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07 Aug 2025
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QST六ヶ所フュージョンエネルギー研究所 新スパコンを公開
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07 Aug 2025
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UAE・ENEC 原子力拡大に向け韓米企業と連携強化
国内NEWS
06 Aug 2025
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Pu保有量44.4トン 前年からわずかに減少
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06 Aug 2025
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ロシア 再処理実証を産業規模で開始
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06 Aug 2025
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日本代表が全員メダル獲得 第2回国際原子力科学オリンピック
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05 Aug 2025
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米NRC パリセード発電所の運転再開を承認
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05 Aug 2025
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米国 デジタルインフラ開発を視野に4サイトを選定
国内NEWS
05 Aug 2025
773
福井県 クリアランスビジネスの本格化を目指す
アラブ首長国連邦(UAE)の首長国原子力会社(ENEC)は、エネルギー安全保障と持続可能性の強化を目的に、原子力発電の迅速な供給体制の構築に向け、国内外での投資、協力、展開の機会の拡大に注力している。こうした中、同社は、韓国ならびに米国の企業と相次いで覚書(MOU)を締結。UAEの総電力需要の25%を供給するバラカ原子力発電所(韓国製APR1400×4基)の建設・運転で得た知見を活用し、原子力をクリーンエネルギー戦略に取り込もうとする各国・企業への支援、協力体制を強化している。韓・現代E&C、サムスンC&TとMOUを締結ENEC社は7月28日、韓国の現代E&C(現代建設)社とグローバルな原子力事業における協力機会の模索を目的とした戦略的覚書(MOU)を締結した。現代E&C社はバラカ発電所の建設の主要請負業者で、同建設プロジェクトにおいて、独自のリスク管理と建設能力を実証済み。本MOU締結により、知見の共有、プロジェクト参加の共同評価、戦略的投資機会の評価を実施するほか、相互の関心分野を特定し、共同作業部会を設置。両国が原子力を含むエネルギー分野での将来の協力へのコミットメントを深める中、現代E&C社はバラカ・プロジェクトで培った信頼と経験を基盤に、戦略的パートナーとしての協力を拡大する計画だ。翌29日には、ENEC社はサムスンC&T社(サムスン物産)とも、グローバル市場における原子力関連プロジェクトの共同開発を模索するMOUを締結。協力範囲は、米国における新設、運転再開、原子力インフラ関連の合併・買収(M&A)活動、原子力機器サプライヤーなどへの投資の検討が含まれている。さらに、小型モジュール炉(SMR)の共同開発と投資計画、原子力による水素製造の機会の評価、ルーマニアにおける原子力発電所の開発と資金調達に関する共同評価などが挙げられている。両社は、大型炉とSMR分野で築いてきた先進技術とグローバルネットワークを融合し、相乗効果をめざす。なお、サムスンC&T社は、2025年4月にルーマニアにおけるチェルナボーダ原子力発電所1号機(CANDU炉、70.6万kWe)の改修契約を獲得したほか、同国南部のドイチェシュティ(Doicesti)における米ニュースケール社製のSMR建設プロジェクトの基本設計(Front-End Engineering Design:FEED)にも共同参画している。スウェーデンとエストニアにおいてもSMRプロジェクトに取り組んでいるところだ。米ウェスチングハウス社とMOUを締結ENEC社は米ウェスチングハウス(WE)社と7月25日、米国における高度な原子力技術の展開検討に向けたMOUを締結した。米政府はAIやテクノロジー分野の拡大などに伴う電力需要の増加に対応するため、2030年までに10基の大型炉の建設開始、2050年までに米国の原子力発電能力を4倍に拡大するという目標を掲げている。両社は、WE社のAP1000の展開加速を含む、米国の新規建設と再開プロジェクト、燃料サプライチェーンの協力、バラカ発電所へのWE社の運転・保守の支援拡大の可能性などについて検討していくことで合意した。GVH社との連携、ENECの戦略推進なおENEC社は今年5月、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と、GVH社製のSMRであるBWRX-300の国際展開に向けて、包括的なロードマップの評価・策定で協力するMOUを締結している。同MOUは、ENEC社が次世代原子力技術の評価と潜在的な展開加速を目的に創設したADVANCEプログラムの一環。ENEC社は今回の一連のMOU締結により、国際的な原子力パートナーシップにおける役割を拡大し、原子力の成長を加速、世界の電力需要の高まりに応える戦略を推進したい考えだ。
07 Aug 2025
362
ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下の鉱山化学コンビナート(MCC)において、7月25日、使用済み燃料の再処理を行う実験実証センター(PDC)の第2フェーズの施設が稼働を開始した。MCCは、クラスノヤルスク地方の閉鎖都市ジェレズノゴルスクに所在。冷戦時代は兵器級プルトニウム生産炉(全3基、閉鎖済み)が稼働し、使用済み燃料はすべてサイト内の放射化学プラントで再処理された。PDCでは、高レベルおよび中レベル放射性廃棄物の量を大幅に削減する第3世代+(プラス)の革新的技術を用い、VVER-1000の使用済み燃料を再処理する計画であり、将来的には高濃縮度燃料や高速炉の燃料など、その範囲を拡大していく方針である。PDCでは2015年に第1フェーズが完成。分析用ラボを備えた一連の研究用ホットセルで構成され、使用済み燃料の再処理技術と放射性廃棄物の取扱い方法の検証が実施された。今回稼働を開始した第2フェーズの施設は、第1フェーズの実験規模とは異なり、産業規模。使用済み燃料の再処理に加えて、MCCに建設予定の大規模な再処理工場(RT-2)を設計するためのデータ収集や設備の検証を実施する。第2フェーズは2024年11月に完成。技術開発と設計パラメータの達成により、世界初となる液体放射性廃棄物を発生しない再処理施設となることが期待されている。ロスアトムのA. リハチョフ総裁は、「第2フェーズの稼働により、天然ウランの使用を大幅に削減し、使用済み燃料の再処理によって得られる資源の再利用によって、産業規模のクローズド・燃料サイクルを実現する」と強調した。なおMCCでは、ベロヤルスク原子力発電所4号機(高速炉BN-800)用のMOX燃料(混合酸化物燃料)を製造。再処理で生成されるプルトニウムの蓄積を減らすために原子炉で利用される。またリハチョフ総裁は、第2フェーズの施設が設計通りの能力に達すれば、年間約200トンの使用済み燃料を再処理できると言及。チェリャビンスク州にある生産合同「マヤク」(再処理工場RT-1が1977年より操業中)と新たに計画している生産施設を考慮すると、今後15年以内に第4世代エネルギーシステム((安全性の向上、放射性廃棄物の削減、資源の有効利用、経済性向上を通じ、原子力発電所のライフサイクル全体を通じてより高い持続可能性を確保するシステム))の立ち上げが確実になるとの見通しを示した。なお、MCCの閉鎖原子炉の跡地で、放射性毒性の高い物質であるマイナーアクチノイド(MA)の最終処分の実証を目的に、研究用熔融塩炉の建設が予定されている。今年7月に設計の第一段階が完了。主要な技術的な方針に関する資料はすでに整い、次の段階では、炉本体と燃料準備施設の技術設計、さらに設計と予算に関する書類一式の作成が行われる。設計作業は2027年まで継続され、並行して、設計文書に反映される技術的方針を裏付けるための研究開発も進める。炉の運転開始後も、技術の実用化や規模拡張に向けた研究を継続するという。
06 Aug 2025
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米原子力規制委員会(NRC)は7月24日、パリセード原子力発電所に対する広範な技術審査を完了し、同発電所の運転再開に係る主要な許認可および規制措置を承認した。米国で閉鎖された原子力発電所が運転再開の承認を得るのは初。NRCの承認を受け、ホルテック・インターナショナル社のK. トライス社長は、「これは私たちのチーム、ミシガン州、そして米国にとって歴史的な瞬間。米国の原子力エネルギーにおける前例のないマイルストーンだ。当社は、今後数十年にわたって地元の雇用と経済成長を支援しながら、安全、確実に、米国のエネルギーの未来をサポートするためにパリセードの運転を再開する」と述べた。NRCは同社宛ての7月24日付の書簡で、正式に承認を通知。NRCは、予定通りに完了した技術審査に基づき、発電所および使用済燃料貯蔵施設の運転認可を、ホルテック・デコミッショニング・インターナショナル(Holtec Decommissioning International LLC)社からパリセード・エナジー社(Palisades Energy LLC)に移転することを承認。また、ホルテック社の申請により、停止前に運用されていた、技術仕様書や緊急時対応計画、品質保証プログラム、保守プログラムなどの各種文書やプログラムの復活も認められた。2025年5月、NRCは発電所の運転再開による重大な環境影響は発生しないと結論付けている。今回の承認が有効となり、発電運転体制(power operations licensing basis)に正式に移行するのは、ホルテック社の提案した2025年8月25日。これ以後、ホルテック社は燃料装荷が可能となるが、実際の運転再開のためには、まだ複数の許認可手続きがNRCで審査中であり、さらに幾つかの要件を満たす必要があるという。なお、発電所の運転は、当初の運転認可(2031年3月24日期限)の下で行われ、送電開始を今年末までに見込んでいる。パリセード発電所(PWR、85.7万kWe)は1971年に営業運転を開始。2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月に同発電所は所有者・運転者だったエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を運転再開する方針に転換。2023年9月、NRCに運転認可の再交付を申請していた。現在、安全で信頼性の高い発電事業再開を保証するために、NRCの監督下で厳格なテスト、検査、メンテナンスなど、タイムリーな運転再開に向けて広範な準備作業が進行中である。このほど運転、保守、化学、放射線防護、工学の全5分野の訓練プログラムが、米国原子力発電運転協会(INPO)から完全認定された。INPOの認定は、運転再開の前提条件であり、NRCや世界原子力発電事業者協会(WANO)も評価に関与する厳格なプロセス。米ウェスチングハウス社の主導により、新訓練組織のNEXA(Nuclear Excellence Academy)が設立され、18か月間の訓練を通じて運転再開に必要なすべてのタスクに応じて正式に訓練された社内のスタッフを揃えた。
05 Aug 2025
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米エネルギー省(DOE)は7月24日、人工知能(AI)データセンターおよびエネルギーインフラ開発に向けたDOEサイトを選定したことを明らかにした。エネルギーコストを削減する、信頼性の高いエネルギー技術の革新を促進し、AI分野における米国のリーダーシップと国家安全保障の強化を目指す。これは、7月23日の大統領令「データセンターインフラ整備の迅速化」のほか、「国家安全保障強化のための先進原子炉技術の導入」、「米国のエネルギー解放」に基づき、DOEサイトを活用したAIインフラ開発を加速する措置の一環。DOEは以下の4サイトを選定。大規模なデータセンター、新たな発電設備、その他の必要なインフラに最適な拠点であると指摘する。最先端のAIデータセンターおよびエネルギー発電プロジェクトを展開すべく、民間企業との連携を進める方針である。アイダホ国立研究所オークリッジ保護区(テネシー州)パデューカ・ガス拡散プラント(ケンタッキー州)サバンナリバー・サイト(サウスカロライナ州)DOEのC. ライト長官は、「DOEの土地資産を活用してAIとエネルギーインフラを展開することで、次なる『マンハッタン計画』を加速させ、米国がAIとエネルギーの分野で世界をリードする体制を築く」と語った。DOEは2025年末までに一部のDOEサイトでAIインフラの建設を開始し、2027年末までに運用を開始することを目標としている。今年4月にDOEは、情報提供要請(RFI)を実施、産学からDOEサイトへのAIインフラの確立について意見や提案を募っており、すでに多くの関心を集めていた。DOEは、州政府、地方自治体などと協議の上、データセンター事業者、エネルギー企業、一般市民と連携してこの重要な取組みをさらに推進していく計画。各サイトごとのプロジェクトの公募が数か月以内に開始される予定であり、DOEは今後、さらなる公募を実施する可能性のある追加拠点の検討も進めているという。
05 Aug 2025
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米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社はこのほど、2件の新たなパートナーシップを発表した。同社が開発中のマイクロ炉「オーロラ」発電所の商業展開を実現し、クリーンな電力で次世代データセンターや工場での大規模な電力需要に応えていくという。オクロ社は7月22日、デジタルインフラ向けの冷却システムを開発するヴァーティブ(Vertiv)社と、オーロラ発電所からの蒸気と電力を用いて、大規模データセンターと発電設備を併設したコロケーションに特化した、エネルギー効率の高い電力と冷却ソリューションを共同開発する提携契約を締結したことを明らかにした。オーロラ発電所の基本設計は変更せずに、原子炉から発生する熱をヴァーティブ社の得意とする冷却システムに利用。エネルギー効率を大幅に向上させ、このパイロット技術のオーロラ発電所初号機での実証を計画している。米国で急増する電力需要に対応するため、両社は電力と冷却を統合的に最適化することで、データセンターの運用の革新を目指す。加えて、オクロ社は7月23日、革新的なエネルギーサービスと技術を提供する、リバティ・エナジー(Liberty Energy)社と、データセンター、工業施設、公共事業規模のサイトなどの大規模かつ高需要の顧客を対象とした、段階的かつ統合型の電力ソリューションの導入を加速する戦略的提携について発表した。初期段階では、リバティ社の天然ガス発電と負荷管理ソリューションにより、即時に、信頼性ある電力を供給し、柔軟なエネルギーサービスを実現。最適化とレジリエンスの向上を目指したグリッド管理サービスも行う。オーロラ発電所が稼働すれば、クリーンで持続的なベースロード電源として、リバティ社の天然ガス発電を補完するという。オクロ社のJ. デウィットCEOは、「発電・バックアップ・グリッド管理・最適化をすべて単一のプロバイダーで完結するもの」と、提携の意義を強調した。リバティ社は、2023年にオクロ社に1,000万ドルを出資した初期の投資家。数ある先進的原子力企業から、オクロ社を選定した。オーロラは、高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万kWeと5万kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。オクロ社は、2027年末までに米アイダホ国立研究所(INL)サイト内でオーロラ発電所初号機の導入を目標に、米原子力規制委員会(NRC)との間で許認可申請前活動を実施。7月17日には、建設運転一括認可(COL)フェーズ1に関する事前審査を完了したと発表。NRCによる評価では、オクロ社のCOL申請の受理を妨げるような重大な不備は見つからず、今後の申請の最終化に向けて有益な観察・助言も示され、効率的かつ効果的な審査を促す一助になったと評価。このNRCによる事前審査の完了は、規制プロセスを近代化し、先進原子炉のタイムリーな展開を可能にするというADVANCE法と最近の関連する大統領令によって強化されたNRCの広範な取組みを反映したものと捉えている。オクロ社は年内にCOLの申請を予定している。なおオクロ社は最近、INLサイトでのオーロラ発電所の筆頭建設業者として、キウィット ニュークリア ソリューションズ社(Kiewit Nuclear Solutions)を選定。同社は北米最大級の建設・エンジニアリング企業キウィット社の子会社。大規模な産業・インフラプロジェクトでの豊富な実績と経験を活かし、オーロラ発電所の設計、調達、建設を支援するという。建設準備を年内に開始し、2027年後半から2028年初めの運開を見込んでいる。
04 Aug 2025
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仏アラベル・ソリューションズ社は7月21日、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のダーリントン新・原子力発電所(DNNP)向けGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」に、タービンホールの主要機器を供給することを明らかにした。アラベル・ソリューションズ社のC. コルナンドCEOは、「当社は、SMR向けに蒸気タービン発電モジュールを最適化しており、あらゆる炉型に対して提供が可能である」と語った。DNNPには蒸気タービン、TOPAIR発電機(空冷式)、および関連する熱交換器を供給する。同社の新設プロジェクト責任者であるS. クフィニャル氏は、「蒸気タービン発電機は、BWRX-300(30万kWe)の蒸気条件に合わせて特別に設計されている。タービンアイランドの蒸気および水循環系統を最適化し、発電所全体の効率を高め、電気出力を最大化する設計としている」と補足した。このタービンホールのサプライチェーンには、カナダ企業も含まれており、たとえば、オンタリオ州に本社を置くChemetics社は、熱交換器用の部品を製造する。DNNPのSMRに採用するフルスピードの蒸気タービン発電機シャフトラインは全長34メートル。単流型高圧モジュール1基と、複流型低圧モジュール2基を組合わせ、熱サイクル効率を高め、カナダの60Hzの電力網向けに定格370 MVA(メガボルトアンペア)まで対応したTOPAIR発電機と接続される。アラベル・ソリューションズ社は、原子力タービンアイランド技術とサービス部門における世界有数の供給者。フランス電力(EDF)グループの完全子会社で、その事業は以前はGEベルノバ社の一部であった。
01 Aug 2025
631
カナダ・オンタリオ州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社と7月21日、OSGE社がポーランド国内で小型モジュール炉(SMR)を展開するにあたり、OPG社が事前準備、運転、保守などのサービスを提供する、基本合意書(LOI)を締結した。本LOIは、2023年6月に締結された両社の合意をベースにしている。OSGE社は、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」をポーランド国内6サイトで最大24基を建設予定。同SMRは、OPG社がダーリントン・サイトで建設中のダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)でも採用されている。OPG社は、サイト別評価、プロジェクト管理、ライセンス戦略、技術コンサルティングなどの面で支援し、ポーランドのエネルギー自立とクリーンエネルギー導入に貢献したい考えだ。LOIに署名したOPG社のN. ブッチャーCEOは、「当社はSMR分野においてリーダー的立場にある。エネルギー安全保障の解決策として、新たな原子力導入を進める国々が、当社とオンタリオ州に注目している。ポーランドが原子力発電の導入を進めるにあたり支援できる可能性を光栄に思う。カナダ国内の原子力サプライチェーンと経済成長にもつながるものだ」とコメント。OSGE社のR. カスプロウCEOも、「OPG社の実績と意欲を評価しており、その知見を得ることで、ポーランド初のSMR建設に自信を持てる」と述べた。LOI署名式には、ポーランド産業省からW. ヴロースナ次官兼戦略的エネルギーインフラ担当政府全権代表とP. ガイダ原子力局長が立会った。BWRX-300は、電気出力30万kWの次世代BWR。2014年にNRCから設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は今年4月、OPG社に対し、DNNPサイトにおけるBWRX-300の初号機の建設許可を発給。翌5月、オンタリオ州はDNNPサイトへのBWRX-300初号機の建設計画を承認した。OPG社によると、2030年末までに送電開始し、残りの3基は2030年代半ばまでに完成予定。オンタリオ州には強固な原子力発電のサプライチェーンがあり、80社以上がOPG社との契約を締結済みであるという。OSGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資し、2022年に設立された合弁企業。2023年12月に気候環境省から、国内6地点における合計24基のBWRX-300建設計画へ原則決定が発給され、OSGE社は現在、許認可手続きの準備を進めている。OPG社の子会社のローレンティス・エナジー・パートナーズ社と2024年11月に、ポーランド向けSMRの予備安全解析報告(PSAR)作成支援に係る、4,000万加ドルの契約を締結している。さらに、OPG社とOSGE社は、GVH社や米テネシー峡谷開発公社(TVA)と共に、技術協力グループの一員であり、BWRX-300の標準設計および主要機器(原子炉圧力容器と炉内構造物)の詳細設計の開発に共同出資している。
30 Jul 2025
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ブルガリアのZ. スタンコフ・エネルギー相は7月16日、米国ニューヨークを訪問。コズロドイ原子力発電所7-8号機の新設のため、米銀シティ(CITI)からの資金調達を勝ち取った。ブルガリアは、数十年ぶりとなる最大規模のエネルギー・プロジェクト実現に向けて、スタンコフ相が率いる代表団がCITI幹部と最終協議を行い、技術提案の詳細な精査と分析の後、新規建設の資金を確保するためのパートナーシップの合意に至った。スタンコフ・エネルギー相は、「政府の最重要エネルギー・プロジェクトの実現に向け、CITIとの合意は極めて重要な前進。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000を採用するコズロドイ発電所の7-8号機の建設は、ブルガリアのエネルギー自立と長期的な安定を保証するものだ」と語った。また、代表団に参加した新規建設会社のKozloduy NPP – New Builds PLC =KNPP-NB社のP. イワノフ社長も「CITIの確かな専門性と強力なグローバルネットワークにより、将来世代に安全で持続可能、かつ手頃な価格のエネルギーを提供するための財政的枠組みの構築が可能になった」と述べた。今回の契約により、CITIが輸出信用の単独コーディネーター兼主幹事を務める。中東欧において同銀最大の原子力融資案件となるというが、その規模は非公表。スタンコフ大臣と会談した、CITIのS. フリーデブルグ公共バンキング部門責任者は、「当社は、コズロドイの新設プロジェクトによる低炭素エネルギーソリューションの資金調達を先導し、その実現に向けて財政的専門知識を提供する」と語った。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟した際、加盟条件として2006年までに安全上問題のあるコズロドイ1~4号機(各VVER-440、44万kW)をすべて閉鎖することになり、現在廃止措置中である。5-6号機(各VVER-1000、104万kW)の2基はそれぞれ1988年と1993年から運転を開始し、現在、同国の総発電量の約1/3を供給している。5-6号機とも、60年の運転期間延長を目指し、バックフィット作業を実施している。2023年1月、ブルガリアの国民議会はコズロドイ発電所において、7-8号機としてAP1000×2基の新設をめざし、米政府と政府間協力協定の締結交渉を開始する方針案を可決した。これを受け、KNPP-NB社とWE社は、同年3月に新設計画に着手すべく共同作業グループ設置の協力覚書を締結。同年6月には、同覚書に基づき発電所の既存インフラや、ブルガリア産業界の現状等を評価し、詳細設計の予備的作業や建設工事の準備を進めていくために基本設計(FEED)契約を締結した。ブルガリアと米国は、2024年2月にコズロドイ発電所の新設計画などを含むブルガリアの原子力プログラムの開発に協力する政府間協定を締結。同年11月には、KNPP-NB社とWE社、および主契約者に選定された韓国の現代E&C(現代建設)社はエンジニアリング・サービス契約を締結した。7号機は2035年、8号機は2037年に運開を目標としている。
29 Jul 2025
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米エネルギー省(DOE)は7月15日、先進試験炉向けの燃料製造を加速するたため、燃料製造ラインのパイロットプログラム(Fuel Line Pilot Program)への申請の募集(RFA)を開始した。同プログラム下では、6月に発表された先進炉のパイロットプログラムによりDOEが承認を予定している試験炉向けに、米企業が開発した燃料製造ラインをDOEが認可するもの。この燃料製造ラインは、燃料を供給する先進炉と同様にDOEの国立研究所以外に建設され、DOEが迅速な承認手続きによって認可する。DOEは現在、国立研究所以外で試験炉を建設・運転することに関心のある米国の原子炉開発企業からの申請を検討中であり、2026年7月4日までに臨界を達成する可能性のある、少なくとも3炉型を今夏後半に選定する予定。この先進炉および燃料製造ラインのパイロットプログラムは、2025年5月のトランプ大統領による大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」に基づく。燃料製造ラインのパイロットプログラムは、別の大統領令「国家安全保障強化のための先進原子炉技術の導入」により、先進原子炉の展開への支援のほか、燃料供給体制の強化をはかり、濃縮ウランや重要資源の海外依存からの脱却、国の原子力復興に向けた民間投資の呼び込みなどを目的としている。DOEパイロットプログラムの下で建設・運用される燃料製造ラインは、研究・開発・実証を目的としており、米原子力規制委員会(NRC)のライセンスを必要としない。原子力法の下でDOEが認可した燃料製造ライン設計は、将来のNRCによる商用ライセンス取得において迅速に処理される。申請者にとっては、DOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからのライセンス取得に向けた迅速なルートを確保、燃料製造ラインの商用化が可能になるというメリットがある。DOEによると、米国では現在、予測される需要を満たすのに十分な国内原子燃料が不足している。DOEは、燃料製造ラインの開発を活性化し、米国の生産基盤の立て直しを急いでいる。DOEのC. ライト長官は「米国には、世界をリードする原子力開発のためのリソースとノウハウがある。しかし、この急成長するエネルギー源に対応し、真の原子力復興を実現するには、安全かつ安定した国内サプライチェーンが必要。トランプ政権は規制ではなく革新を加速し、民間セクターとの協力により、新しい原子炉設計の安全な燃料供給と試験を推進して、米国消費者にとり、より信頼性が高く、手頃なエネルギーを実現する」と語った。申請者は、核物質の原材料の調達の他、先進的な燃料製造ラインの設計・製造・建設・運転・廃止措置に関するすべてのコストを自己負担。技術の実用性、製造計画、財政的な健全性などに基づき、選定される。初期申請の締切は8月15日。その後の申請も随時受け付けるという。
29 Jul 2025
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米ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギーメロン大学(CMU)で7月15日、人工知能(AI)とエネルギー革命の推進に焦点をあてた、エネルギー・イノベーション(EI)サミットが開催された。サミットでは、ペンシルベニア州がAIイノベーションのハブとなり、州全体で高レベルの雇用機会を創出する可能性が示されるとともに、主な原子力プロジェクトの詳細が明らかにされた。同サミットは、米上院議員D. マコーミック氏(ペンシルベニア州・共和党)の呼びかけにより開催され、D. トランプ米大統領やエネルギー省のC. ライト長官、内務省のD. バーガム長官などの政権の主要メンバーのほか、エネルギーとAI業界のトップリーダー、投資家など数十人が出席した。うち、コンステレーション社のJ. ドミンゲスCEOは、ペンシルベニア州内で運転する原子力発電所3サイトでの計画について詳細を公表。リメリック発電所(BWR、119.4万kWe)を2040年代まで運転を継続し、追加出力34万kWeの増強に向けて、24億ドルを投資するとしたほか、「クレーン・クリーン・エナジー・センター」(旧:スリーマイル・アイランド原子力発電所)については1号機を1年前倒しの2027年に運転再開すると発表した。同機は2050年代まで運転を予定し、3,400人の新規雇用を創出、計36億ドルの連邦・州税収、160億ドルの州内経済効果が見込まれている。さらに、「ピーチボトム・クリーン・エナジー・センター」の運転認可を少なくとも2054年まで延長するよう原子力規制委員会に申請中であり、今後20年間で延べ3,000万時間の雇用創出と、数百億ドル規模の電力供給が可能になると言及。「これらの投資は、AIをはじめとする未来を担うデジタル産業に力を与えるもの」と強調した。ウェスチングハウス社のD. サムナー臨時CEOは大統領令にしたがい、2030年までに米国で10基のAP1000の建設を開始する計画を策定・実行するための取組みを開始したと発表。計画が実施されれば全米で750億ドルの経済効果、5.5万人の新規雇用、ペンシルベニア州単独で60億ドル、1.5万人の新規雇用の創出が見込まれるという。また同社は、Google Cloud社との新たなパートナーシップにも言及。Google Cloud社のAIツールを活用して原子力発電所の建設効率と運用の向上を目指しているという。トランプ大統領は、「大統領令によって、原子力建設は『非常に簡単かつ非常に安全』になった」と述べ、老朽化した電力網の更新、データセンターと発電所の併設の可能性、そして原子力・非原子力を問わずエネルギープロジェクトの許認可プロセスの加速と改革についても言及した。
28 Jul 2025
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ウズベキスタンの首都タシケントで7月14日、同国における原子力発電所建設に向けて、ハンガリー製の乾式冷却システムの供給および製造に関する協力に関して関係国機関間で協議が実施された。協議には、ウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)、ハンガリーの外務貿易省とMVM EGI社の他、ロシアのアトムストロイエクスポルト社ならびにアトムエネルゴプロエクト社の代表らが出席した。ウズベキスタンは中央アジアの内陸国で、年間降水量が少ない乾燥地帯にある。乾燥気候と水資源の制約から発電所の信頼性と効率的な運用を確保するために、乾式冷却システムを導入する方針である。MVM EGI社は、ハンガリーの国営エネルギー企業MVM傘下のエンジニアリング企業で、乾式冷却技術では数十年の実績を有し、海外のエネルギープロジェクトにおいて、産業用および発電所向けの乾式冷却システムを提供しているという。原子力発電所への供給としては、ロシア極北にあるビリビノ発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:EGP-6×3基、各1.2万kWe、1基は2019年に閉鎖)で同社の乾式冷却システムが1972年以降から使用されており、世界で唯一の原子力発電所での実用化例だという。ビリビノ発電所は極寒・永久凍土地域にあり、水資源が乏しく、河川は冬季に凍結するため、河川水を大量に使用する通常の湿式冷却方式は使えない。今回の協議では、ウズベキスタン国内で乾式冷却システムの大型ユニット組立を目指し、特に自由経済区を基盤とした合弁企業の設立のほか、MVM EGI社による専門家の育成・再教育への協力の一環として、教育プログラムの実施、インターンシップや留学のための必要な環境整備などへの支援についても合意され、これら協力事項に関する議定書が署名された。今年5月には、ウザトムとMVM EGI社は、ウズベキスタンのS. ミルジヨーエフ大統領とハンガリーのV. オルバーン首相の立会いのもと、原子力利用分野における協力の強化に関する覚書を締結している。MVM EGI社の高度な乾式冷却技術をウズベキスタン初の原子力発電所となるロシア製小型モジュール炉(SMR)発電所での導入を念頭に、従来の原子力発電所ならびにSMRの効率的かつ環境的に持続可能な運用を確保するための革新的な技術ソリューションの推進を目的としていた。ウザトムはジザク州で、ロシア国営原子力企業のロスアトム傘下にあるアトムストロイエクスポルト社との契約に基づき、合計出力33万kWeのSMR発電所の建設プロジェクトを進めている。プロジェクトは、舶用炉を陸上用に改良したPWR型SMRのRITM-200N(5.5万kWe)を6基採用。設計運転年数は60年。初号機は2029年に運転開始、2033年までに段階的に全基を稼働させる計画だ。ロシアにとっては初のSMR海外輸出プロジェクトである。なおウザトムは、SMR発電所と並行して、大型炉の導入についても検討を開始する。6月20日にロスアトムと、100万kW級のロシア製VVER-1000×2~4基を採用する大規模原子力発電所の建設について検討を実施する合意文書に調印した。すでに合同作業グループが設置され、プロジェクトの主要部分の調査と建設コストの評価を実施するという。
25 Jul 2025
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米原子力規制委員会(NRC)は7月14日、今年5月に発出された一連の大統領令および超党派のADVANCE法に沿って、イノベーションの受け入れ、認可プロセスの迅速化、規制枠組みの近代化に向けた、最近の取組みと成果について声明を発表した。NRCは今回の声明の中で、引き続き国民の健康と安全を守ることを最優先としつつ、原子力の民間利用を効率的に規制し、社会に貢献する原子力発電の導入を支援していく姿勢を明示。すべてのステークホルダーと連携し、迅速かつ一体的に対応することで、世界の模範となる規制機関としての基準を維持していくとした。声明で明らかにした最近の取組みと成果は、以下のとおり。 新型炉の審査に革新的なアプローチを採用: 新型炉の審査を予定より早く、かつ予算内で完了。進行中の新型炉やライセンス更新審査についても、大統領令で示された建設と運転の認可プロセスを18か月以内に短縮。既設炉の運転期間延長に関しては、最終決定を1年以内とする期限に合わせてスケジュールを更新。例:―ダウ社傘下のProject Long Mott社によるX-エナジー社製SMRの高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」の建設許可発給には、18か月の審査期間を設定。―テネシー峡谷開発公社(TVA)のクリンチリバー・サイトにおけるSMR「BWRX-300」の建設許可発給には、17か月の審査期間を設定。―テラパワー社製ナトリウム冷却高速炉「Natrium」炉を採用するケンメラー発電所の建設許可の審査は、従来より6か月短縮を予定。2025会計年度最終手数料規則の公表: ADVANCE法第201条に基づき、先進炉の申請者および事前申請者に対する審査の時間単価を引き下げ。(1時間あたり318ドルから148ドルへと50%以上の削減)マイクロ炉のプラント製造工場での燃料装荷に関する指針を提示: マイクロ炉の展開に向け、重要な政策課題を解消。バージル・C・サマー1号機(PWR、100.6万kWe)およびペリー1号機(BWR、131.6万kWe)の運転期間延長を認可、それぞれ80年運転、60年運転に: 予定より早く、予算内で運転期間の延長を承認。これまでに97基の原子炉の運転認可を更新し、さらに13基については2度目の運転期間延長を認可、合計で2,200年分の原子炉運転能力を維持。設計認証の有効期間の延長: 従来15年の設計認証の有効期間を40年に延長するための直接最終規則を官報に公表。ACRS(原子炉安全諮問委員会)による審査の重点化: 審査対象を新規性や注目すべき課題に絞り込み。なお本声明に先立ち、7月1日にはNRCの委員3名が連名で、NRCを主導するために協調して取り組むことを表明した共同声明を発表している。また今年1月20日、トランプ大統領によりNRCの委員長に指名されたD. ライト氏は、6月30日に任期満了を迎えた。同氏はNRCの委員、委員長の再任候補として、6月25日の上院の環境公共事業委員会(EPW)で開催された公聴会に出席。宣誓証言の中で同氏は、再任が承認されれば、大統領令に従い、効率的なライセンス発行を優先し、米国を原子力エネルギーのグローバルリーダーとして再確立すべくNRCを率いる考えを示した。また、安全を最優先に先進炉や原子力技術の認可を妨げずに促進する方針を表明した。現在、同氏の再任は上院本会議による承認待ちとなっている。
24 Jul 2025
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自然科学研究機構核融合科学研究所(NIFS)と量子科学技術研究開発機構(QST)六ヶ所フュージョンエネルギー研究所は7月27日、共同で調達した新スーパーコンピュータシステム(以下:スパコン)を一般公開した。NIFSとQSTのそれぞれが保有していたスパコンを統合し、共同で調達することで、より高性能な機器の導入が実現。同スパコンは、1秒間に4京400兆回の計算が可能だ。設置場所は、QSTの六ヶ所フュージョンエネルギー研究所で、7月1日からすでに運用を開始している。NIFSとQSTが共同で運用する。同スパコンはNEC製で、計算能力は従来機の2.7倍。昨年12月13日の受注発表時に公開した受注額は、同社として過去最高の45億円。今後、核融合エネルギーの実現に向けたさまざまな研究に活用される予定だ。具体的には、国際プロジェクトの核融合実験炉「ITER」や、日本のトカマク型装置「JT-60SA」の実験予測、運転シナリオの作成に役立てられる。また、計算速度の大幅な向上により、核融合プラズマなどの複雑な現象をシミュレーションできるようになり、想定実験でのリアルタイム制御への応用も期待されている。また、同スパコンは、国内の大学や研究機関でも遠隔で利用可能で、核融合に関連した天体研究などにも活用されるという。
07 Aug 2025
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内閣府は、8月5日に開催した原子力委員会の定例会議にて、日本が2024年末時点で国内外に保有するプルトニウムの総量が約44.4トンであることを明らかにした。内訳は、国内の保管量がおよそ8.6トン、海外での保管量がおよそ35.8トン(英国に約21.7トン、フランスに約14.1トン)であった。2023年末時点の総量は約44.5トンであったため、わずかながらに減少した。減少は4年連続。海外に保管中のプルトニウムとは、国外(英仏)に再処理を委託しているが、まだ日本国内に返還されていないものを指す。これらは原則として、海外でMOX燃料に加工され、国内の発電プラントで利用されることになっている。日本政府は、プルトニウム利用の透明性の向上を図り、国内外の理解を得ることが重要であることから、国際原子力機関(IAEA)の管理指針(プルトニウム国際管理指針)に基づき、国内外において使用及び保管している未照射分離プルトニウムの管理状況を、1994年から毎年公表するとともに、IAEAに提出している。プルトニウムの削減が進まなかった理由として原子力委員会は、2024年は、日本がイギリスとフランスに委託してきた使用済み燃料の再処理が行われず、プルトニウムの回収がなかったことや、MOX燃料の装荷実績がある関西電力高浜発電所3・4号機(PWR、87.0万kWe×2)、四国電力伊方発電所3号機(PWR、89.0万kWe)にて、昨年、新たなMOX燃料が装荷されなかった影響だとしている。
06 Aug 2025
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2025年7月30日から8月6日にかけ、マレーシアのバンギで開催された「第2回国際原子力科学オリンピック(INSO)」において、日本代表の高校生4名が全員メダルを獲得する快挙を成し遂げた。金メダルを獲得したのは東海高等学校3年の田中優之介さん。さらに、筑波大学附属駒場高等学校3年の田部主真さんと武蔵高等学校3年の堀航士朗さんが銀メダルを、大阪府立北野高等学校2年の佐々木柚榎さんが銅メダルをそれぞれ獲得した。また、特別賞として、田部さんが実験試験最高得点賞を受賞し、佐々木さんは最優秀女性選手賞に輝いた。これらの代表選手は、文部科学省の事業として整備が進められている「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)」が提供するe-learningを通じて、INSOの7つの出題項目を日本語の動画で学び、その後2025年4月に実施された国内選抜会(日本語による遠隔試験)を経て選出された精鋭。選抜後には、専門用語に関する英語訓練を含む集中トレーニングを経て本大会へ参加している。本大会には、日本チーム出場支援委員会の代表として東京大学の飯本武志先生をはじめ、日本代表団のリーダーとして、京都大学の角山雄一先生と日本原子力研究開発機構の佐藤大樹先生が同行。リーダーたちは、現地で深夜におよぶ問題検討や設問の日本語訳、さらには採点作業(採点をめぐる各国間でのタフな交渉も含む)などを精力的に行った。日本代表団は、受賞の興奮も冷めやらぬまま、本日帰国する。国際原子力科学オリンピック(INSO)とは、国際原子力機関(IAEA)がアジア太平洋地域の20歳未満の学生を対象に企画した国際競技である。原子力科学技術は発電以外にも医療や農業、犯罪捜査、文化財保護など幅広い分野で活用されており、国連が提唱するSDGsの目標達成にも深く関わっている。INSOでは参加者が理論試験と実験試験を通じて高度な知識や技術を競い、原子力科学の可能性を深く考察し、「原子力科学技術の平和利用に対する認識を高めること」を目的としている。
06 Aug 2025
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クリアランス事業の運営管理を手掛ける新会社「福井県原子力リサイクルビジネス準備株式会社」が8月1日、福井県敦賀市で設立された。同社には、福井県や嶺南6市町、関西電力、日本原電、福井銀行、敦賀信用金庫、小浜信用金庫らが総額20億円を出資。代表取締役社長には来馬克美氏が就任した。原子力発電所の解体等に伴って発生した廃棄物の中で、放射能レベルが極めて低い金属(クリアランス金属)のリサイクルビジネスの確立が主たる目的で、これら廃棄物を活用するクリアランス制度の理解促進を図る狙いもある。福井県ではすでに同制度の理解促進活動が活発に行われ、これらクリアランス製品を公共施設に設置する活動(福井大学内のベンチ、若狭サイクリングルートのサイクルラック、福井南高校の防犯灯など)を行ってきた。これらの活動は、原子力や再エネ事業を活用し、嶺南地域経済の活性化を図る嶺南Eコースト計画(2020年に県が策定)の一部に位置づけられ、経済産業省の委託事業等を活用しながら、原子力発電所外でのクリアランス製品の活用を今後も進めていく。同社は、敦賀半島を候補地にクリアランス金属の集中処理施設を建設し、回収した金属を処理して一般用金属として販売する予定だ。国内でクリアランス金属のリサイクルを専門に行う会社は他にない。今後、集中処理施設の詳細設計や地質調査を行い、2027年頃には原子力規制委員会に事業許可を申請し、2030年代初めの操業開始を目指す。同施設の処理見込み量は20年間で4万トン、利益は約50億円(20年間)を見込んでいる。
05 Aug 2025
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環境省は7月31日、「令和7年度ぐぐるプロジェクト キックオフミーティング」を東京都内で開催した。同プロジェクトは、放射線に関する正しい情報発信を目的に2021年に始まった活動で、今年、最終年度となる5年目を迎えた。一般的に放射線はなじみが薄く、情報をアップデートする機会が少ないと言われている。そのため、過去に得た古い情報のまま、知識が止まっているケースが多々あり、放射線の健康影響に関する全国調査においても、「正しい知識を持つ人」の割合は未だ61.7%ほどに留まるという。こうした放射線の健康影響に関する誤解や風評、差別、偏見の解消を目指し、同プロジェクトでは、メディア向け公開講座や、ラジエーションカレッジ(全国の企業や学校での学びの場)によるセミナーの開催、学んだことを発信するための作品コンテストなど、幅広い活動を行ってきた。同プロジェクトでは、今年度までに「正しい知識を持つ人」の割合を80%にする目標を掲げ、昨年度発足した、福島の未来を担う若い世代で構成された「ふくしまメッセンジャーズ」による取り組みをパワーアップさせる方針だ。「ふくしまメッセンジャーズ」は昨年度、中高校生向けの絵本「木と鳥」やポスターの創作、福島県内でのフィールドワークやワークショップなど、さまざまな活動を通じて情報発信に努めてきた。今年度は活動の場を福島県外へと広げ、秋以降には全国8か所程度でのイベントにメンバーを派遣する。なお、活動の様子は動画にまとめられ、YouTube公式チャンネルなどで全国に発信される。早速、8/6(水)~8/7(木)には「こども霞が関見学デー」と題した小中学生向けの省庁見学イベント(環境省22階第一会議室で開催)にて、メンバーが先生役となって活動を紹介する予定だ。この日は、4名のふくしまメッセンジャーズのメンバーが登壇し、ロールプレイ形式で活動の様子が披露された。また、昨年度から同活動のサポーターに起用されている俳優・タレントとして活躍する箭内夢菜さん(福島県郡山市出身)も登壇。箭内さんは、「ふくしまメッセンジャーズの活動は、福島の今を知らない人たちの心を動かすきっかけになると思っています。私もサポーターとして、今年度も精一杯応援させていただきたいです」と意気込みを語った。
04 Aug 2025
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北海道電力は7月30日、原子力規制委員会から泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)の原子炉設置変更許可を受けた。同日午後、同社の勝海和彦取締役常務執行役員が、東京都内の原子力規制庁を訪れ、再稼働に必要な「設置変更許可」の許可書を受け取った。2013年に策定された新規制基準の審査には、これまでに17基が合格しており、今回が18基目の許可事例となった。泊発電所3号機は、2013年7月に設置変更許可申請を提出していたが、敷地内の「F-1断層」の活動性をめぐる議論が長期化し、許可の交付に約12年を要した。今後、発電所の設備の詳細設計に係る「設計及び工事計画の認可申請」および運転管理体制などを定めた「保安規定変更認可申請」に係る審査への対応、防潮堤などの安全対策工事を進め、2027年のできるだけ早期に再稼働を目指している。なお、審査中の1、2号機(PWR、57.9万kWe×2)は、2030年代前半の再稼働を目指している。同社の斎藤晋社長は、「大きな節目だ。不断の努力を重ねて世界最高水準の安全性を目指す」とコメントした。日本原子力産業協会の増井秀企理事長は同日、コメントを発表し、「道内における電力の安定供給をより強固なものとし、同時に、二酸化炭素の排出削減にも貢献すると期待される。データセンターや半導体工場の新増設に伴って今後の電力需要の伸びが著しいと予想される北海道において、原子力発電の役割は大きい」と、泊3号機の再稼働に期待を寄せた。林官房長官は同日午後の記者会見で、「政府としては、今後も自治体と連携しながら、地域の方々の不安を払拭できるよう、原子力災害対応の実行性向上に取り組んでいく。また、国も前面に立って、新規制基準の適合性審査の結果や再稼働の必要性・意義、原子力防災対策などについて、住民の皆様や自治体のご理解を得られるように、分かりやすく丁寧な説明・情報発信に粘り強く取り組んでいくことが重要であると認識している」と述べた。また、武藤容治経済産業大臣は、1日の閣議後記者会見で、同発電所3号機が原子力規制委員会の審査に合格したことを受けて、北海道の鈴木直道知事に、再稼働を進めていく政府方針を電話で伝えたと明らかにした。
01 Aug 2025
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東北電力は7月29日、女川原子力発電所の敷地内に新設を目指す乾式貯蔵施設について、宮城県および女川町と石巻市より、安全協定に基づく事前了解を得て、着工の了解を受けたと発表した。宮城県庁を訪れた東北電力原子力本部の阿部正信原子力部長に、県の担当者が「一時的に貯蔵するための施設であることを前提に了解する」とした回答書を手渡した。なお、同施設の基本設計に係る「原子炉設置変更許可申請」は、2024年2月28日に原子力規制委員会へ申請し、2025年5月28日に許可されていた。使用済み燃料乾式貯蔵施設とは、使用済み燃料を原子力発電所から搬出するまでの間、一時的に貯蔵するための施設で、「使用済み燃料乾式貯蔵建屋」と「使用済み燃料乾式貯蔵容器」で構成される。女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kWe)の使用済み燃料プールにて十分に冷却された使用済み燃料を、金属製の乾式貯蔵容器(キャスク)に収納し、空気の自然対流によって冷却する。同社の計画では、施設は鉄筋コンクリート造で2棟を建設し、最大で計約1,300体の燃料が入る。1棟目は来年5月に着工する予定だ。同社によると、昨年10月に再稼働した2号機原子炉建屋内の使用済み燃料プールは、7月29日時点で貯蔵率が79%を超えていた。
30 Jul 2025
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は7月25日、定例の記者会見を行い、美浜発電所をめぐる動きや、長期脱炭素電源オークションの一部見直しについて、コメントした。増井理事長はまず、関西電力が美浜発電所後継機の自主的な現地調査を再開したことについて、原子力産業界としての受け止めについて説明した。同発電所の地質調査の再開は、原子力開発全体に好影響を与え、関西電力が導入の念頭に置く、大型革新軽水炉をはじめ、さまざまな次世代革新炉の開発に良い影響を与えると指摘。国が策定した2050年を見据えた革新炉開発の技術ロードマップと合わせ、今後の開発・建設が進むことに期待を寄せた。次に、「次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会」における中間とりまとめに対するパブリックコメントを提出したことについて言及。長期脱炭素電源オークションの一部見直しが行われたことを受け、同協会がコメントを提出したことを明らかにした。最も大きな変更箇所となった「入札後に発生した事業者に責任がない費用増加について、一部回収を認める」という制度の導入について、既設発電所の安全対策投資や、30万kWe未満の次世代革新炉もその対象に含むよう追加で要望したことを明かした。さらに、回収可能な範囲の上限が1.5倍と設定されているが、海外事例を踏まえて、この上限を緩和すべきと進言したと述べた。その理由について増井理事長は、「長期脱炭素電源オークション自体は、電源への投資をローリスク・ローリターンにする画期的な仕組みだと考えているが、既設の原子力発電所の一部が対象外であるほか、容量や出力に制限がかかっているなど、見直しの余地がある」と述べた。また、「1.5倍という上限は、事業者に帰責性のない事由でどれくらい費用が超えるのか判断がつきにくく、新規建設の観点からひとつの障害になる可能性があり、投資促進の観点から進言した」と説明した。
29 Jul 2025
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三菱重工業は7月2日、中国三大重電機器メーカーの東方電気グループ傘下にある東方電機(東方電機有限公司:Dongfang Electric Machinery Co.Ltd.)と共に、中国の三門原子力発電所5、6号機向けに4基の循環水ポンプを受注したことを発表した。受注額や工期は非公表。両社は今年3月、パートナーシップを締結しており、今回の受注は、両社の協業による初の受注。兵庫県の高砂製作所にて製造され、順次納入される予定だ。両社は今後、中国の原子力ポンプ市場でのシェア拡大を目指すという。循環水ポンプは、タービンから排出される蒸気を冷却して水に戻す復水系統で用いられる大型機器で、原子炉の安定運転を支える重要機器だ。同社は、これまでに500基超の納入実績がある。三門原子力発電所は、中国南東部の海岸沿いに立地し、今回、循環水ポンプを供給する5・6号機は、稼働中の1・2号機(PWR、125.1万kWe)、建設中の3・4号機(PWR、125.1万kWe×2)に次いで建設される予定で、PWRの「華龍1号/HPR1000」を採用している。
25 Jul 2025
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日立製作所と量子科学技術研究開発機構(QST)は7月23日、国際核融合実験炉「ITER」向けに、炉内機器のひとつであるダイバータの主要部品「外側垂直ターゲット」の試験体を製作し、ITER機構による認証試験に合格したと発表した。「ITER計画」とは、日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7か国と地域が協力し、核融合エネルギーの実現に向けて科学的・技術的な実証を行うことを目的とした国際プロジェクト。現在、実験炉の建設がフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進められている。日本は、ダイバータやトロイダル磁場コイル(TFコイル)をはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTは、同計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。ダイバータは、トカマク型をはじめとする磁場閉じ込め方式の核融合炉における最重要機器のひとつ。核融合反応を安定的に持続させるため、炉心のプラズマ中に燃え残った燃料や、生成されるヘリウムなどの不純物を排出する重要な役割を担っている。トカマク型装置の中でプラズマを直接受け止める唯一の機器で、高温・高粒子の環境にさらされるため、ITERの炉内機器の中で最も製造が困難とされる。日立は、長年にわたる原子力事業で培った技術と経験を結集し、高品質な特殊材料の溶接技術と高度な非破壊検査技術を開発し、検証を重ねた結果、ITER機構から要求される0.5ミリ以下の高精度な機械加工と組み立てを実現。また、製作工程や費用の合理化を図るため、ダイバータ専用に最適化した自動溶接システムを開発した。2024年7月には、三菱重工業がすでにQSTとプロトタイプ1号機を完成させていたが、今回、日立の製作技術も正式に評価されたかたちだ。QSTはこの部品を全58基に納入予定。うち、18基は先行企業が製作を担当し、残る40基の製作企業は今後決定される見通し。
24 Jul 2025
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は7月18日、燃料デブリの核物質を非破壊で測定する新技術「高速核分裂中性子同時計数法(FFCC)」を開発したと発表した。開発の背景には、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業をめぐる安全遵守と効率化の課題がある。原子炉から取り出される回収物は、核燃料が溶けて冷え固まった溶融デブリのように核物質を大量に含むものから、溶融物が原子炉構造材などに付着しただけでほとんど核物質を含まないものまで、多岐にわたる。そのため、回収物の核物質量に応じて分類し、管理・保管方法を最適化できれば、燃料デブリの取り出しから保管に至るまでの各工程の合理化が期待できる。本来、核物質は中性子による反応を利用することで非破壊測定ができるが、燃料デブリには制御棒由来の中性子吸収材が混ざっており、測定を妨害してしまうという。そのため、燃料デブリは「最も測定が困難な核物質」のひとつとされ、内部に含まれる核物質の量を非破壊で正確に把握する技術の開発が、以前から求められていた。こうした課題に対しJAEAでは、高エネルギーの高速中性子が中性子吸収材の影響を受けにくいという性質に着目し、「高速核分裂中性子同時計数法(FFCC)」という新たな非破壊測定法を開発。原理実証実験にも成功した。JAEAはこのFFCCの早期実用化を目指し、試験および検討を進めていく方針。この技術は、福島第一原子力発電所の廃炉作業における燃料デブリ中の核物質の非破壊計測に有効であるほか、核セキュリティ対策として手荷物などに隠匿された核物質検知などへの応用も期待されている。
23 Jul 2025
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関西電力は7月22日、美浜発電所1号機の後継機(次世代型原子炉へのリプレース)設置の可能性検討に係る現地調査を開始すると発表した。この調査は、2010年に開始していたが、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、一時的に見合わせとなっていた。国内での新たな原子力発電所の建設は、2009年に運転開始した北海道電力泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)が最後で、実現すれば、2011年の事故以降初となる。政府は、今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画にて、原子力の最大限活用を掲げ、既存サイト内での次世代革新炉へのリプレースを進める方針を明記していた。現地調査では、新規制基準への適合性の観点から、地形や地質等の特性を把握し、後継機設置の可能性の有無を検討する。また、調査結果に加え、革新軽水炉の開発状況や規制の方針、投資判断を行う上での事業環境整備の状況を総合的に考慮するため、「同調査の結果のみをもって後継機設置を判断するものではない」と、同社はコメントしている。美浜発電所は、2015年4月に1、2号機の廃止が決定し、現在は、3号機(PWR、82.6万kWe)のみ稼働している。関西電力の森望社長は「データセンターや半導体産業の急成長を背景に、今後も電力需要は伸びていく。資源の乏しい日本において、S+3Eの観点から、原子力は将来的にわたって役割を果たすことが重要」と述べたうえで、新増設やリプレースに関しては「投資回収の見通しを確保することが重要で、国の政策に基づく事業環境整備などが必要となる」と強調した。同社はウェブ上で「地域の皆様のご理解をいただきながら、安全を最優先に原子力事業を推進していく」とコメントしている。
22 Jul 2025
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