
国内NEWS
14 Nov 2025
415

脱炭素電源への大規模投資に公的融資 原子力・送配電網を対象に新制度
海外NEWS
14 Nov 2025
252

欧州投資銀行 フィンランドのオルキルオト改修に融資
海外NEWS
14 Nov 2025
458

【続報】英政府 ウィルヴァを英国初のSMR建設地に正式決定
国内NEWS
13 Nov 2025
451

フュージョンエネルギーの実現に向けた白書を今年度公表へ
海外NEWS
13 Nov 2025
408

アルマラス原子力発電所 2030年までの運転期間延長を要請
海外NEWS
13 Nov 2025
407

カナダ2州がSMR導入でMOU
国内NEWS
12 Nov 2025
756

東洋炭素グループ 米Xエナジーから高温ガス炉向けの構造材を受注
海外NEWS
12 Nov 2025
611

FT報道:英政府がウィルヴァをSMR建設サイトに選定へ

欧州投資銀行(EIB)は10月30日、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ(TVO)社とオルキルオト1-2号機(BWR、各92万kWe)のバックフィット作業に向け、9,000万ユーロ(約162億円)相当の長期融資契約を締結した。今回のバックフィットでは、複数年にわたり、自動制御系のアップグレード、ならびに同1-2号機の原子炉気水分離器の交換を実施する。1号機は1979年、2号機は1982年に営業運転を開始。当初の計画運転期間は40年間だったが、両機とも2018年9月に、2038年12月末まで20年間の運転期間延長を認可されている。今回のバックフィット作業により、TVO社はさらに2048年または2058年までの運転期間延長と、出力(ネット値)を現状の89万kWeから97万kWeへの増強を想定している。EIBは本プロジェクトについて、フィンランドのエネルギー自立を高め、大規模な低炭素電源を支援するという融資政策と合致すると評価。欧州連合(EU)の気候目標に貢献するものとして位置づける。EIBのK. ネハンマー副総裁も、「オルキルオト発電所の安全性向上を後押しすることで、フィンランドが信頼性の高い低炭素電源により、エネルギーミックスを強化するのを支援する」と語った。一方、TVOのL. ピエッカリ財務担当上級副社長は、「EIBからの長期資金調達は、資本市場ベースの債務調達を補完する優れた手段」と評価。借り手の資金源の多様化に資するとともに、プロジェクトの実行可能性に対する信頼を示すものとして、地元の資金調達市場への好影響に期待を示した。本プロジェクトの総費用は1.9億ユーロ(約342億円)と見込まれ、今年4月、TVO社は北欧投資銀行(NIB)と7,500万ユーロ(約135億円)の長期融資を受けている。同社は2016年にも、EIBと1億ユーロの長期融資を受け、非常用ディーゼル発電機や原子炉内部ポンプの交換、緊急給水システムの新設導入など、安全性向上対策を実施した。オルキルオト発電所では1-2号機のほか、3号機(EPR、166万kWe)が2023年5月より営業運転を開始。2024年にはフィンランドの総発電電力量830億kWhの約28%を占める、同国最大の発電所。TVO社は欧州の原子力運転事業者の中でグリーンボンドを発行した最初の企業の一つである。なお同国には、オルキルオト発電所の他、フォータム社のロビーサ発電所(VVER-440×2基、各53.1万kWe)が稼働しており、両発電所による発電量のシェアは、約40%に達する。ElBは、加盟国が出資する欧州連合の長期融資機関。気候変動対策と環境、デジタル化と技術革新、安全保障と防衛、農業とバイオ経済、社会インフラなど、EUの政策目標に貢献する投資に資金提供する。欧州投資基金(EIF)を含むEIBグループは、2024年に900件を超える大規模プロジェクトに対する約890億ユーロの新規融資に署名し、欧州の競争力と安全保障の強化に貢献している。
14 Nov 2025
252

英国で原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「Great British Energy – Nuclear(GBE-N)」は11月13日、北ウェールズのアングルシー島ウィルヴァを英国初の小型モジュール炉(SMR)の建設地として正式に選定したと発表した。本件は12日付の本紙既報(FT報道)を裏付けるもので、英国の次世代原子力政策が実行段階へ移行する大きな節目となる。GBE-Nによれば、同プロジェクトは出力最大150万kWeの原子力発電所を送電網に接続し、ネットゼロ目標およびエネルギー安全保障の強化を狙う。建設ピーク時には約3,000人の雇用創出が見込まれ、政府はSMRプログラムに25億ポンド(約4,700億円)を投じて民間投資と国内サプライチェーンの強化を図るとしている。GBE-NのS.ボウエン会長は声明で、「英国にとって歴史的な瞬間であり、原子力分野で世界をリードするという英国の潜在力を具現化する、もう一つの大きな一歩である」と述べ、ウィルヴァを中心とした“フリート(fleet)型”開発への移行が本格化すると強調した。同日、ロールス・ロイスSMR社もウィルヴァに自社設計SMR(PWR、47万kWe)×3基を建設する計画を正式に発表した。同社のC.チョラトンCEOは、「英国初のSMRフリート計画として、ウィルヴァに3基を建設できることは光栄である。今回の決定は、ウィルヴァにおける100年規模のクリーンエネルギー、技術革新、地域連携の始まりだ」と述べ、長期的な地域投資への強い意欲を示した。同氏は、SMRはモジュール化が進み工場生産方式が確立していることから、現地工事の負荷を最小化し、地域への影響を抑えた導入が可能になると説明した。ウィルヴァ・プロジェクトでは、関連産業を含め英国全体で年間平均約8,000人規模の高レベルの雇用を支える見込みとしている。このフリート構想は海外展開も見据えており、最初の輸出先としてチェコ(Czechia)が挙げられている。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のE. ミリバンド大臣は、「この歴史的投資は、英国がいまなお息の長い大規模プロジェクトを実行する力を持つことを証明した。北ウェールズの若者に新たな機会が生まれ、英国全体の家庭にクリーンな電力を供給することになる」と述べるとともに、SMRを英全土に展開する政府方針を改めて示した。ウィルヴァはマグノックス炉を採用した旧原子力発電所の閉鎖(2015年)以降、日立製作所によるリプレース計画が2019年に中止され、以降長らく停滞していた。今回の正式決定により、同地域は再び英国の原子力拠点として再生する見通しが開けた。英国では大型炉建設プロジェクトとしてヒンクリーポイントC(EPR-1750、172万kWe×2基)の建設が進み、サイズウェルC(EPR-1750、172万kWe×2基)の資金手当てのメドがつきつつある中、SMRはフリート展開を前提にした次世代戦略の要として位置づけられている。英国政府およびGBE-Nは今後、地域コミュニティとの対話を継続し、透明性の確保と社会的受容性の向上に努めるとしている。今回の正式決定は、英国がSMR導入を軸に“新たな原子力フリート時代”へ踏み出した象徴的な動きといえる。金融・政策面での評価については、本紙既報にてハントン・アンドリュース・カース法律事務所のG.ボロバス氏のコメントを紹介している。Great British Energy – Nuclear(GBE-N)は、英国「エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)」のアームズ・レングス機関((政府方針の下で業務を行うが、専門的判断について一定の独立性を持つ公的実行機関のこと))であり、2023年に設立した「Great British Nuclear(GBN)」が前身。DESNZの後援を受け、英国の次世代原子力政策を実務面で支える中核組織となっている。
14 Nov 2025
458

スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo=CNAT)は10月30日、環境移行・人口問題省(MITECO)に対し、アルマラス原子力発電所(PWR, 100万kW級×2基)の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請した。現行の閉鎖予定時期は1号機が2027年11月、2号機が2028年10月となっている。CNATは声明で、同発電所の安全性や信頼性、効率性を確保しつつ、運転を継続する姿勢を強調。「世界でも高い運転水準を維持しており、引き続きその基準を維持していく」としている。同発電所は、世界原子力発電事業者協会(WANO)のパフォーマンス指標でも、最高評価にあたる「レベル1(エクセレンス)」を獲得。年間約5,000万ユーロ(約90億円)をバックフィットに投資している。発電所は、イベルドローラ(53%)、エンデサ(36%)、ナチュルジー(11%)の3社が共同所有する。アルマラス原子力発電所は、ポルトガル国境に近いエストレマドゥーラ州カセレス県に位置し、スペインの電力消費量の約7%(約400万世帯分)を供給。同発電所および関連事業を含め約4,000人が就業し、燃料交換時期には約1,200人の雇用が追加されるなど、地域経済を支える重要な雇用基盤となっている。スペインでは現在、5サイト・計7基、合計出力計739.7万kWeが運転中で、全基が40年超の運転認可を取得済み。2024年の原子力シェアは約20%を占め、稼働率は約84%。一方で、政府の脱原子力政策のもと、現行計画では2027~2035年までに順次閉鎖が予定されており、2030年までに約320万kWに縮小し(現在運転中の7基中4基が閉鎖)、2035年には0となる見込み。こうしたなか、今年2月、スペイン国会(下院)は中道右派の国民党(PP)が提出した、同国の原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める決議を可決。さらに同月には、スペイン原子力産業界が、長期運転を支持するマニフェストを発表し、原子力の段階的廃止政策が与える産業競争力と社会への悪影響について懸念を表明した。また4月にイベリア半島で発生した大規模停電を機に、国内では2035年までの原子力廃止計画の是非をめぐる議論が再燃。スペインの原子力産業団体であるForo NuclearのI. アラルース理事長は、「原子力は電力系統の信頼性にとって不可欠であり、段階的廃止方針を再考すべき」と主張している。
13 Nov 2025
408

カナダのオンタリオ州とノバスコシア州は10月23日、小型モジュール炉(SMR)の導入に向けた覚書(MOU)を締結した。クリーンエネルギー移行を進めるノバスコシア州が、原子力先進州であるオンタリオ州の技術・制度運用のノウハウを活用し、SMR導入の可能性を具体的に検討する体制を整える。今回のMOUでは、SMR技術、サプライチェーン、規制制度、廃棄物管理といった幅広い分野で両州が協力を深めることを規定。また、カナダ政府に対し、SMR開発・導入に必要な手続きの迅速化を働きかけることも盛り込まれている。実務面では、両州のエネルギー担当省が協議を進め、進捗を年次で共有する体制も構築する。ノバスコシア州は2023年、カナダ政府および隣接するニューブランズウィック州と共同で、2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止し、クリーンで安価な電源に移行する方針を発表した。風力や太陽光など再生可能エネルギーの拡大を進める一方で、安定供給を確保するためのバックアップ電源の確立が課題となっており、SMRの導入も検討項目として位置づけている。2024年には「エネルギー改革法(Energy Reform Act)」を制定し、州営電力会社が将来的に原子力発電所を所有・運転できるよう法的制約を撤廃した。同法に基づき、送電網を担う独立系統運用機関(IESO)の設立が進められており、2025年末の発足を予定している。一方、オンタリオ州はこれまで同国内の原子力運転実績と規制対応の中心を担ってきた原子力先進州。現在はG7諸国で初となる商業用SMRの建設計画「ダーリントン新原子力プロジェクト(DNNP)」も進行中で、SMR建設をリードする存在でもある。また、このプロジェクトにはカナダ政府や州系基金が総額30億カナダドル(約3,300億円)を出資する。オンタリオ州との協力枠組みには、すでにニューブランズウィック州、サスカチュワン州、アルバータ州も同様に署名している。参加する州が広がったことで、SMR導入をめぐる連携の枠組みが全国的に広がりを見せている。カナダ政府は既に複数の州でSMR開発を支援しており、次世代原子力の活用を軸としたクリーンエネルギー移行が、今後さらに加速するか注目される。
13 Nov 2025
407

英フィナンシャル・タイムズ紙は11月11日、英国政府が北ウェールズのアングルシー島ウィルヴァを、国内初となる小型モジュール炉(SMR)の建設候補地として選定する見通しだと報じた。報道によれば、政府はロールス・ロイス社製SMR×3基の建設を承認し、グロスターシャー州オールドベリーではなくウィルヴァを優先する方針だという。ただし、英政府は現時点でこの報道内容を否定しており、正式発表は行っていない。英国では労働党政権が、老朽化した大型炉に代わる電源としてSMR導入を推進しており、3年間で25億ポンド(約4,700億円)規模の開発支援を掲げている。政府は、FTSE100(ロンドン主要株価指数)に上場するロールス・ロイス社のSMRを中心に、「世界をリードするSMR開発国」を目指している。同SMRは電気出力が47万kWの加圧水型炉で、他のSMRより規模が大きいのが特徴。ウィルヴァでの建設が実現すれば、ピーク時には約3,000人の雇用を創出する見込みとされる。旧ウィルヴァ原子力発電所は2015年に閉鎖され、その後、日立製作所による後継プラント計画が2019年に中止となっていた。今回の動きは、同地で停滞していた原子力新設プロジェクトが再び動き出す可能性を示すものとなる。国際的な原子力法務の専門家であるハントン・アンドリュース・カース法律事務所のジョージ・ボロバス氏は、本件について次のようにコメントしている。「ヒンクリーポイントC(HPC)の建設が進み、サイズウェルC(SZC)プロジェクトの金融契約が締結された流れを受け、今回の報道は、英国の原子力新設プログラムにおけるもう一つの重要な節目を示すものとなる。英国は“初号機(FOAK)”となるSMRプロジェクトの開発に着手することになり、これは将来の英国および他国の新設計画におけるレファレンスプラント(参照モデル)となる可能性が高い。 HPCとSZCが、それぞれ差金決済(CfD)と規制資産ベース(RAB)の資金スキームを採用したように、SMRプロジェクトも官民パートナーシップ(PPP)型の枠組みを採用し、民間と政府が開発・資金調達・リスクを分担する形になるだろう。 こうした英国発の資金スキームは、各国が自国の原子力新設戦略を構築していく中で、日本を含む他国にも展開・応用される可能性が高い」地域の反応として、FT紙によると、プライド・カムリ党のリーノス・メディ議員が「高レベルな雇用と地域のサプライチェーンを確保し、環境・文化・ウェールズ語((ウェールズ全域で若者の流出が顕著であり、文化だけでなくウェールズ語の存続も危ぶまれている))を尊重する形で進められることを期待する」とコメントしたという。英政府はコメントを控えているが、正式発表は今週中にも行われる見通し。今回のウィルヴァ選定は、英国の原子力産業復興における次の段階を象徴する動きとして注目されている。
12 Nov 2025
611

米国の先進原子力エネルギー企業であるナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は10月22日、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)社の関連会社から、カナダを基盤とするグローバル・ファースト・パワー(GFP)社の買収を完了したことを明らかにした。NANO社は、米国とカナダで並行して建設および許認可プロセスを進めることで、北米におけるマイクロ炉分野のリーダーシップ確立を目指す。本買収によりNANO社は、カナダ原子力研究所(CNL)のチョークリバー研究所サイト(オンタリオ州)におけるマイクロモジュール炉「KRONOS MMR」実証プロジェクトをGFP社から引き継ぐ。これには、カナダ原子力安全委員会(CNSC)へのサイト準備許可(LTPS)取得に関する手続きも含まれる。GFP社は、CNSCによるベンダー設計審査(VDR)の第1段階を完了し、第2段階を開始しており、2019年3月にはLTPSの初期部分を提出するなど、重要な許認可前ステップを一部完了していた。NANO社はこの既存の基盤を活かして開発を再開する方針である。USNC社は2024年10月、米国破産法第11章第363条に従い、自社技術の売却プロセスを実施することを発表。競売により同年12月、NANO社はUSNC社のMMRを含む、原子力技術資産の一部を買収し、MMRをKRONOS MMRに改称した。KRONOS MMRは、TRISO燃料とヘリウム冷却を使用する第4世代の小型モジュール式の高温ガス炉。設置面積は5エーカー(約0.02平方キロメートル)未満とコンパクトで、最大4.5万kWt(1.5万kWe)の出力により、地域グリッドや再生可能エネルギーシステム、プロセス熱供給などと柔軟に連携可能。運転員の介入や外部電源なしに自動的に停止し安全状態を維持する(walk-away safe)設計であり、停電時にも独立して稼働できる完全自律マイクログリッド機能の確立を目指している。NANO社の最高技術責任者兼原子炉開発責任者であるF. ハイデット博士は、「今回の買収は、北米のマイクロ炉開発においてリーダーシップの地位を確立するという当社の目標にとって重要な進展。GFP社が中断していたカナダでの許認可取得の取組みを再開し、設計と規制対応の両面からKRONOS MMRの開発の継続に集中する。このプロセスの合理化により、許認可取得に伴う財務上およびスケジュール上の負担が大幅に軽減され、開発と導入を加速するための資本と技術的専門知識をより戦略的に割り当てることができる」として、GFP社の買収の意義を強調した。なお、NANO社によると、USNCは約10年間にわたりMMR開発と許認可に総額1.2億ドルを投じており、今回の取引に際し、GFP社がCNSCに対して負っていた約64万ドルの債務もNANO社が引き受けた。米UIUCでの建設準備も進行カナダにおける進展と並行して、NANO社は10月24日、米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)のサイトで研究用・商業用プロトタイプとなるKRONOS MMRの建設に向けた、サイト特性評価と地盤調査のための掘削作業を開始した。同施設が、エネルギーシステムの実用化における前例のない実証実験の場となり、将来的には北米および世界中の大学、政府関係、商業施設などにおける展開モデルとなると期待されている。同社は、サイト特性評価および掘削活動から得られる地質工学的データを活用し、2026年第1四半期にもKRONOS MMRの建設許可を申請予定である。さらにNANO社は、将来的な顧客候補として米国の技術・製造・インフラ企業であるBaRupOn社が、約15基のKRONOS MMRの導入に向けた実現可能性調査を開始すると発表した。BaRupOn社は、テキサス州ヒューストン近郊で、AIデータセンターと先進製造施設を備えた700エーカー(約2.8㎢)規模のキャンパスを建設予定で、必要電力は100万kWe超に達する見通しである。
12 Nov 2025
392

米サウスカロライナ州営電力であるサンティー・クーパー社の取締役会は10月24日、同州で建設が中断されているバージル・C・サマー原子力発電所2-3号機の建設プロジェクト再開に向けて、カナダの資産運用会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社との独占交渉に関する意向表明書(LOI)を承認した。同プロジェクトはウェスチングハウス社(WE)製の大型炉AP1000を採用しており、ブルックフィールド社はWE社の大口株主である。LOIでは、6週間の初期プロジェクト実現可能期間を設定。同期間中に、両当事者は共同でプロジェクトマネージャーを選定し、2基の建設再開を行う建設業者を評価。同発電所が発電する電力購入に関心のある事業体とも事前協議の実施を計画する。サンティー・クーパー社のP. マッコイ会長は、「当社の目標は、民間資金で原子炉を完成させ、料金支払者や納税者に負担をかけずに、サウスカロライナ州に大幅な発電設備を追加すること。ブルックフィールド社の提案はまさにそれを実現するものであり、その提案を支える財務能力がある」と語り、J. ステートンCEOは、「過去8年間にわたって設備を維持するという当社の戦略的な決定により、2基の完成をより迅速かつ低コストで完成させることができる」と指摘。建設が停止された2基の保存状態と、ジョージア州のA. W. ボーグル3-4号機および海外で運転実績のあるAP1000は、原子力産業にとって非常に魅力的な資産であるとし、同2基の完成により、初期投資を行った顧客に利益を還元していく考えを示した。家庭用および産業用の電力需要の急増と州の支援を受けて、サンティー・クーパー社は昨年、未完成の原子炉を完成させるために第三者に資産の売却を検討。2025年1月に提案依頼書(RFP)の募集を実施し、当初、70社以上から関心表明と15件の正式な提案を受けたという。2基の完成プロジェクトにより、数千人の建設雇用の創出、数百人の高度なスキルを持つ常勤雇用のほか、送電網の信頼性の向上、新たな産業誘致に伴うより多くの雇用と経済的利益が見込まれている。なお、この完成プロジェクトの権益を売却する競争プロセスにおいて、米投資銀行のセンタービュー・パートナーズ社やJPモルガン社がサンティー・クーパー社の財務アドバイザーを務めている。同発電所の建設プロジェクトの過半数(55%)を所有していたスキャナ(SCANA)社傘下のSCE&G社(2019年1月にドミニオン・エナジー社が買収)は、2-3号機の建設・運転一括認可(COL)を、2008年3月に米原子力規制委員会(NRC)に申請。COLは2012年3月に発給され、2013年3月に2号機、2013年11月に3号機が着工した。同じAP1000を採用したA. W. ボーグル3-4号機の着工とほぼ同時期である。しかし、長年にわたるコスト超過およびスケジュール遅延と、その後に続く2017年3月のWE社の破産申請を受け、SCE&G社は建設プロジェクトの残り45%の所有者であったサンティー・クーパー社とともに、2017年7月に2-3号機の建設中止を決定した。SCE&G社はその後、2018年12月に納入されていた機器の所有権をサンティー・クーパー社に譲渡。ほどなくサンティー・クーパー社とWE社との間で、プロジェクトに係る設備・機器所有権をめぐり係争に発展したが、和解が成立している。なおNRCは、SCE&G社とサンティー・クーパー社の合意により、2019年3月にCOLを失効させた。新たに建設・運転を希望する場合、再申請が必要となる。
11 Nov 2025
643

米大手電力会社ネクストエラ・エナジー社は10月27日、米IT大手のGoogle社と共同で、アイオワ州のデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR, 62.4万kWe)の再稼働に向けた協定を締結したと発表した。Google社は同発電所の再稼働後、供給される電力を25年間にわたり購入する電力購入契約(PPA)を結び、AIやクラウドサービスの拡大に伴い急増する電力需要を、エネルギー企業とIT企業が協力して支える新たなモデル構築を目指す。このPPAにより、Google社が25年間にわたり電力を固定価格で購入することで、ネクストエラ社は再稼働に必要な巨額投資を長期収益で回収できる見通しを得た。再稼働にかかる費用は州の電力料金に転嫁されず、一般家庭や地域企業への負担は生じない。電力需要家と発電事業者が直接契約を結ぶ仕組みは再生可能エネルギー分野では一般化しているが、原子力に適用されるのは異例であり、政府補助に依存しない「民間資金による原子力再稼働」として注目を集めている。アイオワ州唯一の原子力施設であるデュアン・アーノルド発電所は、1975年に運転開始。45年以上にわたり稼働したのち、経済性の悪化を理由に2020年に閉鎖された。当初は2034年までの運転が認可されていたが、地域電力会社との売電契約期間短縮と同年の自然災害による設備損傷により、閉鎖が前倒しされた。AIやデータセンター需要の急拡大により電力不足が顕在化し、ネクストエラ社は再稼働の可能性を模索。今年1月に米原子力規制委員会(NRC)への運転再開を申請しており、現在は2029年の運転再開を目指して審査が進められている。今回のGoogle社との契約は、同計画の実現に向けた“決定打”と位置付けられる。Google社にとってアイオワ州は、米国中西部におけるデータセンター運営の中核拠点である。同社は2007年に最初のデータセンターを開設し、AIやクラウドサービスの主要拠点として運営。今年5月には約70億ドル(約1兆円)の追加投資計画を発表し、データセンター新設や既存施設の拡張、人材育成プログラムなどを進めている。今回のPPAは、こうしたインフラ投資を持続可能に支えるクリーンで安定した電力確保策として位置づけられる。これまで民間企業による原子力投資は次世代炉の開発支援が中心だった。Google社が既存の大型炉に対し長期的なPPAを結ぶのは異例であり、投資の焦点が「新技術の開発」から「既存炉の再評価・再活用」へと移りつつあることを象徴している。AI時代の電力需要に応えるため、既存原子力資産を“クリーンで即応性の高い電源”として再評価する動きは、今後他の地域や事業者にも波及する可能性がある。
11 Nov 2025
1157

ウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)のA. アフメドハジャエフ長官率いる代表団は10月20日、イタリアのジェノバで、同国のアンサルド・エネルギア(Ansaldo Energia)社およびその原子力専門の子会社であるアンサルド・ヌクレアーレ(Ansaldo Nucleare)社と会談し、原子力分野での協力具体化に向けた協議を行った。協議では、ウズベキスタン初となる原子力発電所建設プロジェクトに関し、アンサルド・グループを技術コンサルタントとして起用し、同国の気候条件(高温・乾燥・砂塵など)に適応した補助システムの技術統合を進める可能性について検討した。また、放射性廃棄物処理の分野では、アンサルド・ヌクレアーレ社が独自開発した使用済み燃料管理システムの導入についても詳細な意見交換が行われた。さらにアンサルド・グループが関心を寄せるウズベキスタンの法規制基盤整備やライセンス取得支援、原子力分野における技術改良と人材育成を目的とした共同研究開発の実施についても協議された。アンサルド・グループは、蒸気タービンやガスタービンなどのエネルギー機器の設計・製造・供給を手掛ける、欧州有数のエネルギー企業であり、安全システム構築やソフトウェア開発、原子力発電所向け主要・補助設備の供給に豊富な実績を有する。中国、ベルギー、スロベニア、ハンガリー、ウクライナなどの原子力発電所向け評価・技術保守にも参画してきた。両者は今年5月、ウズベキスタンのS. ミルジヨーエフ大統領とイタリアのJ. メローニ首相立ち会いの下、先進的な原子力技術と小型モジュール炉(SMR)の開発に関する協力覚書(MOU)を締結。次世代原子力発電所の設計と建設、放射性廃棄物管理、専門家育成などの分野で戦略的に協力していく方針を確認していた。ウザトムは現在、ウズベキスタン東部のジザク州でロシア舶用炉を陸上用に改良したSMRの「RITM-200N」(PWR、5.5万kWe)×2基の建設を進めているほか、ロシア製大型炉VVER-1000×2基の建設も計画している。10月にはSMR初号機の原子炉建屋の基礎掘削工事が開始されており、同国における原子力開発は着実に次の段階へと進んでいる。
10 Nov 2025
456

シンガポール通商産業省(MTI)は10月27日、報告書「シンガポールの原子力評価能力の構築(Developing Singapore’s Nuclear Energy Assessment Capability)」を発表した。報告書はMTI、持続可能性・環境省(MSE)、エネルギー市場庁(EMA)、国家環境庁(NEA)の4機関が共同で作成。原子力導入の可能性を科学的・客観的に評価するための手順と視点を体系化している。同国は再生可能エネルギー資源に乏しく、総発電電力量の約95%を天然ガスに依存している。太陽光発電の導入を進めても10%程度にとどまる見通しで、水素、地熱、先進原子力の3つを将来有望な低炭素エネルギー源として位置づけている。同国は2012年にも原子力発電の実現可能性を調査したが、国土が狭く人口密度が高いことを理由に、導入が見送られた経緯がある。その後小型モジュール炉(SMR)など安全性と柔軟性を高めた次世代技術が進展したことから、政府は検討を再開。報告書では、原子力が同国のエネルギー政策の三本柱である「エネルギー安全保障・経済性・環境の持続可能性(エネルギートリレンマ)」に対応し得ると評価している。同日開幕したシンガポール国際エネルギー週間(SIEW)の開会スピーチでタン・シー・レン大臣(人材大臣兼 通産省エネルギー・科学技術担当大臣)は、「SMRなどの新技術を含む原子力エネルギーは、安全で信頼性が高く、コスト競争力のある選択肢になり得る」と述べた。さらに、米国やフランスとの協定締結、米アイダホ国立研究所や米バテル記念研究所との協定を例示し、ノウハウ共有と人材育成を通じた評価体制の整備を進める方針を示した。
10 Nov 2025
915

日本原子力産業協会(JAIF)は、2025年11月4~6日、フランスのパリで開催されたWNE2025(世界原子力展示会)に出展。同展示会の主催者である仏原子力産業協会(GIFEN)や、カナダ原子力協会(CNA)、韓国原子力産業協会(KAIF)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、ブラジル原子力産業協会(ABDAN)などとともに、最終日の11月6日、第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)に向けて、各国の政治指導者や金融関係者に対し、エネルギーミックスにおいて重要な役割を果たす原子力へのより一層の支援を求める共同声明に署名した。声明では、気候変動対策における原子力の役割をあらためて強調するとともに、全人類が持続可能で安定したエネルギーにアクセスするためには、原子力を含むあらゆる低炭素技術への即時かつ協調的な投資が不可欠であると強調している。国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)により、原子力は気候目標達成に不可欠な低炭素電源の一つとされた。アラブ首長国連邦のドバイで開催されたCOP28の最終合意では、初めて原子力が「排出量削減のための重要なアプローチの1つ」として正式に明記され、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍とする目標が設定された。現在、31か国で約440基(総出力4.2億kWe)の原子炉が稼働中で、60基以上が建設中であり、約30の新興国が原子力開発を検討している。IAEAの最新予測では、2050年までに原子力発電容量が最大2.5倍に拡大する可能性があるとされ、この実現には、年間の新規導入を500~600万kWeから2,500万kWe以上に増加させる必要がある。そのうえで、原子力が、過去50年間で約700億トンのCO₂排出を削減した実績があり、2050年までにさらに900億トンの排出削減が可能であること、高いエネルギー密度により最小限の資源で大量の電力生産を可能にするほか、医療・水素・熱供給・宇宙分野など非電力用途も拡大し、地域の雇用・経済発展にも大きく寄与するなど、環境・社会的にも貢献すると指摘。特に、小型モジュール炉(SMR)や先進炉(AMR)、いわゆる第4世代炉の開発が、循環型エネルギー経済の構築と産業の脱炭素化を推進する技術革新の中心になると位置づけている。声明では、世界の指導者や金融界に対し、2050年までに原子力設備容量の3倍化目標の再確認のほか、既存炉の長期運転の政策支援と新規プロジェクトや研究開発を促進するグリーンファイナンス制度の整備を求めるなど、原子力の経済的・環境的利点を訴求し、気候目標の達成と安価でクリーンな電力の安定供給を両立させるため、原子力へのより一層の支援を訴えた。共同声明に署名した17原子力産業団体((署名17原子力産業団体: GIFEN(フランス)、 WNA、Nucleareurope、NIA(英国)、FinNuclear(フィンランド)、ABDAN(ブラジル)、BNF(ベルギー)、AIN(イタリア)、Nucleair Nederland(オランダ)、CNA(カナダ)、SNF(スイス)、JAIF(日本)、KAIF(韓国)、IGE OS(ポーランド)、CNEA(中国)、ROMATOM(ルーマニア)、Foro Nuclear(スペイン)))は、「原子力はクリーンで信頼性が高く、エネルギー安全保障と経済の安定を確保するための重要な資産。我々は、責任ある技術革新を通じて、気候変動や全人類のエネルギーアクセスなどの課題を克服し、人類の発展に貢献する」と力強くメッセージを発している。
07 Nov 2025
649

脱炭素化を掲げるカナダにおいて、これまで原子力発電を導入していなかった2州で新設への動きが具体化しつつある。サスカチュワン州政府は10月20日、同州初となる「エネルギー安全保障戦略」を公表し、原子力を含む長期的な電源多様化方針を示した。一方、隣接するアルバータ州と米ウェスチングハウス(WE)社は10月21日、とAP1000(PWR, 125万kWe)の導入可能性を探る覚書(MOU)を締結。サスカチュワン州政府の新戦略は、エネルギー安全保障を最優先課題とし、単一電源への依存を避ける多様な電源構成の確立を目的とする。公式資料によると、州の発電量の約50%を天然ガスが占めており、石炭火力も依然として安定供給を支える重要な電源となっている。再生可能エネルギーの比率は35%に上るが、出力変動や土地利用の制約が課題とされる。同州は世界有数のウラン産出地でありながら、これまで原子力発電所は建設されてこなかった。新戦略では今後のエネルギー需要の拡大を見込み、2050年まで石炭火力の運転を認め、原子力導入までの「橋渡し電源」として活用する方針を示している。州電力会社のサスクパワー社は、SMR「BWRX-300」の導入を軸とした開発計画を進めており、エステバン近郊2地点を候補サイトに絞り込み、2026年中の立地決定を目指している。また、州内3大学に対してそれぞれ300万~400万ドル(約3.5~4.6億円)を投資し、原子力工学・安全・先端研究分野での人材育成や拠点整備を予定。ウラン資源と研究機関を活かし「採掘から発電まで」を一貫させた産業クラスターの形成も視野に入れる。一方、アルバータ州では、同州北部で「ピースリバー原子力発電プロジェクト」を推進するエナジー・アルバータ社が10月21日、WE社とAP1000の導入可能性を検討するMOUを締結した。同プロジェクトは最終的に4基、合計480万kW規模の原子炉建設を目指している。当初はCANDU炉の採用を前提としていたが、米国型PWRの適用可能性についても検討を進める。サスカチュワン州とアルバータ州は、2024年5月には原子力技術の導入や規制分野での協力に関するMOUも締結している。
07 Nov 2025
546

経済産業省・資源エネルギー庁は11月11日、総合資源エネルギー調査会「第6回電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」を開催し、原子力発電所や送配電網等の大規模投資の費用の一部を、公的融資の対象とする新たな支援制度の創設方針を示した。政府は、第7次エネルギー基本計画で掲げた「原子力の最大限活用」を政策ベースで後押しするため、このタイミングで金融支援策を具体・拡充することで、政府の信用力をテコに積極的な民間投資を促し、脱炭素電源の確保をねらう。新制度では、国の認可法人である電力広域的運営推進機関(OCCTO)の金融機能を用いて融資を実施。民間の金融機関と公的機関による協調融資スキームの構築を想定する。OCCTOは、これまでも送電設備に金融支援をした実績があり、今後、担当者を増員して融資能力を高めるという。また、政府は制度創設と並行して、電気事業法等の関連法の改正も目指す方針だ。原子力発電所の新設には巨額投資が必要で、計画から営業運転開始まで長期間を要するため、事業者側は投資回収に相応の時間を要する。一方で、電力会社の収益環境は、燃料費や資材の高騰、原子力関連の安全対策の厳格化等に左右されやすく、民間金融機関にとっても、貸し出しリスクが伴う。すでに諸外国では政府による債務保証を活用した事業環境整備が進んでおり、日本でも同様の施策が求められていた。今回の公的融資スキームは、こうした課題への一つの回答であり、政府は脱炭素電源の安定確保に向けて金融面からの後押しを強化する。赤澤亮正経済産業大臣は同日の記者会見で「電力需要の増加が見通される中、脱炭素電源や送電網の大規模投資に向けて、民間融資だけで十分か否かを集中的に検討し、政府の信用力を活用する制度や法改正に関する議論を深めたい」と述べ、原子力を含むベースロード電源の確保・強化に公的関与が不可欠との認識を示した。
14 Nov 2025
415

フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)は11月6日と7日の2日間、フュージョンエネルギーの早期社会実装に向けた政策提言の詳細を検討するワークショップを開催。会員企業らを中心に20法人29名が参加し、産業界主導での戦略策定に向け活発な議論が交わされた。今年6月、政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、タスクフォースによる取りまとめを進める方針を明記。これを受けてJ-Fusionは、発電実証、商取引・規格の策定、人材育成などを中心に具体的な方向性を整理し、これら白書を今年度中にとりまとめ、政策提言へと繋げる考えだ。ワークショップの冒頭、J-Fusionの小西哲之会長は「日本にはすでに強力なフュージョンサプライチェーンが整っている。今後は単なる情報交換だけでなく、分析や戦略策定に踏み込んでいく段階」と述べ、公的部門が中心となってきたフュージョン分野が、産業界主導の新たなフェーズに移行したとの認識を示した。さらに同氏は参加者に対し、「今後のエネルギー政策の転換を支える主役は私たち産業界にある。共に素晴らしい戦略を作り上げたい」と呼び掛け、民間による積極的な関与の重要性を強調した。続いて、ゲストとして出席した内閣府の澤田和弘科学技術イノベーション推進事務局参事官は、「国のフュージョンエネルギー戦略は少しずつ整いつつあり、勢いを感じている。高市首相が掲げる強い経済の実現のための投資対象17分野にフュージョンエネルギーが選ばれたことは、まさにその好例だ」と述べた。また、「産業界、アカデミア、政策担当者が率直に意見を交わせるこのような場は非常に重要だ」と語り、同ワークショップの意義を強調。そして、「具体的な戦略を描くためには、今一歩踏み込んだ議論が必要。関係者間の緊密な連携が重要だ」と述べ、政府として高い目標の達成に取り組む姿勢を示した。
13 Nov 2025
451

東洋炭素株式会社は11月7日、同社の子会社であるTOYO TANSO USA, INC.(TTU)が、米国のX-energy社(以下:Xエナジー社)から高温ガス炉用黒鉛製品(黒鉛製炉心構造材など)を受注したと発表した。今回受注したのは、Xエナジー社が開発を進める小型モジュール炉(SMR)の高温ガス炉「Xe-100」(8.0万kWe)向けの製品で、炉心構造材として同社の等方性黒鉛材「IG-110」が用いられる。納品は2028年を予定しており、現在は部品試作・材料認定等を行っている。来年中には最終設計を決定した上で、製造および加工を開始するという。売上高は約50~60億円規模と見込んでいる。「IG-110」がXe-100の炉心構造材等に採用された背景として同社は、優れた熱的・機械的特性と耐中性子照射特性等を備えた信頼性や、日本や中国、フランスの高温ガス炉の試験炉・実証炉・商業炉において採用実績を有していることなどを挙げた。高温ガス炉は、黒鉛を中性子減速材に、ヘリウムガスを冷却材に使用する次世代型の原子炉で、約950℃の高温熱を得られることが特長だ。発電のみならず、水素製造や化学プラントなど幅広い分野への応用が期待されている。高温環境・高線量下で使用されるため、炉心構造材には極めて高い耐熱性と放射線耐性が求められるが、同社の「IG-110」は、長期間にわたり安定した物性を維持し、優れた耐熱衝撃性や高純度・高強度を備える。国内外の公的機関と共同で実施した照射試験データにより、その信頼性が科学的に裏付けられている点も大きな強みだという。今年2月に策定された第7次エネルギー基本計画では、次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合)の研究開発を進める必要性が示され、世界的にも次世代革新炉の開発・導入が加速する中で、日本製の黒鉛材料が国際的な次世代炉プロジェクトに採用されたことは、原子力サプライチェーンにおける日本企業の存在感の高まりに繋がっている。Xe-100をめぐっては、米化学大手のダウ・ケミカル社が、テキサス州シードリフト・サイトで、熱電併給を目的にXe-100の4基の導入を計画中。同社は今年3月、建設許可申請(CPA)を米原子力規制委員会(NRC)に提出し、5月に受理された。2026年に建設を開始し、2030年までの完成をめざしている。そのほか、Amazonが出資するワシントン州で計画中の「カスケード先進エネルギー施設(Cascade)」でも、最大計12基のXe-100を導入する計画が進められており、2030年末までの建設開始、2030年代の運転開始を想定している。さらに、Xe-100の展開加速に向けて、韓国の斗山エナビリティ(Doosan Enerbility)および韓国水力原子力(KHNP)が協力し、米国内でのXe-100の展開を支援している。
12 Nov 2025
756

山口県上関町の上関町総合文化センターで10月26日、上関町青壮年連絡協議会主催による「エネルギー講演会」が開催された。後援は日本原子力産業協会。講師にはユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表取締役社長が招かれ、「エネルギーから見た世界情勢と日本の歴史~改めて原子力を考える~」をテーマに約2時間の講演を行った。冒頭、同協議会の守友誠会長が登壇し、第7次エネルギー基本計画で原子力を最大限活用する方針が示されたことに加え、中国電力が上関町で使用済み燃料の中間貯蔵施設の立地が可能であると報告したことについて触れ、「中間貯蔵施設の建設は上関町や周辺の市町村が抱える人口減少・高齢化・厳しい財政状況といった現実を打開し、地域活性化に繋げることができる」と述べ、原子力がもたらす経済的メリットをまちづくりに生かす意義を強調した。続いて登壇した金田氏は、世界各地の経済・社会問題の背後にエネルギー問題が存在することを指摘。国家の破綻、通貨価値の暴落、停電、戦争などを例に挙げ、「ニュースで報道される出来事の多くは、エネルギーの視点から見るとその構造が理解できる」と語った。同氏は、ベネズエラで発生したハイパーインフレを取り上げ、「米国企業による石油独占に反発した国有化政策が、米国の経済制裁を招き、結果的に通貨の暴落につながった」と説明。また、ロシアとウクライナの戦争の背景にもエネルギー資源の争奪があると述べた。さらに、米国テキサス州で2021年に発生した大寒波による大停電を例に挙げ、「同州は風力発電に依存していたが、マイナス18度の寒波で風車が凍結し停止、大規模な停電が発生した。その結果、電気代が高騰し、一般家庭に180万円の電気料金の請求書が届くなど大混乱となった」と紹介。同氏はこの事例を通じて、電力自由化の落とし穴を指摘し、自由化の影響や再エネ依存のリスクについて再考を促した。また、ドイツのエネルギー政策についても「環境重視のあまり石炭火力や原子力を廃止した結果、隣国からの電力供給に頼らざるを得なくなり、ロシア産天然ガス依存が経済を直撃した」と分析した。日本については「エネルギー資源を持たず、他国との電力連系線もない特殊な環境にある」とし、「こうした現実を踏まえたうえで、安定供給と経済成長の両立を考えるべきだ」と述べ、現実的なエネルギー政策への転換を呼びかけた。講演の後半では、原子燃料サイクルの重要性にも触れ、「再処理を前提とするサイクルを維持するには中間貯蔵施設が不可欠である」と強調。国全体での一貫した政策推進の必要性を訴えた。質疑応答では、参加者から「原子力発電所敷地内にも中間貯蔵施設があるが、六ケ所再処理工場が稼働しても処理しきれない使用済み燃料があるのではないか」「上関町に施設を建てても、再処理の順番が回ってこないのでは」といった質問が寄せられた。金田氏は、「再処理工場の稼働準備は国策として進められており、長期にわたり再処理工場が動かないということは基本的にない」と説明。また、「施設は十分な容量を確保しており、満杯になっても増設で対応できる設計になっている」と述べ、燃料サイクルへの理解を求めた。
11 Nov 2025
535

関西電力は11月5日、美浜発電所サイト内でのプラント新設を見据え、地質調査を再開したと発表した。具体的な調査計画も公表しており、調査は2段階に分けて2030年ごろまで実施する予定である。調査は、2010年にすでに着手されていたが、2011年の福島第一原子力発電所の事故を受けて、一時的に中断されていた。同事故以降、電力会社によるプラント新設に向けた地質調査は、今回が国内初の事例となる。同日には、資機材の搬入を開始。まずは概略調査として、今月10日にボーリング調査を開始し、来月下旬には地表踏査を実施する予定である。発電所の敷地内外の地表面の地質の分布や将来活動する可能性のある断層等の有無を調べるために、ボーリング調査、弾性波探査、地表踏査を行い、地質の概況を把握した上で、より優位なエリアを選定する。続く詳細調査では、選定したエリアにおける地形や地質の状況を把握し、原子炉等の設置に適しているかを確認する。試掘坑調査、弾性波探査、深浅測量、ボーリング調査、地震に関する調査等を行い、新規制基準適合性審査時のスムーズな認可取得を目指すとしている。美浜発電所は、2015年4月に1、2号機の廃止が決定され、現在は、3号機(PWR、82.6万kWe)のみ稼働している。同社は同サイト内でのリプレース、特に次世代型原子炉の設置を視野に入れており、今回の調査結果に加え、革新軽水炉の開発や規制方針、投資判断に係る事業環境整備の状況等を総合的に勘案し、今後の方針を決定する。
07 Nov 2025
711

関西電力は11月4日、原子力規制委員会から高浜発電所2号機(PWR、82.6万kWe)の高経年化対策に係る長期施設管理計画の認可を取得したと発表した。これにより同機は、2035年11月13日(営業運転開始から60年)まで運転が可能となった。原子力発電所の長期運転をめぐっては、既存炉の健全性を確認したうえで、運転期間を延長する動きが世界的に広がっている。こうした潮流を受け日本では、GX脱炭素電源法が今年6月に全面的に施行され、原子力発電に関連する「電気事業法」や「原子炉等規制法」の改正によって、実質的に「60年超」運転が可能となっている。ただ、高経年化炉に対する安全規制は強化され、運転開始から30年を超える原子炉は、10年以内ごとに長期施設管理計画を策定し、原子力規制委員会の認可を受けることが義務付けられている。同社によると、同機の安全上重要な機器・構造物を対象に、経年劣化事象が発生していないか、また今後の運転で劣化が進展する可能性はないか、劣化評価を実施した。そして、劣化の恐れがある機器・構造物については、運転開始後70年時点を想定し、現行の保全活動で安全性が確保されているか確認を行った。それらの結果に基づき、同社では現行の保全活動に加えた追加対策を策定。具体的には、炉内構造物の計画的な取替えや原子炉容器の第6回監視試験を行い、疲労評価の継続的な確認を実施。さらに、ステンレス鋼配管の検査計画への最新知見の反映や、原子炉容器保温材内側の冷却空気流入経路の封止など、温度管理の強化を進める。また、電気系統ではピッグテイル型電気ペネトレーションを取替えるなど、長期運転に向けた信頼性向上策を講じる方針だ。同社は、現在行っている保全活動に加えて、これらの追加保全策を実施していくことで、運転開始から50年以降においてもプラントを健全に維持できることを確認したという。
06 Nov 2025
1026

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)は10月16日、東京都内でシンポジウムを開催した。2050年以降を見据えた「長期的視点に立った骨太のエネルギー基盤の確立」を基本テーマに、各界の専門家を招いて、エネルギー政策の展望と課題を共有し、原子力が目指すべき道筋について議論を交わした。冒頭挨拶でSNWの早野睦彦会長は、「エネルギー政策は本来、短期的ではなく国家100年の計として進めるべきもの。今年策定された第7次エネルギー基本計画では一定の前進が見られた一方、2040年以降の長期的視点や、原子力発電の具体的な拡大策が十分とは言えない」と指摘。「安全規制の予見性、資金調達、高レベル放射性廃棄物処分、司法リスクなど、解決すべき課題は多く残されている」と今後の課題に言及したうえで、「原子力を含む多様な電源を現実的に組み合わせ、安定供給と脱炭素を両立する中長期の国家戦略を確立することが、日本の持続的な発展の鍵」と強調した。続いて、滝波宏文農林水産副大臣(当時)が登壇。「立地に寄り添うエネルギー政策推進議員連盟」の事務局長も務めている同氏は、これまで一貫してエネルギー・原子力政策に関わり、原子力と立地地域産業との関係構築に携わってきたこれまでの経緯を紹介。同氏は、「立地地域に寄り添うとは、安全性を考えることと同義だ。安全性とは立地自治体の住民を守ることであり、避難道路の整備や最終処分場の現実的な受入れ策など、地域視点での政策が不可欠だ」との認識を示した。また、原子力の是非を「推進か脱原子力か」の二項対立で論じるのではなく、「立地地域に寄り添っているかどうか」というもう一つの軸から考えるべきと訴えた。また、先般行われた自民党総裁選候補者への公開アンケート結果についても触れ、「以前は原子力に否定的だった候補者も、今ではほぼ全員が前向きな姿勢を示している」と意識の変化を指摘。その一方で、風向きが好転している今こそ気を引き締める必要性を強調し、リプレースの実現や人材確保、地域との共生に向けた政策の具体化を訴えた。基調講演では、日本エネルギー経済研究所の専務理事・首席研究員の小山堅氏、慶應義塾大学産業研究所の野村浩二教授、東京大学生産技術研究所の荻本和彦特任教授が登壇したほか、日米学生会議で代表を務めた東京大学医学部医学科の富澤新太郎さんが登壇。同シンポジウムのテーマに沿った展望と課題について、それぞれの立場から具体的な見解が示された。小山氏は、中東情勢をはじめとする地政学リスクや国際分断の深刻化を背景に、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立が一層困難になっている現状を指摘。AIやデータセンターの普及による電力需要の急増を踏まえ、安全性を確保した上での原子力の最大限活用が「S+3E」同時達成の鍵になると訴えた。野村教授は、2010年代後半以降に加速した脱炭素政策が経済成長の制約要因になっているとし、主要国のエネルギー価格差や産業空洞化の実態を分析。安価で安定的なエネルギー供給体制の確立と、脱炭素政策からの現実的な転換を呼びかけた。荻本特任教授は、化石燃料制約や地球温暖化、紛争リスクと新たな需要増を背景に、社会全体のエネルギーシステム変革の必要性を強調。エネルギーミックスや、電源の再配置や送電ネットワークの強化によって、持続可能な脱炭素化を実現すべきだと述べた。その後のパネルディスカッションでは、エネルギー安全保障と脱炭素化をめぐり、登壇者間で活発な意見交換が行われた。
05 Nov 2025
676

北海道電力は10月31日、泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)の再稼働後に実施を予定している、電気料金の値下げ見通しを公表した。家庭向けの電気料金は平均11%程度値下げし、企業用などでは平均7%程度の値下げを行う。同機は今年7月、原子力規制委員会から原子炉設置変更許可を受けており、同社が掲げる「2027年のできるだけ早期の再稼働」に向けて大きな節目を迎えている。北海道電力によると、3号機の再稼働後に安全対策費や定期検査費用等は増加するものの、同社の電源構成の8割超を占める火力発電所の稼働率が下がるため、燃料費等の減少が見込まれる。その費用低減効果を年間約600億円と試算した。また、防潮堤等の安全対策に係る建設工事費は長期間にわたり分割されるため、電気料金の値下げへの影響は小さくなると説明した。一方で、将来的な物価上昇に伴う修繕費や諸経費の増加、さらには金利上昇に伴い、社債発行や資金調達時の利息負担の増加が見込まれ、その額を年間約300億円と試算。しかし同社は、「カイゼン活動」と「DX推進」の融合を軸にした生産性向上策を強化し、年間約200億円のコスト削減を行うことで、年間約500億円程度のコスト圧縮を実現できるという。具体的には、カイゼン活動を通じた発電所の定期検査周期の延伸・定期検査費用の低減、遠隔監視、自動巡視点検ロボット等を用いた発電所の運用・保守高度化、生成AIを活用した抜本的な業務見直しなどを掲げた。これらを電気料金の値下げの原資として活用していく考え。
04 Nov 2025
1059

日本原子力産業協会の増井秀企理事長は10月24日、定例記者会見を行い、電気事業連合会による将来リプレース試算への所感や、「原子力産業セミナー2027」と「第11回東アジア原子力フォーラム」への参加報告などについて語った。会見の冒頭、増井理事長は第46回原子力小委員会で電気事業連合会が提示した「将来的に必要な原子力発電所のリプレース規模に関する試算」について、「試算は穏当なもの。その上で、産業界が未来に希望を持てるよう、中期・長期それぞれの見通しを2段階で提示することが適切だろうと進言した」と述べた。また、同委員会で日本電機工業会が示した原子力産業の基盤維持・強化の取組みに関して、「人材の確保と定着、シニア人材の活用など、原子力産業の基盤維持対策の必要性」について進言し、「限られた人員でも現在と同じ成果を維持すべく、自動化・デジタル技術の活用が重要になる」と発言したことを報告した。続いて、原子力産業界の人材確保を目的とした合同企業説明会「原子力産業セミナー2027」の実施を報告。今年は初めて福岡市でも開催し、参加者は3会場(東京・大阪・福岡)で計564名、出展企業数が前年より約10%増加したという。また、電気電子系や文系学生の参加が増えたことを受け、「参加学生の専攻分布や傾向について、今後さらに分析を進めたい」と述べた。次に、韓国・慶州で開催された第11回東アジア原子力フォーラムへの参加を報告。ここでは、日本、中国、韓国、台湾の関係者が一堂に会し、原子力産業の現状と展望をテーマに意見交換した。韓国からは原子力を維持する国家エネルギー政策の重要性と、安全性強化・資源の制約克服に向けた東アジア地域内での協力の必要性が説かれた。中国からは海外向け原子力事業の拡大方針が示された。台湾からは金山原子力発電所の廃止措置計画の進捗など、将来的な具体的なマイルストーンが発表されたという。日本からは増井理事長が「日本の新規建設プロジェクトにおける重要課題」と題して登壇し、新設に向けた課題と展望を発表した。また同フォーラムの翌日から2日間にわたり、慶州市隣接地域の原子力関連施設などを訪問し、関係者と活発な意見交換を行ったと述べ、今後の同地域の関係者間の連携強化に期待を寄せた。その後、記者から就任直後の高市首相に関連する質問が飛んだ。「次世代革新炉やフュージョンエネルギーの早期の社会実装を目指す」と所信表明演説で発言した高市首相について、「原子力に対する理解が深く、原子力の事業環境整備の進展にも意欲を示されており、非常に力強い存在だと感じる」と述べた。特に、事業環境整備の重要性を長らく進言している同協会にとって、同じ志を持った新首相への信頼は大きく、「政府には今後も一貫性のある原子力政策の推進を期待している」と述べた。
31 Oct 2025
801

高市早苗首相は10月28日、訪日中のD・トランプ米大統領と会談し、両国による対米投資を柱とした経済協力の強化で合意した。会談後に公表された「日米間の投資に関する共同ファクトシート」には、エネルギーやAI、重要鉱物など幅広い分野で日本企業が米国のプロジェクトに参画を検討していることが明記された。両首脳は、7月の関税合意を踏まえ、総額5,500億ドル(約84兆円)規模の対米投資枠を設定。そのうち最大2,000億ドルが原子力分野への投資となる見込みだ。日本政府系金融機関の支援も活用し、日米双方の企業による新たなビジネス協力を促進する考えを示した。原子力分野では、ウェスチングハウス(WE)社が米国内で進める大型炉AP1000(PWR、125万kWe)やSMR(小型モジュール炉)の建設計画に対し、三菱重工業、東芝、IHIなどの日本企業が関与を検討している。事業規模は最大1,000億ドル(約15兆円)に達する見通し。また、米国のGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kWe)についても、日本の日立GEベルノバニュークリアエナジー社らが関与する構想が盛り込まれた。経済産業省によると、ファクトシートは関心を示した企業の案件を列挙したものであり、投資実行が確定したわけではないという。日米両政府は同日、AIや核融合など7分野の科学技術協力に関する覚書にも署名し、経済・技術両面での連携強化を確認した。
29 Oct 2025
1466

核融合エネルギーの開発ベンダーであるHelical Fusion(ヘリカルフュージョン)は10月27日、核融合発電に欠かせない「高温超電導コイル」を開発し、実際の核融合炉に近い磁場環境を再現した試験装置において、同コイルの実証(通電)に世界で初めて成功した。この試験環境は、コイル自身が発生させる磁場に加え、外部からの磁場が同時に作用し、磁場を介して電流同士が相互に影響し合う複雑な状態を再現したもの。将来の核融合炉で想定される条件下で大電流を流しても、破損せずに安定して磁場を生み出せることを確認したという。実証に用いられたのは、絶縁体を使わずに製作された「無絶縁型」の高温超伝導コイルで、この方式による大型導体の実証は世界初となった。今回の成功を受け同社は、最終実証装置「Helix HARUKA(ヘリックス・ハルカ)」の製作・建設に着手する。2030年代中にはこの「Helix HARUKA」による統合実証、および世界初の実用発電の達成を目指す。同社は、核融合科学研究所(NIFS)出身の研究者らによるスタートアップ企業で、複雑な形状でプラズマを制御する「ヘリカル方式」を採用している。これは、らせん状に曲げたコイルを用いて強力な磁場のかごを作り、内部に閉じ込めた高温・高圧のガスで持続的に核融合反応を起こし、発生する膨大なエネルギーを発電に利用する。複雑な形状のコイルを用いるため製作の難易度が高い一方、運転時にプラズマに電流を流す必要がないという特長がある。また、高温超電導を使えば、小型の炉でもより強力な磁場を発生させることができるという。同社の田口昂哉代表取締役CEOはウェブサイト上で「今回の達成は、当社だけでなく世界の核融合技術開発において極めて重要なマイルストーンとなった。この歴史的な達成を受けて、我々はいよいよ発電前の最終段階に入った。これは、当社にとどまらず、日本が世界の開発競争において先頭に躍り出たことを意味する」と述べた上で、「これまで70年かけて日本の国立大・国立研で研究されてきた技術を社会実装するために、ますます力を尽くして成功に辿り着きたい」と今後に向けて意欲を示した。
28 Oct 2025
2070

九州電力は10月24日、川内原子力発電所(PWR、89.0万kWe×2基)のサイト内に使用済み燃料乾式貯蔵施設を新設することを発表し、同日、原子力規制委員会へ原子炉設置変更許可を申請した。また、安全協定に基づく事前協議書を鹿児島県及び薩摩川内市に提出した。同社は総工費約350億円を投じ、2029年度を目途に運用開始を目指す。同社は今年の5月、玄海原子力発電所での乾式貯蔵施設の設置工事を開始。こちらは2027年度の運用開始を目指している。乾式貯蔵施設は、プールで十分に冷却された使用済み燃料を金属製のキャスクに入れ、空気の自然対流によって建物内で冷却する。水や電源を必要としない点が特長だ。いずれの貯蔵施設も、2026年度に運用開始予定の青森県の六ヶ所再処理工場への搬出を前提としている。川内原子力発電所では、使用済み燃料のプールでの貯蔵率が、1号機が約75%、2号機が約80%(今年9月時点)に達しており、それぞれ2034年、2028年以降に上限に達する見込みとなっていたため、解決策が急務となっていた。同社の計画によると、貯蔵施設は最大560体の燃料集合体を貯蔵可能で、高さ約15メートル、幅約40メートル、奥行き約40メートルの規模となる。遮へい機能を持った鉄筋コンクリート構造の建屋内に乾式貯蔵容器を貯蔵することで、乾式貯蔵施設を設置しても、既設建屋を含めた敷地境界における線量が目標値である年間 50μSv を十分下回る設計になっているという。また、乾式貯蔵容器は、発熱を外気で冷却する除熱機能や、二重の蓋構造で内部を密閉し放射性物質の漏えいを防ぐ閉じ込め機能、金属胴体や中性子遮へい材による遮へい機能、さらに燃料の配置を工夫して臨界を防止する臨界防止機能を備えている。
27 Oct 2025
1333