海外NEWS
04 Oct 2023
239
米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
国内NEWS
04 Oct 2023
362
明日まで開催「ホタテ祭り」 東京電力
海外NEWS
03 Oct 2023
767
英国 SMRの支援対象選定コンペで6社が最終候補に
国内NEWS
03 Oct 2023
643
学術会議 原子力災害対策に向けSPEEDIの活用を提言
海外NEWS
02 Oct 2023
648
カナダ先住民 SMRプロジェクトに出資
国内NEWS
02 Oct 2023
584
電事連 新テレビCM放映開始
国内NEWS
02 Oct 2023
631
「原子力拡大へ向け今こそ行動を」原産協会らが共同声明
海外NEWS
29 Sep 2023
671
ポーランド AP1000の建設に向け米社とサイト設計等で契約
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
04 Oct 2023
239
©UK Government英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は10月2日、革新的な小型モジュール炉(SMR)の開発を促し英国のエネルギー供給保証を強化するため、7月に開始した支援対象の選定コンペで6社のSMR開発企業を最終候補として発表した。同コンペの実施は、原子力発電所新設の牽引役として7月に発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当。今回このコンペで次の段階に進むことが決定したのは、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ホルテック・ブリテン社、およびウェスチングハウス(WH)社英国法人の計6社である。これら企業は年内にも、支援契約の締結に向けて英政府招聘の入札に参加する。GBNは6社のSMRの中から、建設に向けた最終投資判断(FID)が2029年頃に下され、2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものを2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定。このコンペは、DESNZが今年3月に公表したクリーン・エネルギーによる長期的なエネルギー供給保証と自給の強化に向けた新しい投資政策「Powering Up Britain」に基づいて行われている。GBNはかつてない規模とスピードで原子力の復活と拡大を進めるもので、コンペを通じてSMRの開発プロジェクトに数十億ポンド規模の官民投資を促す方針である。DESNZによると、SMRは設備が小さいため、工場での製造や迅速で低価格な建設が可能である。その一方で、政府は建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所や、HPC発電所と同型設計を採用するサイズウェルC発電所など、大型炉を備えた発電所の建設計画も引き続き支援。GBNは2050年までに総発電量の4分の1を原子力で供給するという政府の目標達成を下支えし、国内の雇用を維持しながら、欧州で最も低価格な電力卸売価格を実現する考えだ。DESNZのC.クティーニョ大臣は、「SMRなら原子力発電設備の迅速な拡大が可能であり、安価でクリーン、確実なエネルギー供給を実現できる」と指摘。さらに、高給雇用の創出と英国経済の発展も促すとしており、「このコンペで英国は世界中の様々なSMRを呼び込み、原子力技術革新を牽引する世界的リーダーとしてSMRの開発レースを主導する」と述べた。最終候補企業の一つに選定されたロールス・ロイスSMR社のC.コーラトンCEOは、「コンペの次の段階に速やかに移行して政府との契約締結に漕ぎつけるよう取り組み、2050年までに最大2,400万kWの原子力発電設備を確保するという政府の目標達成を支援したい」と表明した。同社はすでに2021年11月、PWRタイプで電気出力47万kWのSMRを英規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出。翌年3月から英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が審査を開始したことから、「その他の企業のSMRと比べて約2年先んじている」とも指摘。同社製SMRについては、すでにオランダやポーランドの事業者が関心を示しているが、コーラトンCEOは「世界中に多くのSMRを輸出していくためにも、国内契約の確保が極めて重要になる」としている。WH社は今年5月、中国や米国で稼働実績があるAP1000の電気出力を30万kWに縮小した1ループ式のSMR「AP300」を発表した。WH社は同炉ならAP1000のエンジニアリングやサプライチェーン、機器等を活用できるほか、許認可手続きも合理的に進められるため、2030年代初頭の初号機運転開始に自信を示した。同社のP.フラグマン社長兼CEOは「この機会に『AP300』が英国にとって最良の選択肢となることを実証したい」と述べた。「AP300」の建設は、ウクライナやスロバキア、フィンランドなどが検討中である。(参照資料:英政府、ロールス・ロイスSMR社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
03 Oct 2023
767
カナダなど北米大陸の東部に居住する先住民の「北岸ミクマク部族協議会(NSMTC)」は9月25日、小型モジュール炉(SMR)を開発中の英モルテックス・エナジー社と米ARCクリーン・テクノロジー社の双方のカナダ法人に出資することで、両社それぞれと合意したと発表した。カナダでは東部ニューブランズウィック(NB)州の州営電力であるNBパワー社が、州内のポイントルプロー原子力発電所内で、両社の商業規模のSMR実証炉を2030年頃までに建設することを計画している。NSMTCとこれに所属する7地区のミクマク部族コミュニティは、今回の合意に基づきモルテックス社に総額200万カナダドル(約2億2,000万円)、ARC社には総額100万加ドル(約1億1,000万円)相当の出資を行い、両社がNB州やその他の国で建設するSMRプロジェクトを支援する。モルテックス社とARC社はすでにNB州内に事務所を設置しており、州内でのSMR建設に向けて先住民を含む州民コミュニティとの協議を進めてきた。NSMTCに対しては資本出資するよう提案したのに加えて、州内の先住民に雇用や職業訓練等の機会を提供できるよう追加の手段を講じる方針である。NSMTCも、世界中の経済・社会活動に先住民が参加できるよう働きかけているサー・ディーン(Saa Dene)社の支援を受けながら、「地球とその資源に対する畏敬」という先住民の教えが2社のSMR概念に合致すると判断したことを明らかにしている。モルテックス社のSMRは電気出力30万kWの「燃料ピン型熔融塩炉(Stable Salt Reactor-Wasteburner: SSR-W)」で、既存炉の使用済燃料を燃料として使用することが可能だという。同炉は2021年5月、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が提供する「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」の第1段階を完了した。一方、ARC社が開発中の「ARC-100」(電気出力10万~15万kW)はナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉。同炉では現在、ベンダー設計審査の第2段階が行われており、NBパワー社は今年6月、ポイントルプロー発電所内での「ARC-100」建設に向けて、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」の申請書をCNSCに提出した。NSMTCのG.ギニッシュCEOは、「両社はともにSMRでクリーン・エネルギーの開発と廃棄物の削減に取り組んでおり、これは来るべき世代に継承すべき遺産という我々の価値観にも合致する」と強調している。(参照資料:NSMTC、モルテックス社、ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
02 Oct 2023
648
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は9月27日、同国初の大型原子力発電所建設に向けて、米ウェスチングハウス(WH)社およびベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結した。同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、WH社製のAP1000(PWR、125万kW)を3基建設するため、WH社らは18か月の同契約期間中、建設サイトに基づいたプラント設計を確定する。契約条項には、原子炉系やタービン系などの主要機器に加えて、補助設備や管理棟、安全関連インフラなどの設計/エンジニアリングが含まれており、両者はこの契約に基づく作業を直ちに開始。初号機の運転開始は2033年を予定している。ワルシャワでの同契約の調印式には、ポーランドのM. モラビエツキ首相をはじめ、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際問題担当次官補が同席。PEJ社のM.ベルゲル社長とWH社のP.フラグマン社長兼CEO、およびベクテル社のJ.ハワニッツ原子力担当社長が契約文書に署名した。今回の契約の主な目的は、建設プロジェクトの実施に際して順守する基準や、設計/エンジニアリング上の要件を特定すること。同発電所のスペックを満たす初期設計の技術仕様書作成など、両者は同契約の条項に沿って様々な許認可の取得で協力。同契約は、建設工事の進展に応じて次の段階の契約を結ぶ際のベースとなる。同契約はまた、建設プロジェクトがポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)や技術監督事務所(UDT)の規制に則して実施されるよう、PEJ社を支援するもの。ポーランドと欧州連合の厳しい安全基準に則して建設許可申請を行う際、同契約で実施した作業の結果が申請書の作成基盤になるほか、原子力法の要件に準じて安全解析や放射線防護策を実施する際は、事前評価を行う条項が同契約に盛り込まれている。同契約はさらに、WH社らとの共同活動にポーランド企業を交えていくと明記している。これにより、ポーランド企業の力量や需要を考慮した上で、出来るだけ多くの企業が建設プロジェクトに参加できるよう、原子力サプライチェーンの構築を目指す。このほか、同契約を通じてポーランド企業の従業員が米国を訪問し、最新原子炉の設計/エンジニアリングや運転ノウハウを習得することも規定されている。ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、ポーランド環境保護総局(GDOS)が今月19日に同プロジェクトに対して「環境決定」を発給した後、21日付でWH社とベクテル社がポーランドでの発電所設計・建設に向けて、正式に企業連合を組んだ事実に言及。「これらに続く今回の契約締結は、国内初の原子力発電所建設をスケジュール通り着実に進め、国内産業を活用しながら予算内で完成させるというポーランドの決意に沿うもの」と指摘した。同相はまた、WH社とベクテル社が米国のボーグル3、4号機増設計画でもAP1000の完成に向けて協力中であることから、「両社がボーグル・プロジェクトで蓄積した経験と教訓、先進的原子炉のエンジニアリング・ノウハウは、ポーランドのエネルギー・ミックスの根本的な再構築に生かされていく」と表明。ポーランドにおける原子力エンジニアの育成や、ポーランド経済の発展にも大きな弾みとなると強調した。WH社のP.フラグマン社長は、「ポーランドのみならず、今回の契約締結は当社とベクテル社にとっても転機となるが、安全かつ信頼性の高い原子力でエネルギー供給を保証し、脱炭素化を図ろうと考えている国々にとっても、モデルケースになる」と指摘している。参照資料:PEJ社、WH社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
29 Sep 2023
671
国際原子力機関(IAEA)の第67回通常総会が、9月25日から29日までの日程でオーストリアのウィーン本部で始まった。開会の冒頭ではIAEAのR.M.グロッシー事務局長が演説し、「世界中の世論が原子力に対して好意的に傾きつつあるが、原子力発電の利用国はそれでもなお、オープンかつ積極的にステークホルダーらと関わっていかねばならない」と表明。安価で持続可能なエネルギーによる未来を実現するには大胆な決断が必要であり、原子力も含め実行可能なあらゆる低炭素技術をすべて活用する必要があると述べた。同事務局長はまた、IAEAの進める原子力の活用イニシアチブが地球温暖化の影響緩和にとどまらず、がん治療や人獣共通感染症への対応、食品の安全性確保、プラスチック汚染などの分野で順調に進展していると表明。原子力発電所の安全性は以前と比べて向上しており、他のほとんどのエネルギー源よりも安全だと指摘した。その上で、原子力が地球温暖化の影響緩和に果たす役割と、小型モジュール炉(SMR)等の新しい原子力技術にいかに多くの国が関心を寄せているかを強調。加盟各国でSMRの活用が可能になるよう、IAEAがさらに支援を提供していく方針を示した。同事務局長はさらに、8月から福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まり、IAEAが独自に客観的かつ透明性のある方法でモニタリングと試料の採取、状況評価等を行っていると説明。この先何10年にもわたり、IAEAはこれらを継続していく覚悟であるとした。IAEAの現在の最優先事項であるウクライナ問題に関しても、ウクライナにある5つすべての原子力発電所サイトにIAEAスタッフが駐在しており、過酷事故等の発生を防ぐべく監視を続けるとの決意を表明している。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本から参加した高市早苗内閣府特命担当大臣が登壇。核不拡散体制の維持・強化や原子力の平和利用、ALPS処理水の海洋放出をめぐる日本の取組等を説明した。ウクライナ紛争については、同国の原子力施設が置かれている状況に日本が重大な懸念を抱いており、ロシアの軍事活動を最も強い言葉で非難すると述べた。また、原子力の平和利用に関しては、気候変動等の地球規模の課題への対応とSDGsの達成に貢献するものとして益々重要になっていると評価。その上で、食糧安全保障に係るIAEAの新しいイニシアチブ「アトムスフォーフード(Atoms4Food)」に対し賛意を示した。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉にともない、8月にALPS処理水の海洋放出が開始されたことについては、処理水の安全性に関してIAEAの2年にわたるレビュー結果が今年7月に示されたことに言及。処理水の海洋放出に関する日本の取組は関連する国際安全基準に合致していること、人および環境に対し無視できるほどの放射線影響となることが結論として示された点を強調した。高市大臣はまた、日本は安全性に万全を期した上で処理水の放出を開始しており、そのモニタリング結果をIAEAが透明性高く迅速に確認・公表していると説明。放出開始から一か月が経過して、計画通りの放出が安全に行われていることを確認しており、日本は国内外に対して科学的かつ透明性の高い説明を続け、人や環境に悪影響を及ぼすことが無いよう、IAEAの継続的な関与の下で「最後の一滴」の海洋放出が終わるまで安全性を確保し続けるとの決意を表明した。 同大臣はさらに、日本の演説の前に中国から科学的根拠に基づかない発言があったと強く非難。この発言に対し、「IAEAに加盟しながら、事実に基づかない発言や突出した輸入規制を取っているのは中国のみだ」と反論しており、「日本としては引き続き、科学的根拠に基づく行動や正確な情報発信を中国に求めていく」と訴えた。 ♢ ♢例年通りIAEA総会との併催で展示会も行われている。日本のブース展示では、「脱炭素と持続可能性のための原子力とグリーントランスフォーメーション」をテーマに、GX実現にむけた原子力政策、サプライチェーンの維持強化、原子力技術基盤インフラ整備、高温ガス炉や高速炉、次世代革新炉、ALPS処理水海洋放出などをパネルで紹介している。展示会初日には、高市大臣と酒井庸行経済産業副大臣がブースのオープニングセレモニーに来訪。高市大臣は挨拶の中で、ブースにおいて次世代革新炉開発を紹介することは時宜を得ているとするとともに、ALPS処理水海洋放出は計画通り安全に行われており、関連するすべてのデータと科学的根拠に基づき透明性のある形で説明し続けることが重要だと述べた。4年ぶりに行われた今回のオープニングセレモニーでは、日本原子力産業協会の新井理事長による乾杯が行われ、福島県浜通り地方の日本酒が来訪者に振舞われるなどした。(参照資料:IAEAの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
27 Sep 2023
1062
米国の国務省(DOS)は9月13日、「小型モジュール炉(SMR)技術の責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラムに基づくガーナへのさらなる支援策として、原子力分野の人材育成資金175万ドルを提供すると発表した。原子力発電を持たないガーナは現在、SMRの導入を検討している。ガーナの民生用原子力プログラムでは、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国における「SMR訓練の地域ハブ」や「中核的研究拠点」となることを目指している。原子力の導入希望国で原子力安全・セキュリティや核不拡散など原子炉の導入に必要な能力の開発を支援するため、DOSが2021年4月に日本や英国などと提携して開始したFIRSTプログラムにも、ガーナは2022年2月から参加。同年10月には、国際原子力機関(IAEA)が米国で開催した原子力閣僚会議で、日・米・ガーナの3か国はガーナのSMR導入に向けた戦略的パートナーシップを結んでいる。ガーナが建設する初のSMRとしては、米ニュースケール・パワー社製の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を複数搭載した発電設備「VOYGR」が候補炉の一つとして検討されている。そのため、3か国協力における最初のステップとして、日本政府は日米の原子力産業界がガーナの原子力関係政府機関と協力して実施しているSMR建設の実行可能性調査を支援。この調査にはニュースケール社、および同社のSMR事業に出資している日揮ホールディングス社とIHI、および米国のレグナム・テクノロジー・グループが参加している。今回の人材育成支援金により、DOSはガーナにSMRの運転シミュレーターを提供するほか、ガーナが「SMR訓練の地域ハブ」となるための学術交流や大学間の連携協力を促進。最も厳しい国際基準に準じて、原子力安全・セキュリティ等の高度な能力を備えた技術者や運転員の育成を支援する方針だ。DOS国際安全保障・不拡散局のA.ガンザー筆頭次官補代理は、「この連携協力を通じて、ガーナは国内のみならずその他のアフリカ諸国においても、脱炭素化やエネルギー供給保障の達成に資する有能な人材の育成が可能になる」と指摘。「これらの国々がクリーンで安全、安価なエネルギー源を確保できるよう、今後も支援していく」と語った。DOSによると、今年はすでにガーナとケニアの政府高官代表団がFIRSTプログラムの下で訪米し、米国との連携協力を深めるために国立研究所や運転中の原子力発電所を視察した。両国はともにFIRSTプログラムに参加しており、原子力の導入に向けて引き続き、技術協力や能力開発、人材育成等で支援の提供を受けることになる。(参照資料:在ガーナ米国大使館、米国務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
26 Sep 2023
634
ポーランド環境保護総局(GDOS)は9月19日、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が計画する同国初の大型原子力発電所(合計出力375万kW)建設に対し、「環境条件に関する意思決定(環境決定)」を発給した。これは、原子力発電所の建設に向けた重要な行政認可手続きの一つ。同決定により、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区における原子力発電所の建設・運転にあたり、環境保護上の要件などが確定したことになる。今後建設サイトへの投資決定や建設許可申請を行う際は、「環境決定」に明記された条件等と整合性を取る必要があり、建設許可申請時には改めて環境影響評価の実施が義務付けられることになる。気候環境省のA.ギブルジェ-ツェトヴェルティンスキ次官は、「環境防護の責任機関であるGDOSの専門家が評価した結果、CO2を大量に排出する我が国の経済活動に、ポーランド初の原子力発電所が環境面のプラス効果をもたらすことが明らかになった」と強調している。PEJ社はポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2040年頃までに国内複数のサイトで最大6基の大型炉(合計出力600万~900万kW)の建設を計画中。2021年12月に最初の3基、合計375万kWの立地点としてルビアトボ-コパリノ地区を選定した。これら3基に採用する炉型として、ポーランド政府は2022年11月にウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を閣議決定。今年7月には、気候環境省がこれら3基の建設計画に「原則決定(DIP)」を発給した。これに続いてPEJ社は翌8月、AP1000建設サイトとして同地区の正式な承認を得るため、ポモージェ県知事に「立地決定」を申請している。 「環境決定」を取得するにあたり、PEJ社は2022年3月末、GDOSにポモージェ県内の環境影響評価(EIA)報告書を提出した。原子力発電所の建設・運転にともなう環境上の利点を確認するため、GDOSが分析した文書は1万9,000頁を越えたという。また、PEJ社はその際、ルビアトボ-コパリノ地区のほかに建設候補地として名前が挙がっていたジャルノビエツ地区(クロコバとグニエビノの両自治体が管轄)についても、原子力発電所の建設と運転が及ぼす影響等を分析していた。さらに、ポーランド政府はこの件に関する国民の意見を聴取するため、今年7月から8月にかけて国内協議を開催したほか、近隣の14か国を交えた越境協議を2022年9月から今年7月まで実施。「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に基づく諸手続きの一環として、ポーランド政府はこれらすべての国と議定書を締結している。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「原子力でエネルギー・ミックスを再構築するという我が国の計画は欧州で最も意欲的なものであり、様々な課題への取組と急速な変化をともなうが、だからこそ大規模で複雑なこの投資事業をスケジュール通りに進めることが重要になる」と指摘した。ポーランドではこのほか、政府のPPEJを補完する大型炉プロジェクトとして、国営エネルギー・グループ(PGE)とエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力し、中央部のポントヌフで韓国製大型PWRの建設を計画中である。(参照資料:ポーランド政府(ポーランド語)、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
25 Sep 2023
682
カナダのアルバータ州は9月19日、州内の石油・天然ガス総合企業であるセノバス・エナジー(Cenovus Energy)社が実施する「オイルサンド回収事業への小型モジュール炉(SMR)の適用可能性調査」に、州の「技術革新と温室効果ガスの排出削減基金」の中から700万カナダドル(約7億7,000万円)を助成すると発表した。アルバータ州は天然資源が豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスなどの資源に恵まれているが、セノバス社が同州北部で手掛けるオイルサンド(からの超重質油)回収事業では非常に多くの温室効果ガスが排出される。このため州政府は、総額2,670万加ドル(約29億3,600万円)を要するというセノバス社の複数年の調査に資金協力し、州内のオイルサンド事業が排出するCO2の削減にSMRを安全かつ経済的に適用可能か、また、産業界がSMR建設を決定した場合の規制承認手続など必要な情報を探る。同州ではすでに、これに向けた規制枠組の構築準備が進められている。オイルサンドからビチューメンのような超重質油を回収するには、油層内に水蒸気を圧入し、その熱で超重質油の粘性を下げて重力で回収するという方法が複数存在する。このうち回収率の高い「スチーム補助重力排油法(SAGD)」については、カナダのエンジニアリング・開発コンサルティング企業であるハッチ(Hatch)社が今年8月、アルバータ州の公的研究イノベーション機関である「アルバータ・イノベーツ」やセノバス社のために、SMRをSAGDに活用した場合の実行可能性調査(FS)報告書を提出した。州政府によれば、この調査結果は、産業界から排出されるCO2の長期的な削減方法としてSMRが有効か見極めるための最初の一歩。州政府としては、セノバス社の今回の詳細調査に協力し、今後の事業化可能性に関する議論を本格化させたい考えだ。アルバータ州政府のR.シュルツ環境・保護地域担当相は、「数年前まで原子力を産業用に拡大利用する発想は後回しにされてきたが、最早そうではない」と断言。「SMRには当州のオイルサンド事業に熱と電力を供給するポテンシャルがあり、同時にCO2の排出量を削減することで、当州の将来的なエネルギー供給の選択肢になり得る」と述べた。また、州政府の助成金は、「アルバータ排出量削減機構(ERA)」を通じてセノバス社に提供される予定で、ERAのJ.リーマーCEOはSMRについて、「オイルサンド事業のみならず、異なる様々な産業用にも無炭素なエネルギーを供給できる」と指摘した。セノバス社のR.デルフラリ上級副社長は、「当社の事業から排出されるCO2を2050年までに実質ゼロにするため、複数の有望技術を検討模索中だがSMRはその中でも有望だ」と表明している。カナダでは、オンタリオ州とニューブランズウィック州、サスカチュワン州、およびアルバータ州の4州が2022年3月、SMRを開発・建設していくための共同戦略計画を策定。アルバータ州はその後、SMR開発を進めているカナダのテレストリアル・エナジー社や米国のX-エナジー社、ARCクリーン・テクノロジー社、韓国原子力研究院(KAERI)などと、それぞれのSMRの州内建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
22 Sep 2023
1171
©UK Government英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は9月18日、EDFエナジー社がイングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各167万kW)建設プロジェクトに対し、民間部門からの投資募集プロセスを開始すると発表した。同プロジェクトの実施に必要な資金を調達するため、その第一段階として、潜在的投資家である企業や個人に予め資格審査を受けてもらう方針。EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とSZCプロジェクトを50%ずつ保有する英政府は、EDFエナジー社傘下のプロジェクト企業であるサイズウェルC社(※今年6月にNNB GenCo社から社名変更)への投資に関心を持つ有望な企業らに、関心表明の登録と選定要件の詳細を一定程度盛り込んだ「事前の資格審査用質問票(PQQ)」の入手を要請しており、10月9日までPQQへの回答提出を受け付ける。回答書の評価結果次第で、第2段階としてサイズウェルC社株を入手する入札への参加資格が与えられる。ただし、その参加交渉に入る際も、候補企業らは大規模原子力発電所も含めた大型インフラ建設プロジェクトの実施経験など、いくつかの重要基準を満たしていることを実証するよう求められる。英政府は2022年11月、SZCプロジェクトに最大6億7,900万ポンド(約1,240億円)の直接投資を行うと発表。同プロジェクトの半分を保有した上で、今後は同プロジェクトへの出資を希望する第三者を募る方針を明らかにしていた。当時原子力政策を担当していたビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)によると、同プロジェクトは「規制資産ベース(RAB)モデル」((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を通じて資金調達を行う最初の原子力発電所建設計画。今年2月にBEISから原子力政策を引き継いだDESNZは今回、「RABモデルを通じた民間投資の呼び込みは、電力消費者や納税者にとって価値の高い結果を生む可能性がある」と評価しており、サイズウェルC社のみならず民間投資家側にも、プロジェクトを建設段階に進める自信と意欲をもたらすと強調している。DESNZはSZCプロジェクトを、英国が目指すエネルギー供給保障とCO2排出量の実質ゼロ化の両立において不可欠と考えている。従来の大型炉や新しい技術である小型モジュール炉(SMR)も含め、英国の原子力発電を活性化させることで、低コスト・低炭素な安定した電力供給システムを長期的に確保し、2050年までに英国の総発電量の最大25%を原子力で供給していく考えだ。このため、DESNZは直接投資として投入した約7億ポンドに加えて、建設サイトの準備作業を加速するため、今年7月と8月に追加で合計5億1,100万ポンド(約934億円)を拠出すると発表している。9月にDESNZのトップに就任したC.クティーニョ・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は、「SZCプロジェクトで今後の世代にクリーンで価格も手ごろな電力を提供できるだけでなく、数千人規模の雇用が創出され、我が国のエネルギー供給保障を強化する一助になる」と指摘。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相も、「政府による最初の直接投資に続いて、有力な民間投資家が国家インフラの重要部分の実現に向けて、サイズウェルC社に新たな知見や経験をもたらしてくれることを期待する」と述べた。(参照資料:英政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
20 Sep 2023
709
韓国の現代E&C(現代建設)社は9月12日、ポーランドでの新規原子力発電所建設プロジェクト推進に向け、ポーランドの建設産業雇用者協会(PZPB)や国立原子力研究センター(NCBJ)などと協力覚書を締結した。ポーランドの様々な関係機関や企業と協力ネットワークを構築することで、ポーランドのみならず東欧全体で原子力などエネルギー・インフラの分野に進出していく方針。PZPBと結んだ「新規原子力事業協力のための了解覚書」では、ポーランドの建設関係政策や業界動向といった現地情報を入手し、技術面での交流を深める考えだ。同覚書は、ポーランド南部のクリニツァで開催されていた経済フォーラムへの、韓国官民合同使節団参加にともない、首都ワルシャワで締結された。調印は現代E&C社のユン・ヨンジュン社長兼CEOとPZPBのD.カジミエラク副会長が行った。NCBJとの「原子力発電所の研究開発と研究炉協力に関する了解覚書」も同じ日に結ばれており、両者は原子力発電所と研究炉分野の協力に加えて、原子力技術とその安全性、人材交流など全般的な協力体制の構築で合意している。これらを通じて現代E&C社はポーランドの原子力市場に参入する一方、同国の大手建設企業であるERBUD社およびUNIBEP社とも、新しい再エネ、新空港や都心インフラの整備、スマートシティ分野で協力するための業務契約を締結した。関係報道によるとUNIBEP社は、原子力プロジェクトについても現代E&C社と協力する意向を表明。現代E&C社はこれらの企業との連携協力に際し、東欧への進出の拠点となる現地事務所の設立もワルシャワで進めている。現代E&C社は、韓国で数多くの原子力発電所建設に携わった実績があり、アラブ首長国連邦(UAE)への大型原子炉の初輸出事業にも参加。これらに基づき、小型モジュール炉(SMR)開発や原子力発電所の廃止措置、使用済燃料の中間貯蔵施設建設など、原子力関係の全事業分野に対応・管理する能力の獲得を目指しており、世界的な原子力発電設備メーカーと戦略的な協力体制を固めている。放射性廃棄物の貯蔵設備やSMRを開発している米ホルテック・インターナショナル社とは特に、2021年11月に事業協力契約を締結しており、同社の主要EPC(設計・調達・建設)契約企業としてホルテック社製SMR「SMR-160」の商業化に向けた標準モデルの完成に協力。今年4月には、韓国の政府系輸出信用機関である韓国貿易保険公社(K-SURE)と韓国輸出入銀行(KEXIM)がそれぞれ、現代E&C社とホルテック社の企業チームと個別に協力協定を締結している。今回のポーランド訪問を通じて現代E&C社は、ポーランドに経済的発展のポテンシャルを確認。両国間の相互交流を促進してポーランドのエネルギー・インフラ拡充に寄与するとともに、民間レベルの連携協力を強化して実質的な成果を上げたい考えだ。ポーランドは政府の原子力プログラムとして、国内の複数のサイトで2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することを計画。2022年11月には最初の3基、小計375万kW分の採用炉型として、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRのAP1000を選定した。同国ではこのほか、政府のこのプログラムを補完する計画として、PGEグループとエネルギー企業のZE PAK社が韓国水力・原子力会社(KHNP)などとの協力により、中央部ポントヌフで韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」の建設に向けた活動を進めている。(参照資料:現代E&C社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
19 Sep 2023
640
米国のホルテック・インターナショナル社は9月12日、ミシガン州で2022年に永久閉鎖となったパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)を再稼働させるため、子会社を通じて、同原子力発電所が発電する電力を州内のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)に長期にわたり販売する契約を締結した。ホルテック社は今年2月、同発電所の再稼働に必要な融資依頼を米エネルギー省(DOE)に申請している。米原子力規制委員会(NRC)のスタッフとは、すでに複数回の公開協議を通じて、同発電所の運転再認可に向けた規制手続について議論を重ねており、「パリセード発電所は閉鎖後に再稼働を果たす米国初の原子力発電所になる」と強調。再稼働を必ず実現させて、ミシガン州の各地に無炭素エネルギーによる未来をもたらしたいと述べた。また、長期停止中の原子力発電所を数多く抱える日本や脱原子力を完了したドイツでも、同様の流れになることを期待するとした。米国では、独立系統運用者が運営する容量市場取引きの台頭など、電力市場の自由化が進展するのにともない、電力事業者間の従来通りの電力取引をベースとしていたパリセード発電所の経済性が悪化。2007年に同発電所をコンシューマーズ・エナジー社から購入したエンタジー社は2022年5月、当時の電力売買契約が満了するのに合わせて、合計50年以上安全に稼働していた同発電所を閉鎖。その翌月には廃止措置を実施するため、同発電所を運転認可とともにホルテック社に売却していた。ホルテック社は、原子力発電所の廃止措置のほか、放射性廃棄物の処分設備や小型モジュール炉(SMR)の開発など、総合的なエネルギー・ソリューションを手掛ける企業。同社によると、近年CO2の排出に起因する環境の悪化から各国が炭素負荷の抑制に取り組んでおり、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となった。パリセード発電所の購入後、ホルテック社は、DOEが既存の原子力発電所の早期閉鎖を防止するため実施中のプログラムに同発電所を対象に申請書を提出。これを受けてミシガン州のG.ホイットマー知事は2022年9月、この方針を支持すると表明していた。ホルテック社が今回結んだ電力売買契約では、パリセード発電所が発電する電力の3分の2をウルバリン電力協同組合が買い取り、同組合に所属する他の電力協同組合を通じてミシガン州主要地域の家庭や企業、公立学校等に配電する。残りの3分の1は、ウルバリン協同組合が協力中のフージャー・エナジー(Hoosier Energy)社が買い取る予定。なお、今回の契約では、ホルテック社がパリセード原子力発電所敷地内で、出力30万kWのSMRを最大2基建設するという契約拡大条項も含まれている。これらを追加建設することになれば、ミシガン州では年間約700万トンのCO2排出量が削減される見通し。ホルテック社の説明では、パリセード発電所の再稼働に対する地元コミュニティや州政府、連邦政府レベルの強力な支持は、CO2の排出削減における原子力の多大な貢献に基づいている。ホルテック社で原子力発電と廃止措置を担当するK.トライス社長は、「パリセード発電所を再稼働させることで、ミシガン州は今後のエネルギー需要を満たしつつ地球温暖化の影響を緩和できるほか、高収入の雇用を数百名分確保し地方自治体の税収を拡大、州経済の成長にも貢献できる」と指摘している。(参照資料:ホルテック社、ウルバリン電力協同組合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
15 Sep 2023
7329
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月12日、ウェスチングハウス(WH)社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。今後10年以内に国内初号機の設置を目指すとともに、将来的には同炉設備の国内製造も視野に入れた内容。差し当たり、具体的な建設契約の締結に向けた作業や許認可手続き、国内サプライチェーン関係の協力を進めるため、共同作業グループを設置する。「AP300」は100万kW級PWRであるAP1000の出力を30万kWに縮小した1ループ式のコンパクト設計。AP1000と同様にモジュール工法が可能なほか、受動的安全系や計装制御(I&C)系などは同一の機器を採用している。ウクライナは2050年までのエネルギー戦略として、無炭素なエネルギーへの移行とCO2排出量の実質ゼロ化を目指している。このため原子力発電の増強を進めており、引き続き新しい大型炉を建設していく一方、ウクライナにとって有望な選択肢であるSMRの設置も進める考えだ。WH社との協力については、エネルゴアトム社が2021年11月、フメルニツキ原子力発電所で国内初のWH社製AP1000を建設するとし、同社と契約を締結。翌2022年6月には、国内で稼働する全15基のロシア型PWR(VVER)用にWH社製の原子燃料を調達し、AP1000の建設基数も9基に増やすための追加契約を結んだ。15基中13基の100万kW級VVER(VVER-1000)については、すでにWH社製原子燃料の装荷が進んでいるが、エネルゴアトム社は今月10日、残り2基の44万kW級VVER(VVER-440)に初めてWH社製の原子燃料を装荷している。WH社のP.フラグマン社長兼CEOは、「原子燃料の調達からプラントのメンテナンス、発電に至るまで、長期的に信頼されるパートナーとしてウクライナにクリーンで確実なエネルギーをもたらせるよう貢献したい」とコメントしている。今年5月に発表した「AP300」については、同社は稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000に基づく炉型である点を強調しており、実証済みの技術を採用しているため許認可手続きが円滑に進むことや、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用できると指摘した。同社の計画では、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から「AP300」の設計認証(DC)を取得し、2030年までに米国で初号機の建設工事を開始、2030年代初頭にも運転を開始するとしている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
14 Sep 2023
871
東京電力は、安心・安全な北海道・三陸常磐エリアの水産物をPRし、国内での消費拡大を推進すべく、JR御徒町駅前・おかちまちパンダ広場(東京・台東区)で、「緊急プロジェクト! ホタテ祭り in おかちまちパンダ広場」を10月5日まで開催している。日本の国産水産物は、中国政府による輸入停止措置の影響により大きな打撃を受けている。現在、特に、国産ホタテが行き場を失っており、漁業関係者を中心に損害が発生している状況だ。今回のイベントでは、北海道産ホタテを中心に加熱調理し販売。「1トン相当のホタテ(殻付きで約5,000個)を食べつくす!」を目標に、ホタテに合うお酒として、福島県産の地酒やクラフトビールも提供。立食も可能だが、ゆっくりと北海道・三陸常磐の味を堪能してもらえるよう、テーブル席(要予約)が用意されている。ホタテは定番の浜焼き屋台販売がメイン。会場直近のJR御徒町駅高架ホームにまで、熱々の香ばしさが漂い、背中にホタテ貝を描いたネイビーブルーのTシャツに身を包むスタッフらの威勢の良い呼び込み声が聞こえてくる。東京・六本木のスペイン料理店「アサドール エル シエロ」もキッチンカーを出店し洋食風に調理し販売。イベント初日の3日、16時の開場前から入場待ちの行列ができ、開始後2時間ほどで用意されたホタテは完売する大盛況ぶりだった。開催時間は、4日が16~21時、5日が16~20時(ラストオーダー19時30分)。雨天決行・荒天中止。〈詳細は こちら〉
04 Oct 2023
362
日本学術会議の地球惑星科学委員会(委員長=田近英一・東京大学大学院理学系研究科教授)は9月26日、より強靭な原子力災害対策に向け「放射性物質拡散予測の積極的な利活用を推進すべき」との見解を発表した。見解では、福島第一原子力発電所事故の発生直後、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)((原子力施設から大量の放射性物質が放出された場合や、その恐れがある事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度、および被ばく線量等の環境影響を、放出源情報、気象条件、地形データをもとに迅速に予測するシステム))の情報が住民避難などの防護措置に活用できなかったことをあらためて指摘。事故を教訓として、「放射性物質の拡散に伴う災害を軽減・回避する手立てについて、国、原子力規制委員会、自治体、科学者コミュニティは、様々な取組を通して模索してきたが、解決への道のりが見出せたとは言いがたい」と、SPEEDIを有効活用する必要性を示唆している。その上で、「国民の安全を確保するためには、放射性物質の拡散に関するあらゆる科学情報を収集し、防護措置の判断に活用することが必要不可欠」と強調。アカデミアとして、放射性物質の拡散に対して国民の安全を確保するための防護策は、モニタリングデータだけでなく、数値シミュレーションによる予測から得られる科学的な情報と知見を最大限に活用して策定規制委員会は現行の「原子力災害対策指針」を改訂し、拡散予測情報の活用指針を統一し、責任の所在を明らかにした上で、最適な防護策を策定・施行規制委員会は科学者・専門家の能力を最大限に活用国、規制委員会、自治体、科学者コミュニティ、市民は互いに協力し、市民の視点から防護策を策定し、緊急時に確実に運用するため準備――すること、と提言している。規制委員会では、2012年の発足以降、事故の教訓を踏まえ、「原子力災害対策指針」および、これに付随するマニュアル・ガイドラインの見直しを進めてきたが、気象予測の不確かさから、緊急時における避難など、防護措置の判断に当たって、SPEEDIによる計算結果は使用しないこととしている。一方で、原子力施設の立地地域からは、複合災害を見据え、SPEEDIの有効活用を求める声もあがっていた。SPEEDIは、放射性物質の拡散予測だけでなく、2000年の三宅島噴火時に、火山性ガスの分析にも活用できることが検証されている。日本原子力研究開発機構でSPEEDIの開発に長く取り組んできた茅野政道氏(現在、量子科学技術研究開発機構理事)は、福島第一原子力発電所事故後、国外事故時や緊急時海洋モニタリングに備え、世界版SPEEDI、SPEEDI海洋版の開発も提唱してきた。
03 Oct 2023
643
電気事業連合会は、電気の安定的な供給確保の必要性とカーボンニュートラルの取組を紹介する2種類の新テレビCM、「持続可能な電気の供給」篇と「効率的な電気の利用」篇(各30秒)を、10月1日より全国で放映開始した。〈電事連発表資料は こちら〉新CMは、電事連が昨秋に制作したテレビCMに続き、若手女優の今田美桜さんを起用。今回は、「エネルギーから、明日をおもう。」というキャッチコピーのもと、明治時代と現代の教師に扮した2人の今田さんが、各篇CMで、「持続可能な電気の供給」、「効率的な電気の利用」をテーマに、教室の黒板やプロジェクターを使って、過去と現在の電気の価値や使われ方の違いを説明する。「持続可能な電気の供給」篇では、「今では、暮らしに欠かせない存在に」と、電気の重要性を強調。エネルギー資源の8割を海外に頼る日本の電力供給の現状から、安全確保を大前提とした原子力、火力、再生可能エネルギーをバランスよく活用する必要性を円グラフ「2030年エネルギーミックス」を通じて説く。2つのCMを通じ、「私たちの暮らしに欠かせない電気を、より身近に感じもらう」のがねらい。また、電事連では、新CMに加え、若い世代への関心喚起に向け、今田さんをモデルに日々の生活の視点から電力安定供給や地球温暖化対策の取組をPRするWEBコンテンツ「ふつうの日々」も9月29日より公開している。今夏は記録的な暑さとなり、特に東京エリアで電力需給ひっ迫が心配されたが、追加供給力対策や節電効果により乗り切ることができた。9月27日に行われた総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策分科会では、今冬の電力需給見通しについて、最も厳しい北海道、東北、東京の各エリアでも、予備率が1月は5.2%、2月は5.7%と、全国エリアで安定供給に必要な3%を確保できる見込みが示されている。
02 Oct 2023
584
日本原子力産業協会は9月28日、フランスで開催された「新しい原子力へのロードマップ」会合に参加。各国の原子力産業団体が連名で、気候変動の緩和およびエネルギー・セキュリティの強化へ向け、原子力発電の迅速かつ大規模な導入を強く訴える共同ステートメントを採択、署名した。同会合は、OECD原子力機関(NEA)と仏エネルギー移行省の共催で、パリのOECD本部で開催された官民のハイレベル会合。今回が初開催となる。OECD加盟各国政府並びに各国の原子力関連団体が参加。共同ステートメントに署名したのは、日本原子力産業協会の他、米原子力エネルギー協会(NEI)、世界原子力協会(WNA)、カナダ原子力協会(CNA)、英原子力産業協会(NIA)、欧州原子力産業協会(nucleareurope)、仏原子力産業協会(Gifen)、韓国原子力産業協会(KAIF)、CANDUオーナーズグループ(COG)の計9団体。同ステートメントは、今年の4月に札幌で「G7気候・エネルギー・環境相会合」に併せ、原産協会らが採択した同種のステートメントをベースとしている。今回のステートメントは参加団体が増えただけでなく、対象をG7からOECD加盟国へ拡大。OECD加盟国の原子力産業界の決意を表明するとともに、各国政府や、11月から始まる国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に参加する世界のリーダーたちへ向けた要望を、とりまとめた。具体的には、官民が連携して取り組む重要事項として既存炉の最大限活用新規炉導入の加速国際協力によるサプライチェーンの構築原子燃料分野のロシア依存低減原子力部門におけるジェンダーバランスの改善などを指摘。そして、2050年までの炭素排出量実質ゼロ目標を達成するには、原子力発電設備容量を現在の2~3倍に拡大する必要があるとの認識の下、原子力への投資を促進するよう市場環境を整備規制基準の標準化および効率化原子力を他のクリーンエネルギー源と同等に、気候変動緩和策として認めることなどを要望している。近年、世界の原子力産業界の間では、エネルギー・セキュリティの確保と、CO2排出量の実質ゼロ化の両立に、原子力が果たす役割を世間に周知しようと、個別ではなく国際間で連携して活動する風潮が主流となっている。先月ロンドンで立ち上げられた「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブも同様の流れだ。11月のCOP28では、国際原子力機関(IAEA)だけでなく、世界の原子力産業界も共同でブースを立ち上げる計画であり、原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指している。
02 Oct 2023
631
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、教育関係者(教員を目指す学生も含む)を対象としたワークショップを、9月16日の福岡市会場を皮切りに開始した。「高レベル放射性廃棄物の最終処分」について、学校の授業で取り上げてもらうことを狙った同WSの開催は、10年ぶりとなる。地層処分事業は、まだ多くの国民に知られているとは言いがたい。しかも長期にわたることから、次世代層にも知ってもらうため、学校教育が一つのカギとなる。今回、NUMOでは、同WSを、教育現場からの「『エネルギー自給率の向上や脱炭素化を図っていく流れの一つに地層処分がある』といったストーリー性のある授業が必要」との声に応える形で企画。初回のWSに参加したのは、福岡県内の学校教員ら8名。専門家による講演、NUMOからの情報提供をもとに、グループワークを通じ意見交換が行われた。講演ではまず、世界のエネルギー動向を巡り「日本がエネルギーとどう向き合う必要があるのか」、理科教育に関連し「エネルギーに関する単元がSDGsの目標とどう関連するのか」などと問題提起。これを受け、グループワークでは、今後のエネルギー教育に関し「すべての教科を横断的して扱うべきテーマだ」との指摘があった。さらに、NUMOからは、地層処分について、次世代層への教育を支援する意義、支援内容などについて説明。その中で、NUMOは、教育支援ツールの一つとして、ボードゲーム「地層処分って何だろう? ジオ・サーチゲーム」を紹介し、同ゲームのプレイ体験のあるWS参加者からは、「異なる意見を交わし合い議論するには非常によい教材。是非授業で活用してみたい」といった期待の声もあがった。一方で、「地層処分だけに多くの時間を割くのは難しい」と指摘する参加者も。こうした意見交換を通じて、授業での地層処分問題に関する取扱いに向け、事情の異なる教員らが交流する必要性などが浮き彫りになった。初回のWSを終えて、NUMOの担当者は、「エネルギー教育では、発電と消費については比較的授業で取り扱いやすいが、高レベル放射性廃棄物については、学習指導要領に載っていないのが現状。このようなWSを通して、少しでも関心を持ち授業で扱ってもらえたらありがたい」と、話している。同WSは引き続き、愛媛県松山市(9月30日)、福井県(日程未定)と、開催される運び。
29 Sep 2023
526
筑波大の陽子線治療施設、累計の治療患者数は7,000人を超える(医用財団ホームページより引用)筑波大学は9月25日、画像情報から放射線治療中の臓器の三次元的な動きを予測する支援技術を開発したと発表した。〈筑波大発表資料は こちら〉放射線がん治療は、早期の社会復帰が可能な非侵襲的医療として期待が高まっている一方、周辺の正常な臓器にも影響が及ぶ可能性があり、近年のMRI撮影による二次元画像を取得しながらの治療でも、動きのある病変組織への適切な照射が治療成績の向上に向け課題となっている。同学では、「呼吸のように規則正しい動きは、機械学習などを用いて予測できるが、周辺臓器との接触などによる不規則な動きは予測が困難」なことから、放射線治療中、リアルタイムで3方向から患部付近の断面を撮影し、周辺臓器との位置関係から各臓器の三次元的な動きを予測する技術を開発した。具体的には、治療前、患者本人の対象臓器および周辺臓器を含む三次元モデルを構築し、コンピューターを用いた「接触シミュレーション」と呼ばれる手法で三次元的な動きを予測。これを、二次元画像の撮影ができる放射線治療装置と併用することで、患部の位置をより正確に把握し正常な臓器への影響を防ぐというもの。今回、同技術の検証のため、症状が出にくく進行が速いことから「がんの王様」とも呼ばれるすい臓がんに着目。20症例の公開MRIデータについて、すい臓の位置を計算した結果、誤差は、1方向のみの二次元画像では5.11mmだったのに対し、3方向を用いた場合は2.13mmと、精度の向上が確認された。筑波大では、陽子線治療で多くの実績を積んでいるが、今回の新技術に関し、「体内での臓器は常に動いており、そのような動きを正確にとらえることは、放射線治療を始めとする、より正確で安全な治療技術の確立につながる」と、実用化に向け期待を寄せている。
27 Sep 2023
655
宮城県は9月27日より、女川町全域を対象に、原子力災害時の住民避難を支援するスマートフォンアプリの運用を開始する。〈宮城県発表資料は こちら〉ポケットサイン社が手がけるマイナンバーカードを活用した防災デジタル身分証アプリ「ポケットサイン防災」によるもので、災害発生時には、マイナンバーカードの情報をもとに、住民の年齢・性別・住所などに応じた避難指示を、スマートフォンを通じ瞬時に通知。住民は迅速かつ正確に避難指示を受取り避難に移れる。発災時、住民は避難所の二次元コードをスマートフォンで読み取りチェックイン。自治体はいつ、誰が、どこにチェックインしたかをリアルタイムに把握。さらに、アンケート機能を活用し避難所のニーズを即座にキャッチ。チェックイン時に発信された避難者の数や特性のデータと組み合わせることで、避難所の状況を一目で確認できる。宮城県は8月に同社と原子力防災システムの契約を締結。同契約のもと、東北電力女川原子力発電所での重大事故を想定した「ポケットサイン防災」の実証試験が住民も協力し行われた。その結果、避難車両に付着した放射性物質の検査場において、避難車両10台の通過にかかる時間が、アプリ方式では約9分と、従来手法の約15分より約4割短縮。実証試験に参加した村井嘉浩知事は、「アプリは圧倒的に便利で早く、誰が通過したかが瞬時にわかる」と評価している。原子力防災向けの機能として安定ヨウ素剤の服用に関する説明も送信。宮城県では、買物に利用できるポイント付与により口コミを通じた普及を図る考えだ。運用地域については、発電所から概ね30km圏の地域に順次拡大される予定。国内では依然と大規模災害が後を絶たないが、2021年に東日本大震災発生10年を機に日本学術会議が開催した学協会連携シンポジウムでは、避難所の光景が1959年の伊勢湾台風の頃からほとんど変わっていないことが指摘されている。複合災害、感染症対策、プライバシー保護など、災害対応における新たな課題が顕在化する昨今、こうした通信ネットワーク技術により避難所運営に変革がもたらされることが期待できそうだ。
26 Sep 2023
616
日立製作所は9月20、21日、顧客・ビジネスパートナーとの「協創に向けたきっかけ作りの場」とする日立グループのイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」を、東京ビッグサイト(東京・江東区)で開催。4年ぶりの対面開催となった今回は、有識者を交えた討論、最新の技術開発の成果を紹介する展示など、60以上のセッション・ブースが設けられ、人気のコーナーには入場待ちの行列ができるほどの盛況ぶりだった。21日に行われたセッション「脱炭素社会における原子力の役割」(モデレーター=間庭正弘氏〈電気新聞新聞部長〉)では、日立製作所原子力ビジネスユニットCEOの稲田康徳氏他、東京大学公共政策院特任教授の有馬純氏、脳科学者の中野信子氏が登壇。カーボンニュートラル実現に向けた原子力の果たす役割、人材確保・科学リテラシーに係る課題を巡り意見交換がなされた。稲田氏は、エネルギーに由来するCO2排出量の各国比較データを示し、日本のエネルギー需給における脱炭素化の課題として、「化石由来の電源を減らすことが大変重要」と強調。さらに、東京大学との共同研究による試算から、今後のデジタル社会の発展に伴い「日本の電力需要は現在の1.5倍程度となる」可能性を示した。一方で、「天候の影響を大きく受ける再生可能エネルギーは、電力系統の安定性からも課題がある」と指摘。その上で、原子力発電のメリットについて、「運転時にCO2を排出しないという基本的価値に加え、天候の影響を受けず、昼夜を問わず大規模な電力を安定的に供給できる。ベースロード電源として最適」と述べた。日立の取り組む新型炉開発について、稲田氏は、米国GE日立と共同開発する電気出力30万kW級小型炉「BWRX-300」と、135~150万kWの大型炉「Hi-ABWR」(Highly innovative ABWR)を紹介。それぞれの技術的・経済的特長・開発スケジュールについて説明した。科学技術行政に係る取材経験の豊富な間庭氏は、“Innovation”を切り口に原子力に対する人々の理解に関し問題提起。これに対し、脳科学・心理学で多くの著書を有する中野氏は、社会学的観点から、人々の「不安」に関しては、それを背景とする数多くの映画・小説が発表され「エンターテイメントにもなっている」とする一方、「安全」に関しては、「日常不可欠のことでまったくエンターテイメントになっていない」と述べ、「実際、エンターテイメントは人々の『不安』をもとに創られている」と指摘。さらに、「正しく怖がる」科学リテラシーの重要性について、昨今の新型コロナに係る情報流布にも言及し、「残念ながら十分とは言えない。現代社会を生きていくには不可欠のもの」と強調し、理科教育、教員の育成、いわゆる「大人の学び直し」の必要性などを訴えた。展示会場ではデモも、写真は人間が行うような複雑作業を高放射線環境下で実現する「筋肉ロボット」また、間庭氏は、原子力産業のサプライチェーン維持・強化の観点から、人材育成の問題を提起。これに対し、高等教育の立場から有馬氏は、「日本の学生は講義を聴くだけで、人前で発言しない傾向にある。一方で、海外の学生は子供の頃から『議論しながら確かめていく』マインドが養われている」と、コミュニケーション能力の課題をまず指摘。さらに、稲田氏は、バーチャル空間やシミュレーションなど、デジタル技術を活用した技術伝承の取組を紹介したほか、海外プロジェクトへの参画を通じ若手に対する原子力技術への関心喚起を図っていく考えを示した。
22 Sep 2023
1082
関西電力の高浜発電所2号機(PWR、82.6万kW)が9月20日、およそ12年ぶりに発電を再開した。同社の美浜3号機、高浜1号機に続く、国内3基目の40年超運転となる。〈関西電力発表資料は こちら〉高浜2号機は、同1号機より丁度1年後となる1975年11月14日に、国内10基目の商業用原子炉としてデビュー。運転開始からの期間は現在、国内で2番目に長い。高浜1・2号機では、ほぼ並行して新規制基準適合性に係る審査が進行。両機とも、2016年に原子炉設置変更許可に、2021年には再稼働に向けた地元同意に至った。1号機は先行して2023年8月2日に発電を再開し、28日には営業運転復帰。2号機も、テロ対策の「特定重大事故等対処施設」が8月31日に運用を開始したことから、9月15日に原子炉を起動した。高浜2号機は今後、調整運転、原子力規制委員会による最終検査を経て、10月16日にも営業運転に復帰する。同機の発電再開により、関西電力では、所有する原子力発電プラント計7基・657.8万kW(美浜3号機、高浜1~4号機、大飯3・4号機)がすべて再稼働(発電再開)した。*理事長メッセージは、こちら をご覧ください。
21 Sep 2023
903
資源エネルギー庁の村瀬佳史長官がこのほど、記者団のインタビューに応じ、今後の資源・エネルギー行政の推進に向け抱負を語った。この7月、折しもエネ庁設立から半世紀となる節目の年に就任した村瀬長官は、1973年の第一次石油危機を振り返りながら、「同じように、エネルギー安全保障という意味で、大きな危機・転換点を迎えている時期に着任した。正に歴史を感じており、非常に重いミッションを負っている」と強調。その上で、エネルギー政策における最大の課題として、「日本が再び50年来の大きな危機に瀕している中で、エネルギーの安定供給をいかに確保していくのか」と指摘。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、「従来の常識では考えられないような国際経済上のリスクが明らかとなっており、エネルギーを巡る国際的な構造は大転換を迎えている」と、あらためて危機感をあらわにした。さらに、同氏は、「カーボンニュートラルへの挑戦」を標榜。「各省庁が推進する取組を総動員し、産業・国民生活のあり方自体を変革しなければならない」とした上で、第一次石油危機時の省エネ対策を例に、「まったく新しい大きな挑戦を求められている。今後、大胆な政策を進めていく」と、意気込みを示した。丁度50年前、1973年秋に公表されたエネルギー白書では、石油の量的確保の不安定性と環境面の制約から、省エネ対策について述べており、「入手ないし使用可能なエネルギーをできる限り有効活用することによって、国民経済活動におけるエネルギー消費量の相対的引き下げを図ること」と、位置付けている。また、村瀬長官は、電力システム改革に関し、「競争するというのは事業者の体力を奪うことではなく、競争を通じて切磋琢磨されていく中で、世界と戦えるエネルギー産業が生まれるようにすること」と強調。官民連携による取組を通じ、「日本発の技術、強い企業」が台頭することに期待を寄せた。原子力政策に関しては、「安全確保を大前提とした原子力の活用」の必要性をあらためて強調。既設炉の最大限活用を始め、核燃料サイクルの推進、放射性廃棄物対策など、原子力特有の問題にも取り組むとともに、小型モジュール炉(SMR)の開発など、革新技術にもチャレンジしていくとした。次年度にも本格化する次期エネルギー基本計画の検討に際しては、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、「あらゆる手段・可能性を追求することは必須」などと、資源小国である日本におけるエネルギー需給の厳しさを再認識。水素・アンモニア、CCUS(CO2の回収・有効活用・貯留)の導入促進など、あらゆる新技術を手掛け、「柔軟性をもった検討をしていきたい」と述べた。内閣府政策統括官(経済財政運営)から資源・エネルギー行政を担う要職に移り、今後、多くの政策課題をリードする村瀬長官。座右の銘としては、夏目漱石の文学観とされる「則天去私」をあげ、「正しいことをしっかり行う」と、行政マンとして使命を果たす姿勢を強調。最近はテニスに興じ、「『国難を乗り切る』体力を養っている」と、顔をほころばせた。現在56歳。
20 Sep 2023
1358
原子力産業新聞が電力各社から入手した毎月のデータによると、国内原子力発電所の設備利用率は2023年8月、33.2%となり、2013年7月の新規制基準施行後、初めて30%を超えた。国内の原子力発電所は、2011年3月の福島第一原子力発電所事故後、順次停止し、一部政治判断による再稼働はあったものの、2013年9月~15年8月のおよそ2年間にわたり全基停止の状態が続いた。新規制基準の施行後は、九州電力川内1・2号機が先陣を切って、それぞれ2015年8、10月に再稼働。その後、2018年にかけて、関西電力高浜3・4号機、同大飯3・4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3・4号機が新規制基準をクリアし運転を再開。以降、新たな再稼働は滞り、司法判断や新規制基準で要求されるテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の設置期限満了に伴う停止も加わり、設備利用率の低迷する時期がみられた。一方で、2021年6月には、3年ぶりの新規再稼働となる関西電力美浜3号機が国内初の40年超運転として発電を再開。2023年8月には同高浜1号機が、これに続いて40年超運転入り。同2号機も3基目の40年超運転に向け9月15日に原子炉を起動した。各プラントの特重施設整備も進んでおり、今春以降、設備利用率が徐々に回復してきている。これまでに再稼働(発電再開)したプラントは、計11基・1,078.2万kWで、いずれもPWR。今後、BWRについても、近時では、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機の、それぞれ、来春、来夏の再開が見込まれている。*月ごとの原子力発電所運転状況は、こちら をご覧ください。
15 Sep 2023
945
新学習指導要領で新設された「公共」の教科書(数研出版ホームページより引用)日本原子力学会の教育委員会は9月12日、高校教科書におけるエネルギー・環境・原子力・放射線関連の記述に関する調査報告書を発表した。同委員会では、1995年以来、初等中等教育の教科書に係る課題認識から、これまで17件の調査報告書を公表し、文部科学省を始め、各教科書出版会社などに提出しており、その具体的な要望・提言が教科書の編集に検討・反映されることにより、記述の改善が促されている。今回、調査を行ったのは、高校の主として中学年用に2023年度から使用されている地理歴史(地理総合、地理探求、日本史探求、世界史探求)、公民(公共、倫理、政治・経済)、理科(物理、化学)、工業(電力技術Ⅰ、工業環境技術)の検定済み全教科書計39点(2022年度入学生から適用されている新学習指導要領に基づく)。調査結果を踏まえ、報告書では、前回、2022年度に高校教科書(地理歴史、公民、理科、保健体育)を対象に実施した調査と同様、全般的に、可能な限り最新のデータ・図表を使用するとともに、原子力・放射線についての用語・単位は正しく使用、記載、説明するよう要望。その上で、福島第一原子力発電所事故に関する記述国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)に基づく事故評価の考え方わが国および世界各国の原子力エネルギー利用の状況に関する記述各エネルギー源のメリットとデメリットに関する記述放射性廃棄物に関連する記述放射線および放射線利用に関する記述地球環境問題に関連した記述原子力エネルギー利用についての多様な学習方法の拡充――について提言している。福島第一原子力発電所事故に関連した事項は、「化学」と「物理」の一部を除くほとんどの教科書で記載されていた。報告書では、放射線被ばくによる健康影響に関するより正確な記述をあらためて求めるとともに、事故後10年以上を経た現在の復興状況として、地元の若者たちの将来を見据えた新しい取組や明るい一面についても可能な範囲で紹介するよう要望。INESに関しては、今回の報告書で新たに提言。原子力利用のリスクについて、チェルノブイリ((本紙では“チョルノービリ”と表記しているが、ここでは調査した教科書の記載に従った))原子力発電所事故、福島第一原子力発電所事故、JCO臨界事故、「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故などを、比較し取り上げている「公共」、「政治・経済」の教科書があったが、「事故の深刻度については、必ずしも社会的な取り上げ方に比例しない」と指摘。科学的な観点から、誤解を招かぬよう、INESに定義された異常事象・事故レベルを念頭に具体例を取り上げるよう要望している。わが国および世界各国の原子力エネルギー利用の状況に関する記述では、2023年2月に閣議決定された「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で取り上げられている政策やそれに関連する事項、さらに、ウクライナ情勢も踏まえ、各国の原子力利用の動きについても、最新の記載がなされるよう求めている。
14 Sep 2023
928