
国内NEWS
24 Oct 2025
561

柏崎刈羽6号 今月中に技術的な準備が整う見込み
海外NEWS
24 Oct 2025
340

ニュークレオとオクロ 米国で先進燃料製造へ
海外NEWS
24 Oct 2025
280

スウェーデン 建設候補地点拡大に向け環境法改正を提案
国内NEWS
23 Oct 2025
644

規制委 特重施設設置期限の延長要望で追加の聞き取りへ
海外NEWS
23 Oct 2025
515

ロシア 米国とのプルトニウム処分に関する協定から正式離脱へ動き出す
海外NEWS
23 Oct 2025
575

米「マンハッタン計画」跡地にマイクロ炉製造工場
国内NEWS
22 Oct 2025
490

第9回日英原子力産業フォーラムが開催
海外NEWS
22 Oct 2025
529

フィリピン 新規建設誘致にむけて準備

英国発の先進炉開発企業ニュークレオ社(Newcleo)と、米国の先進炉・燃料サイクル開発企業オクロ社(Oklo)は10月17日、米国内での先進燃料製造・供給インフラ開発に関する共同契約を締結し最大20億ドル(約3,000億円)規模を投資する計画を発表した。スウェーデンの先進原子力技術企業ブリカラ社(Blykalla)も、今後の参画を検討している。欧米が連携することで西側主導の燃料サイクル確立を目指す動きと言えるだろう。ニュークレオ社は2033年までに小型の鉛冷却高速炉(LFR、電気出力20万kWe)の商業化を目指しており、フランスでMOX燃料製造工場の建設計画も進めている。今回の提携では、米国における燃料製造施設への共同投資や立地検討、余剰プルトニウムの米国安全基準に基づく再利用の取り組みなどが盛り込まれる見通しだ。オクロ社の共同創業者兼CEO、J.デウィット氏は、「余剰プルトニウムを再利用することは、過去の負債を解消しつつ、豊富な燃料源を確保する最良の方法」と期待を寄せた。オクロ社は2025年9月、米エネルギー省(DOE)の先進燃料製造AFFプログラムに採択され、DOEの支援を受け燃料製造施設の建設を進めている。今回の提携の背景には世界のウラン濃縮能力の約44%をロシア企業が占め、特に先進炉向け燃料加工分野でロシアが市場を独占している現状がある。こうした状況に対応するため、2025年5月、トランプ政権は原子力産業の活性化を目的とした大統領令に署名し、燃料供給拡大や余剰プルトニウム処理方法の見直しを柱とした政策を打ち出した。ニュークレオ社とオクロ社は政策の後押しも受けながら、自前の燃料供給網を整備してエネルギー安全保障強化を図っている。
24 Oct 2025
340

スウェーデン政府は10月9日、より多くの沿岸地域と群島で新規原子力発電所の建設を可能にするため、特定の沿岸地域と群島で原子力施設の建設を禁止している規定の撤廃に向けて環境法の改正を提案した。現在、この法改正に関してパブリック・コンサルテーション(意見公募)が進行中である。政府は、国内の電力システムを強化し、カーボンフリー電力を必要な時に必要な場所で供給できるようにするため、同国全沿岸で原子力施設の建設を認めることを提案しており、今回の法改正の提案により、環境法の原子力施設の建設を禁止・制限している規定(第4章第3節および第4節)の撤廃を目指す。法改正は、原子力施設の許認可プロセスそのものを変更するものではなく、沿岸地域の自然・文化遺産の保護は維持しつつ、「自然が比較的手つかずの地域」および「高度に開発された沿岸地域」において新たにサイト適地と判断される場所での原子力施設の建設を可能にするものと強調している。原子炉、研究炉、バックエンド施設など、政府の許認可審査対象となるすべての原子力施設が対象となる。R. ポルモクタリ気候・環境相は、「原子力施設は、適切な条件を備えた場所に建設される必要があるが、現行法では立地の適地となり得る場所を排除している。法改正によって、事業者が沿岸部での原子力施設の建設・投資を検討する新たな機会が生まれる」と期待を表明。N. ウィクマン金融市場担当大臣は、「経済成長と雇用創出、エネルギー移行の実現には、堅牢でカーボンフリーのベースロード電源への投資が不可欠」と強調した。政府は法改正の施行日を2026年7月1日と提案。パブリック・コンサルテーションの意見提出の締め切りは今年12月15日としている。スウェーデンでは、新規建設に向けた事業環境整備が進められているが、原子力発電はリードタイムが長く、原子力の役割が時間の経過とともに政治的に変化し、投資が実施されなくなるリスクを伴う。これに対応するため政府は10月2日、将来の政治的決定により原子力発電の段階的廃止が余儀なくされる場合(いわゆる政治リスク)、国からの補償金をどのように支払うべきかを調査・提案する特別調査官(A. ニルソン氏)を任命した。特別調査官は、補償を受ける対象、補償を受ける権利となる政治的決定、政治的決定によって稼働前に中止されたプロジェクトへの投資に対する補償金の支払い、補償金の計算モデル、補償金の調達方法、必要な法改正案やその他の規制に関する事項などについて調査・提案を行う。中間報告を2026年6月29日までに、最終報告を遅くとも2026年12月1日までに提出することになっている。ブッシュ副首相兼エネルギー・企業・産業担当相は、「原子力発電所の所有者が、政治が新しい原子力発電所の下から敷物を引き抜くことを心配する必要はない。保障制度の確立は、原子力発電への投資拡大につながる可能性がある」と、今回の新規建設への投資を確保するさらなるイニシアチブの決定を評価した。
24 Oct 2025
280

ロシア国家院(連邦議会下院=Duma)は10月8日、米政府との余剰兵器プルトニウム処分に関する協定から正式離脱する法案を採択した。同協定は2000年に両国によって署名され、米ロ双方でそれぞれ34トンの余剰兵器プルトニウムを軍事目的に利用できないように並行して処分することを目的とするもの。ロシア政府は2016年10月、米政府が協定に基づく義務を履行できないことを理由に、連邦法により同協定の履行を停止していた。同協定は、2000年9月に米ロ両国により署名され、2011年7月に発効。2010年4月の議定書により、両国ともMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して原子炉で燃焼処分するとしていたが、米国は、サウスカロライナ州にあるエネルギー省のサバンナリバー・サイトにおけるMOX燃料製造施設建設のコスト増加と計画遅延から方針を転換し、不活性物質で希釈して埋設処分する計画を提案した。協定では、両国で合意があれば処分方法の変更が可能であるとされていたが、ロシアは米国の示す方法では不可逆的な処分にはならないと主張し、2016年に同協定の履行を停止した。今後、連邦院(上院)で法案を承認後、大統領の署名を経て、協定からの正式離脱となる。一方で、露大統領は来年2月の期限後も新戦略兵器削減条約(新START)の1年延長を提案し、米大統領が興味深い考えだと述べたことから、一部の議員からは何らかの軍備管理に関する対話が再開され、状況の変化によっては、本協定に関する再検討の可能性があるかもしれないとする見方が示された。米ロ間では余剰兵器プルトニウム処分の他に、ロシアの解体核兵器から生じた兵器級ウラン(高濃縮ウラン、濃縮度90%)500トンを20年にわたり原子力発電所向けの低濃縮ウラン(濃縮度4.4%)に希釈し、原子力発電所の燃料として米国に販売する、いわゆる「メガトンからメガワットへのプログラム」が、1993年2月に締結された協定に基づき実施され、2013年末に完了。15,000トン以上の低濃縮ウランが米国に納入された。
23 Oct 2025
515

米国の原子力スタートアップ、ラディアント(Radiant)社は10月13日、テネシー州オークリッジにマイクロ炉「Kaleidos」の製造工場を建設すると発表した。建設地はかつての米国の原子爆弾開発計画「マンハッタン計画」跡地で、現在は原子力研究施設が集まる場所として知られる。建設費は約2億8,000万ドル(約420億円)で、操業時は約175人の常時雇用が見込まれる。テネシー州はB.リー知事のもと2023年に「原子力基金」を創設し原子力関連企業の誘致や研究機関による人材育成を支援しており、ラディアント社はこの基金から200万ドル(約4億円)の助成を受ける予定。製造工場「R-50」の着工は2026年初頭、2028年にKaleidosの初号機納入、その後は年間12基の量産体制を構築し、長期的には年間最大50基の製造を目標としている。ラディアント社の最高執行責任者(COO)、T.シヴァナンダン氏は「州の規制上の確実性や優秀な労働力を考慮し、オークリッジを選んだ」と説明。同社は当初ワイオミング州での建設も検討していたが、規制環境を理由にテネシー州を選定した。ラディアント社は米スペースX社でロケットの電気系統設計担当エンジニアだったD.ベルナウアー氏により2020年に設立された。開発中のKaleidosは電気出力約0.12万kWのヘリウム冷却マイクロ炉で、TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を採用、運転サイクルは5年を想定。トラックなどによる輸送を可能にし、ディーゼル発電機の代替を目指している。Kaleidosは、2025年8月に米国エネルギー省(DOE)が開始した「原子力パイロットプログラム」で選定された先進炉11炉型のうちの1つ。プログラムへの参加により、DOEの技術・安全審査を経て迅速な実証ルートを確保している。2026年春にはアイダホ国立研究所(INL)で試験運転を行い、2028年の実用化を目指す。ヘリウム冷却システムの商用規模での信頼性は実証段階にあり、試験結果が今後の展開を左右する重要な節目となる見通しだ。同社は2025年7月、米空軍向けKaleidosの納入契約を締結し、2028年の引き渡しを予定している。このほか、遠隔地施設や災害対応電源などへの供給も見据え、分散型エネルギー市場での事業拡大を狙っている。
23 Oct 2025
575

フィリピンのエネルギー省(DOE)のS. ガリン長官は10月3日、マニラで開催されたフィリピン国際原子力サプライチェーンフォーラム(PINSCF)2025において講演し、国内のエネルギーミックスに原子力を組み入れる包括的枠組みに関する省令に、前日に署名したことを明らかにした。この枠組みの下、商業的に開発・運転される同国初となる原子力発電所は、導入される原子力技術に係わらず、ベースロード電源となり、優先的な送電が認められるなど、大統領令に基づく優遇措置と迅速な手続きの対象となる国家重要エネルギープロジェクトに認定されるという。DOEは、原子力発電所への競争力ある投資環境を整備し、先行開発事業者による円滑な電力販売を促進させ、国の長期的なエネルギー安全保障を強化したい考え。省令の公布から90日以内に、DOE職員と財務省、経済計画開発省、政府系ファンドのマハルリカ投資公社、その他関連機関が、政府参加モデルや資金調達オプションを検討。エネルギー規制委員会が、規制資産ベース型モデルまたは類似の資本回収メカニズムを実施する任務を負っているという。さらに送電システムへの原子力発電の円滑な統合を確保するため、送電網整備の作業を優先するとしている。ガリン長官は、「原子力をエネルギーミックスに組み入れる明確なルールを確立することで、投資家、パートナー、関係者に対して、フィリピンがクリーンエネルギー移行の一環として原子力を責任ある戦略的導入の準備が整っているという確信を与える。原子力は信頼性が高く安定したベースロード電源となって再生可能エネルギーを補完し、気候目標を達成しながら、経済成長に必要なエネルギー安全保障を確保するものだ」と述べた。また同長官は、政府による支援政策と投資家の強い関心から、2032年までに国内初の原子力発電所の運転に期待を寄せつつも、その実現は投資家の決定など多くの要因に左右されると言及。さらに地域社会の受け入れが原子力発電所を建設する際の主要な要件の一つであると強調した。PINSCF 2025には、米国、韓国、カナダ、UAE、アルゼンチン、フランス、フィンランド、ハンガリー、フィリピンの政策立案者、原子力技術部門や規制当局の専門家が参加し、フィリピンのエネルギー転換を支える戦略的かつ適応性のあるサプライチェーン構築に焦点を当て、議論された。昨年11月に開催された第1回フォーラムでは、国際的に活躍する原子力専門家、政策立案者、エネルギー関係者、外交官らが出席。原子力産業における最新の動向、ベストプラクティス、安全とセキュリティ、および資金調達メカニズムなどについて協議されている。フィリピンでは2022年2月、大統領令により原子力をエネルギーミックスに加えるという方針が確定し、昨年には原子力ロードマップが発表された。2032年までに同国初の原子力発電所の稼働を目指し、少なくとも出力120万kWeをエネルギーミックスに組み入れ、2035年までに240万kWeに倍増、2050年までに480万kWeまで増強する方針である。今年9月には、国家原子力安全法を制定。原子力の平和利用を規定し、原子力安全および放射線活動を監督する、独立した原子力規制機関(PhilATOM)の設立を定めており、原子力の導入にむけた諸準備が本格化している。なお同国では、1985年に東南アジア初の原子力発電所となるバターン原子力発電所(=BNPP、米ウェスチングハウス社製PWR、62万kWe)がほぼ完成したが、1986年に発足したアキノ政権は、同年のチョルノービリ原子力発電所事故の発生を受け、安全性及び経済性を疑問視し、運転認可の発給を見送った。その後、急速なエネルギー需要が国産エネルギーの開発や輸入エネルギーの増加でも賄えない場合に備え、1995年から原子力発電の導入について検討が始まったが、2011年3月の福島第一原子力発電所事故により、再度原子力発電開発を断念した。現在、韓国水力・原子力の支援を受け、BNPP稼働に係わる包括的な実行可能性調査を実施中である。
22 Oct 2025
529

ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は10月8日、仏電力大手フランス電力(EDF)グループ傘下の2社と、チェルナボーダ原子力発電所(CANDU6、70万kW級×2基)の運転期間延長ならびに医療用ラジオアイソトープ(RI)製造にかかる協力協定を締結した。SNNの発表によると、原子力発電所向けの蒸気タービン事業を手掛けるアラベル・ソリューションズ社とはチェルナボーダ1号機の改修・運転延長プロジェクトで協力し、燃料製造大手フラマトム社とは医療用RIの製造で協力する。SNNは、同1号機(1996年運転開始)の運転期間を30年間延長する改修工事を計画しており、2027年に運転を停止。2029年の再稼働を目指して、現在は、設計や資金調達、インフラ整備などを進めている。アラベル社はこれまでも1、 2号機の保守や部品改修を手掛けており、長年の協力関係をさらに発展させる形で協力関係を結ぶ。改修作業は工学研究から製造、既存システムの解体、新設備の設置、長期的な保守作業まで多岐にわたる。1号機の改修が完了し運転再開すれば、年間約50億kWhの発電が可能となり、年間約500万トンのCO₂排出削減に寄与する見通し。一方、フラマトム社とは、同発電所での医療用RIの一つであるルテチウム177の製造の協力体制を構築する。ルテチウム177はがん治療に不可欠なRIで、欧州では年間約1,500万件の治療で使用されている。医療用RIの提供はSNNの長期戦略の一環。2024年にはフラマトム社と覚書(MOU)を締結しており、今回の契約は2028年のサービス開始に向けた実施段階への移行を意味する。なお、SNNは2024年にもカナダ、イタリア、韓国の企業と1号機改修のための協力契約を締結するなど、国際協力を強化している。今回のフラマトム社との協力が実施段階に入ったことで、1号機の改修プロジェクトの進行とともに、エネルギー供給にとどまらない原子力利用の拡大の動きが本格化している。
22 Oct 2025
367

ウズベキスタン東部のジザク州ファリシュ地区において10月9日、ロシア製SMR建設プロジェクトの初号機の原子炉建屋の基礎掘削工事が開始された。同サイトでは2基のSMRに加えて、大型炉2基を建設する。ウズベキスタン原子力庁(ウザトム=Uzatom)のA. アフメドハジャエフ長官とロシア国営原子力企業ロスアトムのA. リハチョフ総裁が、オンラインで掘削工事開始の式典に参加した。建設されるロシア製SMRはRITM-200N。舶用炉を陸上用に改良したPWRで、熱出力19万kW、電気出力5.5万kW。設計運転年数は60年。ロシア製SMRの海外輸出プロジェクトは、これが初めて。ロシア国内では、サハ共和国北部のウスチ・クイガ村で建設プロジェクトが進行中である。ジザク・サイトでの建設作業では、広範囲に地元企業が参画している。掘削工事では、150万㎥の土砂が掘削され、掘削深度は13mに達するという。並行して、エンジニアリング調査や設計、準備作業が進行中。今年末までにSMRの設計文書が作成され、2026年3月には初号機の初コンクリート打設を予定している。同プロジェクトは段階的に実施され、SMRに続いて大型炉の稼働を計画しており、今後、大型炉の設計作業にも取り掛かる予定である。当初、ジザク州には2024年5月の建設契約に基づき、RITM-200N×6基の建設を予定していたが、9月26日、モスクワで開催されたロスアトム主催の国際フォーラム「世界原子力ウィーク」(WNW)において、RITM-200N×2基ならびに大型炉VVER-1000×2基を建設する原子力発電所プロジェクトとし、同プロジェクトへの燃料供給も含めて合意された。近代的な低出力の先進炉と実績ある高出力の原子炉の両方が同じサイトで稼働することになる。
21 Oct 2025
519

米エネルギー省(DOE)は9月30日、先進燃料製造ラインを構築する新たなパイロットプログラムの対象として、4社を選定した。原子燃料の国内サプライチェーン強化に向けたトランプ政権の取組みを、さらに一歩前進させた。今回の選定により、米国の国家安全保障を強化し、海外の濃縮ウラン資源への依存を低減させ、2026年7月4日(独立記念日)までに少なくとも3基の先進試験炉を臨界状態にすることを目指すDOEによる原子炉パイロットプログラムを支援する。選定されたのは、以下の4社。Oklo(カリフォルニア州サンタクララ): オーロラ(Aurola)炉とプルート(Pluto)炉、および場合によってはその他の高速炉を支援するための3つの燃料製造施設の建設と運営。Terrestrial Energy(ノースカロライナ州シャーロット): 段階的アプローチで熔融塩製造プロセスを実証するTerrestrial Energy燃料ラインの開発。TRISO-X(テネシー州オークリッジ): 商業用TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料製造施設TX-1を支援する燃料製造実験施設の建設と運営。Valar Atomics(カリフォルニア州ホーソーン): Ward 250炉およびその他の高温ガス炉のためのTRISO燃料製造を支援。今回の措置は、DOEによる先進試験炉向けの燃料製造ラインのパイロットプログラム下において2度目となる条件付き選定となる。DOEは今年8月、テネシー州オークリッジに拠点のある、Standard Nuclearを先行して選定済み。同社は独自の原子炉開発事業を持たない国内唯一の独立系TRISO燃料製造事業者で、製造施設をテネシー州ならびにアイダホ州に建設、運営する計画である。上記5社は、DOEによる原子炉パイロットプログラムの参加対象として初回に選定された11種の原子炉の研究、開発、実証に向けて、DOEの認可プロセスを活用して、確実に燃料を供給していく方針だ。なお今回の選定企業のうち、Oklo、Terrestrial Energy、Valar Atomicsの3社は、今年8月にDOEの原子炉パイロットプログラムの対象として選定された10社に含まれている。今回の選定により、設計のテストに必要となる高度な燃料の供給力が拡大し、実証から配備への移行が加速することが期待されている。選定企業は、燃料製造施設の建設、運転、廃止措置に関連するすべてのコストを負担し、核物質の原材料を調達する。またDOEのHALEU利用可能プログラムを通じて、HALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)の割り当ての申請が可能。これらのパイロット事業は、民間投資の呼び込みと、商業化に向けた規制認可の迅速化を後押しすると見込まれている。DOEのJ. ダンリー副長官は、「国内の燃料供給体制を確実に立て直し、先進炉の設計段階から建設・運転へと迅速に移行できるようにする。先進炉向けの燃料製造能力は、原子力分野での米国のリーダーシップを維持し、信頼性の高い電力需要に応えるために不可欠だ」と述べた。
21 Oct 2025
518

OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は9月18日、石炭火力発電所から小型モジュール炉(SMR)へ移行する可能性について、市場規模や導入課題、政府と産業界の役割などを分析した報告書「SMRs for Replacing Coal―― Opportunities and Challenges for Small Modular Reactors」を公表した。報告書は、老朽化や脱炭素化の進展に伴い石炭火力が段階的に廃止されるなか、SMRが石炭火力発電所のインフラや立地許可など、既存の許認可を可能な範囲で活用できる有力な代替手段になり得ると指摘。ベースロード電源として系統インフラや労働力を維持しつつ、今後数十年にわたり、手頃な価格でクリーンかつ信頼性の高い電力供給を支えることができるとしている。まず、対象市場や実現可能性について、報告書は、石炭火力から原子力への移行可能性は地域によって異なると分析。最大の要因は石炭火力発電所の老朽化で、さらに政府の政策方針や既存の原子力インフラ、石炭火力の段階的廃止計画も導入を左右する要素とした。なかでも北米、特に米国は老朽化した石炭火力が多く、原子力の経験も豊富なことから、SMR導入の先行地域として位置付けられた。欧州もまた、石炭火力から原子力への代替によって大きな恩恵を受ける地域と分析されている。NEAによると、世界の石炭火力発電設備容量(約22億kWe)のうち、2035年までにSMRによるリプレースが見込まれる潜在市場は1億4,300万kWe に達し、主に米国を中心に市場が形成される見通し。さらに2040年には潜在市場が3億8,100万kWeへと拡大し、欧州やアジアでも移行が本格化するとみられる。報告書は、2050年までに世界全体で4億5,000万kWeの石炭火力が原子力へ移行する可能性が高いと結論づけた。なおアジアでは、インドネシアや日本、韓国、フィリピンが潜在市場として挙げられている。また、報告書は電力会社や大規模ユーザーなど専門家への調査やインタビューも実施。その結果、多くが石炭火力から原子力への移行に関心を示す一方で、「ファーストムーバー(先駆者)」として初めて建設に取り組むことには慎重な姿勢を見せた。初号機建設のリスクや、他社の実績を見極めてから導入する姿勢が背景にあり、こうした状況をふまえ回答者は、リスク軽減やリプレースの加速・実証において、政府が重要な役割を果たすべきと強調している。そのうえで報告書は、石炭火力から原子力への持続可能な移行には、原子力の開発・導入を後押しする効果的な政策枠組みと強力な国内政策が不可欠と強調。具体的には、明確な脱炭素方針や直接的な財政インセンティブ、合理化された規制プロセスを通じて、原子力導入が促進できるとした。さらに、官民パートナーシップにより、初期の原子力プロジェクトに伴うリスクを共有し、石炭火力がもたらしてきた地域経済への貢献を維持するための財政支援を提供し、移行を支援することも可能としたほか、職業訓練や地域経済支援の政策は、石炭火力依存地域の「公正な移行」を後押しするものと指摘している。
20 Oct 2025
805

英国で建設が進むサイズウェルC(SZC)原子力発電所プロジェクト(欧州加圧水型炉EPR-1750×2基、各172万kWe)を手掛けるサイズウェルC(SZC)社は10月12日、ウラン濃縮を手がける英ウレンコ社および仏の燃料製造大手フラマトム社と、長期燃料供給契約を締結したと発表した。運転開始に備え、燃料の安定調達に向けた重要な一歩となった。ウレンコ社とのウラン濃縮サービス契約は、原子炉2基の運転開始から6年間を対象としており、運転初期段階の燃料供給を担う。英国北西部チェスター近郊カーペンハーストにあるウレンコ社の濃縮施設では現在約1,000人の熟練技術者が働いており、今回の契約が地域の雇用維持にもつながると見込まれている。一方フラマトム社との契約は、発電所の運転開始時に必要な燃料とその後の定期的な燃料交換に使う分までを長期的に製造・供給する内容となっている。またフラマトム社は2023年11月、SZCを含む英国の原子力発電所向けに燃料を供給する計画の一環として、英国内での原子燃料製造施設の建設計画を発表している。燃料は当初、仏・ロマンの工場で製造されるが、英国の新施設が稼働すれば、将来的に国内生産に切り替わる見通しだ。SZCの共同マネージングディレクターであるJ. パイク氏は、今回の契約が「英国のエネルギー安全保障と原子力サプライチェーンを強化する重要な節目」と強調した。SZC発電所は、稼働後に最大600万世帯分の電力を60年以上にわたり供給できる見込みで、英国の電力システム全体で年間平均20億ポンド(約4,000億円)のコストが節約できると期待されている。建設のピーク時には約1万人の直接雇用を生み出し、サプライチェーンを含めると数万人規模の雇用創出が期待される。
20 Oct 2025
383

米国の投資銀行JPモルガン・チェースは、10月13日、米国の国家安全保障および経済のレジリエンス(回復力・弾力性)を強化するため、今後10年間で総額1.5兆ドル(約225兆円)規模の資金支援と投融資を実行する計画を発表した。この計画には、自社資金による最大100億ドル(約1.5兆円)の直接投資も含まれており、対象には原子力分野も含まれることが明らかになった。同社のJ.ダイモン会長兼CEOは、「米国は国家安全保障に不可欠な鉱物や製品、製造能力を信頼性の低い供給源に過度に依存してしまっていることが明らかになった」と述べ、米国の安全保障と経済のレジリエンスを確保するためには、より迅速な行動と積極的な投資が不可欠であると強調している。計画では、以下の4分野を重点課題として掲げており、これらに対して助言、資金提供、時には投資を通じて支援を行うとしている。サプライチェーンと先進製造業:鉱物・製造部材、医療原料、ロボティクス等防衛・宇宙産業:防衛技術、自律システム、ドローン、次世代通信、セキュア通信等エネルギー自立とレジリエンス:送電網強化、分散型エネルギー、蓄電池、再生可能エネルギー等先端・戦略技術:AI(人工知能)、サイバーセキュリティ、量子コンピューティング等このうち「エネルギー自立とレジリエンス」分野では、送電網のレジリエンス強化のほか、分散型エネルギー、太陽光発電、蓄電池もサブ領域として明記されている。またダイモン氏は、AIの進展に伴う電力需要の急増に対応するため、半導体やデータセンターを支える強固なエネルギーシステムの構築が不可欠であると指摘した。これらの取り組みを推進するため、同社は今後、銀行や投資部門の人員を拡充するとともに、官民の有識者による外部諮問委員会を設置し、専門知識を結集して支援体制を強化する方針だ。
20 Oct 2025
618

米X-エナジー社傘下のX-エナジー・カナダ社は9月25日、加アルバータ州にあるTransAlta社の火力発電所のサイトにX-エナジー社が開発する小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」を導入する実現可能性を確認できたことを明らかにした。これにより、さらなる計画策定および規制当局との協議の基盤が築かれたとしている。実現可能性調査は、アルバータ州政府のTIER(Technology Innovation and Emissions Reduction)基金を原資に、州政府系機関ERA(Emissions Reduction Alberta)から助成を受け、カナダを拠点とする電力事業者のTransAlta社、エネルギー・エンジニアリング会社のHatch社、建設会社のPCL社、原子力サービス会社のKinectrics社と共同で実施した。調査の結果、アルバータ州特有のエネルギーおよび産業構造とXe-100の特性との間に高い親和性があることが確認され、同州のエネルギー経済と長期的な競争力強化に直接貢献できる分野を特定できたという。Xe-100は、出力8万kWeの高温ガス冷却炉。電力供給に加え、565℃の熱および蒸気を安定供給可能で、同州の産業や石油・ガス分野で幅広く応用できる。また、Xe-100では空冷システムの効率的利用により、水使用量が大幅に削減できる見込みで、従来の軽水炉と比較して立地選定の柔軟性を高めるという。燃料には、米エネルギー省から「地球上で最も堅牢な燃料」とされるTRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料を使用。運転時や事故時を含むあらゆる状況での極端な高温にも耐えられるよう設計されており、次世代型の固有安全性を確保する。アルバータ州にはサプライチェーンが確立されており、X-エナジー社の技術の製造および建設を支える体制が整っている。X-エナジー社のB. レインキ上級副社長は、「Xe-100の利点を最大限に活かせる地域である」と指摘している。X-エナジー社は、電力会社、産業顧客、ハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)向けにXe-100を系統連系と同規模のエネルギーソリューションとして推進しており、米国の大手化学メーカーであるダウ(Dow)社、大手テック企業のAmazon社や英国のエネルギ―供給会社のセントリカ(Centrica)社とすでに導入や投資、電力購入をめぐって合意している。X-エナジー社の最初の計画としては、ダウ社のテキサス州シードリフト・サイトにXe-100×4基の発電所を建設。北米で初めて産業サイト向けに導入され、クリーンな電力と高温蒸気を供給する。ダウ社とのプロジェクトに続き、Amazon社と2039年までに合計500万kWeの導入を計画しており、その一環としてワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社と協働。同社が運転するコロンビア原子力発電所(BWR、121.1万kWe)の傍に「カスケード先進エネルギー施設」と称するSMRの施設を建設する。その第1フェーズでXe-100を4基(合計32万kWe)設置し、続く第2、第3フェーズと併せて、最大12基(合計出力96万kWe)を設置するオプションを有する。2020年代末までに建設を開始し、2030年代に運転を開始したい考えだ。今年8月にはAmazon社とともに、米国内でのXe-100展開の加速を目的に、韓国水力・原子力(KHNP)および斗山エナビリティ社と協力合意を交わし、翌9月には、英国のセントリカ社とイングランド北東部のハートルプールにXe-100を最大12基建設することで合意している。燃料部門では、自社開発のTRISO-X燃料の製造施設TX-1をテネシー州オークリッジに建設するプロジェクトを進めており、米原子力規制委員会が許認可の審査中である。
17 Oct 2025
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東京電力柏崎刈羽原子力発電所の稲垣武之所長は10月23日の定例会見で、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)で実施されている健全性確認が、早ければ今月中に完了する見通しだと発表した。健全性確認とは、燃料装荷を行った後、主に「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能に問題がないか、また、正しい位置に配置されているか等を確認するもの。今後実施される原子炉建屋気密性能検査を経て、同6号機は技術的に再稼働ができる状態が整う。6号機は今年6月に燃料装荷を開始。同月中に、使用済み燃料プールにあった872体の燃料を、すべて装荷した。今月17日には、全ての制御棒についての「制御棒駆動機構の機能確認」を実施した。一方、同23日、新潟県の花角英世知事は定例記者会見で、同発電所の再稼働に関する県民意識調査について、インターネットで追加調査を実施する方針を示した。再稼働を巡って新潟県は、今年6月から8月末にかけて、県内5か所で県民公聴会を実施しているほか、9月には1万2千人を対象に意識調査を実施している。花角知事は「UPZ(緊急防護措置を準備する区域)全体の意見傾向をより丁寧に見るべきだ」という議会での意見を受け、「UPZ全体の傾向を把握するためには、サンプルの取り方を変更し、人口に比例した調査を行う必要があるため、現在、実務的に調査の設計準備を進めている。インターネット調査のためそれほど時間はかからないだろう」と述べた。
24 Oct 2025
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原子力規制委員会は10月22日の定例会合の中で、10月9日に開催された「第22回主要原子力施設設置者(被規制者)の原子力部門の責任者との意見交換会」の概要を報告した。同意見交換会では、以下の4つの議題が挙がり、それぞれ事業者から提案があった。 ①シビアアクシデント(SA)設備の特定重大事故等対処施設(特重施設)の運転上の制限(LCO)に関する記載の一部見直しについて②重大事故等時への特重施設積極活用による安全性向上に係る取組について③特重施設等設置の経過措置期間(延長)について④原子力発電所の廃止措置について 詳細は<こちら>これら議論の報告を受けて、この4件を今後どう扱っていくか、同定例会合に参加した規制委の各委員から意見が挙がった。①と④の議題については、規制委と事業者の認識がほぼ一致しており、「前向きに検討していきたい」との発言があった。また②については、事業者ごとに事情が異なるため、個別の確認が必要だとする意見が挙がったが、概ね、今後の審査で確認すべき事柄が定まっており、特段の異論はなく「個別審査や中期目標の中で進めるべき事項と理解している」との見解が示された。一方で③に関する議論においては、事業者側から建設業界の労働環境の変化等を理由に、特定重大事故等対処施設(特重施設)の3年間の設置期限延長要望があったことを受け、規制委側からさまざまな意見が挙がった。労働基準法改正に伴う時間外労働の上限規制等により、建設業界や物流業界などに影響が出ていることから、マンション建設などでも当初より大幅に完成が遅れる例があるため、柔軟に対応すべきだ、といった意見がある一方で、特重の設置期限を5年から8年に延ばす場合にリスクがどう変化するのか、また、社会に対して相応の説明責任が発生するため、建設業界等の事情のみならず他の要素も含めて情報を整理すべきだとの声が挙がった。また、特重の設置期限の延長が適用される範囲が明確でないため、事業者に確認すべきだとの声が挙がり、規制委では今後、東北電力など事業者側へ追加の聞き取りを実施することが決定した。
23 Oct 2025
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英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館は10月7日、第9回日英原子力産業フォーラムを駐日英国大使館大使公邸にて開催した。後援は英国市場協議会(BMC)、英国原子力産業協会(NIA)、日本原子力産業協会。9回目となった今年の同フォーラムには、英国と日本の関係機関および企業の関係者を合わせて約100名、レセプションには約150名が参加した。開会挨拶に際しジュリア・ロングボトム駐日英国大使は、「日本初の商業用原子炉は英国の設計によるもので、以来、両国の原子力産業は密接な繋がりを築いてきた」と述べ、日英の原子力分野における関係性に長い歴史と深い絆があることを強調。また、日本の使用済み燃料の再処理を英国で長年行ってきたことについて言及し、両国が共通して抱える廃止措置課題の解決に向けて、引き続き、相互に利益をもたらすパートナーシップに期待を寄せた。続いて英国原子力廃止措置機関(NDA)のデイビッド・ピーティCEOが登壇し、設立20周年を迎えたNDAの活動や今後の戦略に関する説明があった。NDAでは、最優先課題であった同国セラフィールド社(NDAの傘下企業)の貯蔵施設から、燃料デブリと廃棄物の取り出しに初めて成功するなど大きな進展があったほか、スコットランドのハンターストンB原子力発電所2号機(改良型ガス冷却炉:AGR・64.4万kW)を皮切りに、EDFが運営するAGRが来年4月以降に順次NDAに移管され、NDAの廃炉活動が大幅に拡大されるという。ピーティCEOは「私たちの仕事は『過去を解体する』だけではなく『未来を築く』ことだ」と述べた上で、「廃棄物や負の遺産に対して誠実に対応できるという信頼があってこそ、原子力開発の社会受容につながり、英国をクリーンエネルギー超大国にするという政府計画を支えることができる」と訴えた。開会セッションの最後に登壇した原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志上席技監は、「廃止措置には倫理的課題や知識管理、ステークホルダーの参加といった克服しきれていない問題が深く関わり、日英両国の理解と経験を結集する重要な挑戦となる」と語り、今後も日英両国の協力が人材育成や知識管理、環境社会ガバナンスにおける価値の統合といった分野でより一層深まり、国際社会への貢献に繋がることへの期待を示した。続くセッションでは、廃止措置と廃棄物管理をテーマに、日英の最新の原子力政策の動向や、メーカー・研究機関による研究開発の最新情報、原子力関連施設の廃止措置状況、NDAや使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)による廃止措置事業のマネジメントの事例などの発表があった。その他、日英の原子力関連企業の連携を促進するため、会場内において、英国企業によるパネル展示などが行われたほか、セッションの合間にケーススタディとして各社の廃止措置における取組みや日英連携プログラムの進捗が紹介され、活発な情報・意見交換が行われた。閉会セッションで、英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレートレックスCEOは、「近年の英国の原子力産業界の目覚ましい進展は、社会受容の基盤となる確実な廃炉と廃棄物管理を実現する取り組みがあったからだ」と語り、廃止措置が原子力産業の中核にあり、地域社会や国民全体から信頼を得るための基盤となることを改めて強調した。続けて「廃炉は新設ほど注目を集めることはないが、英国の原子力産業界で働くおよそ10万人のうち相当数が廃止措置関連業務に従事し、わが国の技術革新を促進し、関連産業にも広く波及効果をもたらしている」と述べた。続けて閉会セッションにて日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、「福島第一原子力発電所事故の教訓を常に念頭に置き、その知見を既存炉や新規建設炉に適切に反映させることは日本の原子力開発の基盤だ。今後も、日英両国が相互に学び、支え合い、成長し、長年にわたるパートナーシップをさらに深めていくことを願っている」と述べ、エネルギー安全保障、カーボンニュートラル、廃止措置といった共通課題に直面している日英両国が互いに学び、協力し合う重要性が再確認され有意義なフォーラムになったと評価した。
22 Oct 2025
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東京電力は10月16日、柏崎刈羽原子力発電所1、2号機(BWR、110.0万kWe×2基)の廃炉に向けた検討を具体化する方針を表明した。同社は今後、原子力規制委員会の承認を経て、今年6月にすでに燃料装荷を開始、完了した同6号機(ABWR、135.6万kWe)の再稼働に向けた準備を進めながら、廃炉の計画も前に進めていく。廃炉の最終的な判断は6号機の再稼働後、1年半を目途に行うとした。理由については、以前より新潟県の一部自治体から1~5号機の一部廃炉を求める声が挙がっていたことや、同社経営への影響などを総合的に判断したという。再稼働を巡って新潟県は、今年6月から8月末にかけて、県内5か所で県民公聴会を実施済み。同県の花角英世知事は同公聴会を再稼働の是非を県民に問う場として掲げ、開催終了後に、再稼働の是非の判断を下す意思を示していた(既報)。また、同社は同日、新潟県議会連合委員会へ小早川智明社長らが参考人として出席し、「柏崎刈羽原子力発電所における安全・安心の向上と地域経済の活性化に向けた取組について」と題した資料を用いて、同発電所の基本方針と安全性の向上に向けた改善の状況を説明。その後、報道陣に応じた小早川社長は、新潟県向けの支援策として1,000億円規模の資金を拠出する計画を併せて示した。資金の適用先は今後新潟県との協議で決定される。同社は防災施設や道路整備、地域活性化や雇用増につながる分野の企業進出の後押し等に活用してもらう考えを示している。
21 Oct 2025
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原子力産業界の人材確保支援と理解促進を目的とした「原子力産業セミナー2027」(主催:日本原子力産業協会・関西原子力懇談会)が10月18日、福岡市のエルガーラホールにて開催された。同セミナーは、原子力関連企業や関係機関が一堂に集う企業説明会で、これまで東京や大阪などで実施(東京9/20・大阪9/27開催済み)しているが、今回、初めて福岡でも開催された。同セミナーには九州電力をはじめ、九州を拠点とする企業を中心に全国から26社が出展。当初の想定を上回る140名の学生が来場し、各ブースではスライドや展示資料を用いて熱心に自社紹介をする様子が見られた。今年、初めて福岡市で同セミナーを開催した狙いについて、主催者である日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、「首都圏や関西だけでの開催では九州の学生が参加しにくかった。多くの学生に原子力産業界の仕事を知ってもらいたいと考え、福岡市での開催に至った」と語った。国内では原子力発電所の再稼働やリプレースの具体化が進められ、原子力産業界全体で人材確保が課題となっているが、人口減少に伴ない人材獲得競争が激化している。こうした現状について増井理事長は、「人口減少に対応するためには、AIや先進的なデジタル技術の活用など、原子力産業界全体の省人・省力化が必要になる」と指摘。また、「原子力関連企業や関係機関それぞれの個々の努力に頼るのではなく、産業界として共通化できる部分を整理し、連携を強化することで、より効果的な仕組みを作れると考えている」と展望を語った。また、同セミナー初の福岡開催について増井理事長は、「多くの学生が熱心に話を聞いており、企業側も具体的なキャリアモデルを提示しながら、各企業の魅力を伝えていた。報酬や福利厚生など現実的な話題も含め、バランスの取れた説明が行われており、非常に良い雰囲気だった」と手応えを語った。そして、「原子力産業界への就職と聞くと、専門的な学問を学んだ人しか関われないと思われがちだが、実際には土木・機械・電気・化学などの幅広い専門分野の知識が活かせる職種が多い。経理や事務など、工学系以外の分野でも多くの人が活躍している」と語り、原子力産業は、多様な専門性が結集する総合的な産業であり、各分野の連携によって安全な発電所の運転が支えられていることを強調し、今後も同産業界の魅力を最大限伝えていく意欲を示した。
20 Oct 2025
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量子科学技術研究開発機構(QST)と欧州のフュージョンフォーエナジー(F4E)は10月11日、米国のジェネラル・アトミクス(GA)と、那珂フュージョン科学技術研究所にあるトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」への先進計測器提供に関する協力取決めを締結したことを発表した。また、QSTとF4Eは同日、同じく米国のプリンストン・プラズマ物理研究所(PPPL)とも同様に先進計測器提供に関する協力取決めを締結したことを発表した。JT-60SAは核融合の実験装置で、茨城県那珂市の那珂フュージョン科学技術研究所にある。2023年10月に初プラズマ(運転開始)を達成した同装置は、約マイナス269℃に冷却された強力な超伝導コイルを使用して1億℃に達するプラズマを閉じ込めることが可能だ。現在、ITERでは実現が難しい高圧のプラズマを100秒ほど維持する運転や制御方法の確立を目指している。なお、同装置とITERは同じトカマク型である。この度の協力取決めでは、米GAから先進プラズマ研究に不可欠な先進計測器を、PPPLからプラズマ不純物を計測する先進計測器の提供が決まった。米GAが開発した最先端の計測器は、高速イオン重水素の光放出を測定し、プラズマ中の高エネルギー粒子の振る舞いを解析するための重要なデータを取得する。これにより、プラズマ加熱や電流駆動など、核融合反応の性能向上に不可欠な要素の理解が進むことが期待されている。PPPLが開発したX線イメージング結晶分光器は、不純物の発光を高精度・高速に測定し、イオン密度や温度、流速などの詳細なデータを取得できる。トカマク型の核融合炉では、プラズマを安定に維持するために不純物の挙動を正確に把握することが重要であるが、これにより、プラズマ中で不純物が輸送する物理の理解とプラズマ制御の最適化が一層進むと期待されている。QSTは、2026年に同装置の本格的なプラズマ加熱実験を始める予定だ。この度の協力取決めを受けて、城内実科学技術政策担当相は14日の会見で「米国の研究機関らが、QSTの進めるプロジェクトに参画を決めたことを大いに歓迎する」と述べ、フュージョンエネルギーの社会実装に向けて、今後のQSTの取り組みに期待を寄せた。
17 Oct 2025
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は9月26日、高温工学試験研究炉 (HTTR、熱出力3万kW)への水素製造施設の接続に係る原子炉設置変更許可申請書の補正書を、原子力規制委員会へ提出した。 JAEAは、今年3月、HTTRと水素製造施設の接続に必要な許可を得るため、原子炉設置変更許可申請を原子力規制委員会に提出していた。提出後の審査会合では、(今年5月・7月)、原子炉等規制法の適用範囲に関する議論が行われ、その結果、水素製造施設は同法の範囲外とされ、今後の審査を進めることで合意した。水素製造施設が一般産業法規の適用範囲へと認定されたことで、設計・調達の柔軟性が高まり、産業界の参入が促進されることが期待されている。 HTTRは、日本初かつ唯一の高温ガス炉であり、高温工学試験研究の中核を担う原子炉として、大洗原子力工学研究所(茨城県)内に1987年に建設された。以来、高温ガス炉の技術基盤を確立するとともに、原子力エネルギーを利用した水素社会の実現に向けて貴重なデータを取得・蓄積している。高温ガス炉は二酸化炭素を排出することなく高温熱を供給可能であることから、安定的に大量の水素を製造することが可能である。 政府は、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」の参考資料において、2030年代の運転開始を目標とする高温ガス炉実証炉開発工程が示されるとともに、経済産業省の革新炉ワーキンググループは実証炉建設に向けた技術ロードマップにおいて、HTTRを活用し、2030年までに高温ガス炉を用いた水素製造を行う計画が示されている。 この、HTTRの核となる技術は国産技術であり、例えば、原子力用構造材として世界最高温度の950℃で使用できる金属材料は日本メーカーによるもの。水の熱分解反応による水素製造「ISプロセス」は、水素の製造過程で化石燃料を使用せず、多様な産業利用に期待が寄せられている。 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製鉄、化学工業等の脱炭素が難しい分野における脱炭素化のためには、水素の利活用が不可欠とされている。
16 Oct 2025
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原子力AI学シンポジウムが10月6日、東京大学にて開催された。当日は、200名以上が参加した(オンラインを含む)。同シンポジウムは、東京大学大学院工学系研究科と日立GEベルノバニュークリアエナジーの共同研究として、2025年7月から3年間の計画で「原子力AI学講座」が設置されたことを受け、その具体的な研究内容について、幅広く意見を聴くことを目的に開催された。東京大学大学院工学系研究科原子力専攻の学生向け講座として実施される同講座は、原子力分野における「3S」(Safety, Security, Safeguards)を対象に、AI応用技術を俯瞰的にとらえた教育・研究を進め、最新の原子力AI技術を開発・実現する人材の育成と輩出を目指している。同研究科の岡本孝司教授によると、同講座の教育は机上の学習にとどまらず、原子力産業の現場を実際に訪問し、産業界が求めるAI活用の方向性を理解した上で、原⼦⼒への活用方法を自ら⾒出し、かつ道筋を⽴てられる人材の育成を目指すという。冒頭挨拶にて、同研究科の津本浩平副研究科長は「原子力分野では、長年にわたり蓄積されてきた運転・保守に関する膨大なデータや、熟練技術者の知見をいかに継承していくかが重要な課題となっている」と述べた上で、「AI技術の活用はこれらの課題解決に向けて有効な手段であり、そうした社会的要請に応えるべく同講座を設置した」と語った。また、「本講座が原子力の安全・安心を支える新たな知の創出と、未来を担う人材の育成に寄与すること」に期待を示した。続いて登壇した、日立GEベルノバニュークリアエナジーの久持康平取締役社長は「私たちがこれまで築いてきた原子力技術の土台は、丁寧な検証と長年の積み重ねの上に成り立っているが、今後はAIの力を借りて、より効率的かつ高度な設計・評価を進め、新たな進化へとつなげていきたい」と述べた。また、同社が開発した小型モジュール炉BWRX-300や原子力メタバースプラットフォームを例に挙げ、「グループの総合力を活かし、原子力関連の技術革新とスピードアップに取り組んでいきたい」と意欲を示した。原子力へのAI適用を紹介するセッションでは、東京大学の岡本孝司教授、出町和之特任教授、三輪修一郎准教授が登壇。原子力産業にAI技術を応用することで、核セキュリティのための物理的防護力の強化、運転・保守の合理化及び高度化による安全性と経済性の向上、過酷事故時におけるレジリエンス力の強化などが期待されることや、すでに米国では、AIを用いたオンラインメンテナンスが導入され、プラントの安全性が大幅に向上している実例が紹介された。シンポジウムの後半には、複数のパネリストが登壇し、「原子力AI学の展開、今後の教育・研究の方向性」をテーマに討論形式で活発な意見交換が行われた。
15 Oct 2025
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首都圏に電力を供給する新潟県と首都圏との交流を図るイベント「電力の産地を応援!にいがた魅力発信フェア」が15日、東京都千代田区の東京商工会議所1階多目的スペースで始まり、多くの来場者でにぎわっている。会場では、新潟県産の米や日本酒、菓子など約130品目の特産品を販売。特に「笹団子」や「柿の種のオイル漬け」が人気を集め、訪れた人からは「東京で新潟の味を楽しめるのがうれしい」といった声が聞かれた。また、エネルギーの生産地としての新潟の役割を発信しようと、東京電力によるパネル展示やVR映像の体験コーナーも設けられている。柏崎刈羽原子力発電所の内部をVRで見学できるほか、新潟県内での発電事業や原子力発電所の安全対策への取り組みなどが紹介されている。イベントは、東京商工会議所が今年から始めた「電力の産地と消費地を結ぶ交流事業」の一環。新潟県内の商工会議所と連携し、地域間の交流促進や地元企業の販路拡大、ビジネスマッチングの機会創出を目指している。東京商工会議所の担当者は「今後もこのようなイベントを通じて電力産地との交流を深めていきたい」と話している。開催は10月16日(木)まで。時間は午前11時から午後6時までで、入場は無料。キャッシュレス決済にも対応している。https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=206131
15 Oct 2025
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日本原子力産業協会は9月25日、中国核能行業協会(CNEA)と共催で「第2回日中原子力産業セミナー」を7年ぶりに対面で開催した。中国からは、CNEA、中国核工業集団有限公司、中国広核集団有限公司、中国華能集団有限公司、香港核電投資有限公司、清華大学など関連企業・機関から16名が参加。日本からは、日本原子力産業協会、日本原子力発電、電気事業連合会など、関連企業・機関から43名(オンライン傍聴を含む)が参加した。同セミナーでは「原子力発電所の運転および新規建設」をテーマに、両国の原子力産業界がそれぞれ知見を共有し、対話を通じて一層の交流促進と協業の可能性を探った。特に、中国で次々と進められる新規建設プロジェクトに関する実践的な知見について、日本側の参加者から「多くの学びを得られた」との声が上がった。また、中国の訪問団一行は、日本滞在中に、福島県および茨城県内にある複数の原子力関連機関・施設を訪問した。福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館への視察では、東日本大震災の発生から今日に至る復興への取り組みについて、映像や展示物を通じて説明があり、関係者との質疑を通じて現状理解を深める場が設けられた。東京電力福島第一原子力発電所構内の視察では、バスから乾式キャスク仮保管設備や多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水を保管するタンクなどを見学し、その後、展望デッキにて1~4号機の廃炉作業、さらに、ALPS処理水のサンプルを用いた海洋放出に関する説明が行われた。参加者からは、発電所構内での作業員の安全確保や放射線管理、今後の解体工程などに関する質問が多く寄せられ、現場の細部に至るまで強い関心が示された。福島県の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターへの視察では、同センターの設立の経緯や役割、国内外の機関との連携実績や技術実証事例についての紹介があった。そして、VR/AR技術を活用したシステムのデモンストレーションの実施、施設内の試験棟の視察が行われ、関係者との質疑応答の時間には、将来的な技術交流の可能性に関する話があがった。茨城県のJAEA原子力科学研究所の視察では、世界最大級の加速器施設として幅広い研究に利用されているJ-PARCの見学、また、中性子利用研究の中核拠点であるJRR-3の見学が実施された。それぞれの施設の運用体制や、各分野への活用・応用事例が示され、中国出身の研究者による中国語での解説を交えた活発な質疑応答が行われた。〈詳細はこちら〉
14 Oct 2025
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環境省が手掛ける放射線に関する正しい情報を発信する「ぐぐるプロジェクト」では、今年度の作品コンテストの募集を10月1日より開始した。締め切りは12月25日まで。同プロジェクトは、放射線の健康影響に関する誤解や風評、差別、偏見の解消を目指し、メディア向け公開講座や、全国の企業や学校でのセミナーの開催、作品コンテストの実施など、幅広い活動を手掛けている。中でも、セミナーで学んだ知識を作品として世に発信していく一連の流れを「ラジエーションカレッジ」と称し、同プロジェクトの要に位置づけている。今回募集の作品コンテストとは、このラジエーションカレッジの一環であり、放射線の健康影響について学び、それを多くの人に広く伝えることが目的だ。公募テーマは「学び感じたあなたの想いを広く届ける。」で、募集部門は、「キャッチコピー部門」、「グラフィックアーツ部門」「ショート動画部門」の3部門。詳細はウェブサイトへ。
10 Oct 2025
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10月7日に横浜市で開かれたOECD/NEA主催の国際シンポジウム「Information, Data and Knowledge Management for Radioactive Waste」では、関西大学の鷲尾隆教授が「AI技術 および原子力産業への その適用可能性」と題して講演を行った。鷲尾教授は長年にわたり原子力分野でAI研究を続ける第一人者であり、講演とその後の議論は会場を大いに沸かせた。冒頭、鷲尾教授は機械学習やディープラーニングなどAIの代表的手法を紹介し、「AIはデータが豊富な領域では優れた補間能力を発揮するが、未知の状況に当てはめて正しく判断することはできない」と強調した。「AIは与えられたデータの中で最適解を見つけるが、データが存在しない事象には無力だ。したがって、AIによる完全自動化を目指すべきではなく、あくまでも人間が監視・評価する“協働的ツール”として位置づけるべきだ」と述べた。続いて、ChatGPTなどに代表される生成AIの仕組みを解説。「生成AIは巨大な確率モデルであり、人間のような創造的思考をしているわけではない」と述べ、「文章をもっともらしく生成しても、未知の領域に当てはめて判断すると誤りが生じる可能性がある」と警告した。さらに、「AIの“答え”は、確率的に最も出現しやすい単語列の延長にすぎない。本質を理解して使わなければ、誤用によって安全文化そのものを損なうリスクがある」と語った。鷲尾教授はAIの応用例として、産業技術総合研究所(産総研)・日本電気株式会社(NEC)と共同で進めた人工衛星望遠鏡の迷光(stray light)分析を紹介。AIがリスク条件を自動的に探索するアルゴリズムを用い、従来のランダム探索より10万倍の効率で危険シナリオを発見できたという。そして、「この手法は、原子力発電所における想定外事故シナリオの自動抽出にも応用できる」と説明した。さらに、大阪大学との共同研究では、化学反応条件をAIが最適化することで、少数の実験データから高収率条件を導出。また、日産自動車などとのプロジェクトでは、工場の運転データをAIが解析し、シミュレーションモデルを自動補正して現場との整合性を高めたという。鷲尾教授は、「AIによるプロセス最適化や運転計画の高精度化は、原子力施設の安全運転支援にもつながる」と述べた。講演後の質疑応答では、スウェーデンの研究者から「AIは人間のCompetence(能力)を将来的に継承できるだろうか?」との質問が寄せられた。これに対し鷲尾教授は、「AIは知識やデータを扱えるが、人間の判断力や洞察力を直接再現することはできない」と明言。「重要なのはAIの出す解を“どう設計し、人間社会の意思決定に結びつけるか”であり、それは技術よりも組織や社会制度、そして人間同士の対話にかかっている」と答えた。会場からは「AIが“教育や会議を通じて能力を育てる存在”になれるのでは」という追加意見もあがったが、教授は「それは今後の哲学的・倫理的テーマ」として議論を未来に託した。米国の技術者からは、「フロッピーディスクやCD-ROMなど、古いデータ媒体が読み取れなくなった現状をどう考えるか?」との現実的な問いもあった。これに対して鷲尾教授は、「AIやデータベースの維持管理は、企業の自己責任だけに任せてはならない。将来的には政府による公的管理が必要になる」と指摘。「情報やAIモデルは“社会的インフラ”として保全されるべきだ」との見解を示した。最後に参加者から、「AIは未知領域を探索できるのか?」という質問が寄せられた。鷲尾教授は、「AIの根本的な限界は“未知を定量的に評価できない”ことにある」と説明。「AIは未知の発見を支援するが、自ら未知を創造することはできない。だからこそ、人間の科学的直感とAIの分析能力を組み合わせることが重要だ」と述べた。講演の締めくくりに鷲尾教授は、「原子力業界は安全を最優先するあまり、新技術導入に慎重すぎる傾向がある。しかし、安全性を高めるためにも、技術を“保守的に探求”する姿勢が必要だ」と述べた。そして、「AIの限界を理解したうえで、その強みを人間の判断力と結合することが、次世代の安全文化の形成につながる」と結び、会場は大きな拍手に包まれた。
10 Oct 2025
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