井県の高浜発電所に到着した。輸送船は、9月7日にフランス北西部シェルブール港を出発し、喜望峰・南西太平洋ルートを経由し約2か月かけて到着した。関西電力によると、MOX燃料32体を積載した輸送船は17日早朝に接岸し、午前10時すぎに荷下ろしを開始。同日18時半ごろまでに、全作業工程を完了したという。同発電所へのMOX燃料輸送は、2022年11月以来で、累計7回目となる。燃料は仏オラノ社が加工したもの。使用された輸送容器は、長さ約6.2m、外径約2.5m、重量約108トンの炭素鋼製円筒容器。輸送船には自動衝突予防装置や二重船殻構造の採用、緊急時の通報体制整備など、多重的な安全対策が施されている。また、同社が実施した輸送容器の放射線量測定では、表面線量は0.03mSv/h、表面から1m地点でも0.008mSv/h以下と、いずれも国の基準値を大幅に下回った。表面汚染密度についても基準値の半分以下で、同社は「法令の基準値を満足していることを確認した」としている。MOX燃料とは、使用済み燃料から再処理で取り出したプルトニウムをウランと混合して製造する燃料。関西電力では、使用済みのMOX燃料の再処理実証に向け、2027〜29年度に使用済み燃料約200トンをフランスへ搬出する計画も進めている(既報)。
18 Nov 2025
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