海外NEWS
11 Jul 2025
2094
リトアニア 原子力導入を検討へ
国内NEWS
10 Jul 2025
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日立 原子力メタバースプラットフォームを開発
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10 Jul 2025
559
米NRC Natriumの建設許可の審査を加速
国内NEWS
09 Jul 2025
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MOX燃料工場の認可申請 日本原燃
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09 Jul 2025
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米GLE レーザー濃縮施設のライセンスを申請
国内NEWS
08 Jul 2025
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東京電力 青森県知事へ使用済み燃料の搬入を説明
海外NEWS
08 Jul 2025
642
米国民の原子力支持 72%と高水準を維持
海外NEWS
08 Jul 2025
1204
米TMI1号機 運転再開を前倒しへ
リトアニア政府は7月3日、リトアニアにおける原子力開発の可能性について協議を行い、国内における原子力開発の準備に向け、国営企業イグナリナ原子力発電所を含む作業部会をエネルギー省に設置することを決定。同時に原子力安全検査局(VATESI)に対し、安全規制に関する提案の提出を指示した。リトアニアでは、イグナリナ原子力発電所(軽水冷却黒鉛減速炉:RBMK-1500×2基、各150万kWe)が1980年代から稼働していたが、欧州連合(EU)は、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所と同型であるRBMK炉の安全性への懸念から閉鎖を要求、リトアニアはEU加盟と引き換えに同発電所を2009年までに閉鎖した。同発電所は閉鎖されるまで、リトアニアの電力の70%を供給していた。その後、イグナリナ原子力発電所近傍のヴィサギナスに日立製作所が主導する新規原子力発電所プロジェクトも浮上したが、福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電に対する国民の支持は低下。2012年の原子力発電所の新規建設への支持を問う国民投票では否定的な意見が優勢となり、2016年10月の総選挙による政権交代を経て、翌11月にヴィサギナス・プロジェクトは凍結された。その後、リトアニアでは電力不足を補うため、電力供給源の多様化を図り、再生可能エネルギーの導入を促進。現在、総発電電力量の約7割を再生可能エネルギーで賄うものの、近隣諸国からの電力輸入量も多い。イグナリナ原子力発電所のL. バウジス所長は、「原子力が再び国家戦略の重要課題として取り上げられたことは、リトアニアが長期的安定、エネルギーの自立を目指していることの表れ。リトアニアの電力需要が2050年までに3倍以上になると予測される中、クリーンで信頼性が高く、競争力のあるエネルギー確保のため、さまざまな電源について現実的な評価が必要」とし、「小型モジュール炉(SMR)は、有望な選択肢の一つであり、真剣かつ専門的に評価されるべき」と語った。さらに「イグナリナ原子力発電所は、運転のみならず廃止措置においても長年にわたるノウハウを蓄積しており、この経験は新たな原子力開発計画において極めて重要である」と述べ、作業部会に積極的に協力し、実現可能性調査の準備に貢献していく意向を示した。作業部会では関連する国家機関、学術機関、エネルギー関連企業の代表が参加し、原子力開発の可能性を評価する。詳細な分析を行い、一般市民の参加を促し、国内外の専門家と協力しながら、小型炉プロジェクトの評価について報告書を作成し、リトアニアにおける原子力開発の戦略的方向性と行動計画を提示することとしている。昨年承認された国家エネルギー自立戦略では、電力需要の増加と気候目標の達成に対応するため、あらゆる電源を検討する必要があると強調されている。リトアニアの電力需要は、2030年の240億kWhから2050年には740億kWhと、3倍以上に増加する可能性があり、気候変動への対応やエネルギー安全保障、各種調査結果を踏まえると、合計して最大150万kWeの原子力導入が一つの有力な選択肢とされている。同戦略では、2028年までに小型炉の設置に関する決定を行い、最初の50万kWの初号機を2038年までに稼働可能とし、後続機を2050年までに稼働させるとしている。リトアニア政府は、原子力は、太陽光や風力の発電量が不安定な時期にも安定した電力供給を維持する、エネルギーシステムのバランスと信頼性を確保する補完エネルギー源の役割があると指摘。原子力との統合により、気候中立目標の達成をより効果的に進め、電力供給の安定性と競争力の向上に期待している。昨年9月にイグナリナ原子力発電所が実施した世論調査によると、リトアニア国民の42%が新世代の原子力開発を支持しているという。さらにイグナリナ原子力発電所は7月9日、イタリア・ローマで、仏パリに本社を置く先進炉開発企業ニュークレオ社と協力覚書を締結した。この覚書は、リトアニアにおける先進高速炉(LFR)技術の実現可能性を共同で分析するため、両者が協力することを想定したものである。ニュークレオ社は第4世代の先進モジュール炉(AMR)である鉛冷却高速炉(LFR)と使用済み燃料を利用する技術を開発中で、原子力発電の運転経験がある国々や持続可能かつ安全な使用済み燃料の管理に向けて、その高度な運用モデルを適用することを目指している。同様のモデルは、すでにスロバキアによって選択されており、今年6月、スロバキア国営の原子力廃止措置企業であるJAVYSは、国内の既設炉から回収された使用済み燃料由来のMOX燃料を使用する、ニュークレオ社製のLFRを4基、JAVYSが所有、廃止措置を実施するボフニチェ原子力発電所(V-1)サイトに建設する計画を発表している。覚書の調印に立会った、リトアニアのZ. ヴァイチウナス・エネルギー相は、「イグナリナ原子力発電所の有するノウハウは現在、廃止措置にのみ活用されているが、先進的な原子力技術開発や使用済み燃料削減に向けた技術の可能性を評価する機会を逃すべきではない」と述べ、革新的な解決策の早期評価の必要性を強調した。
11 Jul 2025
2094
米原子力規制委員会(NRC)は7月2日、Natrium炉の建設許可申請の審査を予定より6か月前倒し、2025年末までに完了させる方針を明らかにした。Natrium炉は出力34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉で、米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社が開発している。同炉は、ワイオミング州ケンメラーの石炭火力発電所の近傍にケンメラー原子力発電所1号機として建設される。テラパワー社は、同社の子会社として同発電所の所有者・運転者となるUS SFR Owner(USO)に代わり、2024年3月に建設許可申請を行った。NRCがNatrium炉の建設許可申請を審査するスケジュールを短縮したのは、これが2回目。NRCは2025年2月、安全評価(SE)のドラフトが予定より1か月早く完成し、建設許可の審査が、当初予定の2026年8月よりも2か月早い同年6月に完了すると、テラパワー社に通知していた。その後、環境影響評価書(EIS)のドラフトを、予定より1か月早い2025年6月に発行。テラパワー社との緊密な情報交換の効果と2025年5月のNRC改革に関する大統領令も考慮して、最終安全評価と最終EISが6か月早く完了すると予測し、2025年12月31日までに建設許可の審査が完了すると今回、通知した。Natrium炉は、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えており、貯蔵技術は、必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上維持することができる。これにより、Natrium炉は再生可能エネルギーとシームレスに統合され、費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現すると言われている。なおテラパワー社は、Natrium炉の完成を2030年と見込んでいる。
10 Jul 2025
559
米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社は7月2日、同社が建設を計画するパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の安全分析報告書(SAR)を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。2024年12月には環境報告書(ER)を提出しており、今回と合わせ、PLEFの建設と操業に向けたライセンス申請を完了した。SARでは、PLEFの安全対策、運用手順、リスク軽減策が包括的に評価されており、原子力の安全性とセキュリティに関する規制基準を満たす内容となっている。ERでは、ガス拡散プラントにおける劣化六フッ化ウラン(DUF6)の再濃縮による環境浄化作業の加速、既存および新規の原子力発電所向けに国内産のウラン、濃縮ウランを供給することで脱炭素化を支援し、西ケンタッキー地域での雇用創出、エネルギー安全保障の強化などを利点として掲げている。GLE社は審査プロセスの効率化と迅速化の促進を期待し、NRCにERとSARを分離して提出することを申請、2024年8月に承認されていた。GLE社は、新たな国産ウラン供給源の確保・転換・濃縮の実現を目指しており、それに特化した米国の唯一企業となる。GLE社はライセンスの取得後、2030年までに米エネルギー省(DOE)が所有するケンタッキー州のパデューカ・ガス拡散濃縮プラントにあるDUF6の再濃縮を開始したい考えだ。パデューカ・サイトでは、1960年代からガス拡散濃縮プラントが民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、サイトは現在、環境復旧プログラム下にある。GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。GLE社はサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の独占行使権を保有しており、DOEと2016年11月、DOEが保有する約30万トンのDUF6の40年間の売買契約を締結した。PLEFで天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。PLEFのライセンス申請は、GLE社が2012年に取得した、ノースカロライナ州ウィルミントンにおける商業規模のレーザー濃縮施設のNRCの建設・操業許可に基づいている。当時は市場環境が悪く、計画は進展しなかった。GLE社は2024年11月にパデューカ・ガス拡散工場跡地に隣接する665エーカー(約2.7㎢)の土地をPLEFの建設サイトとして取得しており、NRCの事前承認とPLEFサイトの良好な特性から、PLEFのライセンス取得は早まると予想している。サイレックス社は、自社の濃縮技術により、天然ウラン(UF6形態)、低濃縮ウラン(LEU)およびLEU+、次世代炉(小型モジュール炉を含む)向けの高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)など、複数の形態のウラン生産が可能となり、世界中の原子炉向けの燃料生産で重要な役割を果たすと指摘している。
09 Jul 2025
562
米国民の原子力支持が依然として高い水準を保っていることが、最新の世論調査で明らかになった。米国のビスコンティ・リサーチ社が6月18日に発表した世論調査結果によると、米国の原子力支持の割合が72%となり、前年から5ポイント減少したものの、引き続き高い水準を維持している。同調査はビスコンティ・リサーチ社が5月28日から6月8日にかけて、1,000人を対象に調査を実施した。同調査によれば、回答者のうち29%が原子力を「強く支持する」と回答し、「強く反対する」(6%)の約5倍に上った。また、知識量が多い人ほど原子力を支持する傾向にあり、知識量が非常に多い層では、66%が原子力を「強く支持」すると回答した一方、「強く反対する」と回答した人はわずか6%に過ぎなかった。「原子力発電所の運転認可更新」については、87%が「安全基準を満たす限り認可を更新すべき」と回答。また、「将来の新規建設」についても64%が支持した。新規建設の支持率は3年連続で70%を超えていたが、今回は7ポイント低下した。一方、小型モジュール炉(SMR)について「知っている」と答えたのは26%にとどまった。ただし、SMRについて聞いたことがある層では、クリーンエネルギーや信頼性、安全性、手頃な価格といったイメージを持つ傾向が、聞いたことがない層に比べて高いことが分かった。調査では、電源を評価する際に「極めて重要」と考える8つの要素についても尋ねた。その結果、上位は「信頼性」(63%)「手頃な価格」(63%)、「きれいな空気」(61%)、「効率性」(52%)、「良質な雇用」(49%)、「エネルギー・セキュリティ」(48%)、「気候変動対策」(46%)、「エネルギーの自給」(43%)が続いた。なかでも「信頼性」を「極めて重要」または「非常に重要」と回答した人は94%にのぼったが、原子力をその特性と結び付けた人は59%にとどまった。「手頃な価格」では93%が重視した一方、原子力と結び付けた人は49%だった。さらに、女性やZ世代((一般的に1990年代半ばから2010年序盤生まれの年齢層の若者を指す。))では、「きれいな空気」「信頼性」と原子力との関連性を認識している割合が低かった。ビスコンティ・リサーチ社は、この8項目はいずれも本来、原子力に当てはまる特性であるにもかかわらず、多くの米国人が原子力と結び付けて認識していないと分析している。また、太陽光、風力、水力と比較して、原子力を「最も信頼できるクリーンエネルギー源」と評価した人は30%で、太陽光(41%)が最も高かった。なお、水力と風力は原子力よりも評価が低く、それぞれ15%、14%だった。
08 Jul 2025
642
米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は6月25日、予定よりも早く、最短で2027年にもスリーマイル・アイランド原子力発電所(TMI)1号機(同機は、クレーン・クリーン・エナジー・センター:CCECに改名)を運転再開する予定であることを明らかにした。コンステレーション社は2024年9月、米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結しており、マイクロソフト社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給すべく、運転再開の時期を2028年と見込んでいた。TMI1号機(PWR、89万kWe)は1974年に営業運転を開始。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。TMI1号機の運転再開時期が早まったことを受け、6月25日、400人を超える新規および復職したコンステレーション社のスタッフ、ペンシルベニア州の建設労働者がCCECに集まり、祝賀会が開催された。祝賀会には、J. シャピロ・ペンシルベニア州知事、地元有力者、マイクロソフト社およびコンステレーション社の幹部らも出席した。コンステレーション社によると、ペンシルベニア州を含む地域の系統運用者PJMから早期連系申請が承認され、人員採用、運転員の訓練、主要機器の調達などが順調に進んでいる。シャピロ州知事は、PJMに早期連携の承認を促す書簡を提出し、このプロセスを後押ししたという。PJMは、ペンシルべニア州の経済成長により、2029年までにさらに1,000万kWeの追加設備容量が必要と予測している。祝買会の席上、コンステレーション社のJ. ドミンゲスCEOは、「信頼性が高く排出ゼロの原子力エネルギーの新たな章が開かれ、数千の良質な雇用と、数十億ドルの経済効果がペンシルベニア州にもたらされる。PJMによる承認、マイクロソフト社の歴史的な投資、そしてシャピロ知事や地域の支援により、予定よりも早く運転再開への道を進んでいる。米国のエネルギー自立、経済成長、そしてグローバルなAI競争において勝利に導くものだ」と語った。シャピロ知事は、「TMI1号機の運転再開は、既存インフラを安全に活用しつつ、数千の雇用の創出と安定した電力網の構築を後押しし、ペンシルベニア州を国家的なエネルギーリーダーとしてさらに強化するものだ」と強調した。CCECでは、すでに人員の64%以上が確保されており、400人近いスタッフが在籍、今後数週間でさらに58人が加わる予定。設備面でも、16億ドル(約2,340億円)を投資し、ディーゼル発電機、蒸気発生器、発電機、タービンなどの主要設備を更新し、検査は完了。事務棟の多くが改修され、訓練センターや制御室シミュレーターもほぼ完成している。新しい変圧器も来年搬入される予定で、これには数百人の地元の熟練工や電気技術者の技能が活かされると見込まれている。また、運転再開に向けて米原子力規制委員会(NRC)への許認可修正申請に係わる手続きが進行中であり、コンステレーション社はCCECの運転認可を少なくとも2054年まで延長したい考えだ。なお、「クレーン・クリーン・エナジー・センター」のクレーンは、親会社エクセロン社のC. クレーン前CEO(2024年逝去)にちなんで名付けられた。同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、CCECの20年間の運転により、3,400人もの直接的・間接的な新規雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2.3兆円)増加、州税および連邦税も計36億ドル(約5,260億円)が増加すると予想されている。
08 Jul 2025
1204
欧州における記録的な熱波の影響で、冷却水に利用される河川の水温上昇を受け、フランスとスイスの原子炉の一部が停止した。停止した原子炉はいずれも内陸部に立地し、冷却に河川水を利用している。フランスとスイスの規制では、河川の水温が地域の生態系に影響を及ぼす可能性がある場合、原子力発電所の出力制限や停止が義務付けられている。フランスのゴルフェッシュ原子力発電所(PWR、136.3万kWe×2基)では、6月30日にガロンヌ川の水温が28℃を超える見込みとなったため、29日深夜に1号機を停止した。同発電所では冷却水をガロンヌ川から取水し、出力に応じて平均で0.2℃高い温度で、大部分が川へ戻される。2006年9月の規制により、発電所下流のガロンヌ川の日平均水温が28℃を超える場合には、全国送電系統管理会社(RTE)の要請に応じて、原子炉の出力調整、または一時的に停止が要求されることがある。同2号機は現在、3回目となる10年毎の定期安全レビューにより停止中。さらに、フランス南西部のジロンド川沿いのル・ブレイユ発電所1号機(PWR、56.1万kWe)では、出力を低下して運転しており、今後も暑さが続くようならば停止する可能性があるという。フランスの電力の約70%は、18サイトで57基の原子炉から供給されている。フランスは自国の消費電力よりも多くの電力を生産し、近隣諸国にも輸出するなど発電量は豊富。熱波による原子力発電所の運転への影響はこれが初めてではない。EDFによると、2003年以降の環境要因(河川の高温化、低流量)による生産ロスは、年平均で発電量の0.3%で、現在の発電量の削減は電力網に深刻な影響を与えていないものの、2050年までに生産ロスは3~4倍に増加すると予想されている。会計検査院は2024年の年次公開報告書で、フランスでは2014年から2022年の間に、原子力発電が総発電量の62%から77%を占め、その運営と安全性は地球温暖化の影響を受ける水資源に依存している、と言及。気候変動による影響は中長期的には強まるとし、2050年までに熱波による原子力発電所の運転停止や出力抑制の回数増加への懸念から、気候変動に適応する水効率の高い冷却システムの導入の加速を勧告している。スイスでも熱波の影響で原子炉2基が運転を停止した。スイスの電力会社Axpo社は、アーレ川の水温上昇を受け、発電所からの冷却水排水による過度の水温上昇からアーレ川の生態系を保護するため、6月29日、同社が所有・運転するベツナウ原子力発電所の1、2号機を50%出力で運転、7月1日には1号機の運転を停止した。2号機も、7月2日には運転を停止した。原子炉の出力制限や停止の措置は、スイス連邦エネルギー庁(SFOE)の指示に従って実施されている。Axpo社は、水温の推移を常に監視しており、当面は現状の措置を維持するとしている。
07 Jul 2025
48274
フィンランドの電力大手フォータム社は6月25日、フィンランドおよびスウェーデンでの新規原子力発電所プロジェクトに関して、大型炉のベンダーである、フランス電力(EDF)および米ウェスチングハウス(WE)社-韓・現代E&C(現代建設)社、さらに小型モジュール炉(SMR)の開発企業である米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と、それぞれ先行作業契約(Early Works Agreements: EWA)を締結したことを明らかにした。これにより、各陣営との選定プロセスを継続し、協力関係を正式化する。フォータム社は2022年10月に、フィンランドとスウェーデンの2か国における新規原子力発電所の商業面、技術面、社会面での前提条件を調査する、実行可能性調査(F/S)を開始。2年間にわたる調査では、複数のベンダーやパートナー候補、顧客、社会的利害関係者と詳細な協議を重ね、2025年3月にF/Sの結果を発表した。将来の北欧地域における電力需要に応えるための長期的選択肢として、既存原子力発電所のリプレースを視野に、原子力発電開発の継続を決定した。その一環として、フォータム社は、大型炉では仏EDFおよび米WE社-韓・現代E&C(現代建設)社 、さらにSMRでは米GVH社との連携を強化する意向を示していた。今回締結したEWAには、初期プロジェクト計画、サイトおよび設計の適応性、さらにフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)およびスウェーデン放射線安全局(SSM)などの原子力安全規制当局との予備的な許認可活動なども含まれる。各陣営はそれぞれ、EDFはEPR、WE社はAP1000、GVH社はSMRのBWRX-300の導入をめざす。フォータム社のL. レベグル副社長(新規原子力担当)は、「投資決定に先立ち、技術への信頼性を強化し、国別の設計変更のリスクを最小限に抑え、開発段階からベンダーの能力を評価することが不可欠。EWAに基づく作業は、プロジェクトリスクの軽減に大きく貢献する」と指摘した。フォータム社は現在、VVER-440(PWR、53.1万kW×2基)で構成されるロビーサ発電所を運転中。同発電所はフィンランド初の原子力発電所であり、現在、同国の総発電電力量の10%を供給している。1号機は1977年、2号機は1981年に営業運転を開始。両機は2023年2月、20年間の運転期間延長の認可を取得し、2050年末までの運転が可能となった。なお同社は、フィンランドのオルキルオト原子力発電所(1,2号機:BWR、92.0万kW×2基、3号機:PWR=EPR、166.0万kW)のほか、スウェーデンのオスカーシャム原子力発電所(3号機:BWR、145.0万kW)、フォルスマルク原子力発電所(BWR、100万kW級×3基)の共同所有者でもある。
04 Jul 2025
691
米大手IT企業のGoogle社は6月30日、米国のCommonwealth Fusion Systems(CFS)社と戦略的パートナーシップ強化の一環として、CFS社が開発する商業用核融合発電所「ARC」から20万kWeの電力購入契約(PPA)を締結した。CFS社は、核融合エネルギーの商業化を目指す米国のスタートアップ企業。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトし、高温超伝導(HTS)磁石技術を活用した核融合炉の開発を行っている。2030年代初頭のARCの送電開始を目標に、その先駆となる実証炉SPARCの建設を進めているところ。トカマク型の核融合炉であるSPARCはARCの建設に必要な技術や物理学などの検証を目的に、2026年の初プラズマの生成を計画する。ARCは「affordable(手頃で)、robust(頑強な)、compact(コンパクト)」の略で、SPARCは前述の頭文字に「smallest possible(可能な限り小さい)」を加えたもの。ヴァージニア州チェスターフィールド郡に立地予定のCFS社のARC発電所の出力は40万kWe。Google社はその半分の電力を調達することになる。今回の契約では後続のARC発電所からも電力を購入するオプションを含む。CFS社は2018年の設立以後、20億ドル以上の資金を調達しており、Google社は2021年からCFS社にマサチューセッツ州デヴェンズでのSPARCの開発に向けて投資している。今回の契約と併せて、同社への出資比率をさらに増やしたというが、詳細は非公開。CFS社は、核融合エネルギーは他のエネルギー源のように燃料や天然資源の制約がないため、変革をもたらすエネルギー源となる可能性を秘め、安定してクリーンな24時間発電が可能であると指摘している。電力需要の急増に対応し、産業の成長、輸送の電化、家庭や企業の電化、さらには人工知能(AI)やその他の高度なコンピューティングの利用増加に貢献すると強調する。順調に進めば、ARCが世界初のグリッド規模の核融合発電所になるという。Google社の先進エネルギー部門の責任者であるM. テレル氏は、「核融合技術には、世界のエネルギー需要に応えるための変革的な潜在能力があると確信しており、CFS社が必要とする科学的および工学的なマイルストーンを達成するために支援をしていきたい」と語った。CFS社のB. マムガードCEOは、「Googleとの戦略的契約は、SPARCで核融合エネルギーを実証し、商用ARC発電所を稼働させるための第一歩。当社は核融合エネルギーによって信頼性のある豊富なクリーンエネルギーの提供能力を実証し、経済成長の促進と生活向上のために必要な規模で、市場最大の市場転換の実現を目指していく」と意欲を示した。昨今、急速に進むデジタル化と生成AIの台頭により、Amazon、Google、Microsoftといった巨大IT企業は大量の電力を必要とするデータセンターを拡充しており、クリーンで安定的かつ持続可能な電力供給源として原子力発電が注目されている。Google社は2024年10月、米原子力新興企業のケイロス・パワー社と2035年までにケイロス社が開発する先進炉の複数基、合計出力にして最大50万kWeの導入による電力購入契約(PPA)を締結したほか、今年3月、2050年までに世界の原子力発電設備容量を少なくとも3倍に増やすという目標を支持する、大手IT企業を含む14社による誓約にも参加。今年5月には、米国の先進原子力プロジェクト開発会社Elementl Power社と先進的原子力プロジェクトのサイト開発への資金提供に関する契約を締結した。Google社は、今後10年以内にクリーンな電力供給に有望な初期段階の技術への支援として、豊富で持続可能なエネルギー供給の上で変革をもたらす可能性のある核融合を電力供給源のラインナップに加えた。
03 Jul 2025
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ロシアの原子力発電所運転機関であるロスエネルゴアトム社は6月23日、国営原子力企業ロスアトムがロシア極東の沿海地方に沿海原子力発電所(Primorsk NPP)を建設するロードマップを承認したことを明らかにした。この決定は、ロシア大統領の指示による極東連邦管区の先行開発を加速する目的で、2035年までに、沿海発電所の2基を早期稼働させる計画。運転実績のある標準設計「VVER-1000」(各100万kWe)を採用し、全長200kmを超える500kVの送電線を2本接続。1号機の初コンクリート打設は2027年12月、送電開始は2033年、2号機は2035年に送電開始を予定している。沿海地方政府は、合計出力200万kWeの原子炉2基への投資意向書に同意しており、複数の候補地も選定されている。自然条件の予備分析によると、最も有望な候補地は、ウラジオストク南東の日本海に面した閉鎖都市フォーキノ(Fokino)付近とされている。最終的な設置場所は、投資根拠の調査において確定される。今年中には設置場所に関する公聴会が実施される予定であるという。沿海発電所の建設によって、安定した電力供給のほか、地域の社会・産業の発展にも大きく寄与し、数千の新たな長期雇用の創出と税収増、地元の民間ビジネスも活性化が期待されている。
02 Jul 2025
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米エネルギー省(DOE)と米原子力規制委員会(NRC)は6月18日、それぞれ、先進炉導入の迅速化に向けた取組みを発表した。米国の国家安全保障を強化し、エネルギー目標を達成するために不可欠な、原子力エネルギーの促進、規制の合理化を目的に、米トランプ大統領が5月23日に署名した一連の大統領令を反映したもの。DOE 先進炉の新たなパイロットプログラムを発表DOEは6月18日、傘下の国立研究所以外でDOEの管理権限のもと、先進炉の設計試験を迅速に進める柔軟な措置として、新たなパイロットプログラムを開始すると発表した。原子炉試験の簡素化と、2026年7月4日までに少なくとも3基の試験炉を臨界状態に到達させることが目的。トランプ大統領は、米国を再び原子力分野のリーダーとし、信頼性が高く、多様で、手頃な価格のエネルギー供給を確保して、米国の繁栄と技術革新を推進することに取り組んでいる。大統領令「エネルギー省における原子炉試験の改革」に従った、この新しいパイロットプログラムは、米国の原子力技術を最大限に活用、米国内の雇用を支援し、イノベーションの促進とともに、国家安全保障の強化に資するとの考えだ。このパイロットプログラムは、DOEの施設内で実施されるマイクロ炉のテストベッドでの試験のほか、国防総省(DOD)が主導する「プロジェクト・ペレ」や民間産業主導の既存プロジェクトを元に構築されている。あくまで原子炉の研究・開発を促進するためのものであり、商業的な適合性を実証するためのものではないという。このプログラムの下で建設された試験炉はNRCの認可を必要とせず、原子力法の下でDOEから認可を受けることで、民間資金の活用を促進し、将来的なNRCからの商用ライセンス取得に向けた迅速なアプローチが可能になると予測されている。DOEは同パイロットプログラムにより、国立研究所以外で試験炉を建設・運転することに関心のある、米国の原子炉開発企業を募集している。2026年7月4日までに稼働の見込みがある先進炉が対象。申請者は、各試験炉の設計・製造・建設・運転・廃止措置に関するすべてのコストを自己負担。技術の実用性、サイト評価、財政的な健全性、臨界状態達成までの詳細な計画などに基づき、競争により選定される。初回申請の締切は2025年7月21日。その後の申請も随時受け付けるという。NRC マイクロ炉の工場製造・運用に向けた方針を決定米原子力規制委員会(NRC)は6月18日、マイクロ炉の新たな導入手法を可能にするため、以下に示す3つの政策方針を明らかにした。マイクロ炉は、工場で製造・燃料装荷・試験を行った後に運転サイトへ輸送することを想定。なお、これらマイクロ炉は、現在の大型炉の1%以下程度の出力となると見込まれている。連鎖反応を防止する機能を備えた工場製造のマイクロ炉については、燃料装荷されていても、それを「運転中」とみなさない。連鎖反応を防ぐ設計を持つマイクロ炉であれば、NRCが発行する燃料保有を許可するライセンスのもとで、工場で燃料装荷を行うことが可能である。運転サイトへ輸送する前に、工場でマイクロ炉の試験を実施する際に、NRCの「非動力炉」の規制を準用して許可する。NRCは、先進炉の導入促進法(ADVANCE法)や関連する大統領令に基づき、ライセンス手続きを効率化し、マイクロ炉の商業化への移行を円滑に行うため、DOEやDODと協力して、DOE/DODのサイトに、または国家安全保障インフラの一部として、マイクロ炉を建設・運用する取組みに関与していく方針だ。
02 Jul 2025
793
GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社は6月23日、カナダ・オンタリオ州で州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が取組む、ダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)近くのダラム地域に、BWRX-300のエンジニアリング&サービスセンターを設立する計画を発表した。同センターには最大5,000万米ドル(約71.8億円)を投資する予定で、DNNPに配備予定のGVH社製SMRのBWRX-300の長期的な運転と保守を支援するためのエンジニアリングならびに技術サービスを提供する。また、イノベーションとトレーニング、知識共有、サプライチェーンへの関与、労働力開発のハブとしての役割ももたせる。年間最大2,000人の原子力専門家、サプライヤー、国際パートナーがオンタリオ州に集まり、ダラム地域に大きな経済的利益をもたらすことが期待されている。GEベルノバ・カナダ社のH. チャ―マーズCEOは、「本センターは、オンタリオ州の原子力リーダーとしての地位をさらに強化し、業界をリードする研修体制を通じてカナダの原子力人材の育成を促進する。原子力分野の最先端の人材と技術革新を州にもたらし、BWRX-300の世界展開を後押しするものだ」と語った。同センターは2027年末までに稼働予定。最先端のバーチャルリアリティ・シミュレーターが設置され、安全で効率的なSMRの燃料補給や保守作業の研修が可能になる。また、SMRに特化した高度な保守・点検技術の開発や、BWRX-300の停止期間に備えた計画・実行準備の拠点としての機能も果たす。さらに、原子力事業に加えてGEベルノバ社の他事業の支援拠点としての役割も担うほか、GVH社の米ノースカロライナ州ウィルミントンにある生産拠点も補完する。BWRX-300は、電気出力30万kWの次世代BWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は今年4月、OPG社に対し、DNNPサイトにおけるBWRX-300の初号機の建設許可を発給。翌5月、オンタリオ州はダーリントン・サイトへのBWRX-300初号機の建設計画を承認した。
01 Jul 2025
844
米連邦最高裁判所は6月18日、テキサス州アンドリューズ郡の使用済み燃料の統合型中間貯蔵施設(CISF)に関する米原子力規制委員会(NRC)の許認可をめぐる訴訟で、テキサス州および同州の石油・天然ガス鉱区権益保有者のファスケン・ランド・アンド・ミネラルズ(Fasken)社が、司法審査を求めることはできないとして、両者を当事者適格とした第5巡回区控訴裁判所の判決を、手続き的に無効と判断し、却下した。ただし、最高裁は、原子力法ならびに放射性廃棄物政策法の下で、NRCがオフサイトで使用済み燃料を保管する民間企業に対して許可を与える権限があるかどうかについての判断は保留した。その代わりに、最高裁はこの訴訟を控訴裁判所に差し戻し、テキサス州およびFasken社による審査請求(=NRCの許可に対する異議申し立て)を棄却または却下するよう指示した。最高裁による却下の理由として、「ホッブズ法によれば、行政機関の最終決定に司法審査を求めることができるのは“不利益を被った当事者”に限られる。原子力法では、“当事者”とは許認可申請者か、許認可手続きに正式に介入した者だが、テキサス州もFasken社も許認可の申請者ではなく、正式な介入にも至っておらず、そもそも、両者は控訴裁での司法審査を受ける資格はなかった。このため、控訴裁の判決を却下し、NRCにオフサイトの民間貯蔵施設を許可する権限があるかという根本的な法的争点には踏み込まない」と述べている。NRCは2021年9月、Interim Storage Partners(ISP)社に対し、テキサス州アンドリューズ郡にある放射性廃棄物処理・処分専門業者のWaste Control Specialists(WCS)社の敷地内に、CISFを建設・操業することを許可した。ISP社は、WCS社と、仏国オラノ社の米国法人が2018年3月に立ち上げた合弁事業体(JV)。テキサス州とFasken社は、NRCによる許可発給を「越権行為」とし、ニューオリンズを拠点とする第5巡回区控訴裁判所に訴えた。2023年8月、控訴裁は原子力法に照らし、「NRCにそのような許可を与える権限はない」と判断し、NRCによる許可を無効とした。この判決を不服とするNRCとISP社は2024年6月に最高裁に上告していた。今回の最高裁の判断により、NRCが発行したCISFの建設・操業許可は有効となったが、ISP社は「これまでに表明してきたように、テキサス州の同意なしにWCSサイトにおいて使用済み燃料のCISFの開発を進めることはない。州および国全体が、原子力発電やその他の重要な原子力技術の利用価値をますます認識し探求する中で、当社は州および連邦の指導者たちが協力し、実証済みの技術的解決策を適用して、米国の使用済み燃料管理の課題に対処していくことを期待している」と表明した。ISP社は、2021年発給のCISFの建設・操業許可では、最大5,000トンの使用済み燃料と231.3トンのGTCC(クラスCを超える)((米国における低レベル放射性廃棄物(LLW)は含有核種(長寿命、短寿命の核種)と濃度によってクラスA、B、Cに分類される。クラスA:ドラム缶、金属箱等に収納した放射性核種濃度の比較的低いもの、クラスB:300年間耐用の高健全性容器に入れられる濃度の廃棄物、クラスC:放射化された鋼・ステンレス鋼等の廃棄物。さらにクラスCを超える放射性濃度の廃棄物はGTCC(Greater Than Class C)とされ、炉内構造物相当の放射性核種濃度の廃棄物のため、浅地中処分に適さないものとされており、NRCの許可を受けた施設に処分される。))低レベル放射性廃棄物を40年間貯蔵することを想定。さらに5,000トンずつ、追加7フェーズで拡張し、最終的に最大4万トンの使用済み燃料の貯蔵を計画している。これには、NRCが各フェーズで改めて安全面と環境影響面の審査を行い、すでに発給された建設・操業許可に修正を加えるという。
01 Jul 2025
873
日立製作所は、原子力発電所の建設・保全作業の効率化を実現する「原子力メタバースプラットフォーム」を開発した。高精度な点群データと3DCADデータを用いて、メタバース空間上に原子力発電所の設備を再現。電力事業者や工事施工会社などのステークホルダー間で情報を共有することで、生産性向上を実現する仕組みだ。開発の背景には、原子力発電所の現場作業をめぐる複雑な課題がある。原子力発電所の工事は、限られた工期内で高精度な計画と確実な施工が求められるが、法令により現場への立ち入りが制限されることが多く、現場調査の機会が限られるなど、原子力発電所建設固有の課題が点在する。さらに、福島第一原子力発電所の事故以降、新規建設の長期停止を背景に熟練技術者の退職が進んだことで、技術継承や人材育成の難しさも顕在化。労働人口の減少もあり、生産性の維持・向上は大きな課題となっていた。こうした状況を踏まえ同社は、「原子力メタバースプラットフォーム」によって、仮想空間上に発電所の設備を再現し、関係者が場所を問わず、現場の状況を共有できる仕組みを整えた。現場に立ち入らなくても正確な指示を出すことが可能で、設計・施工の打ち合わせや寸法確認などをリアルタイムで行い、工程の円滑化や手戻り作業の削減の実現を図る。今後、同社はこの「原子力メタバースプラットフォーム」をベースに、現場設備のデータを集約・解析し、故障の事前検知や投資計画の立案に活用する「データドリブン発電所」の構築を目指す。設備の稼働率や信頼性の向上といった電力事業者が直面するさまざまな課題に対して、デジタル技術を用いて解決を図り、社会課題の解決を推進していく狙いだ。なお、「原子力メタバースプラットフォーム」は、2025年7月17日に開催予定の「Hitachi Social Innovation Forum 2025 JAPAN, OSAKA」にて紹介される。
10 Jul 2025
817
日本原燃は7月7日、MOX燃料工場に関する設計および工事計画について、第3回目となる変更認可申請および新たな認可申請を原子力規制委員会に提出した。申請は全4回に分けて行われ、これまでに第1回(認可日=2022年9月)と第2回(認可日=2025年3月)の認可をすでに取得している。今回の申請では、一次・二次混合設備、圧縮成形設備、研削設備、ペレット検査設備といった成形施設をはじめ、火災防護設備、非常用所内電源設備、放射線監視設備など、約500点の設備が対象となった。申請内容には、新規制基準が施行される前に認可を受けた設計・工事計画(設工認)の変更に加え、新たな設工認の取得も含まれる。これにより、新規制基準への確実な適合を図りつつ、使用済み燃料の有効活用に向けた取り組みを一層加速させる方針だ。建設が進められているMOX燃料工場は、隣接する六ヶ所再処理工場で回収されたウランとプルトニウムを原料に、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を製造する。日本の燃料サイクルを支える中核拠点として、2027年度中の竣工を目指している。地政学リスクやウラン価格の高騰が続く中、エネルギーの安定供給と安全保障の観点から、MOX燃料の国内製造体制の強化が課題となっていた。日本原燃は、「オールジャパン体制」で、早期の認可取得と工場完成に向けて全力で取り組む姿勢を示している。
09 Jul 2025
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東京電力が7月7日、福島第一原子力発電所5、6号機と福島第二原子力発電所の1~4号機で保管していた使用済み燃料を、青森県むつ市の中間貯蔵施設へ搬出する方針を示した。同社の小早川智明社長は同日、青森県庁で宮下宗一郎知事と会談。中間貯蔵施設に関する中長期の搬入・搬出計画を提示し、「事故後の点検や技術評価の結果、中間貯蔵と再処理を行うことは十分技術的に可能だ」と説明した。なお、発電所からの搬出に当たっては、原子炉等規制法に基づき、事前に発送前検査を実施し、中間貯蔵および再処理に問題がないことを改めて確認する。むつ市にある中間貯蔵施設は、東京電力と日本原子力発電が出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)によって運営され、昨年9月には柏崎刈羽原子力発電所の使用済み燃料を受け入れている。同施設は、使用済み燃料を空気で冷やす「乾式貯蔵」方式が採用されている。中間貯蔵施設への具体的な搬入時期等は未定だが、2030年代には年間200~300トン程度の使用済み燃料を搬入する考えだ。同施設で、使用済み燃料を最大50年間保管した後、日本原燃再処理工場(2026年度に竣工予定)へ搬出する計画だが、搬出は貯蔵期限に間に合うよう、年間約300トンのペースで進められる想定となっている。東京電力は、現時点で保有する原子力発電所の稼働基数を確定できていないものの、少なくとも3基の稼働を想定し、安定的な運転の継続や、運転終了後の計画的な廃炉に向けて、使用済み燃料を順次搬出していく方針。また、日本原子力発電も同様に、東海第二原子力発電所(BWR、110万kWe)および敦賀2号機(PWR、116万kWe)の運転を想定し、使用済み燃料の早期搬出を進める考えだ。
08 Jul 2025
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原子力規制庁で7月3日、1日付で原子力規制庁長官に新たに就任した金子修一氏(59)の就任会見が開かれた。6代目長官の金子氏は、前任の片山啓氏(62)に続く経済産業省の出身。2012年の原子力規制委員会の発足準備段階から携わっているひとりだ。2011年の福島第一原子力発電所の事故対応の経験を持つ同氏は、「事故対応の経験を持つ職員は一定数いるが、数としては少なくなった。事故から学んだことは、準備ができていないことは実行できないということ。危機感や臨場感を口頭で伝えるだけではなかなか伝わらないという課題もあるが、規制庁で培われてきた独立性や継続的改善の姿勢を継承し、当時の状況や意識を伝え続けていく」と抱負を述べた。その後、記者から、「準備に万全はないという発言は、安全規制には終わりがないという意味が込められていると思うが、特に力を入れたいことは何か」を問われ、金子長官は、「最近は、新型炉の規制や核融合といった新しい技術に対応する規制のあり方など、幅広い課題に取り組んでいる。そういった技術の動向や政策の方向性については関心を持って見ており、事業者や研究機関と密に連携していくつもりだ。また、4月から新しい中期目標を設定し、今後5年間で重点的に取り組むべき課題をその中に盛り込んだ。これら課題を着実に解決したい」と述べた。そして、他の記者から「審査期間の長期化によって、膨大なコストをもたらすと懸念されているが、審査や規制の効率化について、どのように考えているか」と問われ、金子長官は「先述の中期目標において審査の効率化は大きな柱として掲げた。過去の経験や実績を活かし、確認済み事項については再確認を不要とするなど、事業者と連携しながら効率化は図れるだろう」と述べた。また「規制庁の職員は1000人を超え、大きな組織となっている。職員1人ひとりがやりがいを感じ、積極的に、前向きに仕事ができる環境を整えることも私の重要な役割だ」と働き方改革にも意欲を見せた。
07 Jul 2025
1153
東京電力は7月3日、2025年度の使用済み燃料等の輸送計画について、3月28日に発表した内容に加え、新燃料の輸送を追加すると発表した。3月時点では、使用済み燃料138体(約24トンU)を柏崎刈羽原子力発電所から青森県むつ市のリサイクル燃料貯蔵に搬出するほか、低レベル放射性廃棄物1,800本を、同発電所から青森県六ヶ所村の日本原燃へ輸送する計画を公表していた。一方、新燃料の輸送予定は当初「なし」とされていたが、今回、福島第一原子力発電所6号機(BWR、110.0万kWe)の新燃料貯蔵庫に保管されている新燃料30体(約10トンU)を、製造元である仏フラマトム社のリッチランド工場(米ワシントン州)へ輸送する計画が加わった。輸送は2025年10~12月に実施される見通しで、米国に輸送後は、燃料を解体、精製し、ウランを回収する。6号機の原子炉建屋には、今回輸送が決まった30体を含む計1,884体の燃料(使用済み・新燃料)が保管されていた。このうち1,456体の使用済み燃料は、2025年4月16日までにすべて共用プール(建屋外)へ輸送され、現在は新燃料198体が使用済み燃料プールに、230体が新燃料貯蔵庫に保管されている(2025年7月1日現在)。
04 Jul 2025
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日本原燃は6月30日、青森県六ヶ所村のウラン濃縮工場において、新型に更新した遠心分離機の設計・工事計画認可(設工認)の申請が、原子力規制委員会(NRA)から認可されたと発表した。同工場は、濃縮ウランを製造する国内唯一の施設で、これまで新型の遠心分離機への更新作業を4つに分けて進めてきたが、その最後のひとつが、認可された形だ。同工場では現在、原子炉約1基分に相当する年間112.5トンSWU(分離作業単位)の濃縮ウランを生産しており、2028年度中に、年450トンSWUのウラン生産が可能な体制を目指している。ウラン燃料は、転換・濃縮・成形などの工程を経て、原子力発電所で利用されるが、世界では転換の3割、濃縮の約4割をロシアが担っており、ロシアが世界的なシェアを占めている。増大する電力需要に対応するため、世界では原子力発電を積極的に活用する流れが加速しており、ウランの需要増が見込まれるが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の長期化によって、ロシア産ウランの依存度低減に向けた動きが欧米で進展している。日本においても、ウラン濃縮の国産能力を維持・強化することは課題となっている。
03 Jul 2025
1236
四国電力は7月1日、伊方原子力発電所の敷地内で、「乾式貯蔵施設」の運用を開始したと発表した。同施設は、キャスクに入れた使用済み燃料を空気で冷却しながら保管する施設で、青森県の六ケ所再処理工場へ搬出するまでの間、一時的に貯蔵される。同発電所は、年間およそ35〜40体の使用済み燃料が発生し、これまで主に水中で冷却・保管(湿式貯蔵)されてきた。電力各社で進められている乾式貯蔵は、2011年の東日本大震災時、福島第一原子力発電所でもその頑健性が確認されており、原子力規制委員会でもその普及を推奨している。伊方発電所は現在、3号機(PWR、89.0万kWe)が運転中で、1・2号機はすでに廃止措置に入っている。2020年9月にサイト内での乾式貯蔵施設設置に係る原子炉設置変更許可を取得し、2021年11月に工事を開始していた。運用開始となった乾式貯蔵施設は、鉄筋コンクリート造り(東西約40m、南北約60m、高さ約20m)の建屋で、貯蔵容量は、乾式キャスク45基分、最大約1,200体の燃料集合体を収納できる。使用される乾式キャスクは、4つの安全機能(閉じ込め、臨界防止、遮へい、除熱)を有し、六ヶ所再処理工場等への輸送容器としても転用できるため、容易に発電所外へ搬出することが可能だ。四国電力は、「更なる安全性・信頼性向上に向けて不断の努力を重ね、一層の安全確保に万全を期してまいります」とコメントしている。
02 Jul 2025
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新潟県は6月29日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する県民公聴会を実施した。同公聴会は、新潟県の花角英世知事が再稼働をめぐる是非を県民に問う場として掲げ、8月末までに県内5か所で開催する。初回の同日は、柏崎・刈羽エリアの住民が対象となった。18名の参加を予定していたが、2名が欠席し、新潟県商工会議所連合会など6団体から8名、一般公募が8名の計16名が参加した。賛成7名、反対5名、条件付き賛成2名、1人が再稼働に「疑義がある」とし、残る1名は賛否を明かさなかった。県トラック協会の推薦を受けて出席した柏崎市在住の70代の男性は、「日本は化石燃料に大きく依存しており、国内に資源がない。エネルギー供給の不安定さを解消するため、また、脱炭素電源として原子力が担う役割は大きいと考えている。柏崎刈羽原子力発電所は同地域や新潟県のみならず、国にとっても重要な資産。私自身、発電所周辺のUPZ(緊急防護措置区域)に住んでいるが、活用しない手はない」と述べ、賛成の立場を示した。また、新潟県商工会議所連合会から推薦を受けた柏崎市在住の60代の男性は、「現在、発電所では多くの新潟県民が勤務し、その中でも多数が柏崎刈羽地域に住む人々である。再稼働が進む西日本と比べ、電気料金の地域格差も広がっており、これは産業界や家庭にも影響を及ぼしている」と述べた。その一方で、「立地地域にとっての真の安心・安全は、原子燃料サイクル全体の完成であり、その責任を国に果たしてほしいと思う」と述べ、今後の課題を口にした。一方で、柏崎市在住の70代男性からは「避難道路がまだ完成していないほか、内閣府が定めた広域避難計画の緊急時対応の実効性を疑問視している」といった声もあがるなど、賛否が交錯する公聴会となった。花角英世知事は、県内市町村長との懇談会を5月下旬から行っており、これを「夏いっぱい」まで実施する見解を示している。そのため、同公聴会の開催終了を見込む8月末以降に、再稼働の是非の判断がくだされる見通しだ。
01 Jul 2025
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日本原子力産業協会の増井秀企理事長は6月27日、定例の記者会見を行い、プレスリリースや活動報告、また、記者からの質疑に応じた。増井理事長はまず、6月19日に行われた「第1回日本・カナダ原子力フォーラム」の概要を紹介。同フォーラムは、両国の原子力産業界のビジネス交流の促進が目的で、カナダから17社・33名、日本からは32社・53名が参加し、活発な意見交換が行われるなど、「とても盛況だった」と述べた。このほか、双方の官民代表による講演や、技術・事業に関するパネルディスカッションを実施したことや、カナダの国立研究機関や大学関係者が来日し、日本側の多くの参加企業との交流が行われたことを説明。多くの参加者から、「非常に有意義だった」「今後の連携につながる機会となった」といった前向きな声が多く寄せられたことなどを伝えた。増井理事長は「カナダは、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)の実用化計画が進むダーリントン原子力発電所があり、以前から着目していた国のひとつ。今回のフォーラムを通して、両国の原子力政策や産業の現状について理解を深める貴重な機会となり、将来的なビジネス連携の可能性を探る上でも大きな意義があった」と述べ、引き続き産業界・関係機関と連携していく考えを示した。その後、記者から、「SMRの導入が実現間近のカナダと比べ、なぜ日本では具体的な話進まないのか」を問われ、増井理事長は、「日本では、新たなサイトを確保するのが現実的に難しく、既設炉のサイト内の有効活用が前提となっている。そのため、導入の道筋が明確である次世代型の高温ガス炉や大型炉の開発が優先されている」と述べた。また、「カナダの規制機関はすでにSMR(BWRX-300)に対して設計認証を出しているが、これは米国などで認証を受けた技術をベースにしているため、審査項目の一部が省略され、簡素化が図られている」と説明し、両国の原子力規制当局の連携について触れた。また、増井理事長は、6月6日に全面施行された「GX脱炭素電源法」について、原子力産業界にとって大きな意味を持つものであり、非常に歓迎すべきものだと受け止めている」とコメント。同24日に専門委員として出席した原子力小委員会での自身の発言については、「原子力発電電力量の見通しの明確化、資金調達と投資回収のあり方についてはさらなる検討が不可欠」とあらためて強調した。
30 Jun 2025
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総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が6月24日に開催され、第7次エネルギー基本計画を踏まえた原子力政策の具体化に向けて議論された。同委員会では、次世代革新炉の開発・導入や既設炉の最大限活用、サプライチェーンと人材の維持、SMRの国内実証、投資環境の整備などについて、どのような観点や仮定の下であれば定量的な見通しを示せるかが議論され、「第7次エネルギー基本計画は決定されたものの、再生可能エネルギーと並ぶ脱炭素電源として原子力を活用するには、具体化すべき課題が数多く残されている」といった意見が多くの委員から示された。委員の日本エネルギー経済研究所の山下ゆかり氏は、フランスを例に挙げ、「同国では2022年2月に、2050年までに6基から14基の大型原子炉と数基のSMRの新設計画を発表し、原子力の延長に必要な技術開発の準備を進めている。ただ、需要側供給側の双方に様々な不確実性があるため、原子力発電の目標数字を示すことが困難で、リスクとなることも理解する」と述べた。また、同じく委員のみずほ銀行の田村多恵氏は、「今後、革新炉の開発が進めば、炉型ごとに違ったサプライチェーンが必要になるかもしれない。定量的な見通し、将来像の設定は難しいが、実効性のある数値が示されることに期待する」と述べた。他にも、委員のSMBC日興証券の又吉由香氏は、「原子力発電設備容量の見通しと将来像を定量的に示すことは重要だが、一方で年限を定めた見通しの提示には不確実性が伴う。何年で何基の市場投入ペースといったベンチマーク議論から発展させていくプロセスも重要だ」と述べ、発電事業者、業界団体、規制当局らをまたいだ統合的な推進をつかさどる司令塔を作り、機能させることの重要性を訴えた。専門委員として出席している日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、原子力が「どれだけの容量がいつまでに必要か」という長期にわたる時間軸と開発規模の明示、そして、資金調達・投資回収制度の検討、サプライチェーンの課題解決、の3点を訴え、今後も政府と産業界が連携して継続的に取り組むことが重要であると述べた。〈発言内容は こちら〉黒﨑健委員長は、第7次エネルギー基本計画で「2040年度の電源構成に占める原子力発電比率を2割程度とする」という方向性が示された中で、「実効性がある具体的な計画を出すのは大きな宿題だ」と述べたほか、福島第一原子力発電所の廃炉対応や六ヶ所再処理工場の審査延期問題を指摘し、竣工後を見据えたバックエンド事業の議論の重要性を強調した。また、今回の会合では、原子燃料サイクルの推進に向け小委の下に作業部会を新設することが決定した。
27 Jun 2025
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日本政府は6月13日、2024年度版のエネルギーに関する年次報告(通称:エネルギー白書)を閣議決定した。本白書は、エネルギー政策基本法に基づく法定白書で、2004年から毎年作成され、今回が21回目となる。同白書は例年3部構成となっており、第1部は、福島復興の進捗と原子力安全対策、各年度のエネルギーを取り巻く動向を踏まえた分析など、第2部は国内外のエネルギーに関するデータ、第3部は前年度に講じたエネルギー政策や支援策の実施状況、を中心にまとめられている。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化しているほか、直近では、イランと米国の間で新たな緊張の火種が生じており、各地で情勢の不安定化が懸念されている。それに伴い、化石燃料の需給バランスが崩れ、以前から日本でも電気・ガス代やガソリン価格が高止まりしているが、回復の兆しは見えない。そして、米トランプ政権は、脱炭素政策を転換し、アラスカ州での資源開発の加速に意欲を示したことにも触れ、「安定供給や価格に影響を与えるリスクが顕在化している」と分析した。そのため、既存の原子力発電所よりも安全性や燃料の燃焼効率が高い「次世代革新炉」の早期実用化や、薄く折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」など、次世代技術の活用を推進し、脱炭素化と電力の安定供給を両立する必要性を強調している。また、発生から14年が経過した東京電力福島第一原子力発電所の事故に関しては、デブリの取り出しや処理水の処分を着実に進めることで「復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていく」と記されている。
24 Jun 2025
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日本原子力産業協会とカナダ原子力協会(CNA)は6月19日、東京都港区の在日カナダ大使館で「第1回 日本・カナダ原子力フォーラム」を開催。80名を超す参加者が詰めかけた。両協会は、2021年に協力覚書を締結しており、今回のフォーラムはその活動の一環。両国の原子力産業界のさらなるビジネス交流の促進を図り、協業の在り方を模索するのが目的。カナダ側はCNAのほか、原子力研究所、在日カナダ商工会議所、各州政府在日事務所、原子力関連企業らが参加した。冒頭挨拶に立ち、日本原子力産業協会の増井理事長は、「CANDU炉に象徴されるように、カナダは原子力技術の面で世界をリードし、日本とはウラン供給などにおいて長年協力関係にある。また、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)実用化計画が進むダーリントン原子力発電所において、日本企業が関与するなど、以前から着目していた国のひとつだ。このフォーラムを通じて両国の新たな連携の芽が育まれる契機となってほしい」と述べた。CNAの一行は翌20日、福島県双葉郡に位置する東京電力廃炉資料館と、福島第一原子力発電所を視察。廃炉資料館では、東日本大震災の発生から原子炉の冷温停止までの経緯や、現在進められている廃炉作業の詳細について、映像や展示物を通じて説明を受けた。また、福島第一では、1~6号機の現状や処理水の海洋放出の流れ、燃料デブリの取り出しに関する取り組みについて、約1時間の構内バスツアーを通じて視察し、理解を深めた。CNAのジョージ・クリスティディス理事長は福島県での視察を終えて、「日本の原子力産業界関係者のレジリエンスに大きな感銘を受けたほか、緻密に計画された工程で廃炉作業に取り組んでいることを学んだ。この事故によって発生した犠牲や痛みを軽んじるつもりは一切ないが、ここで得られた知識や技術には大きな価値がある」と述べ、福島第一での経験が、今後多くの国の廃炉プロジェクトにも活かされるとの期待を示した。
23 Jun 2025
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