海外NEWS
18 Mar 2024
386
ロシア レニングラードⅡ-3が着工
国内NEWS
18 Mar 2024
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原子力サプライチェーンシンポ 人材確保や海外プロジェクト参画など議論
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15 Mar 2024
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フランス 長期の燃料サイクル計画を策定へ
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15 Mar 2024
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原子力サプライチェーンシンポ開催
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14 Mar 2024
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韓KHNP、米セントラス社と燃料供給で協力強化
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13 Mar 2024
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オランダ AP1000導入に向けFS実施
国内NEWS
13 Mar 2024
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IAEAグロッシー事務局長来日 ALPS処理水に関し地元評議会に出席
海外NEWS
12 Mar 2024
762
米GLEのレーザー濃縮プロジェクトが加速
ロシアのレニングラード第Ⅱ原子力発電所3号機(PWR=VVER-1200、119.9万kW)が3月14日、着工した。同サイトでは、同型の4号機も建設予定である。ロシアのV.プーチン大統領は、オンラインで着工式典に参加。国内の原子力発電の見通しについて、「2045年までに、ロシアの総発電量における原子力シェアを25%にする計画だ。レニングラード発電所の新設はこの計画に大きく貢献し、ロシア北西部全体のエネルギー安全保障を向上させ、クリーンな電力供給を継続する」と語った。なお、現在の原子力シェアは約20%。現在、レニングラード発電所3、4号機(軽水冷却黒鉛減速炉のRBMK-1000、100万kW級)と隣接サイトの第Ⅱ発電所1、2号機(VVER-1200、120万kW級)が運転中。レニングラード発電所は半世紀以上にわたり、安価な電力を安定的に供給し、サンクトペテルブルク市とレニングラード州における現在の原子力発電量のシェアは55%、北西部連邦管区全体で28.5%となっている。1、2号機(RBMK-1000、100万kW級)は45年の運転期間を経て、第Ⅱ発電所1、2号機の運転開始後の2018年12月と2020年11月に閉鎖され、現在、廃止措置の準備中である。VVER-1200はロシアが開発した第3世代+(プラス)炉で、動的と静的、2種類の安全系を持ち、コンクリート製の二重格納容器や、設計基準外事象の発生時に放射性物質の漏洩を防ぐコア・キャッチャーを備える。ロシアではノボボロネジ第Ⅱ原子力発電所1、2号機で先行採用・運転されている。海外ではベラルーシで運転中、中国、トルコ、エジプト、バングラデシュで建設中だ。レニングラード州のA.ドロズデンコ知事は、「レニングラード発電所の運転は、地域産業を支え、インフラ整備のほか、大規模な地域投資プロジェクトの実施、雇用創出、医療、教育などに寄与している。近く閉鎖する3、4号機を代替する第Ⅱ発電所3、4号機が稼働すれば、発電量は20%増大し、レニングラード州に安定した経済成長をもたらす」と期待を寄せる。国営企業ロスアトムは、第Ⅱ発電所3、4号機の年間発電量を各85億kWh以上と想定している。ロスアトムのA.リハチョフ総裁は、「現在、クルスク第Ⅱ原子力発電所で1、2号機(VVER-TOI、各125.5万kW)を建設中で、年内に1号機の起動を予定。スモレンスク原子力発電所(RBMK-1000×3基)とコラ原子力発電所(VVER-440×4基)でも既存炉を代替する新設炉(スモレンスク第Ⅱ発電所で2基、コラ第Ⅱ発電所で1基)の建設を予定している。ウラル山脈以西での原子力発電を大幅に増強後、電力消費量の伸びが予想されるシベリアと極東へ進出する」との意欲を示した。
18 Mar 2024
386
フランスの経済・財務・産業及びデジタル主権省のB. ル・メール大臣は3月7日、同国の燃料サイクル戦略を2040年以降も継続することを決定し、既存の燃料サイクルプラントの運転期間を延長し、新たなMOX燃料製造プラントと再処理プラントの研究を開始する計画を発表した。マクロン大統領が主宰する原子力政策評議会(CPN)は2月26日、閉じた燃料サイクル戦略の継続を明らかにしたが、本発表は、ル・メール大臣、R. レスキュール産業担当大臣がオラノ社のラ・アーグ再処理工場を訪問した際に行われた。ル・メール大臣は、2040年以降の燃料サイクル戦略目標に向けて次の3つの取組を発表した。ラ・アーグ再処理工場とメロックスMOX燃料製造工場の運転期間を2040年以降に延長するための持続可能性および強靭化プログラムの実施ラ・アーグ・サイトにおける新たなMOX燃料製造プラント建設に向けた研究の開始2045~2050年までに、ラ・アーグ・サイトにおける新たな再処理プラント建設に向けた研究の開始ル・メール大臣は、「フランスの原子力の歴史に新たな1ページが開かれようとしている。原子力は大規模な国家プロジェクトであり、脱炭素化、エネルギー主権の強化、産業の活性化の中心にある。この戦略で最終的には放射性廃棄物の量を75%削減できる」と強調している。フランスは原子力開発計画の当初から、使用済み燃料を再処理してウランとプルトニウムを回収・再利用する閉じた燃料サイクルを堅持し、放射性廃棄物の放射能量と処分量の大幅削減を図ってきた。ラ・アーグ再処理工場で使用済み燃料の再利用可能な質量組成の約96%を分離処理して回収したプルトニウムを、メロックス工場で製造するMOX(混合酸化物)燃料に再利用している。オラノ社によると、同国の原子力発電量の約10%は現在、MOX燃料起源であり、今後さらに使用済みMOX燃料の再処理により最大約40%にまで上昇する可能性があるという。MOX燃料には現在、再処理から回収されたプルトニウムのみが使用されている。再処理による回収ウラン(RepU)は、既存の軽水炉の燃料として再濃縮して利用が可能。回収ウランの処理は2013年に中断したが、回収ウラン産業の復活に10年をかけて取り組んできた。同国南東部にあるクリュアス原子力発電所の全4基(各PWR、95.6万kW)では回収ウランの利用が認可されており、2月5日、同発電所の2号機で回収ウラン起源の燃料を全炉心装荷により運転を再開した。フランスの原子力発電事業者である国営EDFは、2027年から130万kW級の原子炉で回収ウラン利用を計画しており、2030年代には毎年装荷される燃料の30%以上を占める見込みである。これは、今後数十年で天然ウラン資源25%の節約に匹敵する。なお、オラノ社傘下のオラノUSA社は2月28日、持続可能なエネルギーソリューションに取り組む米国のシャイン・テクノロジー社と軽水炉の使用済み燃料を再処理するパイロット施設を米国で共同開発する協力覚書を締結した。パイロット施設のサイト選定を年末までに行う考え。年100トンの処理能力を有し、再処理・回収された核物質は既存炉や新規炉の燃料に再利用し、再処理過程で抽出された放射性核種は産業や医療に利用する。2030年代初頭に運転を開始する計画だ。米国は1960年代には使用済み燃料の再処理・再利用の最前線にいたが、1972年にプログラムを停止している。
15 Mar 2024
797
韓国水力・原子力会社(KHNP)は2月26日、燃料の安定供給確保のため、米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と協力意向書(LOI)を締結した。本LOI締結により、KHNPは濃縮ウラン調達先の多様化と燃料供給の安定性向上を目指すとともに、セントラス社との戦略的な関係構築による韓米間の原子力協力を強化することが狙い。KHNPは、「セントラス社との協力で、既存炉だけでなく、将来の新規炉向けの燃料確保も可能になる」と強調している。2023年4月25日、KHNPはセントラス社と了解覚書(MOU)を締結。ロシアとウクライナの戦争勃発後に大きな懸念となっている持続可能かつ信頼性のあるエネルギーの安定供給への寄与を目的に、事業拡大の機会を模索しながら、安定した燃料供給のための相互協力の強化を狙いとしていた。現在、韓国では25基が運転中で、いずれもKHNPが運転事業者である。合計出力は約2,500万kW、原子力シェアは総発電量のおよそ1/3である。なお、KHNPは韓国原子力研究院(KAERI)と、小型モジュール炉(SMR)の「i-SMR」(主要機器を原子炉容器内に統合した一体型PWR、17万kW)の開発を進めている。2025年末までに標準設計(SD)を完了し、2028年に標準設計承認(SDA)の取得をめざす。昨年12月の第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の会期中、インドネシアやヨルダンでの「i-SMR」導入にむけて、それぞれインドネシアの電力会社のヌサンタラ・パワー(PLN NP)社、ヨルダン原子力委員会と了解覚書(MOU)を締結するなど、「i-SMR」のグローバル展開に積極的だ。一方、セントラス社は、米国におけるウラン濃縮能力の再構築に取り組んでおり、昨年11月、国内初のHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))20kgを製造した。先進的原子炉ではウラン235濃縮度5%~20%のHALEU燃料使用のものもあり、既存の原子炉よりも小型化し、少ない燃料でより多くの電力の生産や、炉心寿命の延長、安全裕度の増加、効率性向上などが可能になる。現在、ロシアが大規模にHALEUを製造しており、ロシアに依存しない調達先の確保が喫緊の課題となっている。
14 Mar 2024
563
米ウェスチングハウス(WE)社は2月20日、オランダで運転中のボルセラ原子力発電所(PWR、51.2万kW)サイトに同社製AP1000×2基の増設に向けた実行可能性調査(FS)の実施契約をオランダ政府と締結した。同契約は、オランダ経済・気候政策省(EZK)のM.ヘイドラ気候・エネルギー担当局長とWE社のエネルギーシステム事業担当のE.ゲデオン上級副社長によって調印された。WE社は「FS実施は欧州連合(EU)の気候目標や2035年までにカーボンニュートラルの発電を目指すオランダの公約に沿ったものである。当社はオランダ政府を支援し、信頼性があり、かつ低コストなカーボンフリーの電力を今後数十年間にわたって提供したい」と語る。2021年12月、オランダの新連立政権は連立合意文書に原子力発電所の新設を明記。また、政府は2022年12月、新設サイトとしてボルセラ・サイトが最適と発表している。計画では、2035年までに第3世代+(プラス)の原子炉、出力100万~165万kW×2基を新設し、オランダの総発電量の9~13%を供給するとしている。現在の原子力シェアは約3%である。なお、オランダ経済・気候政策省は、昨年12月に韓国水力・原子力会社(KHNP)と、同様の実行可能性調査(FS)実施契約を締結。韓国の尹錫烈大統領がオランダ公式訪問時に締結された。オランダ政府は仏EDFとも同様の契約を結ぶ方針である。また、同省は2基新設に向けた立地選定手続きの第一歩として、企業、団体、地方自治体などから、サイト等に関する提案募集を2月23日に開始した。締切は4月4日。同省によると、提案が条件を満たしている場合、今後、建設候補地として潜在的に適しているかどうかを調査するとしている。いずれにしても、既存の立地候補であるボルセラ/フリシンゲン(スロー地区)およびマースブラクテI(ロッテルダム港)の2か所については現在調査を進めている。また同時に、ステークホルダーや地域住民の今後のプロジェクト手続きへの関与についても意見を募集中。経済・気候政策省はこれらの国家の重要プロジェクトに係る手続きを慎重に行い、2025年に立地について閣議決定した後に、入札を開始するとしている。
13 Mar 2024
703
米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社はこのほど、米国ノースカロナイナ州ウィルミントンにある試験ループ(Test Loop)施設で、レーザー濃縮技術の実証プロジェクトを加速する。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。両者は、2024年の濃縮技術の実証プロジェクト費用について、前年比の倍増で合意した。サイレックス社によると、今年、最大5,450万ドル(約80.2億円)まで増額を承認。GLE社によるサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の実証プロジェクトを年内に完了させ、ケンタッキー州パデューカ・サイトでの用地取得活動や米原子力規制委員会(NRC)の認可取得などの商業化に向けた活動を進め、早ければ2028年にパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の営業運転を開始したいとしている。GLE社はサイレックス法濃縮技術の独占行使権を保有しており、米エネルギー省(DOE)は2016年、GLE社と約30万トンの劣化六フッ化ウランを売却する売買契約を締結、PLEFで30年をかけてこれを天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。この年生産量はウラン鉱山による八酸化三ウラン(U3O8)の年生産量、最大500万ポンド(1,923tU)に相当し、現在のウラン鉱山の生産量トップ10にランク入りするという。なお、サイレックス社は、PLEFの以下の3つの商業化オプションを提示している。劣化ウラン処理による天然ウラン・グレードのUF6(ウラン235濃縮度0.7%)の生産既存原子炉用の濃縮度5%までの低濃縮ウラン(LEU)、ならびに5%~10%までのいわゆるLEU+の生産次世代の先進的小型モジュール炉(SMR)用の濃縮度20%までのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の生産そして、試験ループ施設での実証プロジェクトの成功、産業界と政府の支援、PLEFでの実現可能性評価、市場要因を前提として、サイレックス法による濃縮でGLE社が将来の原子燃料生産に大きく貢献する可能性があるとしている。なお、DOEが所有するパデューカ・サイトには、パデューカ・ガス拡散濃縮プラントが1960年代から民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、現在、サイトは環境復旧プログラム下にある。
12 Mar 2024
762
中国核工業集団公司(CNNC)は2月18日、浙江省寧波市で金七門第Ⅰ原子力発電所の起工式を開催した。2023年12月29日、国務院常務会議は同発電所の1、2号機の建設計画を承認している。同発電所では、中国が独自開発した第3世代PWR「華龍一号」(HPR1000)を採用。同サイトではこの1、2号機を含め、計6基の「華龍一号」を建設予定である。CNNCによると、全基が稼働すると合計設備容量は約720万kWとなり、年間550億kWhを発電、これは年間約5千万トンのCO2削減に相当するという。建設期間は60か月、1号機の運転開始は2028年末頃を見込む。CNNC傘下のCNNC浙江エナジー社がプロジェクト管理、建設および運転管理を担当する。また、2月22日には、福建省でCNNCの漳州第Ⅱ原子力発電所1号機が着工した。2022年9月の国務院常務会議で、同発電所における「華龍一号」採用の1、2号機(各112.6万kW)の建設計画が承認されている。同サイトの漳州第Ⅰ発電所では「華龍一号」の1、2号機(各112.6万kW)が建設中で、それぞれ2024年、2025年に営業運転を開始予定。2号機では冷態機能試験の準備が進行中である。さらに、CNNCは「華龍一号」×2基採用の漳州第Ⅲ発電所を計画中。漳州原子力発電所プロジェクトは、CNNCと中国国電集団(CGC)がそれぞれ51%、49%を所有する合弁企業CNNC-国電漳州エナジー社が運営する。なお、CNNCは海南省の昌江原子力発電所3、4号機においても「華龍一号」(各120万kW)を建設中で、それぞれ2021年3月、2021年12月に着工している。一方、中国広核集団(CGN)は2月27日、国家核安全局(NNSA)から防城港原子力発電所4号機(華龍一号、118万kW)の運転許可を取得した。同機は昨年9月に温態機能試験を実施。近く燃料装荷し、今年前半にも運転開始予定。3号機は2023年3月に営業運転を開始したCGN設計による初の「華龍一号」である。同発電所では計6基の稼働を計画しており、1、2号機(CPR-1000、各108.6万kW)は2016年に営業運転を開始した。同発電所は、CGNが61%、広西投資集団が39%を所有する。発電以外の利用として、CNNCが2月27日に中国初の産業用原子力蒸気供給プロジェクトの試運転を開始した。江蘇省の田湾原子力発電所3、4号機(PWR=VVER-1000、各112.6万kW)から近隣の連雲湾石油化学工場に蒸気を供給する。両機の二次系統から蒸気を取り出し、多段階の熱交換を経て、断熱された地上パイプラインで工場に運ぶ。パイプラインの総距離は約23.36km。すでに毎時280トンの安定した蒸気流量を記録しており、年間480万トンの蒸気供給を見込んでいる。商業運転は今年6月に予定されている。
11 Mar 2024
947
米国のGEベルノバ社は2月14日、傘下のグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社がウラン235の濃縮度8%までの燃料製造、輸送、挙動解析で米原子力規制委員会(NRC)から認可を取得したことを明らかにした。この認可取得により、米ノースカロライナ州ウィルミントンにあるGNF社の施設は、濃縮度8%までの燃料製造認可を持つ米国初の商業施設となる。NRCは同時に、GNF社が自社のRAJ-II輸送コンテナを利用して、濃縮度8%までの燃料集合体の輸送を認可する適合証明書も発給した。また、GNF社が濃縮度5%を超える燃料解析を可能にする先進的な原子力解析法に関する許認可トピカルレポート(LTR)も承認した。いずれも、GNF社とGEベルノバ社の先進事業部門が、米エネルギー省(DOE)の事故耐性燃料(ATF)開発プログラム下で実施した成果である。NRCは2023年8月、国内商業炉に濃縮度5%超の燃料の装荷を初認可し、これにより、サザン・ニュークリア社はボーグル2号機で濃縮度6%までのATFを装荷することが可能となった。現在、運転中の商業炉では濃縮度約4.8%までの低濃縮ウランが使用されている。濃縮度10%までの高濃縮度燃料(LEU+とも呼称)では、既設原子炉の他、先進炉や小型モジュール炉(SMR)を含む次世代原子炉で、出力増強等による経済性向上が期待できる。
08 Mar 2024
895
インド原子力省(DAE)は3月4日、同国南部のタミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初の高速増殖原型炉「PFBR」(50.0万kW)で、燃料装荷を開始したと発表した。燃料装荷には、N. モディ首相が立ち合うなど、国を挙げてFBR開発に取り組む姿勢を示している。PFBRは、2003年10月に設立されたDAE傘下のバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI)が開発した国産の高速増殖原型炉。2004年に着工され、DAEによると、これまでに200以上のインド企業が協力し、設計、建設された。当初の完成予定は2010年であったが、さまざまな技術的課題に直面し、着工から燃料装荷まで約20年の月日を要した。今後、運転が開始されれば、インドはロシアに次いで世界で2番目となる高速増殖炉の商業運転国となる。インドの原子力発電開発計画は、国内で豊富なトリウムを燃料とする「トリウム・サイクル」が開発初期からの一貫した基本方針。インドはこれまで、第1段階となる従来の重水炉・軽水炉路線に続き、第2段階としてFBRの開発を進めており、今回の燃料装荷は、続く第3段階におけるトリウム資源利用への大きな足がかりとなるものである。DAEによると、さらに6基の同規模FBRの建設計画があるほか、トリウムを利用したAHWR(新型重水炉)の研究開発にも力を入れている。ナトリウム冷却高速炉であるPFBRは、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を燃料としており、プルトニウムと核分裂性ウラン233を増殖させるために、ウランとトリウムのブランケットを装荷する。それにより、プルトニウムとウラン233を増殖させ、将来のAHWR用燃料として利用する計画だ。PFBRについてDAEは、使用済み燃料を再利用することから、「放射性廃棄物を大幅に減容し、大規模な地層処分施設の必要性を回避できる」と強調している。インドではこれまで、インディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)を中心に、高速炉開発を積極的に進めており、1985年から高速実験炉FBTR(13.5万kW)を運転中。今年1月2日には、高速炉燃料用大規模商業再処理プラントの前身となるIGCARのPFBR燃料再処理実証プラント(DFRP)の竣工式にモディ首相が出席、2月にも同首相は、20日に送電を開始したカクラパー4号機(PHWR、 70.0万kW)を訪問している。
08 Mar 2024
911
チェコ電力(ČEZ)は2月14日、所有・運転するドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基、各51万kW)に年末をメドにウェスチングハウス(WE)社製燃料が初納入されることを発表した。テメリン原子力発電所(各108.6万kW、VVER-1000×2基)の1号機では、2019年に6体のWE製燃料集合体が試験装荷され、現在、ČEZ社とWE社が燃焼特性を評価中だ。試験装荷の結果はドコバニ発電所用燃料の仕様決定等の準備に活用されている。WE原子燃料部門のトップであるT.チョホ氏は、「当社にはVVER-1000に1,500体の燃料集合体を納入し、問題なく運転している実績がある。今回、ドコバニ発電所に最新版のVVER-440用燃料集合体を初納入するが、ウクライナのリウネ原子力発電所のVVER-440×2基にすでに装荷実績があり、同様に成功すると確信している」と語る。2010年代末、それまでロシアの核燃料会社TVEL社に依存していたVVER用燃料の調達先を見直すEUの政策に則して、ČEZ社は燃料調達先を多様化する取り組みを始めた。2018年開始の入札に基づき、2022年にはテメリン発電所用燃料集合体の供給契約をWE社およびフラマトム社と締結。ドコバニ発電所用燃料については2023年、リウネ発電所に燃料を供給したWE社と契約を結んだ。これにより、今回のドコバニ発電所への燃料納入が実現する。ČEZは2022年、エネルギー安全保障の強化に重点を置き、燃料備蓄量のさらなる増量を決定、両発電所の管理区域内にある特別貯蔵庫の容量も拡大している。ドコバニ発電所では、少なくとも3年分の燃料備蓄を計画している。また、連続運転サイクルの長期化が可能となり、テメリン発電所では18か月、ドコバニ発電所では16か月となる。これにより、ČEZ社は2030年までに年平均320億kWhの原子力発電量の達成を見込む。2023年には両発電所で304億kWhを発電、総電力需要の36%を占め、毎年約2千万トンのCO2の排出削減に貢献している。なお、現在の新規原子力発電計画には、最大4基の大型炉新設の他、小型モジュール炉の展開可能性が含まれている。仏マクロン大統領が民生用原子力協力を含む二国間協力の強化のためにチェコ訪問中の3月5日には、ČEZ社は仏オラノ社とドコバニ発電所向けのウラン濃縮役務提供に関する契約を締結した。2023年末のテメリン発電所向けの転換と濃縮役務の長期契約に続くもの。ČEZ社は今回の契約について、欧州での燃料確保を確実にし、エネルギー安全保障を一層強化するものと評価している。
07 Mar 2024
656
米国のA.W.ボーグル原子力発電所4号機(PWR、125万kW)が3月1日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は2月14日に初臨界を達成している。ボーグル発電所では、3-4号機としてウェスチングハウス社製AP1000を2基増設する計画で、3号機は2023年7月に営業運転を開始している。4号機では今後、起動試験を継続する。同機の共同所有者であるジョージア・パワー社によると、今年第2四半期(4~6月)に営業運転を開始する見込みだ。ボーグル3、4号機はジョージア州内の4社が共同所有しており、サザン・カンパニーの子会社であるジョージア・パワー社が同プロジェクトに45.7%出資、オーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力がそれぞれ30%と22.7%、および1.6%出資、サザン・カンパニーの子会社のサザン・ニュークリア社が運転する。
06 Mar 2024
983
フィンランドで原子力発電所を所有・運転するフォータム社とティオリスーデン・ボイマ(TVO)社は2月13日、ポーランド初の原子力発電所の導入にむけて技術支援を行うため、Polskie Elektrownie Jądrowe(PEJ)社と2年間の枠組み契約を締結した。PEJ社は国営の特別目的会社(SPV)で、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転を担当する。この枠組み契約は、同国北部のポモージェ県に新設される3基の米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000の設計、エンジニアリング、運転準備でのPEJ社支援が目的。今回、競争入札で選定されたフォータム社の原子力サービス本部とTVO社傘下のTVOニュークリア・サービス(TVONS)社が、原子力発電所の許認可手続きや設計段階で、運転者のPEJ社を支援する。PEJ社は、将来の運転者としてのニーズへの対応や原子炉供給者であるWE社と主契約者であるベクテル社のコンソーシアムとの契約履行状況の確認のほか、燃料戦略や放射性廃棄物管理戦略の策定における協力とノウハウのシェアなどの支援も想定。フォータム社とTVONS社は、プラントスタッフの訓練計画や運転員の詳細な業務範囲を規定する行動計画の策定においてもPEJ社を支援する。2022年11月、当時のポーランド政府は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設する原子力発電所の採用炉型として、WE社製「AP1000」を選定。同国の気候環境省は昨年7月、PEJ社に対して発電所建設の原則決定(DIP)を発給し、9月にはWE社、ベクテル社、PEJ社の3社がエンジニアリング・サービス契約を締結した。初号機は、2033年の営業運転開始を目指している。
06 Mar 2024
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カナダ連邦政府は2月29日、オンタリオ州のブルース原子力発電所の増設プロジェクトに関する実行可能性調査(FS)を支援するため、ブルース・パワー社に5,000万カナダドル(約55.4億円)を拠出すると発表した。本発表は、オタワで開催されたカナダ原子力産業協会(CNA)の年次大会の席上、カナダのエネルギー天然資源省のJ.ウィルキンソン大臣が行った。今回の資金拠出は、ネット・ゼロ経済の構築に向けた連邦政府の計画「Powering Canada Forward」や、オンタリオ州の経済成長に向けたクリーンな長期的電力システム構築計画「Powering Ontario’s Growth」に沿ったものである。J.ウィルキンソン大臣は、この資金拠出が、経済を促進しつつ、パリ協定に基づく排出削減目標を達成するという連邦政府のコミットメントに沿って、カナダ国内のパートナーと協力して、クリーンで信頼性の高い手頃な価格の電力システムを全国に構築するという連邦政府の目標を支援するものであり、オンタリオ州で良質な雇用と経済成長を牽引するものであると強調した。オンタリオ州のT.スミス大臣は、ブルース発電所で大規模な増設が可能になれば、オンタリオ州の世界有数の信頼性の高い、手頃な価格のクリーンな電力システムへのアクセスを目指して海外からの投資が集中するとし、今回の連邦政府による支援への期待を語った。ブルース・パワー社は、ブルースA発電所(1~4号機)、B発電所(5~8号機)で各80万kW級のCANDU炉×計8基を運転中で、3~8号機の運転期間延長プログラムと主要機器交換を主とする大規模改修がスケジュール通りに予算内で進行中である。1、2号機は既に改修が終わっている。オンタリオ州の要請により、ブルース・パワー社は現在、「ブルースC」プロジェクトとして、自社のサイト内に計480万kWの増設に向けた可能性評価のため、周辺住民や環境等に対する潜在的影響の評価(Impact Assessment=IA)手続きを進めている。連邦政府からの資金を活用し、IAの完了とサイト準備許可(LTPS)の申請、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携活動、技術面・環境面・工学面の調査と評価など、「ブルースC」プロジェクト開発へ向けた主要作業を実施する。ブルース・パワー社のM.レンチェック社長兼CEOは、「ブルースC増設に向けた作業への連邦政府からの資金拠出は、連邦政府と州政府が民間部門と協力して、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携や、オンタリオ州とカナダの全国民に長期的なクリーン・エネルギーをもたらすプロジェクト開発を支援している素晴らしい例である」と述べた。また、CNA年次大会では、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)社が「カナダにおけるウェスチングハウス(WE)社製AP1000プロジェクトの経済的影響」を発表。PwC社によると、WE社はオンタリオ州に4基の「AP1000」設置を検討しており、製造、エンジニアリング、建設段階(2025~2040年)を通じてカナダのGDPに287億カナダドル(約3.2兆円)の経済効果を与え、稼働を開始すれば、年平均でGDPが81億カナダドル(約8,980億円)増加し、1.2万人の雇用を生み出すという。カナダのCO2排出削減を支援する他、国内のサプライヤーにも新たな機会をもたらすことが予想されている。WE社は、今年オンタリオ州キッチナーに新しいエンジニアリング・ハブを開設するなど、カナダに原子力プロジェクト支援拠点を拡大している。オンタリオ州だけでなく世界で展開される「AP1000」プロジェクトでカナダのサプライヤーを活用することで、1基あたり8.8億カナダドル(約975億円)のGDP増となる可能性があると言及。また、WE社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」やマイクロ炉「eVinci」の展開においてもカナダのサプライヤー活用を想定している。
05 Mar 2024
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日本原子力産業協会と資源エネルギー庁による第2回「原子力サプライチェーンシンポジウム」が3月14日に都内ホールで開催された。〈既報〉来日中の国際原子力機関(IAEA)ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長による挨拶、「原子力産業の未来」と題するセッションに続き、サプライチェーン強化の取組として、人材育成・確保、海外プロジェクトへの参画、供給途絶対策の3つの個別テーマを設け議論。近藤寛子氏(マトリクスK代表)がファシリテータを務め、文部科学省、大手メーカーの他、原子力発電プラントの運用を支える国内バルブメーカー、日本の技術力に期待を寄せる海外企業も登壇した。その中で、人材育成・確保については、産官学によるプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」で国際化分科会主査を務める日立製作所・吉村真人氏が10年先を見据えたロードマップを示し、国内外、産業界、大学・研究機関、学生らを巻き込んだ広範な取組を進めていく必要性を強調。技術者教育に関しては、東芝エネルギーシステムズの小向夕紀氏が、同社の取り組む将来の革新軽水炉「iBR」開発などを踏まえた教育プロセスを紹介。社会人としての基礎教育、ものづくり、グローバルな視点とともに、原子力技術者としての安全文化醸成も重視した「高い専門性を有するプロフェッショナル」育成を目指していると強調した。海外プロジェクトへの参画については、米国ホルテック社がミシガン州に建設する「SMR-300」(電気出力30万kW)プロジェクトにおける三菱電機との計装機器関連の協働を紹介。SMR(小型モジュール型炉)の固有の安全性、工業地域への熱供給の可能性、既存軽水炉の許認可が準用できるといったメリットをあげ、「今後、世界の需要に応えていくには、日本のサプライヤーとも協力していく必要がある」と、日本の技術力活用に期待を寄せた。また、原子力分野の国際連携強化と海外展開支援に関し、原産協会の植竹明人常務理事が2023年11月28~30日にフランス・パリで開催された「世界原子力展示会」(WNE2023)について紹介。同展示会の会場レイアウトを図示し、88か国・地域から約23,600人が参加した盛況ぶりを述べる一方、中国や韓国に比して日本の占める展示スペースが見劣りしていたことに懸念を示した。供給途絶対策については、CGD(Commercial Grade Dedication、一般品を評価・検証することで原子力施設での使用を可能とする手法)の取組が焦点となった。その中で、日本電機工業会原子力部長の小澤隆氏は、54年前の同日、国内初のBWRプラントである日本原子力発電敦賀1号機が運開したことに触れ、これまで60年余にわたり築かれた国内サプライチェーン発展の経緯を振り返るとともに、福島第一原子力発電所事故以降の状況として、新規プラント建設の停滞による経験者の高齢化・リタイヤを懸念。大手メーカーとして、日立GEニュークリア・エナジーからは、電動弁、排風機など、CGDの適用可能が確認済みの品目とともに、「原子力品としての供給力が困難となった製品、設計変更により供給不可となった製品、従来のサプライヤーが撤退した製品」の品質レベルを維持した供給に向けて、その適用意義が述べられた。また、サプライヤーとして、岡野バルブからは、「新規採用品を一般品とすることができれば、サプライヤーの候補や製品選択肢の幅が大きく広がる」メリットがある一方で、シビアアクシデント対策など、新たな調達品目により、不適合・トラブル対応時の影響や、品質管理規格の高度な要求から、労力・コストに見合った顧客対応に支障をきたす可能性が課題としてあげられた。
18 Mar 2024
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日本原子力産業協会と資源エネルギー庁は3月14日、国内原子力関連企業による海外展開や事業承継、人材育成支援などの原子力サプライチェーン維持・強化策を紹介・議論し、取組を加速すべく、「原子力サプライチェーンシンポジウム」を都内ホールで開催。オンラインも含め約400名が参加した。同シンポジウムの開催は、昨春に続き2回目。前回、経産省より「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)の設立が発表され、NSCPの枠組みを通じ、原子力人材の育成・確保、部品・素材の供給途絶対策や事業承継、海外プロジェクトへの参画に対し、地方経済産業局とも連携した支援態勢を構築する取組が進められている。シンポジウム開会に際し、挨拶(ビデオメッセージ)に立った齋藤健経済産業相は、昨年末のCOP28の成果などから、「世界では原子力の必要性を再認識する動きが着実に加速している」と期待。その一方、国内で元旦に発生した能登半島地震にも鑑み、今後の原子力活用に向け、「福島第一原子力発電所事故への反省を一刻も忘れることなく、高い緊張感を持って安全最優先に万全の対応を行うことが大前提」とあらためて強調。さらに、東日本大震災後の13年を振り返り、原子力発電所新規建設の機会が失われていることから、「次世代にバトンを引き継ぐ時間的猶予は殆ど残されていない」と、技術基盤・人材確保の維持を危惧し、政府として官民ミッション団の北米派遣など、同志国とのサプライチェーン交流を通じて、政策支援の多角化を強化していく方針を示した。今回のシンポジウムには、来日中のラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長も出席。同氏も、COP28を振り返り、「再生可能エネルギーと原子力が並び、国際的なコンセンサスが得られるようになってきた」と、原子力の役割に期待。海水淡水化やデータセンターへの運用など、原子力技術の多様な可能性にも言及したほか、近くベルギーで開催予定の各国首脳が参集する原子力エネルギーのサミットについて紹介し、新たな原子力市場・プロジェクトの開拓をリードしていくことに意欲を示した。また、グロッシー事務局長は、「産業界も規制当局も一つの傘の下で議論する必要がある」と指摘。IAEAとして「皆様と新しい時代を切り拓いていきたい」とエールを送った。また、原産協会の三村明夫会長も、挨拶の中で「原子力発電の積極的な活用の機運は、国内外にて極めて高まっている」と強調。近く検討が開始される次期エネルギー基本計画に向けて、「原子力の役割がより具体的に示される必要があり、そうなるものと信じている」とした。さらに、日本の原子力開発を振り返り、原子炉圧力容器や発電タービンなど、主要機器の国内供給比率は9割に及び、プラント保守も50年以上の経験を有すると、国内サプライチェーンの技術力を再認識し、「既存炉の最大限の活用にとどまらず、新設炉の建設において大いに力を発揮する」と期待を寄せる一方で、具体的な新規建設計画が停滞していることから、「産業基盤の劣化が進行する」と、現状を危惧。今回のシンポジウムでは学生も参加し合同企業説明会が併催されることに触れ、「これからの原子力産業界を背負っていく可能性のある皆さんに世界の原子力利用推進の熱量を感じ取ってもらいたい」と強調した。「原子力産業の未来」と題するセッションでは、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会をリードした山口彰氏(原子力安全研究協会理事)が講演を行ったほか、三菱重工業より革新炉開発の取組について発表。サプライチェーン強化の取組に関する個別テーマについては、人材育成・確保、海外プロジェクトへの参画、供給途絶対策に関する3つのセッションが設けられ、資源エネルギー庁、文部科学省、日本電機工業会、大手メーカーの他、原子力発電プラントを支えるバルブメーカー、日本の技術力に期待を寄せる海外企業などが登壇し議論した。
15 Mar 2024
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福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策に係る資源エネルギー庁の評議会が3月13日、福島県いわき市で開催された。今回会合には、来日中のラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長も出席し、ALPS処理水の安全性レビューに関して説明し意見を交わした。同評議会は、県および立地市町村との意見交換の場として、随時行われているもの。ALPS処理水の海洋放出は2023年8月に開始。日本政府との覚書に基づき実施されているIAEA専門家による安全性レビューミッションが同年10月、海洋放出開始後、初めて行われ、2024年1月30日には、日本の取組について「妥当」とする報告書が公表されている。グロッシー事務局長の来日は昨夏以来。今回の評議会で同氏は、当時、日本政府に提出したALPS処理水の安全性に関し、IAEAが取りまとめた包括報告書についてあらためて言及。「IAEAは大変重要な意志決定を行った」と述べるとともに、「環境にマイナスの影響が及ばないようしっかりとプレゼンスを示していく」との強い姿勢を示した。これに立脚し、独立した評価を担保すべく、福島第一原子力発電所構内にIAEA職員を駐在させている意義を繰り返し強調。海洋放出の現状に関しては、「放出されているのはまだ5%未満に過ぎず、長い道のりの最初の段階にある」と述べ、引き続き「高い透明性、正確な技術を持ち、オープンに対話する」必要性を述べた。一方で、「近隣諸国からIAEAの活動自体に対する批判がある」と、政治的な懸念も示した上で、「皆様から色々なことを学んでいきたい」と、忌憚のない意見を求めた。グロッシー事務局長は、12日には齋藤健経済産業相との会談、東京大学での講演会などに臨んだ。13日には同評議会への出席後に福島第一原子力発電所を視察し14日には資源エネルギー庁・日本原子力産業協会主催の「原子力サプライチェーンシンポジウム」に出席する。
13 Mar 2024
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京都フュージョニアリングは3月12日、筑波大学とプラズマ加熱に関する特別共同研究契約を締結したと発表した。核融合エネルギーの早期実現を目指すもの。〈発表資料は こちら〉同社は、京都大学発のベンチャー企業で、核融合反応を起こすために必要なプラズマ加熱システム「ジャイロトロン」の開発・販売を主力事業の一つとしている。核融合発電試験プラント「UNITY」の建設を目指し、昨秋には、京都府久御山町に自社研究開発施設「京都リサーチセンター」を開設。海外との連携意欲も旺盛で、北米企業・研究機関との受注契約や協力覚書締結に続き、2月には、英国原子力公社(UKAEA)とトカマク型炉のブランケット設計に係る技術開発に共同で取り組むべく包括協定を締結している。核融合反応でカギとなるプラズマ閉じ込め方式は、ITER(国際熱核融合実験炉)計画で採用されるトカマク型の他、ヘリカル型、ミラー型、レーザー方式があり、今回、同社が特別共同研究契約を締結した筑波大は、その中で、ミラー型の世界最大級となるプラズマ閉じ込め装置「GAMMA-10」を保有。「GAMMA-10」では、核融合反応に不可欠な超高温プラズマの持続方法などを検証することができ、プラズマ加熱に関する様々な試験を行う。今後、両者は、低周波ジャイロトロンにおける連続動作の実証や高出力化の開発などを通じ、プラズマ加熱に関する技術成熟度の向上を目指す。なお、昨今、政府による「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」(2023年4月統合イノベーション戦略推進会議決定)を受け、国内民間企業による核融合エネルギー実用化に向けた海外投資の動きも顕著だ。3月7日には、伊藤忠商事が、米国スタートアップ企業のブルー・レーザー・フュージョン(BLF)社と資本・業務提携を締結したと発表している。カリフォルニア州に本社を置くBLF社は、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が共同創業者として2022年に設立され、レーザー方式による核融合商用化を目指している。
12 Mar 2024
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福島第一原子力発電所事故から13年に当たり、3月11日、原子力規制委員会の山中伸介委員長が原子力規制庁職員らに訓示を行った。山中委員長はまず、元旦に発生した能登半島地震を振り返り、「多くの方々が犠牲となり、いまだに避難生活を余儀なくされている」と、被災者への哀悼および見舞いの意を述べた上で、強い揺れに見舞われた石川県志賀町に立地する北陸電力志賀原子力発電所について、「安全性が確保された状態が続いているが、現地検査官は引き続き、その状態が維持されていることを確認して欲しい」と指示。さらに、「自然災害は避けることはできない。しかし、どのような自然災害に対しても、福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こしてはならない」と、あらためて事故の反省・教訓を忘れぬよう訓示した。一方で、「日々の業務を進めていく中で、熱い気持ちが冷めていくことはないだろうか」と、事故後13年が経過し、継続的改善の姿勢が緩むことを危惧。山中委員長は、大阪大学で教鞭を執っていた経験などを踏まえ、「学びとは真理(まこと)を胸に刻むこと。教えとは希望を人に語ること」というフランス詩人のルイ・アラゴンによる名言を紹介し、「教えることで学ぶ。教えてみて、初めて自身の能力・技量を自ら測り、自身の無知を知り、明日への学びにつながっていく」と、知識・経験の伝授を通じて「原子力規制委員会全体の活力」向上に向け相乗効果が図られるよう期待した。原子力規制委員会は2012年に発足し、現在、当初の委員らはすべて交替。3代目委員長として指揮を執る山中委員長は「原子力に100%の安全はない」と、現状に慢心せず科学技術的視点に立脚した判断を行う同委の行動理念をあらためて強調。29年前の阪神淡路大震災による被災経験も振り返り、原子力災害からの復興が長期化していることを懸念しながら、「10年後の自分自身について考えて欲しい。最上のものは過去ではなく未来にある」とも述べ、変化を恐れず職務に当たるよう訓示した。
11 Mar 2024
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消費者庁は3月7日、東日本大震災後の農林水産物に対する消費者意識の実態調査結果を発表した。調査は2013年2月の初回以降、ほぼ年1回行われている。17回目となる今回は、被災地域(岩手、宮城、福島、茨城の各県)および被災県産農林水産物の主要な仕向け先(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫の各都府県)に居住する20~60代の男女約5,000名を対象として、2024年1月~2月にインターネットを通じて実施。その結果、普段の買物で産地を気にする理由として「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合は9.3%となり、前回の10.5%を下回り、これまでで最小となった。同様に、放射性物質を理由に購入をためらう産地として「福島県」、「被災地を中心とした東北」、「東北全域」、「北関東」と回答した人の割合も減少傾向を示し、それぞれ、4.9%、3.4%、1.3%、1.1%と、いずれもこれまでの調査で最小を記録。「食品中の放射性物質の検査が行われていることを知らない」と回答した人の割合は61.5%で、2020年度調査で急増後、最近4年間は横ばい傾向にある。また、風評を防止するために行うべきこと(複数回答可)としては、「それぞれの食品の安全性に関する情報提供」をあげた人が45.9%で最も多く、これに次いで、「食品に含まれる放射性物質に関する科学的な説明」が30.6%、「それぞれの食品の産地や産品の魅力に関する情報提供」が29.7%、「海外と比較し厳しい安全対策を実施している旨の内外への情報提供」が26.7%となった。一方で、「何もやっても安心できるとは思わない」との回答割合は18.7%を占め、前回調査の14.8%から3.9ポイント増加。消費者庁では、食品安全委員会や厚生労働省とともに、生産者・流通関係者・消費者団体を招いた食品リスクコミュニケーションに係るシンポジウムを全国都市部で継続開催し、理解・対話活動に努めているが、「風評の固定化」に係る懸念も浮き彫りとなっている。今回の調査結果を踏まえ、消費者庁では、引き続き関係府省庁や地方自治体とも連携し、意見交換会の開催、多言語によるパンフレット活用などを通じ情報発信に取り組んでいくとしている。
08 Mar 2024
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電力広域的運営推進機関(OCCTO)に設置された有識者検討会では、2040・2050年を時間軸とした電力需給シナリオについて、昨秋より、多様性、客観性、事後検証性、発展性をポイントに、専門的知見を有する「技術検討会社」として、電力中央研究所、地球環境産業技術研究機構(RITE)、デロイトトーマツコンサルティング合同会社の3社からヒアリングを行い、2024年度末までの取りまとめを目指し検討を進めている。同検討会は3月5日、4回目の会合を開催した。〈配布資料は こちら〉今回会合では、産業構造変化に伴う電力需要見通しについて、事務局が1~2月に実施した作業会で業界団体から寄せられた意見を踏まえ、データセンター、半導体、自動車産業、鉄鋼産業、化学産業、自家発関連、熱需要の各要素に係る電力需要の分析結果を整理。その中で、通信ネットワークを支える重要なインフラ設備となるデータセンターに関しては、大手通信会社3社の2022年における電力需要が86億kWh程度(日本の電力需要全体の1%弱)にも上っている現状が示された。特に、リモートワーク・ワーケーションが急速に普及し始めた2020年以降、高速通信を可能とする「5G設備」の本格的な設置準備が供用空白エリアを埋めるべく進んだこともあり、昨今、データセンターに係る電力需要の増加傾向が顕著となっている。さらに、「データ量は指数関数的に増加しており、2017~22年で年間平均成長率は30%」、「情報処理システムに係る需要設備であることから、常時、電力使用の変動が小幅で一定。そのため増加する電力需要に対応し、供給力のベースアップが必要」などと指摘した。これを受け、電中研社会経済研究所の間瀬貴之氏らが、産業構造変化を踏まえた2050年度までの電力需要想定について発表。データセンターにおける電力需要増については、決定要因となるパラメーターとして、「床面積」と「平均電力密度」(電力需要/床面積)に着目し、2030年代前半までの増加分について、電力需要増に関する昨秋の電気新聞報道(500億kWh)、OCCTO供給計画(300億kWh)、技術革新・省エネにより需要増の要因は鈍化または同程度、の3ケースを前提としたそれぞれ、「High」、「Mid」、「Low」のシナリオを提示。その結果、2050年度のデータセンターの電力需要を430億~2,110億kWhと想定し、「データ利用量が増加していくことは確度が高い」とする一方で、基地局の立地や技術開発の動向などから「将来が読みづらい」と、今後の検討に向け、不確実性を十分に認識しておく必要性を強調した。この他、RITEシステム研究グループリーダーの秋元圭吾氏が独自の温暖化対策評価モデル「DNE21+」による分析結果を紹介し、データセンターの電力需要に関しては、半導体需要増のシナリオモデルを高位・中位・低位のケースで想定・分析。2050年時点で、およそ3倍もの開きがあることを図示した上で、「価格弾力性を考慮する」必要性などを指摘した。デロイトトーマツコンサルティングの濱﨑博氏らは、日本を地域別人口や工業製品出荷額に応じ按分した電力需要の分析モデルを紹介。2050年のデータセンターの消費電力増については、科学技術振興機構のデータをもとに960億kWhと想定した上、将来的に「立地場所と地域的な電源配置の計画を合わせて検討していくことが重要」などと指摘した。今回、それぞれの分析結果により想定幅が見られたことなどを踏まえ、OCCTOでは、引き続き「技術検討会社」とさらにコミュニケーションを深めていくとしている。
07 Mar 2024
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原子力発電環境整備機構(NUMO)は3月1日、「私たちの未来のための提言コンテスト」の受賞作品を発表した。NUMOでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分を進めるに当たり、将来的に世論形成の中核となる次世代層に関心を持ってもらうため、学生を対象に、処分事業の理解促進につながる方策をテーマに「提言」を募集している。5回目となる今回は、2023年9月~24年1月の募集で計198編の「提言」が寄せられた。「高専4年生以上・大学生・大学院生」と「中学生・高校生・高専3年生以下」の2部門で審査が行われ、「高専4年生以上・大学生・大学院生」の部門では、最優秀賞として、東海大学大学院工学系研究科の地井桐理子さんによる「地層処分が抱えるコミュニケーション的課題と、当事者意識を生むためのきっかけづくりの提案」が選ばれた。地井さんは、処分地選定における「NIMBY」(Not In My Backyard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)問題の背景に、「コミュニケーション方法が影響している」ことに着目。社会科学分野の考え方から、「最初から地層処分の受入れを国民に投げかけている現状が問題」と指摘した上で、「まずは議論を喚起することによって、人々は当事者意識を持つのでは」と考察。その「きっかけづくり」として、手軽に見られる1分以内のYou Tubeのショート動画を利用した情報提供を提案した。地井さんが作成した動画では、ボール状の愛らしいキャラクターが日本のエネルギーや原子力発電の使用済み燃料などに関する問題を提起し解説。実際、地層処分についてほとんど知識のない大学生・社会人に動画を視聴してもらい、アンケートをとったところ、認知度の向上が見られたことから、「短い・早い・手軽」な情報提供手段として、ショート動画の利用が期待できるとしている。「中学生・高校生・高専3年生以下」の部門では、最優秀賞として、島根大学教育学部附属義務教育学校9年(中学3年)の生徒6名による「高レベル放射性廃棄物の地層処分を目指して」が選ばれた。生徒らは、原子力発電に焦点を当てた探求の中で、地元に立地する島根原子力発電所で保管される使用済み燃料の行く末に着目。高レベル放射性廃棄物の地層処分に関して、「まず問題の背景を自分たちで調べる」ため、校内の生徒や家族、教職員、教育実習生らへの認知度調査、理科・社会科の教科書における記述調査の他、県外高校生との意見交換も実施。福井県の高校生との意見交換からは、「高レベル放射性廃棄物の問題は、日本全体の課題として、すべての地域の同世代が認識を広げ解決を目指す必要があると実感した」という。これらの活動を踏まえ、生徒らは資源エネルギー庁の職員と島根県知事から地層処分に関する認知度向上に向け、各々話を聞いた上で、「同世代同士で考えを共有する」ため、授業の場で実験を通じて科学的に理解し話し合うこと、環境に関する全国イベントへの参加などを提案した。
06 Mar 2024
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第6次エネルギー基本計画の策定(2021年10月閣議決定)から間もなく2年半となり、法令に定める見直しの時期を迎えつつある中、原子力委員会前委員長の岡芳明氏を含む9名の有識者らが「第7次エネルギー基本計画」の検討に向けて、2月24日に報告書「エネルギードミナンス」を発表した。これまでも政府審議会などで意見を述べてきたキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏が全体を取りまとめている。同報告書では、「強く豊かな日本を造るために、豊富、安価、安定なエネルギーを供給し、エネルギーに関する優勢(ドミナンス)を築く」という概念から、「電気料金は東日本大震災前の水準を数値目標とする」など、計11項目の提言を発表。エネルギー需給に関しては、「原子力を最大限活用する(全電源に占める比率50%を長期的目標)」、「化石燃料の安定利用をCO2規制で阻害しない」こと、さらに、再生可能エネルギーの導入や省エネに係るコスト低減や規制制度とともに、EV推進に伴う日本の自動車産業振興への影響にも留意。国際公約の関連では、「パリ協定を代替するエネルギードミナンス協定を構築する」ことにも言及している。現行のエネルギー政策については、「極端なCO2排出削減目標に束縛され、かつイデオロギー的に技術選択が太陽光・風力・電気自動車などに偏狭に縛られているがゆえに、コストが高く、持続不可能に陥っている」と指摘。その中で、太陽光発電に関しては、天候に左右されるデメリットを「間欠的」と懸念したほか、昨今の自然災害多発に鑑み「破損しても発電し続ける特徴から、感電による二次災害が発生する恐れがある」と危惧し、大量導入を停止する必要性を述べている。原子力については、「発電量当たりの人命リスクが最も低く安全な電源」と評価した上で、安価で安定な電力の安定供給に向けて、早期の再稼働、運転期間延長、更新投資、新増設が不可欠と強調。その一方で、安全規制と防災に関し「リスク・ベネフィット」の考え方がないバランス感の欠如から、「リスクゼロ」を追い求める姿勢を危惧。さらに、「原子力を利用しないことによるエネルギー安全保障上のリスク、経済上の不利益も大きい」ことを指摘し、今後のエネルギー基本計画改定の中で、さらに議論を深めていく必要性を示唆している。福島第一原子力発電所事故から間もなく13年。報告書では、昨今の原子力発電を巡る状況に関して、BWRプラント停止の長期化、電気料金高騰による国民生活への悪影響などを踏まえ、「個別の審査だけではなく、中長期的な課題を含め検討すべき時期にある」とも述べている。
05 Mar 2024
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大阪大学大学院工学系研究科に、研究者が中立的立場で福島第一原子力発電所事故の調査に取り組む「1F-2050」チームが設置されている。事故の進展過程を解明するとともに、行政機関や他大学とも連携し、中長期的には廃炉対策・福島復興に資することを目指す部門横断的な総勢20名程度のグループだ。チーム名は、エネルギー需給の視点で「2050年カーボンニュートラル」への貢献を最終目標としていることに由来。次世代革新炉の開発に向けた原子力安全に係わるフィードバックも視野に入れている。同チーム代表の村田勲教授らが、2月27日の原子力委員会定例会合で、活動状況について説明した。〈阪大発表資料は こちら〉同氏は、「純粋なアカデミア」として活動するチームの意義を述べる一方で、原子力規制委員会が設置する事故分析検討会への参加経緯も踏まえ、「あまりにも存在するデータが多過ぎる」などと、事故原因の解明に向け、現地調査の困難さ、技術的論点の山積する現状をあらためて指摘。テーマを絞って分析していく必要性を強調した上で、今後「多くの専門家の参加が不可欠」との問題意識を示した。同チームでは、まず現状把握として、1号機の原子炉格納容器(PCV)内の状況調査に着目。1号機については、東京電力において、水中ROV(潜水機能付きボート型ロボット)によるPCV内部調査がこれまでに実施されており、2024年2月末からはPCV全体の状況を把握すべく、小型ドローンやヘビ型ロボットの導入が行われている。東京電力によると、1号機では昨春、ペデスタル(原子炉圧力容器下部の土台)の内壁で、コンクリートが溶け落ち配筋が露出し、ガレキ・塊状の堆積物が確認されている状況。今回の原子力委員会会合で、阪大の大石佑治准教授が同機ペデスタル周辺のコンクリート破損要因に関し、機械的破損、水との反応、溶融の3つのシナリオによる調査・分析結果を紹介。模擬コンクリートによる物性試験を、ホームセンターや阪大研究施設から購入・サンプリングした材料で実施したところ、溶融温度がコンクリートの種類によって異なることなどから、「実際とできるだけ同じものを用いなければならない」必要性が判明したという。現在は福島県産の川砂を用いた加熱試験も進めており、今後、爆裂試験、高圧試験、組成・粘性評価など、さらに専門的分析を進めていく考えだ。「1F-2050」チームからの説明を受け、原子力委員会の上坂充委員長は、工学系の研究に関ってきた経験から、事故発生時における海水注入に伴う塩分の影響にも言及した上で、TMI事故など、海外のデータも含め、さらに多くの情報を収集し詳細な分析が進むよう期待した。
04 Mar 2024
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東北電力は2月27日、女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)における使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置について、宮城県ならびに女川町・石巻市に対し、地元との安全協定に基づき、事前協議を申し入れるとともに、翌28日には、原子力規制委員会への原子炉設置変更許可申請を行った。〈東北電力発表資料は こちら〉女川2号機については、丁度4年前の2020年2月、新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更が許可された後、現在、2024年9月の再稼働に向け、安全対策工事が進められている。同機の使用済み燃料プールは、再稼働から4年程度で貯蔵容量の上限に達する見通しで、使用済み燃料を発電所外に搬出するまでの間、敷地内で一時的に貯蔵する施設として、今般、乾式貯蔵施設を2棟設置することとした。乾式貯蔵施設は、使用済み燃料プール(PWRでは燃料ピットとも呼ばれる)で十分に冷却された使用済み燃料を、堅牢な金属製乾式貯蔵容器に収納し、空気の自然対流により冷却する。原子力発電所構内における同貯蔵方式については、日本原子力発電・東海第二で運用されているほか、中部電力・浜岡、四国電力・伊方、九州電力・玄海の各発電所でも規制委員会による審査対応など、設置に向けた準備が進められている。最近では、関西電力が2月8日、美浜、高浜、大飯の各発電所における設置計画を発表し、福井県および各立地町に対し事前了解願を提出した。乾式貯蔵容器は、地震や竜巻などの自然現象で貯蔵建屋に損傷が生じた場合にも、安全機能を維持できる設計。実際、東日本大震災時にも、福島第一原子力発電所に設置された同貯蔵容器の頑健性が保たれた。東北電力では、2026年5月にも乾式貯蔵施設の工事に着手し、2棟それぞれ、2028年3月、2032年6月の運用を目指しており、今後、規制委の審査に対する適切な対応、地域から理解を得られるようわかりやすい丁寧な説明に努めていくとしている。
28 Feb 2024
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クリアランス制度の普及に力を入れる福井県で、高校生が「クリアランス金属」を活用した防犯灯をデザイン。このほど、完成した防犯灯を披露するとともに、地元住民を対象に実施したクリアランス金属の理解活動について、同県の杉本達治知事に報告した。今回完成した防犯灯は、廃止措置が進む日本原子力発電・東海原子力発電所(GCR)に設置されていた燃料取替機由来のクリアランス金属を使用。下から見ると六角形になっており、福井県の県花である水仙をモチーフとしている。手掛けたのは、福井南高等学校・浅井ゼミ(浅井佑記範教諭)のゼミ生9名。同ゼミでは、ゼミ生がリーダーシップを取り、原子力や地層処分問題などの社会課題に取り組んでおり、2021年以降毎年「高校生の原子力に関する意識調査」を実施していることでも有名だ。最寄駅から学校までの通学路が暗く、生徒が田んぼに落ちてしまう事故が絶えないこと、そして県の事業として掲げられたクリアランス金属のリサイクルが進まないことから、防犯灯としての活用を思いついたという。防犯灯は学校周辺の通学路上や公民館に設置するだけでなく、嶺北地方の各自治体にも配布する。クリアランス金属は放射性物質の放射能濃度が低く、人への健康影響がほとんどない。ゼミ生たちは防犯灯の設置にあたって、地域住民を対象に説明会を開くなど、クリアランス金属への理解を求める活動も行った。同ゼミはこうした地道な活動が評価され、アジア鋳物会議や日本原子力学会などの場で数々の賞を受賞している。クリアランス金属の活用についても、原子力について学んでいく過程で知ったというゼミ生たちは、「社会にもっと原子力やクリアランス制度が浸透するような活動を行っていきたい」(西田杏乃さん)と、杉本知事に抱負を語った。ゼミ生たちからの報告に終始ニコニコと耳を傾けていた杉本知事は、「原子力にいろいろな課題があることを認識した上で、クリアランス金属を防犯灯のように身近なところで活用しようというアイデアが素晴らしい。田んぼに落ちてしまうのがきっかけといったところを楽しく拝聴したが、皆さんは同時に大きな社会課題に取り組んでいる」とゼミ生たちを称賛。そして、「多くの国民が原子力発電の大切さをわかっているが、そこから出る廃棄物は敬遠されており、安全であるにもかかわらず使われない事態が続いている」と憂慮し、「県ではクリアランス金属を資源として産業化する日本初のリサイクルビジネスに取り組もうとしており、いずれこの防犯灯も福井県の名産品にしたい」との強い意欲を示した。また杉本知事は福井県に立地する原子力発電所について、「発電するだけでなくCO2排出量削減などの副次的効果も大きい。安価な電力供給が可能で、社会が発展していく礎にもなる。さらに言うならば、原子力なしでは日本の電力需要を賄えない」と指摘。「(原子力のように)なくてはならないものを忌避しつつも、安いからと言って利用するという状況に矛盾を感じる。危ないというならば何が危ないのか、いかにしてそれを安全にしていくのか、と考えることが人類の叡智ではないか」との認識を示した。そして同ゼミがまとめた原子力に関する意識調査(上述)にも触れ「県議会でも話題になり私も拝読したが、県内でも原子力発電所が立地する嶺南と、立地しない嶺北とでは意識に大きな差があることが分かった。嶺北は東京とほとんど意識に差がないようだ。県内でももっと早い段階から(エネルギー教育を)進めていけないか、教育機関や教育委員会なども含めて検討していきたい」と述べた。
28 Feb 2024
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