国内NEWS
18 Jul 2025
268
日本政策投資銀行 SMRの動向と産業戦略に関する調査研究を公表
海外NEWS
18 Jul 2025
214
米NRC TVAのSMR建設許可を審査へ
国内NEWS
17 Jul 2025
994
核融合 ヘリカル・フュージョンが23億円の資金調達
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17 Jul 2025
553
カナダ小型高速炉 事前審査の主要段階をクリア
国内NEWS
16 Jul 2025
791
関西電力 建設資材にクリアランス金属を使用
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16 Jul 2025
492
EDFがSZCへの投資を表明 今夏最終決定か
海外NEWS
15 Jul 2025
519
アフリカ指導者ら 大陸の成長に向けて原子力を支持
国内NEWS
15 Jul 2025
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三菱総研 原子力に期待される価値創出について提言
米原子力規制委員会(NRC)は7月9日、米テネシー峡谷開発公社(TVA)による小型モジュール炉(SMR)の建設許可申請を受理、審査を開始した。TVAは5月、NRCにテネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトにGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)の建設許可を申請した。BWRX-300がNRCによる建設許可の審査対象となったのは米国では初めて。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、NRCよりSMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済みであり、BWRX-300の導入により、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどに特化した電力供給を狙っている。NRCは審査の完了を2026年12月まで(17か月以内)と予想しており、TVAはNRCの審査期間中、早ければ2026年にもサイト準備作業を開始したい考えだ。TVAのD. モールCEOは、「NRCによる申請の受理は、米国初となる電力会社主導によるSMRの実用化を目指す上で重要な一歩。当社のBWRX-300の建設許可申請が、米国初のNRCの審査対象となった。他の電力会社が同炉を導入し、エネルギー安全保障と信頼性の高い電力供給を実現する道筋を確立していく」と語った。BWRX-300は、電気出力30万kWの次世代BWR。2014年にNRCから設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は今年4月、OPG社に対し、ダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)サイトにおけるBWRX-300の初号機の建設許可を発給。翌5月、オンタリオ州はDNNPサイトへのBWRX-300初号機の建設計画を承認した。2029年末までに営業運転の開始を予定している。
18 Jul 2025
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カナダと米国に拠点を置くARCクリーン・テクノロジー社は7月8日、自社の開発する小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」が、カナダ原子力安全委員会(CNSC) の実施する正式な許認可申請前の任意の設計評価サービス「ベンダー設計審査(VDR)」の第2段階(許認可上、問題となる点の特定)を完了したことを明らかにした。CNSCは報告書の中で、認可取得における根本的な問題は認められなかったと結論。ARC社は、ARC-100の商業化に向けた重要な一歩となったと歓迎している。ARC-100は、第4世代のナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉で、電気出力は10万kW。電力とプロセス熱の両方の用途向けに設計されており、石油・ガス、精製、化学分野などにおける脱炭素化イニシアチブに適している。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された高速実験炉EBR-Ⅱで実証済みだ。ARC-100は、CNSCによる事前審査を完了した初の先進ナトリウム冷却高速中性子炉となった。VDRの第2段階は、CNSCの規制要件や期待に関するフィードバックをベンダーに提供するもの。2022年2月に開始された同審査の一環として、ARC社はCNSCが定義する将来の認可申請にとって重要な19の重点分野をカバーする数百の技術文書を提出。これには、安全システム、安全解析、炉およびプロセスシステムの設計、規制遵守、品質保証に関する情報が含まれていた。ARC社は今回の審査完了が、カナダ・ニューブランズウィック州で進行中のARC-100実証機の認可申請活動にも、さらなる信頼と弾みを与えるものと指摘する。2023年6月には、ニューブランズウィック・パワー(NBパワー)社がポイントルプロー原子力発電所(Candu-600×1基、70.5万kWe)サイトにおけるARC-100建設に向けた「サイト準備許可」(LTPS)を申請し、認可取得プロセスが開始された。ARC-100は2030年までに運開を予定している。2018年以来、ARC社とARC-100を共同開発しているNB Power社のL. クラークCEOは、「当社は本事前審査を通じて技術支援を提供し、審査の完了をプロジェクト開発における重要な進展と認識している。今後も革新的なエネルギーソリューションの模索に、引き続き協力していく」とコメントした。ARC社は今年6月、スイスと米国に拠点を置くDeep Atomic社と次世代データセンターとAIインフラへの電力供給に向けて、ARC-100の展開を検討するための覚書を締結している。Deep Atomic社はSMRを電源とするデータセンターのプロジェクト開発サービスを提供しており、両社はARC-100をDeep Atomic社のデータセンターインフラプロジェクトに近接して展開できる場所を共同で評価する予定だ。
17 Jul 2025
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フランス電力(EDF)は7月8日、英国のサイズウェルC(SZC)プロジェクトに最大11億ポンド(約2,200億円)を投資することを正式に表明した。この投資は、英政府および他の投資家との合意交渉が最終化される、最終投資決定(FID)を待って実施される予定で、これによりEDFの出資比率は約12.5%となる見込みである。EDFは英政府と並ぶ最初の出資者。英政府は今年6月の歳出見直しの一環で142億ポンド(約2.8兆円)の投資表明をしていた。さらなる投資家や資金調達の詳細は、今夏に予定されるFID時に発表される予定だという。この発表は、7月10日の英仏首脳会談に先立ち、K. スターマー英首相がE. マクロン仏大統領を英国に迎えるタイミングで行われた。両国は、エネルギー、経済成長、防衛・安全保障、移民などの共通課題で協力を強化。スターマー首相は昨年の就任以来、英国の国際的地位の強化と近隣諸国との関係改善を目指している。英政府は今回の発表は、英国が投資先としてますます魅力的な国であり、信頼できるパートナーである証と強調している。またフランスの輸出信用機関Bpifranceは、SZCプロジェクトへ50億ポンド(約1兆円)の債務保証を提供する予定で、商業銀行からの融資を後押しするという。これは、消費者・納税者・民間投資家でコストを分担する新しい資金調達方式であるRABモデル((規制資産ベース(RAB)のコスト回収スキーム。個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収する。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))の適用によって可能になる。SZCプロジェクトは、既存のサイズウェルB原子力発電所サイトに欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設する計画。これは、現在建設中のヒンクリーポイントC(HPC)のEPR×2基の複製版。SZCプロジェクトは業界の技術力向上や量産効果を促進し、フランスの原子力産業やEPR2×6基の新設計画(パンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの各原子力発電所サイトに2基ずつ建設)にも貢献すると期待されている。英政府は、原子力は再生可能エネルギーと並ぶ低炭素エネルギーの中核をなし、英国が化石燃料依存から脱却し、エネルギーコストを恒久的に引き下げる唯一の手段と考えており、引き続きプロジェクトの重要な株主として、進捗管理と遅延の最小化に努めるとしている。スターマー首相は、「私はSZCプロジェクトにこれ以上の迷いや遅れは許さないと明言してきた。EDFの投資により、国民に恩恵をもたらすための一歩を踏み出せた。エネルギー料金の引き下げ、雇用・技能育成の機会創出、エネルギー安全保障の強化-これは英国が投資先として信頼されている証であり、『変化に向けた計画』(Plan for Change)の実行そのものだ」と語った。SZCの建設ピーク時には、1万人の雇用を支え、国内のサプライチェーンでも数千の高度技能と高レベルの雇用を創出すると言われている。英仏のエネルギー協力としては、英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社がEDFと15年間にわたる燃料供給の数十億ユーロ規模の契約を締結。ウレンコUK社の1,400人超の雇用を支え、2023年には2.56億ポンド(約512億円)を超える経済効果を英国にもたらしている。仏エンジニアリング企業のAssystem社も、英国での原子力事業の人員を2030年までに倍増し、サンダーランド、ブラックバーン、ダービー、ブリストル、ロンドンを含む国内10拠点で新たに1,000のエンジニア、IT、マネジメントの職を創出する計画だという。
16 Jul 2025
492
ルワンダの首都キガリで6月30日~7月1日、アフリカ原子力エネルギー・イノベーション・サミット(NEISA 2025)が開催された。アフリカの人口が今後数十年で30億人に達すると予測される中、同サミットでは、増大するエネルギー需要に対応し、工業化を促進し、持続可能な開発を達成するためのカギとして、原子力エネルギー、とりわけ、小型モジュール炉(SMR)とマイクロ炉(MMR)の可能性が議論された。同サミットは、ルワンダ政府が主催、国際原子力機関(IAEA)、国連アフリカ経済委員会(UNECA)、OECD原子力機関(NEA)、世界原子力協会(WNA)をはじめとする主要な国際機関および地域金融機関の協力のもとで開催された。アフリカでは、差し迫ったエネルギー需要に対応し、より持続可能で信頼性の高い原子力エネルギーヘの期待が高まっている。同サミットには40か国以上から政策決定者、産業界のリーダー、著名な原子力専門家が出席。エネルギーの自給自足、クリーンな電力へのアクセス、気候変動問題への対応、アフリカ大陸全体の産業成長を加速するため、大陸のエネルギー需要に対する実行可能で変革的なソリューションである、SMRとMMRに焦点を当て、その導入に必要な条件-インフラ、資金調達、政治のリーダーシップ、地域の技術開発-について議論された。サミットの開会式で、ルワンダのE. ンギレンテ首相は、アフリカの開発アジェンダを推進する革新的でクリーンなエネルギーソリューションを採用するために、アフリカの指導者たちが協力して取り組む必要性を強調。アフリカでは6億人以上が電力を利用できない中、アフリカの長期的なエネルギー安全保障と気候変動に対するレジリエンスを支えることができる原子力の役割を強調し、アフリカの指導者に対し、原子力技術がもたらす機会をとらえるよう呼び掛けた。サミットで演説したIAEAのR. グロッシー事務局長は、アフリカ諸国による原子力開発計画を支援するというIAEAのコミットメントを再確認し、アフリカ大陸における低炭素電源の価値を強調。進化する世界のエネルギー情勢において「アフリカがその地位を主張することを妨げるものは何もない」と述べ、クリーンで信頼性の高いエネルギーはもはや贅沢品ではなく、大陸にとって差し迫った必需品であると付け加えた。SMRとMMRの可能性に関するセッションでは、SMRやMMRはアフリカのエネルギー移行を加速させる大きな可能性を秘めているが、その展開の成功は、技術的な準備だけでなく、強固な支援インフラにもかかっていると指摘。アフリカの現在のインフラ状況は、大陸全体で発電能力の15%、4,000万kWの電力が、インフラの問題、送電網の不備等により、供給できなくなっており、インフラ計画と投資に対する包括的かつ体系的なアプローチが必要であると結論。また、SMR/MMRのクリーンで信頼性の高いエネルギー供給が、アフリカの主要産業である、広大な鉱業部門の発展を促進すると強調された。資金調達に関するセッションでは、SMR/MMRの可能性を現実に変えるには、多額の設備投資と革新的な財務アプローチが必要であると指摘された。アフリカは歴史的に外部からの低利融資に依存してきたが、現在はその依存度が減少しているという。そして、国内および地域の財源を活用した、長期的な民間インフラプロジェクトへの資金供給の必要性を指摘。アフリカは、国内の金融機関と緊密に協力し、公的資金や開発金融を通じてプロジェクトのリスクを軽減することで、現在、重要なプロジェクトに流入していない膨大な資本プールを活用することができるとも言及された。国内金融セクターの長期インフラへの積極融資のほか、世界銀行などの国際開発金融の活用、原子力プロジェクトと地球規模の気候目標との戦略的整合など、多面的なアプローチをとるべきとの見解が示された。さらにアフリカでは、原子力部門を支えるために必要なスキルを育成する必要があるとし、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)は、アフリカの若者が加盟国間で自由に移動して学び、働くことができ、スキルギャップに対処するものとして、地域の専門知識を育成するための貴重なメカニズムであると強調された。
15 Jul 2025
519
仏原子力安全・放射線保護局(ASNR)は7月3日、フランス電力(EDF)が所有する130万kW級PWR×20基の運転を、必要な安全性の強化措置を着実に実行することを条件に、40年を超えて運転を継続することを承認すると発表した。対象となるのは、1980年代後半から1990年代前半に運転を開始した、パリュエル発電所の4基、カットノン発電所の4基、サンタルバン・サンモーリス発電所の2基、フラマンビル発電所の2基、ベルビル発電所の2基、パンリー発電所の2基、ゴルフェッシュ発電所の2基、ノジャン・シュール・セーヌ発電所の2基の8サイト、計20基。フランスでは商業炉の運転期間に制限がなく、国内57基の商業炉すべてを保有・運転するEDFが環境法に基づいて10年毎に詳細な定期安全審査を実施し、次の10年間の運転継続で課題となる設備上のリスクへの対応策等を検討。ASNRがこれらの対応策を承認し、関係要件がクリアされると判断すれば、次の10年間の運転許可が付与される。ASNRは、2019年から2024年にかけて、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)や常設の専門家グループに、EDFが130万kW級原子炉の4回目の定期安全審査の一環として提出した大量の調査報告書の審査、分析評価を依頼。さらに、評価プロセスへの一般市民の広範な関与を経て、130万kW級原子炉の今後10年間の運転継続の条件ならびに定期審査時にEDFが実施すべき安全性の向上措置を決定した。今回の4回目となる審査は特に重要とされており、一部の原子炉部品が当初40年間の使用を前提に設計されていたため、運転期間の延長には設計の見直しや部品の交換が必要とされている。ASNRによる今回の決定は、同一モデルで設計されたすべての130万kW級原子炉に共通する事項に焦点を当てた「包括的評価段階」の審査を締めくくるもので、EDFが計画した主要な安全対策の実施と、安全目標を達成するために、ASNRが必要と考える追加対策を実施するよう求めている。EDFは今後、「各原子炉に特有の事項」、特に地理的立地(海岸、川、工業地帯など)を考慮した個別の評価や安全性向上の措置を実施し、各原子炉の審査報告書を提出する。報告書はパブリックコメントの対象となる。最後の審査は2040年まで続く見込みだという。またEDFは、ASNRが求める安全要件の履行状況と、自社および協力会社の技術的能力を証明する年次報告書の公開、年次報告書の各地の情報委員会への送付など、長期的な安全強化プロセスにおける透明性と説明責任が強く求められている。
14 Jul 2025
821
リトアニア政府は7月3日、リトアニアにおける原子力開発の可能性について協議を行い、国内における原子力開発の準備に向け、国営企業イグナリナ原子力発電所を含む作業部会をエネルギー省に設置することを決定。同時に原子力安全検査局(VATESI)に対し、安全規制に関する提案の提出を指示した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所と同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。同発電所は閉鎖されるまで、リトアニアの電力の70%を供給していた。その後、イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の原子力発電所の新規建設への支持を問う国民投票では否定的な意見が優勢となり、2016年10月の総選挙による政権交代を経て、翌11月にヴィサギナス・プロジェクトは凍結された。その後、リトアニアでは電力不足を補うため、電力供給源の多様化を図り、再生可能エネルギーの導入を促進。現在、総発電電力量の約7割を再生可能エネルギーで賄うものの、近隣諸国からの電力輸入量も多い。イグナリナ原子力発電所のL. バウジス所長は、「原子力が再び国家戦略の重要課題として取り上げられたことは、リトアニアが長期的安定、エネルギーの自立を目指していることの表れ。リトアニアの電力需要が2050年までに3倍以上になると予測される中、クリーンで信頼性が高く、競争力のあるエネルギー確保のため、さまざまな電源について現実的な評価が必要」とし、「小型モジュール炉(SMR)は、有望な選択肢の一つであり、真剣かつ専門的に評価されるべき」と語った。さらに「イグナリナ原子力発電所は、運転のみならず廃止措置においても長年にわたるノウハウを蓄積しており、この経験は新たな原子力開発計画において極めて重要である」と述べ、作業部会に積極的に協力し、実現可能性調査の準備に貢献していく意向を示した。作業部会では関連する国家機関、学術機関、エネルギー関連企業の代表が参加し、原子力開発の可能性を評価する。詳細な分析を行い、一般市民の参加を促し、国内外の専門家と協力しながら、小型炉プロジェクトの評価について報告書を作成し、リトアニアにおける原子力開発の戦略的方向性と行動計画を提示することとしている。昨年承認された国家エネルギー自立戦略では、電力需要の増加と気候目標の達成に対応するため、あらゆる電源を検討する必要があると強調されている。リトアニアの電力需要は、2030年の240億kWhから2050年には740億kWhと、3倍以上に増加する可能性があり、気候変動への対応やエネルギー安全保障、各種調査結果を踏まえると、合計して最大150万kWeの原子力導入が一つの有力な選択肢とされている。同戦略では、2028年までに小型炉の設置に関する決定を行い、最初の50万kWの初号機を2038年までに稼働可能とし、後続機を2050年までに稼働させるとしている。リトアニア政府は、原子力は、太陽光や風力の発電量が不安定な時期にも安定した電力供給を維持する、エネルギーシステムのバランスと信頼性を確保する補完エネルギー源の役割があると指摘。原子力との統合により、気候中立目標の達成をより効果的に進め、電力供給の安定性と競争力の向上に期待している。昨年9月にイグナリナ原子力発電所が実施した世論調査によると、リトアニア国民の42%が新世代の原子力開発を支持しているという。さらにイグナリナ原子力発電所は7月9日、イタリア・ローマで、仏パリに本社を置く先進炉開発企業ニュークレオ社と協力覚書を締結した。この覚書は、リトアニアにおける先進高速炉(LFR)技術の実現可能性を共同で分析するため、両者が協力することを想定したものである。ニュークレオ社は第4世代の先進モジュール炉(AMR)である鉛冷却高速炉(LFR)と使用済み燃料を利用する技術を開発中で、原子力発電の運転経験がある国々や持続可能かつ安全な使用済み燃料の管理に向けて、その高度な運用モデルを適用することを目指している。同様のモデルは、すでにスロバキアによって選択されており、今年6月、スロバキア国営の原子力廃止措置企業であるJAVYSは、国内の既設炉から回収された使用済み燃料由来のMOX燃料を使用する、ニュークレオ社製のLFRを4基、JAVYSが所有、廃止措置を実施するボフニチェ原子力発電所(V-1)サイトに建設する計画を発表している。覚書の調印に立会った、リトアニアのZ. ヴァイチウナス・エネルギー相は、「イグナリナ原子力発電所の有するノウハウは現在、廃止措置にのみ活用されているが、先進的な原子力技術開発や使用済み燃料削減に向けた技術の可能性を評価する機会を逃すべきではない」と述べ、革新的な解決策の早期評価の必要性を強調した。
11 Jul 2025
3349
米原子力規制委員会(NRC)は7月2日、Natrium炉の建設許可申請の審査を予定より6か月前倒し、2025年末までに完了させる方針を明らかにした。Natrium炉は出力34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉で、米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社が開発している。同炉は、ワイオミング州ケンメラーの石炭火力発電所の近傍にケンメラー原子力発電所1号機として建設される。テラパワー社は、同社の子会社として同発電所の所有者・運転者となるUS SFR Owner(USO)に代わり、2024年3月に建設許可申請を行った。NRCがNatrium炉の建設許可申請を審査するスケジュールを短縮したのは、これが2回目。NRCは2025年2月、安全評価(SE)のドラフトが予定より1か月早く完成し、建設許可の審査が、当初予定の2026年8月よりも2か月早い同年6月に完了すると、テラパワー社に通知していた。その後、環境影響評価書(EIS)のドラフトを、予定より1か月早い2025年6月に発行。テラパワー社との緊密な情報交換の効果と2025年5月のNRC改革に関する大統領令も考慮して、最終安全評価と最終EISが6か月早く完了すると予測し、2025年12月31日までに建設許可の審査が完了すると今回、通知した。Natrium炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えており、貯蔵技術は、必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現すると言われている。なおテラパワー社は、Natrium炉の完成を2030年と見込んでいる。
10 Jul 2025
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米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社は7月2日、同社が建設を計画するパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の安全分析報告書(SAR)を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。2024年12月には環境報告書(ER)を提出しており、今回と合わせ、PLEFの建設と操業に向けたライセンス申請を完了した。SARでは、PLEFの安全対策、運用手順、リスク軽減策が包括的に評価されており、原子力の安全性とセキュリティに関する規制基準を満たす内容となっている。ERでは、ガス拡散プラントにおける劣化六フッ化ウラン(DUF6)の再濃縮による環境浄化作業の加速、既存および新規の原子力発電所向けに国内産のウラン、濃縮ウランを供給することで脱炭素化を支援し、西ケンタッキー地域での雇用創出、エネルギー安全保障の強化などを利点として掲げている。GLE社は審査プロセスの効率化と迅速化の促進を期待し、NRCにERとSARを分離して提出することを申請、2024年8月に承認されていた。GLE社は、新たな国産ウラン供給源の確保・転換・濃縮の実現を目指しており、それに特化した米国の唯一企業となる。GLE社はライセンスの取得後、2030年までに米エネルギー省(DOE)が所有するケンタッキー州のパデューカ・ガス拡散濃縮プラントにあるDUF6の再濃縮を開始したい考えだ。パデューカ・サイトでは、1960年代からガス拡散濃縮プラントが民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、サイトは現在、環境復旧プログラム下にある。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。GLE社はサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の独占行使権を保有しており、DOEと2016年11月、DOEが保有する約30万トンのDUF6の40年間の売買契約を締結した。PLEFで天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。PLEFのライセンス申請は、GLE社が2012年に取得した、ノースカロライナ州ウィルミントンにおける商業規模のレーザー濃縮施設のNRCの建設・操業許可に基づいている。当時は市場環境が悪く、計画は進展しなかった。GLE社は2024年11月にパデューカ・ガス拡散工場跡地に隣接する665エーカー(約2.7㎢)の土地をPLEFの建設サイトとして取得しており、NRCの事前承認とPLEFサイトの良好な特性から、PLEFのライセンス取得は早まると予想している。サイレックス社は、自社の濃縮技術により、天然ウラン(UF6形態)、低濃縮ウラン(LEU)およびLEU+、次世代炉(小型モジュール炉を含む)向けの高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)など、複数の形態のウラン生産が可能となり、世界中の原子炉向けの燃料生産で重要な役割を果たすと指摘している。
09 Jul 2025
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米国民の原子力支持が依然として高い水準を保っていることが、最新の世論調査で明らかになった。米国のビスコンティ・リサーチ社が6月18日に発表した世論調査結果によると、米国の原子力支持の割合が72%となり、前年から5ポイント減少したものの、引き続き高い水準を維持している。同調査はビスコンティ・リサーチ社が5月28日から6月8日にかけて、1,000人を対象に調査を実施した。同調査によれば、回答者のうち29%が原子力を「強く支持する」と回答し、「強く反対する」(6%)の約5倍に上った。また、知識量が多い人ほど原子力を支持する傾向にあり、知識量が非常に多い層では、66%が原子力を「強く支持」すると回答した一方、「強く反対する」と回答した人はわずか6%に過ぎなかった。「原子力発電所の運転認可更新」については、87%が「安全基準を満たす限り認可を更新すべき」と回答。また、「将来の新規建設」についても64%が支持した。新規建設の支持率は3年連続で70%を超えていたが、今回は7ポイント低下した。一方、小型モジュール炉(SMR)について「知っている」と答えたのは26%にとどまった。ただし、SMRについて聞いたことがある層では、クリーンエネルギーや信頼性、安全性、手頃な価格といったイメージを持つ傾向が、聞いたことがない層に比べて高いことが分かった。調査では、電源を評価する際に「極めて重要」と考える8つの要素についても尋ねた。その結果、上位は「信頼性」(63%)「手頃な価格」(63%)、「きれいな空気」(61%)、「効率性」(52%)、「良質な雇用」(49%)、「エネルギー・セキュリティ」(48%)、「気候変動対策」(46%)、「エネルギーの自給」(43%)が続いた。なかでも「信頼性」を「極めて重要」または「非常に重要」と回答した人は94%にのぼったが、原子力をその特性と結び付けた人は59%にとどまった。「手頃な価格」では93%が重視した一方、原子力と結び付けた人は49%だった。さらに、女性やZ世代((一般的に1990年代半ばから2010年序盤生まれの年齢層の若者を指す。))では、「きれいな空気」「信頼性」と原子力との関連性を認識している割合が低かった。ビスコンティ・リサーチ社は、この8項目はいずれも本来、原子力に当てはまる特性であるにもかかわらず、多くの米国人が原子力と結び付けて認識していないと分析している。また、太陽光、風力、水力と比較して、原子力を「最も信頼できるクリーンエネルギー源」と評価した人は30%で、太陽光(41%)が最も高かった。なお、水力と風力は原子力よりも評価が低く、それぞれ15%、14%だった。
08 Jul 2025
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米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は6月25日、予定よりも早く、最短で2027年にもスリーマイル・アイランド原子力発電所(TMI)1号機(同機は、クレーン・クリーン・エナジー・センター:CCECに改名)を運転再開する予定であることを明らかにした。コンステレーション社は2024年9月、米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結しており、マイクロソフト社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給すべく、運転再開の時期を2028年と見込んでいた。TMI1号機(PWR、89万kWe)は1974年に営業運転を開始。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。TMI1号機の運転再開時期が早まったことを受け、6月25日、400人を超える新規および復職したコンステレーション社のスタッフ、ペンシルベニア州の建設労働者がCCECに集まり、祝賀会が開催された。祝賀会には、J. シャピロ・ペンシルベニア州知事、地元有力者、マイクロソフト社およびコンステレーション社の幹部らも出席した。コンステレーション社によると、ペンシルベニア州を含む地域の系統運用者PJMから早期連系申請が承認され、人員採用、運転員の訓練、主要機器の調達などが順調に進んでいる。シャピロ州知事は、PJMに早期連携の承認を促す書簡を提出し、このプロセスを後押ししたという。PJMは、ペンシルべニア州の経済成長により、2029年までにさらに1,000万kWeの追加設備容量が必要と予測している。祝買会の席上、コンステレーション社のJ. ドミンゲスCEOは、「信頼性が高く排出ゼロの原子力エネルギーの新たな章が開かれ、数千の良質な雇用と、数十億ドルの経済効果がペンシルベニア州にもたらされる。PJMによる承認、マイクロソフト社の歴史的な投資、そしてシャピロ知事や地域の支援により、予定よりも早く運転再開への道を進んでいる。米国のエネルギー自立、経済成長、そしてグローバルなAI競争において勝利に導くものだ」と語った。シャピロ知事は、「TMI1号機の運転再開は、既存インフラを安全に活用しつつ、数千の雇用の創出と安定した電力網の構築を後押しし、ペンシルベニア州を国家的なエネルギーリーダーとしてさらに強化するものだ」と強調した。CCECでは、すでに人員の64%以上が確保されており、400人近いスタッフが在籍、今後数週間でさらに58人が加わる予定。設備面でも、16億ドル(約2,340億円)を投資し、ディーゼル発電機、蒸気発生器、発電機、タービンなどの主要設備を更新し、検査は完了。事務棟の多くが改修され、訓練センターや制御室シミュレーターもほぼ完成している。新しい変圧器も来年搬入される予定で、これには数百人の地元の熟練工や電気技術者の技能が活かされると見込まれている。また、運転再開に向けて米原子力規制委員会(NRC)への許認可修正申請に係わる手続きが進行中であり、コンステレーション社はCCECの運転認可を少なくとも2054年まで延長したい考えだ。なお、「クレーン・クリーン・エナジー・センター」のクレーンは、親会社エクセロン社のC. クレーン前CEO(2024年逝去)にちなんで名付けられた。同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、CCECの20年間の運転により、3,400人もの直接的・間接的な新規雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2.3兆円)増加、州税および連邦税も計36億ドル(約5,260億円)が増加すると予想されている。
08 Jul 2025
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欧州における記録的な熱波の影響で、冷却水に利用される河川の水温上昇を受け、フランスとスイスの原子炉の一部が停止した。停止した原子炉はいずれも内陸部に立地し、冷却に河川水を利用している。フランスとスイスの規制では、河川の水温が地域の生態系に影響を及ぼす可能性がある場合、原子力発電所の出力制限や停止が義務付けられている。フランスのゴルフェッシュ原子力発電所(PWR、136.3万kWe×2基)では、6月30日にガロンヌ川の水温が28℃を超える見込みとなったため、29日深夜に1号機を停止した。同発電所では冷却水をガロンヌ川から取水し、出力に応じて平均で0.2℃高い温度で、大部分が川へ戻される。2006年9月の規制により、発電所下流のガロンヌ川の日平均水温が28℃を超える場合には、全国送電系統管理会社(RTE)の要請に応じて、原子炉の出力調整、または一時的に停止が要求されることがある。同2号機は現在、3回目となる10年毎の定期安全レビューにより停止中。さらに、フランス南西部のジロンド川沿いのル・ブレイユ発電所1号機(PWR、56.1万kWe)では、出力を低下して運転しており、今後も暑さが続くようならば停止する可能性があるという。フランスの電力の約70%は、18サイトで57基の原子炉から供給されている。フランスは自国の消費電力よりも多くの電力を生産し、近隣諸国にも輸出するなど発電量は豊富。熱波による原子力発電所の運転への影響はこれが初めてではない。EDFによると、2003年以降の環境要因(河川の高温化、低流量)による生産ロスは、年平均で発電量の0.3%で、現在の発電量の削減は電力網に深刻な影響を与えていないものの、2050年までに生産ロスは3~4倍に増加すると予想されている。会計検査院は2024年の年次公開報告書で、フランスでは2014年から2022年の間に、原子力発電が総発電量の62%から77%を占め、その運営と安全性は地球温暖化の影響を受ける水資源に依存している、と言及。気候変動による影響は中長期的には強まるとし、2050年までに熱波による原子力発電所の運転停止や出力抑制の回数増加への懸念から、気候変動に適応する水効率の高い冷却システムの導入の加速を勧告している。スイスでも熱波の影響で原子炉2基が運転を停止した。スイスの電力会社Axpo社は、アーレ川の水温上昇を受け、発電所からの冷却水排水による過度の水温上昇からアーレ川の生態系を保護するため、6月29日、同社が所有・運転するベツナウ原子力発電所の1、2号機を50%出力で運転、7月1日には1号機の運転を停止した。2号機も、7月2日には運転を停止した。原子炉の出力制限や停止の措置は、スイス連邦エネルギー庁(SFOE)の指示に従って実施されている。Axpo社は、水温の推移を常に監視しており、当面は現状の措置を維持するとしている。
07 Jul 2025
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フィンランドの電力大手フォータム社は6月25日、フィンランドおよびスウェーデンでの新規原子力発電所プロジェクトに関して、大型炉のベンダーである、フランス電力(EDF)および米ウェスチングハウス(WE)社-韓・現代E&C(現代建設)社、さらに小型モジュール炉(SMR)の開発企業である米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と、それぞれ先行作業契約(Early Works Agreements: EWA)を締結したことを明らかにした。これにより、各陣営との選定プロセスを継続し、協力関係を正式化する。フォータム社は2022年10月に、フィンランドとスウェーデンの2か国における新規原子力発電所の商業面、技術面、社会面での前提条件を調査する、実行可能性調査(F/S)を開始。2年間にわたる調査では、複数のベンダーやパートナー候補、顧客、社会的利害関係者と詳細な協議を重ね、2025年3月にF/Sの結果を発表した。将来の北欧地域における電力需要に応えるための長期的選択肢として、既存原子力発電所のリプレースを視野に、原子力発電開発の継続を決定した。その一環として、フォータム社は、大型炉では仏EDFおよび米WE社-韓・現代E&C(現代建設)社 、さらにSMRでは米GVH社との連携を強化する意向を示していた。今回締結したEWAには、初期プロジェクト計画、サイトおよび設計の適応性、さらにフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)およびスウェーデン放射線安全局(SSM)などの原子力安全規制当局との予備的な許認可活動なども含まれる。各陣営はそれぞれ、EDFはEPR、WE社はAP1000、GVH社はSMRのBWRX-300の導入をめざす。フォータム社のL. レベグル副社長(新規原子力担当)は、「投資決定に先立ち、技術への信頼性を強化し、国別の設計変更のリスクを最小限に抑え、開発段階からベンダーの能力を評価することが不可欠。EWAに基づく作業は、プロジェクトリスクの軽減に大きく貢献する」と指摘した。フォータム社は現在、VVER-440(PWR、53.1万kW×2基)で構成されるロビーサ発電所を運転中。同発電所はフィンランド初の原子力発電所であり、現在、同国の総発電電力量の10%を供給している。1号機は1977年、2号機は1981年に営業運転を開始。両機は2023年2月、20年間の運転期間延長の認可を取得し、2050年末までの運転が可能となった。なお同社は、フィンランドのオルキルオト原子力発電所(1,2号機:BWR、92.0万kW×2基、3号機:PWR=EPR、166.0万kW)のほか、スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所(3号機:BWR、145.0万kW)、フォルスマルク原子力発電所(BWR、100万kW級×3基)の共同所有者でもある。
04 Jul 2025
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日本政策投資銀行は7月11日、「電力需要増加への対応と脱炭素化実現に向けた原子力への注目~海外で取り組みが進むSMRの動向と産業戦略~」と題した調査研究レポートを発表した。著者は同行産業調査部の村松周平氏。同レポートでは、電力需要の増加と脱炭素化の実現に向け、世界的に原子力発電の重要性が再認識されていると指摘。革新軽水炉・高温ガス炉・高速炉・小型モジュール炉(SMR)および核融合などの次世代革新炉の開発が加速するなか、それらの導入に向けた論点や日本の産業競争力強化に向けたあり方を提言している。特にSMRは、技術成熟度の観点から実現可能性が高く、大型軽水炉における課題を克服し得る特徴を有しており、米国などではSMR導入に向けた規制や政策的支援の整備が進んでいる。日本もこうした動きに呼応し、先行する海外プロジェクトへの参画が大きな意味を持つ、との見方を示した。一方で、次世代革新炉の初期の実装においては、多様な不確実性に対処する必要があり、サプライチェーンの整備、規制と許認可プロセスの合理化と確立、政府や電力需要家を含めた適切なリスクシェアなどの議論が不可欠と強調している。また、日本では2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画において、「原子力の最大限活用」が明記され、単一電源種に依存しない電力システムの構築が急務となっていることを指摘。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入が進む一方で、その発電量の不安定さから需給バランスの課題についても言及されている。さらに、西側諸国で長期間にわたり新規建設が途絶え、1,000万点にも及ぶ原子力サプライチェーンが崩壊の危機に瀕したこと、また、その間に中国とロシアは政府が主導して原子力サプライチェーンを戦略的・継続的に強化したことを踏まえ、原子力発電所の新設やサプライチェーンの維持・強化は自国の電力システムのみならず、国際的な安全保障や産業競争力にとっても重要な意味を持つとした。その他、同レポートでは、各種次世代炉の技術的特性、また、FOAKリスク(First of a Kind、初号機)への対応の必要性が記されている。同様に、諸外国のSMR開発・社会実装の動向を踏まえ、日本としても、中長期的なSMRの導入可能性を見据えて、海外プロジェクトへの参画や人材・部品供給の支援を通じて、競争力強化と安全保障上の優位性確保が急務であるとした。そして最後に、安全性への客観的な判断と丁寧な対話を通じた社会的受容も不可欠であり、脱炭素化やエネルギー安全保障の実現に向け、政治・産業界による継続的な支援の必要性を強調している。
18 Jul 2025
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核融合エネルギーの開発ベンダーであるHelical Fusion(ヘリカル・フュージョン)は7月11日、2030年代の実用発電を目指す新計画「Helix Program」と、約23億円の資金調達を行ったことを発表した。これにより、累計調達額(補助金、融資を含む)は約52億円に達した。同社は、核融合科学研究所(NIFS)出身の研究者らによるスタートアップ企業。核融合炉には複数の方式(トカマク型やレーザー型など)があるが、同社は、「ヘリカル方式」を採用。これは、ねじれたコイルを用いて強力な磁場を作り、内部に閉じ込めた高温高圧のガスで持続的に核融合反応を起こす方式だ。複雑な形状のコイルを用いるため製作の難易度が高い一方、運転時にプラズマに電流を流す必要がないという特長がある。同社によると、「ヘリカル型核融合炉」は、NIFSをはじめ、日本で約70年にわたって蓄積されてきた研究の知見を引き継いでいるという。同社の新計画では、2030年までに実験装置での試験、核融合炉の設計やサイト選定などの手続きを並行して進める。同社は、24時間365日運転可能な「安定性」、システム全体で取り出せるエネルギーが投入分を上回る「正味発電」、短期間で効率的なメンテナンス可能な「保守性」、の三要件を満たした世界で唯一のプログラムを実現し、真に持続可能で高効率なエネルギー源の実用化、そして、日本からこの巨大産業をリードしていくという強い意欲を示した。日本政府は今年6月に改定した国家戦略(フュージョンエネルギー・イノベーション戦略)で、我が国におけるフュージョンエネルギー産業の創出に向け、民間による研究開発および事業活動を強く後押しする方針を示し、2030年代の発電実証を目標に掲げている。
17 Jul 2025
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関西電力は7月11日、福井県美浜町に建設が決まっている緊急時対策所の建設資材に、原子力発電所から発生した廃棄物の「クリアランス金属」を使用すると発表した。原子力発電所の解体等に伴って発生する廃棄物は、放射能レベルに応じて適切に処分するよう法律で定められている。その中でも、人体への影響を無視できるレベル、かつ、原子力規制委員会の認可・確認を受けたものは、一般の産業廃棄物と同じ扱いができる制度(クリアランス制度)が設けられている。福井県内ではすでに、同制度の理解促進活動の一環として、クリアランス金属を活用した製品を公共施設に設置する活動を行っている。同県の杉本達治知事も、「当県ではクリアランス金属を資源として産業化する日本初のリサイクルビジネスに取り組む」との強い意欲を示している。このクリアランス金属を、建物の主要構造部材として再利用するのは、今回が国内初の事例となる。関西電力によると、日本原子力研究開発機構(JAEA)の新型転換炉原型炉「ふげん」由来のクリアランス金属を一般金属に15%の割合で混ぜて鉄筋に加工し、緊急時対策所の一部に用いる予定。建設に使う鉄筋全体75トンのうち、クリアランス金属は5トン程度となる。同対策所は、地上3階建てで最大250名程度を収容可能。原子力災害対策の充実に向けて、各種設備(通信連絡設備・放射線防護設備・非常用電源)を強化し、2029年頃の運用開始を目指している。同社は、「原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物の低減に向けて取り組むとともに、クリアランス制度を活用し、循環型社会の形成に貢献していく」とコメントしている。
16 Jul 2025
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三菱総合研究所は7月14日、「データセンターと原子力の協業から考えるワット・ビット連携」と題したコラムを公表した。執筆者は吉永恭平氏。これまで3回にわたる連載では、再生可能エネルギーとワット・ビット連携の可能性を論じてきたが、第4回となる本稿では、もう一つの脱炭素電源である原子力とデータセンター(DC)の協業に焦点を当てている。現代社会は、生成AIの普及によりDCの電力需要が急増し、安定的かつ大規模な脱炭素電源の確保が急務となっている。米国では、大手IT企業が既存の原子力発電所に隣接するDCと長期契約を結び、原子力活用を進める動きが盛んだが、これは原子力事業者にとっても収益性や事業予見性を高める好機となっているという。その代表例として、2024年9月、Microsoft社が、2019年に経済性を理由に閉鎖されたスリーマイルアイランド原子力発電所1号機(PWR、89.0万kWe)から電力供給契約(PPA)を締結したが、この背景には、Microsoft社とPPAを締結したことで、事業者のコンステレーション社の事業予見性が向上したことがあると指摘されている。一方、日本ではDC新設が相次ぐが、原子力への新規投資は限定的で、制度検討は未だ途上にある。急増する電力需要への現実的な対応策として既存炉の再稼働が期待されるが、今後は、電力需要増加をけん引する主要な需要家であるDC事業者が電力会社と連携し、電源開発に主体的に関わる姿勢が求められると、吉永氏は指摘している。複数の事業者によるプロジェクトの共有は、原子力の市場・社会的価値の可視化につながり、原子力事業者にとっては事業予見性の向上とリスク低減の契機となる。一方、DC事業者にとっては、安定した脱炭素電力の確保により、長期的な財務計画や脱炭素目標の達成が現実味を増すという。そして日本においても、今こそ、電力の安定供給・脱炭素目標の達成に向け、再エネと原子力の位置づけを明確にし、導入・拡大に向けた先行投資と環境整備を実施すべきと結論している。
15 Jul 2025
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日本エネルギー経済研究所(IEEJ)と東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA:Economic Research Institute for ASEAN and East Asia)は7月11日、「GX 実現に向けた電源確保と地域振興における原子力の役割」と題したシンポジウムを東京都内で開催した。同シンポジウムは、原子力の役割を再確認すると同時に、立地地域の振興という観点を取り入れ、今後の脱炭素電源確保に向けた課題を、国内およびアジア諸国の関係者間で共有し、政策提言に繋げることを目的に行われた。2018年の初開催を皮切りに、新型コロナウイルス拡大に伴う中断期間を挟んで今回が5回目の開催となった。開会に際し、日本エネルギー経済研究所の寺澤達也理事長は、「原子力は大規模な脱炭素電源として期待されているほか、再生可能エネルギーの変動性を補完するベースロード電源としての役割を担っている」と述べた上で、「原子力発電所が地域の発展に寄与し、地域と共生していくことの重要性」を説いた。また、原子力政策の推進を実現するためには、欧米の先行事例を参考に、そのあり方を学ぶ必要性を指摘。そして、ASEAN諸国の原子力導入への関心にも言及し、そうした国々に向けては、今以上の国民理解促進活動が重要であることを強調した。その後、海外事例を紹介するセッションでは、米国から原子力エネルギー協会(NEI)のマーク・ニコル次世代原子力担当執行理事、英ウェールズからバンガー大学原子力未来研究所教授兼メナイサイエンスパーク理事のマイケル・ラシュトン氏、フィンランドから欧州経済社会評議会 産業変化諮問委員会委員のエイヤ・リッタ氏、また、同国の原子力産業団体FinNuclearのハッリ・ヴァルヨネン事務局長の計4名が登壇。原子力発電所や運転事業者とその立地自治体の共存事例が紹介された。特に、フィンランドでは、地域暖房やデータセンターなどの安定的なエネルギー需要に応える手段として、小型モジュール炉(SMR)への期待が高まっており、脱炭素化を目指す国家プログラムが整備され、補助金や税制優遇を通じて、雇用、地域経済にも波及効果をもたらしていると説明された。また、世界初となる使用済み燃料の地層処分場が2026年に稼働予定で、厳格な規制の下で、プロジェクトが順調に進んでいることを強調した。また、国内GXと地域振興のセッションにおいては、世界のクラウドサービスを代表するAWS(アマゾンウェブサービス )社から、エネルギー戦略担当のパトリック・レオナード氏と、エネルギー調達担当のベノワット・ドュボー氏の2名が登壇し、脱炭素電源を活用したデジタルインフラの整備について、産業界の視点を提供する機会が設けられた。さらに、資源エネルギー庁電力ガス事業部電力基盤整備課の筑紫正宏課長と、経済同友会の元副代表幹事である栗原美津枝氏が登壇。GX産業立地の実現に向けた政府の施策や、経済界におけるエネルギー問題の位置づけと課題について、それぞれの立場から具体的な見解が示された。また、海外登壇者を交えたパネルディスカッションでは、原子力をめぐる国際的な視点を交えた活発な意見交換が行われた。
14 Jul 2025
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日立製作所は、原子力発電所の建設・保全作業の効率化を実現する「原子力メタバースプラットフォーム」を開発した。高精度な点群データと3DCADデータを用いて、メタバース空間上に原子力発電所の設備を再現。電力事業者や工事施工会社などのステークホルダー間で情報を共有することで、生産性向上を実現する仕組みだ。開発の背景には、原子力発電所の現場作業をめぐる複雑な課題がある。原子力発電所の工事は、限られた工期内で高精度な計画と確実な施工が求められるが、法令により現場への立ち入りが制限されることが多く、現場調査の機会が限られるなど、原子力発電所建設固有の課題が点在する。さらに、福島第一原子力発電所の事故以降、新規建設の長期停止を背景に熟練技術者の退職が進んだことで、技術継承や人材育成の難しさも顕在化。労働人口の減少もあり、生産性の維持・向上は大きな課題となっていた。こうした状況を踏まえ同社は、「原子力メタバースプラットフォーム」によって、仮想空間上に発電所の設備を再現し、関係者が場所を問わず、現場の状況を共有できる仕組みを整えた。現場に立ち入らなくても正確な指示を出すことが可能で、設計・施工の打ち合わせや寸法確認などをリアルタイムで行い、工程の円滑化や手戻り作業の削減の実現を図る。今後、同社はこの「原子力メタバースプラットフォーム」をベースに、現場設備のデータを集約・解析し、故障の事前検知や投資計画の立案に活用する「データドリブン発電所」の構築を目指す。設備の稼働率や信頼性の向上といった電力事業者が直面するさまざまな課題に対して、デジタル技術を用いて解決を図り、社会課題の解決を推進していく狙いだ。なお、「原子力メタバースプラットフォーム」は、2025年7月17日に開催予定の「Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKA」にて紹介される。
10 Jul 2025
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日本原燃は7月7日、MOX燃料工場に関する設計および工事計画について、第3回目となる変更認可申請および新たな認可申請を原子力規制委員会に提出した。申請は全4回に分けて行われ、これまでに第1回(認可日=2022年9月)と第2回(認可日=2025年3月)の認可をすでに取得している。今回の申請では、一次・二次混合設備、圧縮成形設備、研削設備、ペレット検査設備といった成形施設をはじめ、火災防護設備、非常用所内電源設備、放射線監視設備など、約500点の設備が対象となった。申請内容には、新規制基準が施行される前に認可を受けた設計・工事計画(設工認)の変更に加え、新たな設工認の取得も含まれる。これにより、新規制基準への確実な適合を図りつつ、使用済み燃料の有効活用に向けた取り組みを一層加速させる方針だ。建設が進められているMOX燃料工場は、隣接する六ヶ所再処理工場で回収されたウランとプルトニウムを原料に、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を製造する。日本の燃料サイクルを支える中核拠点として、2027年度中の竣工を目指している。地政学リスクやウラン価格の高騰が続く中、エネルギーの安定供給と安全保障の観点から、MOX燃料の国内製造体制の強化が課題となっていた。日本原燃は、「オールジャパン体制」で、早期の認可取得と工場完成に向けて全力で取り組む姿勢を示している。
09 Jul 2025
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東京電力が7月7日、福島第一原子力発電所5、6号機と福島第二原子力発電所の1~4号機で保管していた使用済み燃料を、青森県むつ市の中間貯蔵施設へ搬出する方針を示した。同社の小早川智明社長は同日、青森県庁で宮下宗一郎知事と会談。中間貯蔵施設に関する中長期の搬入・搬出計画を提示し、「事故後の点検や技術評価の結果、中間貯蔵と再処理を行うことは十分技術的に可能だ」と説明した。なお、発電所からの搬出に当たっては、原子炉等規制法に基づき、事前に発送前検査を実施し、中間貯蔵および再処理に問題がないことを改めて確認する。むつ市にある中間貯蔵施設は、東京電力と日本原子力発電が出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)によって運営され、昨年9月には柏崎刈羽原子力発電所の使用済み燃料を受け入れている。同施設は、使用済み燃料を空気で冷やす「乾式貯蔵」方式が採用されている。中間貯蔵施設への具体的な搬入時期等は未定だが、2030年代には年間200~300トン程度の使用済み燃料を搬入する考えだ。同施設で、使用済み燃料を最大50年間保管した後、日本原燃再処理工場(2026年度に竣工予定)へ搬出する計画だが、搬出は貯蔵期限に間に合うよう、年間約300トンのペースで進められる想定となっている。東京電力は、現時点で保有する原子力発電所の稼働基数を確定できていないものの、少なくとも3基の稼働を想定し、安定的な運転の継続や、運転終了後の計画的な廃炉に向けて、使用済み燃料を順次搬出していく方針。また、日本原子力発電も同様に、東海第二原子力発電所(BWR、110万kWe)および敦賀2号機(PWR、116万kWe)の運転を想定し、使用済み燃料の早期搬出を進める考えだ。
08 Jul 2025
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原子力規制庁で7月3日、1日付で原子力規制庁長官に新たに就任した金子修一氏(59)の就任会見が開かれた。6代目長官の金子氏は、前任の片山啓氏(62)に続く経済産業省の出身。2012年の原子力規制委員会の発足準備段階から携わっているひとりだ。2011年の福島第一原子力発電所の事故対応の経験を持つ同氏は、「事故対応の経験を持つ職員は一定数いるが、数としては少なくなった。事故から学んだことは、準備ができていないことは実行できないということ。危機感や臨場感を口頭で伝えるだけではなかなか伝わらないという課題もあるが、規制庁で培われてきた独立性や継続的改善の姿勢を継承し、当時の状況や意識を伝え続けていく」と抱負を述べた。その後、記者から、「準備に万全はないという発言は、安全規制には終わりがないという意味が込められていると思うが、特に力を入れたいことは何か」を問われ、金子長官は、「最近は、新型炉の規制や核融合といった新しい技術に対応する規制のあり方など、幅広い課題に取り組んでいる。そういった技術の動向や政策の方向性については関心を持って見ており、事業者や研究機関と密に連携していくつもりだ。また、4月から新しい中期目標を設定し、今後5年間で重点的に取り組むべき課題をその中に盛り込んだ。これら課題を着実に解決したい」と述べた。そして、他の記者から「審査期間の長期化によって、膨大なコストをもたらすと懸念されているが、審査や規制の効率化について、どのように考えているか」と問われ、金子長官は「先述の中期目標において審査の効率化は大きな柱として掲げた。過去の経験や実績を活かし、確認済み事項については再確認を不要とするなど、事業者と連携しながら効率化は図れるだろう」と述べた。また「規制庁の職員は1000人を超え、大きな組織となっている。職員1人ひとりがやりがいを感じ、積極的に、前向きに仕事ができる環境を整えることも私の重要な役割だ」と働き方改革にも意欲を見せた。
07 Jul 2025
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東京電力は7月3日、2025年度の使用済み燃料等の輸送計画について、3月28日に発表した内容に加え、新燃料の輸送を追加すると発表した。3月時点では、使用済み燃料138体(約24トンU)を柏崎刈羽原子力発電所から青森県むつ市のリサイクル燃料貯蔵に搬出するほか、低レベル放射性廃棄物1,800本を、同発電所から青森県六ヶ所村の日本原燃へ輸送する計画を公表していた。一方、新燃料の輸送予定は当初「なし」とされていたが、今回、福島第一原子力発電所6号機(BWR、110.0万kWe)の新燃料貯蔵庫に保管されている新燃料30体(約10トンU)を、製造元である仏フラマトム社のリッチランド工場(米ワシントン州)へ輸送する計画が加わった。輸送は2025年10~12月に実施される見通しで、米国に輸送後は、燃料を解体、精製し、ウランを回収する。6号機の原子炉建屋には、今回輸送が決まった30体を含む計1,884体の燃料(使用済み・新燃料)が保管されていた。このうち1,456体の使用済み燃料は、2025年4月16日までにすべて共用プール(建屋外)へ輸送され、現在は新燃料198体が使用済み燃料プールに、230体が新燃料貯蔵庫に保管されている(2025年7月1日現在)。
04 Jul 2025
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日本原燃は6月30日、青森県六ヶ所村のウラン濃縮工場において、新型に更新した遠心分離機の設計・工事計画認可(設工認)の申請が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同工場は、濃縮ウランを製造する国内唯一の施設で、これまで新型の遠心分離機への更新作業を4つに分けて進めてきたが、その最後のひとつが、認可された形だ。同工場では現在、原子炉約1基分に相当する年間112.5トンSWU(分離作業単位)の濃縮ウランを生産しており、2028年度中に、年450トンSWUのウラン生産が可能な体制を目指している。ウラン燃料は、転換・濃縮・成形などの工程を経て、原子力発電所で利用されるが、世界では転換の3割、濃縮の約4割をロシアが担っており、ロシアが世界的なシェアを占めている。増大する電力需要に対応するため、世界では原子力発電を積極的に活用する流れが加速しており、ウランの需要増が見込まれるが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の長期化によって、ロシア産ウランの依存度低減に向けた動きが欧米で進展している。日本においても、ウラン濃縮の国産能力を維持・強化することは課題となっている。
03 Jul 2025
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四国電力は7月1日、伊方原子力発電所の敷地内で、「乾式貯蔵施設」の運用を開始したと発表した。同施設は、キャスクに入れた使用済み燃料を空気で冷却しながら保管する施設で、青森県の六ケ所再処理工場へ搬出するまでの間、一時的に貯蔵される。同発電所は、年間およそ35〜40体の使用済み燃料が発生し、これまで主に水中で冷却・保管(湿式貯蔵)されてきた。電力各社で進められている乾式貯蔵は、2011年の東日本大震災時、福島第一原子力発電所でもその頑健性が確認されており、原子力規制委員会でもその普及を推奨している。伊方発電所は現在、3号機(PWR、89.0万kWe)が運転中で、1・2号機はすでに廃止措置に入っている。2020年9月にサイト内での乾式貯蔵施設設置に係る原子炉設置変更許可を取得し、2021年11月に工事を開始していた。運用開始となった乾式貯蔵施設は、鉄筋コンクリート造り(東西約40m、南北約60m、高さ約20m)の建屋で、貯蔵容量は、乾式キャスク45基分、最大約1,200体の燃料集合体を収納できる。使用される乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め、臨界防止、遮へい、除熱)を有し、六ヶ所再処理工場等への輸送容器としても転用できるため、容易に発電所外へ搬出することが可能だ。四国電力は、「更なる安全性・信頼性向上に向けて不断の努力を重ね、一層の安全確保に万全を期してまいります」とコメントしている。
02 Jul 2025
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