国内NEWS
14 May 2025
545
全原協総会で柏崎市長 「現状の是正」を要望
海外NEWS
14 May 2025
435
フィンランド オルキルオト1-2号機の改修に多額投資
海外NEWS
13 May 2025
744
スペイン 大停電時でも原子力の安全性を確保
国内NEWS
12 May 2025
615
三重大ほか セシウム固定化技術の実証に成功
海外NEWS
12 May 2025
895
米国 熔融塩実証炉が着工
海外NEWS
12 May 2025
435
中国 石島湾2号機が着工
国内NEWS
09 May 2025
1089
日立GE 加ダーリントン向けに主要機器供給へ
海外NEWS
09 May 2025
739
全米の原子力発電所 設備利用率90%超を堅持
フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ(TVO)社は4月29日、オルキルオト原子力発電所1-2号機(BWR、各92万kWe)のバックフィット作業に向け、北欧投資銀行(NIB)と7,500万ユーロ(約123.4億円)の長期融資契約を締結した。融資期間は10年。バックフィットには、計装制御系やモニタリングシステム、気水分離器の交換が含まれ、運転期間延長と出力増強を計画している。1号機は1979年、2号機は1982年に営業運転を開始。当初の計画運転期間は40年間であったが、両機とも2018年9月に、2038年12月末まで20年間の運転期間延長を認可されている。これに先立ちTVOは2024年12月、運転期間延長と出力増強にむけて、環境影響評価(EIA)報告書をフィンランド経済雇用省に提出。同省は2025年4月、EIA報告書が合理的であり、EIA法に定められた要件を満たしていると結論づけた。評価にあたり、越境環境影響評価条約(エスポー条約)に基づく評価手続きが適用され、公開協議も実施されている。出力増強による環境影響は、単に運転期間を延長した場合の影響よりもわずかに大きくなるものの、原子力発電所が通常運転中に最も大きな影響を及ぼすのは、発電所から近隣海域に排出される冷却水による熱負荷である。今回、その影響はほぼ現在のレベルにとどまり、環境への影響の観点から運転期間延長と出力増強は実現可能であると経済雇用省に判断された。同省による判断は、TVO社が運転期間延長と出力増強に関する意思決定を行うための前提条件。運転期間は2048 年または2058年までの延長を、出力(ネット値)は現状の89万kWeから97万kWeへの増強を想定している。オルキルオト原子力発電所は、フィンランドの電力需要の約28%(2024年)をまかなう、同国最大の発電所である。
14 May 2025
435
スペインの原子力産業団体であるForo Nuclearは5月6日、2024年次報告を発表。4月28日にイベリア半島全域で起きた大規模な停電時の原子力発電所の安全性についても言及した。同年次報告によると、スペインで運転中の全7基の原子力発電所は、2024年に523.9億kWhを発電し、総発電電力量に占める原子力シェアは19.98%だった。平均設備利用率は83.9%。原子力発電設備容量は711万kWe(ネット)となり、原子力発電は再生可能エネルギーに次ぎ、2番目に大きな電源だった。総発電設備容量のわずか5.5%の原子力発電が、総消費電力の20%もの電力を13年間連続で生産し、その運転実績と安全性の両面で卓越した水準にあると説明している。さらに、原子力発電は2024年にスペインで発電された脱炭素電力の26.01%を占めており、環境とエネルギーの課題に対応する上での原子力の重要性を再確認するものと指摘している。一方、スペインの原子力発電所が技術的にも長期運転に向けた十分な準備が整っているが、2024年6月に適用された、発電所の閉鎖と廃棄物管理の費用を賄うために設計された、いわゆる「エンレサ税」(Enresa:スペイン放射性廃棄物管理公社)の30%増額が発電所にとって大きな負担となっており、原子力発電業界は、その軽減要求を続けているという。また、4月28日にスペイン、ポルトガル、フランスの一部で発生した大規模停電についても言及。停電発生時には4基の原子炉(アルマラス-2、アスコ-1、-2、バンデリョス-2)が運転中。トリリョは燃料交換のために停止中、アルマラス-1とコフレンテスは、技術的な制約により、スペイン全域の送電網を一元管理する系統運用者のレッド・エレクトリカ社から運転を止められていた。停電発生時に外部電源が失われた結果、運転中の原子炉は自動的に停止し、安全な停止を維持するため安全システムが作動。独立したディーゼル発電機が自動起動し、プラントを安全な停止状態に保つために必要なシステムへの電力供給を実施、その後、正常な運転の回復に支障はなかったという。停電の間、原子力安全委員会(CSN)は緊急時対応組織を立ち上げ、発電所の状況を監視しながら継続的に情報を提供。発電所は現在、対応するすべての安全チェックを完了し、系統運用者の指示に従い、送電網に再接続し、発電が再開された。今回の大規模停電の原因は今なお究明中であるが、レッド・エレクトリカ社は、停電の原因としてサイバー攻撃を除外。電力供給は翌日にはほぼ全面復旧。フランスとモロッコとの相互接続と、水力とガスタービンコンバインドサイクル発電との連系により回復されたという。Foro NuclearのI. アラルーセ理事長は、「2019年の原子力発電所の段階的廃止計画に固執することは、現在のエネルギー、環境、地政学的な状況に鑑みると論理的ではない」と主張。さらに停電の間、原子力発電所は「障害」ではなく、「電力システムに安定性を提供したが、それは十分ではなく、そのためシステムが機能しなくなった」と言及した。原子力発電所の大型タービンと発電機は、電力網において、電圧と周波数を安定化させる役割を果たすと説明している。スペインで稼働中の原子炉7基は1980年代前半~後半にかけて運転を開始。現在、総発電電力量の約6割を再生可能エネルギー(主に水力、風力、太陽光)で賄う。なお、最新の国家エネルギー・気候計画(NECP)では、2030年には総発電電力量の約8割を再生可能エネルギーが占めることを想定している。スペインは日本と同様、国内のエネルギー資源が乏しく、1950年代から原子力開発を開始。当初は米国やフランスから技術を導入し、1970年代のオイルショックを契機に開発を加速、これまでに閉鎖された3基を含み、10基を開発してきた原子力先進国の一つである。スペイン政府の原子力の段階的廃止政策による産業競争力と社会に及ぼす影響についての懸念や、国際的な潮流に沿った原子力発電所の長期運転の必要性から、2024年2月中旬、中道右派の国民党(PP)が、スペイン国会に、スペインの原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める非立法提案を提出、可決された。同月下旬には、スペインで原子力事業を展開する企業が原子力発電所の長期運転を支持するマニフェストを発表している。同国では2018年6月の中道左派の社会労働党(PSOE)への政権交代を機に、原子力発電所を段階的に閉鎖・廃止する方針に転換された。現状の政策では、2027~2035年までに運転期限を迎える原子力発電所は順次閉鎖される予定となっており、スペインの原子力発電は2030年末までに約320万kWeに縮小し(現在運転中の7基中、4基が閉鎖)、2035年にはゼロとなる予定である。
13 May 2025
744
米原子力新興企業のケイロス・パワー社は5月8日、テネシー州オークリッジにある米エネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」において、フッ化物塩冷却高温実証炉「ヘルメス」(非発電炉、熱出力3.5万kW)を着工したことを明らかにした。ヘルメスは2023年12月に、米原子力規制委員会(NRC)が半世紀ぶりに建設を許可した非水冷却炉。TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料と熔融フッ化物塩冷却材を組み合わせ、原子炉の設計を簡素化しているのが特徴で、2027年に運開予定。2024年7月に土木工事(掘削工事)に着手していた。ヘルメスの基礎部分における安全対策工事は5月1日に開始。構造の安全性確保のため、地面から約12メートル下まで延びる直径約1.8メートルの杭穴51本を掘削、杭穴に鉄筋のケージを降下させた後、最初のコンクリートを打設した。ヘルメスは、DOEにより2020年12月、「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象炉に選定された。また、ヘルメスに隣接し、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」(発電炉、2万kWe)の建設許可が2024年11月に発給されている。ケイロス社はこれらのヘルメス・シリーズで得られる運転データやノウハウを活用して、技術面、許認可面および建設面のリスクを軽減、コストを確実化して、2030年代初頭に商業規模の「KP-FHR」(熱出力32万kW、電気出力14万kW)の完成を目指している。なお、ケイロス社はIT大手のGoogle社と2024年10月、2035年までに複数の先進炉導入による電力購入契約(PPA)を締結。ケイロス社が開発する先進炉のフッ化物塩冷却高温炉を複数基、合計出力にして最大50万kWeを建設し、Google社のデータセンターへ電力を供給する計画だ。初号機を2030年までに運転開始させた後、後続機を順次建設していくという。
12 May 2025
895
中国の山東省栄成市で5月7日、中国華能集団(China Huaneng:CHNG)の石島湾(Shidao Bay)原子力発電所2号機(PWR=華龍一号、115.0万kWe)が着工した。石島湾2号機は、華能山東石島湾サイトにⅠ期工事として建設が開始されたもの。CHNGは同サイトに華龍一号を最終的に4基・計約480万kWeを2期に分けて建設する予定で、Ⅰ期工事にあたる1、2号機は2029年に完成、運開予定。1号機は2024年7月に着工している。各機の年間発電電力量は100億kWhを超える。同サイトには、2023年12月に世界初の第4世代炉の小型モジュール炉(SMR)である華能山東石島湾(HTGR=HTR-PM、21.1万kWe)が運転を開始しており、2024年3月にはその原子炉熱を利用し、地域暖房プロジェクトが始動している。CHNGは、同サイトが第3世代炉と第4世代の先進原子力技術を同時に採用する一大拠点になると強調している。華龍一号は、HPR1000と呼ばれる中国が独自開発した第3世代PWR。中国国内で2020年代に入ってから5基(防城港3、4号機、福清5、6号機、漳州1号機)が運転中。中国の主力輸出炉としても位置付けられており、中国核工業集団(CNNC)が輸出し、パキスタンのカラチ原子力発電所2、3号機で稼働している。
12 May 2025
435
米国原子力学会(ANS)によると、全米の原子力発電所92基((2023年、2024年にそれぞれ営業運転開始したボーグル3、4号機を除く。))の直近3年間(2022~2024年)の設備利用率は90.96%(中央値)と、前の3年間(2019~2021年)の91.24%をわずかに下回ったものの、引き続き90%を超える高水準を堅持していることが明らかになった。米国では、今世紀に入ってから一貫して90%前後の高い設備利用率を維持している。今回の調査では、92基のうち54基が設備利用率90%を超え、全基が70%以上を記録した。すべての原子炉の設備利用率が70%を上回ったのは、2014~2016年調査時に次いで2回目。なお、1992~1994年では、設備利用率90%超の原子炉は、102基中わずか2基にとどまり、70%以上を記録したのは78基。2001~2003年では、104基中47基が90%を超え、2基を除くすべての原子炉が70%を超えた。炉型別では、米国内の31基のBWRの設備利用率の中央値は91.19%で、61基のPWRは90.73%だった。平均設備利用率は、BWRが90.82%、PWRが90.13%とほぼ同水準だった。また、全米にある35の複数基の発電所では、2022~2024年の設備利用率の中央値が90.72%で、平均が90.81%。17の単基の発電所では、中央値90.27%、平均87.96%とやや低い傾向となった。運転年数別では、最も古い10基の原子炉の平均設備利用率は93.15%で、上位20基では91.67%となっており、長期運転において高い運転実績が維持されていることが示されている。なお、米国の原子力発電所の平均運転年数は約43年である。また、複数サイトを保有する9事業者の合計設備利用率の中央値は89.66%、平均設備利用率は88.81%となり、いずれも全体の中央値と平均値(90.36%)を下回る結果となった。このうち、21基の原子炉を有する米国最大の原子力発電事業者であるコンステレーション社は、5年連続で9事業者中、最高の合計設備利用率を記録している。コンステレーション社が現在保有する原子炉の多くは、2000年以前には少なくとも7社の異なる企業が所有していた。ANSによると、2000年当時、比較的業績が低迷していたコモンウェルス・エジソン(ComEd)社のイリノイ州5発電所(ブレイドウッド、バイロン、ドレスデン、ラサール、クワドシティーズ)と、ペンシルベニア電力(PECO)の2発電所(リメリック、ピーチボトム)を統合し、エクセロン社(現コンステレーション社)が設立された。同社は以後も発電所の買収・統合を進め、一時は最大23基を保有するまでに成長。今後、スリーマイルアイランド1号機が再稼働すれば、22基体制になる。ANSは、同社の劇的な設備利用率の改善について、市場要因や技術と管理の進歩、ベストプラクティスの共有による業界全体の改善が背景にあると指摘。その一方で、同社が他社から原子炉を引き継ぎ、効率的に運用していることは、原子力が長期的に保有・管理する資産であること、そして複数サイトの所有管理が有効であることを示唆している、と分析している。ANSによると、現在米国では94基の原子炉が運転中だが、運転認可更新や出力向上が進んだ結果、原子力発電電力量は、104基が運転していた2000年代初頭を上回っているという。米国エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、2024年の原子力発電電力量は前年の7,750億kWhからわずかに増加し、約7,820億kWhとなった。一方、総発電電力量に占める原子力シェアは、2000年の19.8%から2024年には18.2%に低下している。こうしたなかでも、2024年には11基((ブランズウィック2号機、クリントン、コロンビア、ファーリー2号機、ハッチ2号機、オコニー2号機、パロベルデ1号機、ポイントビーチ1号機、リバーベンド、ターキーポイント4号機、ワッツバー2号機の計11基。))の原子炉が過去最高の年間発電電力量を記録した。
09 May 2025
739
ベトナム商工省は4月28日、2050年を視野に入れた2021年~2030年の「第8次国家電力開発基本計画」(PDP8)改定版(4月15日に政府承認)について説明する会議を開催。この改定版では、再生可能エネルギー開発の優先とともに、原子力発電プロジェクトの再開について言及されている。2023年5月に承認されたPDP8の改定版にあたる。会議の席上、商工省のグエン・ホン・ジエン(Nguyen Hong Dien)大臣は、PDP8改定案の策定プロセスで、商工省が「計画法」および「電力法」を含む関連法規を厳格に遵守し、多くの会議やワークショップを開催、著名な科学者や専門家の意見を聴取して適切な修正を加えたと指摘。PDP8改定の承認は重要な出来事であるものの、より重要なのは計画を実現して電力供給の安全を確保し、国の社会経済発展に貢献することであると語った。そして、関連省庁やセクターと緊密に連携して、地域や投資家がプロジェクトの実施を加速するための障害を取り除くための最良、最速、タイムリーな条件を作り出していくと強調した。改定されたPDP8では、国家エネルギー安全保障の確保、公正なエネルギー移行の実現、再生可能・新エネルギーを基盤とした総合的なエネルギー産業システムの構築を目標としている。具体的には、2026年から2030年までの期間にGDP成長率平均約10.0%/年、2031年から2050年までの期間に約7.5%/年の成長率を想定。成長率の達成を支える電力の安定供給を確保するため、発電設備容量の増強が顕著となっている。2030年までに総発電設備容量は約1.83億~2.36億kWeに増強を予測。これは、改定前のPDP8で計画されていた約1.5億kWeと比較し、約22~57%の増加である。2030年の総発電電力量(輸入を含む)は、約5,604億~6,246億kWhを想定している。再生可能エネルギーは引き続き最優先事項であり、開発目標が大幅に上方修正されているのが特徴。特に、太陽光発電や陸上および近海の風力発電の伸びが顕著である。太陽光や風力などの再生可能エネルギー源や大規模な需要拠点の近くに分散型蓄電池システムを設置するなど、エネルギー貯蔵の開発も重視している。2030年までに水力発電を除き、発電量に占める再生可能エネルギーの比率を約28~36%に引き上げる目標を設定している。さらに2050年までに、総発電設備容量は7.75億~8.39億kWeに大幅な増強を想定。総発電電力量は1.36兆〜1.51兆kWhを見込み、再生可能エネルギーがその支柱となる。その比率は74~75%に達するという目標が設定されている。原子力発電に関しては、2030年~2035年に、総出力400万kWe~640万kWeのニントゥアン第一、第二原子力発電所の運転開始を見込んでいる。なお2050年までに、800万kWeの原子力発電設備の追加の必要があり、需要に応じてさらに増加する可能性があるとするなど、スケールは壮大だ。ベトナムは2050年までに温室効果ガスのネットゼロ目標を掲げている。石炭火力発電は現状、ベースロード電源であり、発電量シェアは約50%。2030年までは既に計画や建設に投資されているものを含み、現状維持であるが、それ以降は新規プロジェクトは承認されない。石炭火力発電は20年間稼働のプラントを2050年までにバイオマスまたはアンモニアに徐々に転換。ガス火力発電はフレキシブルなエネルギー・ミックスの中心的役割を果たしているが、LNGプラントの水素混焼への移行も視野に入れている。ベトナム国会は2024年11月、電力需要の拡大を受け、ニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開するという政府提案を承認。原子力発電の開発を含む改正電力法も承認された。同プロジェクトではロシアと日本がベトナムに協力して、それぞれ第一および第二原子力発電所(各200万kW)を建設する計画だったが、経済状況を理由に2016年11月に全て白紙となった。
09 May 2025
709
米大手IT企業のGoogle社は5月7日、米国の先進原子力プロジェクト開発会社Elementl Powerと先進的原子力プロジェクトのサイト開発への資金提供を約した契約を締結した。Elementl Power社は2022年設立の先進原子力プロジェクトの開発および独立系発電事業者。クリーンなベースロード電力へのアクセスを望むが、原子力資産を所有または運用は望まない顧客に対して、ターンキー型の開発、融資および所有ソリューションを提供し、先進炉展開時の行き詰まりの解消を目指している。資本と顧客の需要を結びつけ、米国において安全で信頼性が高く、安価な次世代原子力プロジェクトの開発を加速したい考えだ。Elementl社は、規制下にある電力会社、独立系発電事業者、技術サプライヤーと協力し、2035年までに米国で合計設備容量1,000万kWe以上の原子力発電を実用化させる目標を掲げており、Google社との契約はそれを支援するものとの位置付け。今回のGoogle社との契約では、先進原子力エネルギー開発向けにプロジェクトサイト候補3地点を事前に配置。Google社はElementl社がこれら3つのサイト候補地で先進的な原子力プロジェクトを準備するための初期段階の資金を提供する(資金額は未公表)。各プロジェクトは少なくとも60万kWの発電設備容量を有し、Google社はプロジェクト完了後に、オフテイカーとして電力購入の優先権を持つ。Elementl社は電力会社や規制下にある電力パートナーと協力しながら、Google社と新しいプロジェクトを推進。候補炉型、EPC(エンジニアリング/調達/建設)やその他のプロジェクトパートナーの評価も継続しつつ、開発を加速するためサイトの優先付けをしていくとしている。Elementl社のC. コルベルトCEOは、「新規原子力プロジェクトの建設に必要な資本を動員するには、このような革新的なパートナーシップが必要であり、安全かつ安価なクリーンなベースロードの電力供給と企業が長期的なネットゼロ目標を前進させるのに不可欠」と強調。Google社のデータセンターエネルギー担当のA. ピーターソン・コリオ氏は、「当社は事業を展開する地域の電力網強化に尽力しており、先進的な原子力技術は信頼性の高いベースロード電力を24時間365日提供可能。Elementl社との協力により、AIと米国のイノベーションに迅速に対応する能力が向上する」と期待を示した。
08 May 2025
1257
ロシアの連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)は4月28日、ロシア国営原子力企業ロスアトムの電力部門に、ベロヤルスク原子力発電所5号機における高速炉BN-1200Mの設置許可を発給した。BN-1200Mは、出力122万kWeのナトリウム冷却高速炉。今回の設置許可取得により、同炉の建設にむけた準備工事が年内にも開始される。2024年7月、ロスアトム傘下にあるアトムエネルゴプロエクト社(エンジニアリング部門)とロスエネルゴアトム社(発電事業者)は、ベロヤルスク5号機の建設に向けた設計文書の作成に関する契約に署名。設計文書の作成にあたり、多くの包括的なサイト調査が実施され、発電炉の安全性と、技術規制、ロシア連邦の規則および基準、法令に準拠していることを示す一連の文書がロステフナゾルに提出された。「ベロヤルスク発電所でのBN-1200M設置により、クローズド・サイクルの環境・経済的利益を完全に具現化することができる。ベロヤルスク発電所のスタッフは、ユニークなナトリウム冷却高速炉BN-600とBN-800の膨大な運転経験を蓄積しており、BN-1200Mの同サイトへの設置は合理的だ」と、ベロヤルスク原子力発電所のI. シドロフ所長は強調した。 同サイトでは、BN-600(60万kWe)とBN-800(88万kWe)がそれぞれ1981年、2016年から運転中である。1、2号機(軽水冷却黒鉛減速炉)は閉鎖済み。BN-1200Mは2027年に着工され、完成は2034年の予定。運転期間は少なくとも60年で、80年まで延長される可能性がある。使用済み燃料の再処理により得られるプルトニウムおよびウラン濃縮の副産物(劣化ウラン)から製造されるMOX燃料を使用、放射性廃棄物を減容させ、産業規模でのクローズド・サイクルの実現を目指している。このほか、ロシアでは第4世代の原子力発電システムの確立と商業導入に向けて、トムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(ロスアトム燃料部門の企業)のサイトにおいて鉛冷却高速実証炉BREST-OD-300(30万kWe)と、併設される燃料加工/再加工および再処理モジュールを備えたパイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)の建設プロジェクトが進行中である。
07 May 2025
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中国国務院の常務会議は4月27日、5サイトで計10基の新設を承認した。なおその際、「原子力発電を発展させるには安全に万全を期さなければならない。事業主と建設参加企業が主体的に責任を果たし、世界最高の安全基準に基づいて原子力発電ユニットを建設・運営するとともに、安全監督管理能力の構築を継続的に強化、原子力発電の安全保障ネットワークを確実に整備しなければならない」と強調されている。今回承認された新設10基は、以下の通り。■中国核工業集団(CNNC)浙江省 三門原子力発電所5、6号機(「華龍一号」((HPR1000と呼ばれる中国が独自開発した第3世代PWR。))×2基、各121.5万kWe)■中国広核集団(CGN)広西チワン族自治区 防城港原子力発電所5、6号機(「華龍一号」×2基、各120.8万kWe)広東省 腰古(台山)原子力発電所3、4号機(「華龍一号」×2基、各120万kWe)■国家電力投資集団(SPIC)山東省 海陽原子力発電所5、6号機(CAP1000((米国のAP1000設計をベースとする中国版AP1000の標準設計。))×2基)■中国華能集団(CHNG)福建省 霞浦原子力発電所1、2号機(「華龍一号」×2基)現在、中国で運転中、建設中、計画中の原子力発電設備容量は、合計で1.2億kWeを超えており、世界最大だ。国家能源局の発表によると、2024年の原子力発電電力量は4,509億kWhで、前年比3.7%増。総発電電力量に占める原子力シェアは4.5%だった。
02 May 2025
989
米ユタ州を拠点とするエナジー・ソリューションズ社は4月23日、同州の電力会社Intermountain Power Agency(IPA)およびユタ州との間で、IPAがユタ州デルタ近郊に所有する石炭火力発電サイトで、SMRの建設を検討するための了解覚書に署名したことを明らかにした。エナジー・ソリューションズ社は、原子力施設の廃止措置、使用済み燃料の管理、核物質の輸送など、幅広い原子力サービスを手掛けている。ユタ州エネルギー開発局によると、新規原子力発電の建設は、S. コックス知事の「Operation Gigawatt」イニシアチブの下、社会の電化、エネルギー集約産業による電力需要の増大に応えるという同州の目標に沿ったものだという。IPAは30年以上にわたり、地域にエネルギーを供給してきた石炭火力発電(Intermountain Power Project:IPP)を閉鎖し、IPP Renewedと称するプロジェクトの下で、再生可能エネルギー源から電気分解により生成された水素を燃焼させる84万kWeのガス火力発電所の建設を進めている。稼働開始時の燃料の30%に水素を用い、2045年までに100%水素に移行。発電所の地下深くの塩ドームに地下貯蔵設備を建設し、水素を貯蔵するという。エナジー・ソリューションズ社のK. ロバックCEOは、「再生可能エネルギーと水素利用の取組みに加え、新たに先進的な原子力技術を導入し、ユタ州と地域のニーズを満たす安定した脱炭素電力の供給を目指していく」とコメントした。IPAとユタ州との覚書では、IPPサイトに建設される具体的な原子炉技術は特定されていないが、エナジー・ソリューションズ社は、IPAとユタ州による米原子力規制委員会の許認可手続きプロセスを支援していくとしている。エナジー・ソリューションズ社は、原子力開発プロジェクトの主要な特徴として以下を掲げる。IPAとの提携による、IPPサイトの既存インフラの活用先進的なSMR導入によるベースロード電源の開発既存の地域エネルギーハブおよび先進的な送電網安定化技術との相乗効果地元、州、地域の利害関係者との協力ユタ州の農村経済の開発と雇用創出今回の発表に先立ち、エナジー・ソリューションズ社は2024年12月にカナダのテレストリアル・エナジー社と協力覚書を締結している。両社は、エナジー・ソリューションズ社が廃炉プロセスで取得した旧原子力発電所サイトにおいて、テレストリアル社が開発するSMRである一体型熔融塩炉(IMSR)の設置と展開の検討で協力することになっている。エナジー・ソリューションズ社は、ウィスコンシン州キウォーニ原子力発電所のほか、ネブラスカ州フォートカルホーン発電所、カリフォルニア州サンオノフレ発電所、ペンシルバニア州スリーマイル・アイランド発電所(2号機)、ウィスコンシン州ラクロス発電所の廃止措置を実施している。
02 May 2025
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米テネシー州のテネシー峡谷開発公社(TVA)は4月17日、テネシー州オークリッジ近郊の同社クリンチリバー・サイトにおける、小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトの建設許可申請(CPA)を6月までに行うことを明らかにした。TVAのクリンチリバー・プロジェクト担当のB. ディーシー上級副社長によると、TVAはSMR建設に向けた環境レビューを完了し、6月までにCPAを行う意向を米原子力規制委員会(NRC)に通知。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300(BWR、30万kWe)だが、他炉型の評価も継続しているという。TVAはクリンチリバー・サイトについて2019年12月、米原子力規制委員会(NRC)より、SMR建設用地として事前サイト許可(ESP)を取得済み。またGEH社製のBWRX-300がSMRの中でも最も実現性が高いと判断。2022年8月にGEH社とクリンチリバー・サイトにBWRX-300を建設するための計画策定と予備的許認可で協力する契約を締結した。BWRX-300は次世代BWR。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得したGEH社の第3世代+(プラス)炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」をベースにしている。TVAはクリンチリバーSMRプロジェクトの開発に、2022年2月に理事会が承認した最初の2億ドルと、2024年4月の継続的な設計および開発作業を支援するための追加出資1.5億ドルを合わせ、合計3.5億ドル(約500億円)を投じている。なおTVAは、米エネルギー省(DOE)が2024年10月に初公募、3月下旬に改訂された米エネルギー省(DOE)の第3世代+(プラス)小型モジュール炉プログラムから助成金8億ドル(約1,144億円)を4月初めに再申請した。これはDOEが同プログラムをトランプ政権の政策と一致させるべく、助成金交付の基準を更新。公募要件を変更し、再申請を求めていたもの。TVAは今年1月には、ベクテル社、BWXテクノロジーズ社、デューク・エナジー社、電力研究所(EPRI)、GEH社、アメリカン・エレクトリック・パワー社(AEP)傘下のインディアナ・ミシガン・パワー社、サージェント&ランディ社などから構成されるパートナー連合を結成し、同プログラムに8億ドルの助成金を申請していた。同プログラムは、米国内の原子力産業を強化し、米国初のSMR配備への支援、先進原子力技術のサプライチェーンの確立を目的に創設。TVAはBWRX-300が実績のある技術に基づくものとはいえ、初号機プラントであるため、DOEと協力してコストを相殺、顧客へのコスト負担を避けたい考えだ。また、予備的なサイト準備を早ければ2026年に開始を計画している。TVAのJ. ライアッシュCEOは今年1月、「この助成金が交付されれば、クリンチリバー・サイトでのSMRの建設が2年前倒しされ、早ければ2033年に営業運転が開始できる」と言及していた。TVAは1933年、米大統領F. ルーズベルトが、世界恐慌の対策として実施したニューディール政策の一環として、テネシー川流域の総合開発と失業率対策を目的に行われた米政府による公共事業を実施する国有電力企業。現在、アラバマ州、テネシー州において3サイトで計7基の120万kW級の大型軽水炉を所有/運転している。
01 May 2025
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は4月16日、自社の開発するNatrium炉で英国の包括的設計審査(GDA)プロセスへの参加を正式表明する書簡を英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に提出したことを明らかにした。Natrium炉を国際市場に展開する取組みの第一歩である。GDAとは英国で初めて建設される炉型に対して行われる設計認証審査で、原子力規制庁(ONR)が設計の安全性とセキュリティの観点から、環境庁(EA)が(該当する場合、ウェールズ自然保護機関(NRW)も)環境影響の観点から、英国の基準を満たしているかを規制プロセスの早い段階から、立地サイト特定後の建設申請とは別に評価するもの。DESNZは規制当局の審査に先立ち、テラパワー社が提出するGDA申請書を事前に精査し、NatriumがGDA実施前の評価基準をクリアしていることを確認する。テラパワー社のC. レベスクCEOは、「当社は、Natriumの世界展開に向けて、英国で何年も前から活発な討議を行ってきた。今後10年間に先進的な原子力発電所の導入で協力する点において、米国と英国には大きな関心と機会が存在している」と語った。米国で開発中のNatriumに係る規制上のマイルストーンは、英国におけるGDA申請の基礎として利用される。米国においては、米原子力規制委員会(NRC)と密接に許認可申請前活動を行い、2024年3月にはNRCに建設許可申請(CPA)を行った。NRCとの間ではCPAおよびトピックレポートの提出に関して1年以上にわたるレビューが行われ、NRCは最近、レビューのスケジュールを前倒ししている。また、初号機建設サイトのある米ワイオミング州からは州レベルの建設許可を得ており、2024年6月に起工式を挙行、非原子力部の建設工事を開始した。原子力部の着工は早くて2026年、送電開始は2030年を予定している。Natriumは、熔融塩ベースのエネルギー貯蔵システムを備えた34.5万kWeのナトリウム冷却高速炉。貯蔵技術は、必要に応じてシステムの出力を50万kWeに増強し、5時間半以上を維持することができる。この革新的な追加により、Natriumは再生可能エネルギーとシームレスに統合され、より迅速で費用対効果の高い電力網の脱炭素化を実現したい考えだ。
30 Apr 2025
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「全国原子力発電所所在市町村協議会」(全原協、会長=米澤光治・敦賀市長)の年次総会が5月12日、都内で開催された。全国の原子力発電所などを立地する会員25市町村の首長らが一堂に会し、国に対して原子力・エネルギー政策に係る提言を行うもの。2025年度の活動として、「被災地の復興」、「安全規制・防災対策」、「原子力政策」、「立地地域対策」の分野で、計67の重点項目を掲げ、国・関係機関に要請していくことが了承された。総会には、政府より、竹内真二・経済産業大臣政務官、赤松健・文部科学大臣政務官他、内閣府、原子力規制庁、国土交通省も含め、関係省庁の幹部らが出席。立地地域との質疑応答に臨んだ。米澤会長は、政府関係者との意見交換に先立ち、「立地地域は様々な課題を抱えている」とした上で、2月に閣議決定された新たなエネルギー基本計画で「原子力を最大限活用」と明記されたことに鑑み、「今だからこそ、原子力政策の最前線に立つ立地地域の声を今後の政策に反映させて欲しい」と強調。さらに、「できるだけ地元の国会議員にも聴いてもらいたい」とも要望した。今回は、政界から、メーカーで原子力技術に携わっていた経験のある衆議院議員の森英介氏や、自民党政調会長などを歴任した同・稲田朋美氏らが出席。地域の声に耳を傾けた。今回の意見交換では、8市町村が発言。原子力防災に関し、大間町の野﨑尚文町長は、半島特有の課題に鑑み、大間町と函館市を結ぶフェリー「大函丸」の更新に言及。道路に限らない「防災インフラ」の充実化が図られるよう航路維持に係る補助金の創設を要望した。先般原子力規制委員会が策定した屋内退避の考え方に係る意見もあり、BWRとして再稼働した東北電力女川原子力発電所を立地する石巻市の渡邉伸彦副市長は、市内全域がUPZ圏内にあることを踏まえ、市民に分かりやすいQ&A資料の制作・公開を要望。人材育成の関連では、美浜町の戸嶋秀樹町長が、エネルギー環境教育体験館「きいぱす」、福井県内高校生による全国意識調査やクリアランス金属の利活用など、次世代層への原子力に対する理解に向けた取組を紹介した。また、現在、再稼働に向け地元の理解が焦点となっている柏崎刈羽原子力発電所が立地する柏崎市の櫻井雅浩市長は、エネルギー政策、原子力規制、原子力防災のそれぞれについて意見を陳述。特に、いわゆる「地元の合意」に関し、「法に基づかないものであるが、実質法のごとく拘束力を有している現状は是正されるべき」と主張した。
14 May 2025
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三重大学、海洋研究開発機構、帝塚山大学らによる研究チームはこのほど、高輝度レーザーを活用し、コンクリート中にセシウムを閉じ込めてガラス体を形成する「その場固定化」技術の実証に成功したと発表した。〈三重大他発表資料は こちら〉現在、進められている福島第一原子力発電所廃炉に関しては、汚染水対策や燃料デブリ取り出しの他、放射性廃棄物の処理処分も長期的な課題となっており、日本原子力学会など、アカデミアでは、廃炉の最終的姿、いわゆる「エンドステート」に向け検討を行っている。今回の研究成果は、これにも関連し、廃炉に伴う廃棄物の減容に資することが期待されそうだ。発表によると、福島第一原子力発電所で発生するコンクリート・がれきの総量は、将来的に建物の解体や燃料集合体から生じる推定量として、低表面線量率(0.005~1mSv/h)のコンクリート廃棄物で約130,000㎥、中表面線量率(1mSv/h超)の廃棄物で約60,000㎥。これらの廃棄物を効果的に管理し、長期保管することが重要なことから、より効率的な減容技術の開発が不可欠となっている。今回の研究では、放射性廃棄物の減容に向け、セシウム137(放射性同位体)を効果的に固定化することに着目。福島第一原子力発電所原子炉建屋と同じ組成のセシウム133(安定同位体)を混ぜたコンクリートに、高輝度レーザーを照射し、セシウムを固定化。物性調査・分析の結果、セシウムは、レーザー照射されたコンクリート中でガラス化されていることが示された。さらに、「電子プローブマイクロアナライザー」と呼ばれるX線分析手法により、セシウム捕捉率は実験値で99%と、従来手法による57%より遥かに高い値を確認。つまり、廃コンクリートの表面を、高輝度レーザーでガラス化し、溶融コンクリート内部の放射性物質をガラス体の中に固定化した後、ガラス体とそれ以外の物質を分離することで、効率的な減容が可能となる。研究チームは、「福島第一原子力発電所の廃炉を支援する優れた可能性を秘めている」と、期待を寄せている。なお、今回の研究開発には、東電設計や、産業廃棄物処理で実績のある太平洋コンサルタントからも協力を得ているという。
12 May 2025
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日立GEニュークリア・エナジーは5月9日、カナダ・オンタリオ州の州営電力オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が推進している小型モジュール炉(SMR)4基を建設するダーリントン新・原子力プロジェクト(DNNP)の初号機向けに、パートナーであるGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GEベルノバ日立)と連携し、原子炉の主要機器を供給することを発表した。〈日立GE発表資料は こちら〉DNNPは北米初のSMRプロジェクトだ。OPG社は2021年12月、最速で2029年の運転開始を目指し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)と日立GEが共同開発するSMR「BWRX-300」(BWR、30万kW)を選定。今年4月4日には、カナダ原子力安全委員会(CNSC)により、建設が承認された。〈既報〉合わせて日立GEは、5月8日にその初号機が建設開始されたことも発表。「BWRX-300」は、自然循環の利用によりポンプを排除し、受動的冷却システムにより電源・注水設備・運転員操作なしで7日間の冷却が可能だ。また、圧力容器に隔離弁を直付けすることで、冷却材喪失事故の発生確率の削減につなげている。日立GEでは今後、「BWRX-300」の主要機器で、安全上重要な機器となるRIN(Reactor Internals 炉内構造物の一つで、原子炉圧力容器内に組み込まれ、炉心の支持や炉内の冷却材流路形成などの機能を持つ)、制御棒駆動水圧ユニットを供給する計画だ。日立GEの原子力国際技術本部長の森脇正直氏は、「この先駆的なプロジェクトに貢献できることを誇りに思う。当社は、BWRにおける豊富な経験および確かな技術力により、DNNPの成功を支援していく」と述べ、先進的なSMR開発の実現に期待を寄せた。同社では、DNNP2~4号機についても、初号機の知見を活かし機器の受注を目指す。
09 May 2025
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資源エネルギー庁は5月2日、新潟県内で行ってきたエネルギー・原子力政策に関する広報事業の調査結果を発表した。2025年3月6~10日、県内在住の15~89歳を対象にオンラインを通じたアンケート調査を実施し、576人から回答を得たもの。〈エネ庁発表資料は こちら〉エネ庁では、2024年末から25年2月までに新潟県内の28市町村で「THINK!ニッポンのエネルギー」と題する説明会を開催した(参加者数は計562名)。説明会と合わせ、エネ庁では、新潟県内および電力消費地の首都圏において、新聞広告、テレビCM、交通広告など、多様なメディアを活用し「エネルギー情勢や原子力発電等」について、集中的に広報事業を展開。昨春リニューアルしたJR新潟駅バスターミナルでも動画広告が流れ、バスを待つ乗客らの注目を集めていた。今回のアンケート結果は、こうした理解活動の成果に関し、地元を対象として調査したもの。それによると、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に係る考えについては、「再稼働すべき」が18.2%、「規制許可と避難対応があれば認めざるを得ない」が31.4%で、両者を合わせ49.6%が「再稼働を容認」と回答。一方で、「安全対策が強化され、規制許可と避難対応があっても再稼働を認めることはできない」が8.2%、「再稼働すべきでない」が22.7%と、両者を合わせ30.9%が「再稼働を容認できない」と回答した。また、「わからない、どちらでもない」との回答は19.4%。さらに、地域別にみると、立地自治体(柏崎市・刈羽村)では、「再稼働を容認」が66.7%で、他の地域と比較して高くなっていた(30km圏内自治体では48.0%)。理解活動の認知度では、「テレビCM」(26.0%)、「新聞広告」(17.5%)、「WEBCM」(12.80%)の順に高かった。年齢層でみると、高年層(60~89歳)では「テレビCM」と「新聞広告」の回答割合が、若年層(15~34歳)では「交通広告」と「WEBCM」の回答割合がそれぞれ高くなっており、昨今の若者の活字・テレビ離れが浮き彫りとなっているようだ。また、「広告を見たことで、原子力発電や柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に対する考え方は変化したか」については、「変化した」が10.4%、「参考になった」が32.8%。両者の合計は全体で43.2%に上り、特に若年層では54.1%と、顕著に高くなっていた。一方で、「変化していない」との回答割合は全体で42.6%。特に、高年層では53.2%と、半数を超えていた。さらに、「再稼働を容認」を選んだ理由として、複数回答を認め尋ねたところ、「エネルギー自給率の向上や安定供給につながると思うから」が最も高く52.1%、次いで「電気料金の抑制につながると思うから」が48.3%となった。一方で、「再稼働を容認できない」に関しては、「事故が起きた場合に避難するのが困難」が60.7%と最も高く、「いかなる安全対策を取っても人間の想定では対応できず、事故が起きた場合の影響が大きい」の51.7%、「使用済み燃料の再処理は開始しておらず、最終処分地も決まっていないまま、原子力を活用すべきでない」の42.7%がこれに次いだ。現在、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は地元の判断が焦点となっている。新潟県の花角英世知事は、5月8日の定例記者会見で、同2日に内閣府(原子力防災)の作業部会で取りまとめられた「柏崎刈羽地域の緊急時対応」に言及。知事は、昨年元旦に発生した能登半島地震に鑑み、複合災害に対する住民の不安感にも触れた上で、今回の取りまとめについては「大雪時の対応についてもしっかり取り込んでもらったと理解している」と評価。さらに、エネ庁によるアンケート調査結果については、「年齢層によって随分とバラツキがある」などと所感を述べた上で、これまで度々記者より問われてきた県民の意見集約に関しては、「できるだけ意識を上手に把握していきたい」と応えた。県議会では、再稼働の是非を問う住民投票条例案が審議されたが、4月18日に否決となっている。
08 May 2025
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東京電力の小早川智明社長は4月30日、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた考えとして、「まずは現場、しっかりと安全が維持されることに尽きる」と強調。加えて、昨年初頭に発生した能登半島地震にも鑑み、地元が抱く複合災害への懸念に対応するよう、発電所が立地する柏崎市・刈羽村にとどまらず、広域的に説明を行っていく考えを述べた。同社本店で行われた2024年度決算発表に関する記者会見の場で述べたもの。 現在、最も再稼働が見込まれる柏崎刈羽7号機では、既に燃料装荷が完了した。一方で、現在、再稼働に向けては地元判断が焦点となっており、再稼働に関して、4月18日には新潟県議会で住民投票条例案が否決されるなど、新たな動きがみられている。小早川社長は、会見の場で、地元の理解を大前提とした上で「一日も早くご判断いただけるように最善を尽くしていきたい」と述べた。 また、7号機の他、新規制基準適合性審査をクリアした6号機でも、6月に燃料装荷開始が予定されている。東京電力では、6・7号機に関しては、テロ対策となる「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成時期を、4〜5年先延ばしすると発表した。設置期限は、7号機が2025年10月、6号機が29年9月と、仮に今夏の電力応需に向け7号機が再稼働しても10月には停止となる。 特重施設は、セキュリティ上、整備に関する詳細が明らかにされていない。小早川社長は「安全にオペレーションできるかが非常に重要だ」と語っている。
02 May 2025
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政府は4月29日、春の叙勲を発表。桐花大綬章を元衆議院議長の大島理森氏が受章する。大島氏は、中央省庁再編(2001年1月施行)の準備が佳境にあった2000年7~12月、文部相兼科学技術庁長官を務めた。当時、1999年に発生したJCO臨界事故、1998~99年に行われたH-ⅡAロケット打上げの2度に及ぶ失敗などを受け、科学技術行政の建て直しで手腕を発揮。原子力安全行政については、臨界事故の教訓を踏まえ、所管する試験研究炉や核燃料施設などにおける保安検査制度の新設を含む原子炉等規制法改正の立案をリード。同法は2000年7月に施行された。宇宙輸送の基盤技術に係る相次ぐ失敗に対しては、就任記者会見上で、「何をやっとるのか」と、声を荒げたこともある。この他、国際協力関連では、原子力委員会が主宰するASEAN諸国を中心とした政策対話の枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の第1回会合(2000年、タイ・バンコク)に臨席。将来的に原子力開発を標榜する新興国の代表らに対し、原子力政策に係る人材育成、損害賠償制度整備の重要性を訴えかけた。現在、FNCAは、発足から四半世紀を迎え、加盟国は当初、9か国だったが、2024年末にはシンガポールが加わり13か国に達しており、IAEAやOECD/NEAなど、国際機関との連携も強化し活動を拡大させている。旭日大綬章では、内閣府経済再生担当相などを歴任した甘利明氏が受章。同氏は、2006年9月~08年2月に経済産業相を務め、当時、総合資源エネルギー調査会が取りまとめた「原子力立国計画」に基づき、2007年4~5月には、産業界同行のもと、カザフスタンやサウジアラビアなど、中央・中東アジアの諸国・地域を訪れ、資源外交を積極的に推し進めた。また、同氏は、原子力発電所における過去の不適切事案発覚に端を発した発電設備の総点検をリード。原子力発電に関しては、「特別な保安検査」を実施し、原子力安全に関する企業文化や組織風土の定着に結び付けた。この他、旭日重光章を元電源開発社長の北村雅良氏、瑞宝重光章を元東京工業大学(現、東京科学大学)学長の三島良直氏が受章。在職中、原子力関連では、それぞれ、大間原子力発電所計画の推進、原子燃料サイクルの研究も行う「科学技術創成研究院」創設で手腕を発揮した。
02 May 2025
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原子力規制委員会は4月30日、北海道電力の泊3号機(PWR、91.2万kW)について、再稼働に向けた安全対策が新規制基準に適合すると認める審査書案を了承した。パブコメを経て、今夏にも審査書が決定され、正式に合格となる。 2013年7月に北海道電力が新規制基準への適合性審査を申請して以来、「合格」までに要した審査期間は過去最長の12年近くに及んだ。特に審査過程では、敷地内に活断層がないことの証明に手間取った。安全対策工事はほぼ完了しているが、現在津波対策として、高さ19メートルの防潮堤の設置工事が進行(2024年3月28日に着工)している。 泊3号機の合格により、規制基準への適合審査を終えた国内原子炉は計18基となった。しかし実際の再稼働に至るまでは、「保安規定」の認可や地元自治体の同意など、課題が残っている。今後は地元自治体である泊村、共和町、岩内町、神恵内村および北海道の同意手続きが再稼働への焦点となる。 規制委員会の 山中伸介委員長は、会合終了後の定例記者会見で、記者より長きにわたった審査に関し「効率化の重要性を象徴するものだったのでは」と問われたのに対し、これまで通りに厳正な審査を行っていく姿勢を示した上で、「審査の根本的なあり様」に関し改善を図っていく必要性を示唆した。現在、北海道では次世代半導体の量産を目指す国策会社ラピダスが、千歳市で新工場の建設を進めているのに加え、ソフトバンクが苫小牧市に国内最大級のデータセンターを建設予定だ。次世代半導体は、人工知能(AI)、自動運転、5G通信、量子コンピューティングなどの先端分野での活用が期待されており、国際的な競争力の源泉とされている。データセンターはソフトバンク以外にも北海道への立地を計画する事業者が多い。今年1月に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表した最新の需要想定報告書によると、北海道エリアの需要電力量(送電端)は、2024年度(推定実績値)の292.14億kWhから2034年度には328.95億kWhへと大幅な増加が見込まれている。泊3号機の再稼働が、北海道エリアの電力安定供給において重要な役割を果たすことは間違いないだろう。
01 May 2025
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東京電力は4月24日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。〈東電発表資料は こちら〉2号機については、4月15日より着手したテレスコ式装置(釣り竿を引き伸ばすイメージ)による2回目の燃料デブリの試験的取り出しを4月23日に完了。今回は、昨秋に試験的取り出しを完了した1回目の取り出し場所とは異なる原子炉格納容器内の中心付近に近い箇所にアクセスできるものと判断し、燃料デブリを把持するとともに、その周囲の映像撮影に成功した。今回、2号機より取り出された燃料デブリは約0.2g。同機原子炉建屋内に設置のグローブボックスにおいて線量率や重量などの測定を行っており、1回目の取り出しと同様、日本原子力研究開発機構大洗工学研究所における詳細分析に向けて、構外輸送の準備が現在進められている。分析結果は、引き続き今後の燃料デブリ取り出し工法および安全対策や保管方法の検討に活用される運びだ。福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは4月24日の月例記者会見で、2024年10月の前回作業時より「奥側にアクセスできた」と、進捗の意義を強調。分析結果を通じペデスタル下の状況把握に努めていく考えを述べた。2号機における燃料デブリの試験的取り出しに関しては、テレスコ式装置による作業はこれで終了となる見込み。引き続き、英国との協同で開発されたロボットアームを用いた取り出し作業が2025年度内に予定されており、現在、準備中となっている。今回取り出された燃料デブリは4月25日、放射線を遮る容器に収納され、午前9時50分に福島第一原子力発電所を出発。午後1時半に原子力機構の施設に到着した模様。
25 Apr 2025
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東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は京浜事業所で4月22日、アラブ首長国連邦(UAE)のクリーブランドクリニックアブダビ(CCAD)との間で、同国初となる重粒子線がん治療装置の機器供給契約調印式を開催した。同装置の導入は中東初でもある。調印式には、東芝ESSの竹内努パワーシステム事業部長、駐日UAE大使のアル・ファヒーム閣下、CCADを傘下に収めるM42グループのアル・ノワイスCEO、量子科学技術研究開発機構(QST)の小安重夫理事長、経済産業省の渡辺信彦医療・福祉機器産業室長らが出席した。竹内事業部長は挨拶で、「重粒子線がん治療装置の導入は、中東地域における医療イノベーションの推進とがん治療向上への共通のコミットメントを示すもの」と指摘。1988年以来、ガス火力発電所建設やインフラ整備などを通じてUAEで培った信頼関係に触れつつ、今回のプロジェクトがUAEおよび中東地域における持続可能な発展への重要な節目になると強調した。また、「重粒子線治療により、より少ない回数と短時間の治療で、より効果的な治療を実現する」と語った。アル・ノワイスCEOは「今日は単なる契約の調印ではなく、人々の命を変える大きな一歩だ」と述べ、最新の重粒子線治療装置が導入されることで、これまで遠方への治療で経済的・精神的な負担を強いられてきた患者たちが、地元で高度な治療を受けられるようになると、その意義を強調。東芝の最先端技術とQSTの協力に感謝を表し、「ともに未来のがん治療に新たな1ページを!」と呼びかけた。小安理事長は、2023年の岸田文雄首相(当時)訪問時にUAEのアブダビで締結した研究協力覚書を振り返り、「QSTで重粒子線治療が始まって30年、16,000人を超える患者を治療してきた。今回アブダビでこの技術がさらに発展することを喜ばしく思う」と語った。今後もQSTとM42およびCCADの間で研究・人的交流を進め、世界的な治療普及を推進していく意向を示した。経産省の渡辺室長は、「重粒子線の導入に関しては、長年の議論を経て今回の契約締結に至った」と述べ、特に東芝の回転ガントリー型技術が患者負担の軽減につながることを評価。「アブダビでの治療が発展していくことを期待している」とエールを送った。アル・ファヒーム大使も、医師がたった一人だった1960年代のアブダビの医療事情から、現在までの大きな発展を紹介し、今回のプロジェクトが両国の協力関係をさらに深める節目になると期待を表明した。東芝ESSは今後も積極的に国内外での重粒子線治療装置の普及に取り組み、最先端医療の提供を通じて世界各地のがん治療水準向上に貢献する考えだ。
25 Apr 2025
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新潟県議会は4月18日の本会議で、知事提出の議案「直接請求に係る東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民条例の制定について」を否決した。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けては、現在、県の判断が焦点となっている。花角英世知事は、県内28市町村で開催された国による説明会が2月までに終了したのを受け、国の対応に一定の理解を示す一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆していた。再稼働の判断材料の一つとされる県の技術委員会からも最終報告書が提出されたほか、住民避難の課題に関しても、4月2日に原子力規制委員会の検討チームによる「原子力災害対策指針」改正に係る報告書が了承されたところだ。県議会に提出された議案は、市民団体が14万人超の署名を集め請求されたもの。これを受け、県議会は4月16日に臨時会を招集。特別委員会を設置し有識者からのヒアリングも行い審議を行ってきた。18日の特別委員会では同議案を否決。続く本会議では、修正案が提出されたが反対多数で否決となった。自由民主党の県議会議員は「原発再稼働の是非の県民投票という手段は、あまりにも多くの総合的な判断が必要で、一般有権者の判断を超える。政策判断は専門的な立場による意思決定がなければ、責任も安全も、公平性も保てない」として、二者択一のいわゆる「マル・バツ形式」で国策に対し住民の考えを示すことについて反対の考えを主張。これに対し、住民投票実施を求める議員からは、憲法の地方自治に関する規定に立脚し「間接民主主義を補完するものとして意義があり、広く県民の意思を確認することになる。知事が県民の意思を確認する方法を明らかにしない以上、県民投票の実施を求めることは妥当だと考える」と述べた。この他、住民投票実施に要する数億円の費用負担に関する意見も出された。23日には花角知事の定例記者会見が予定されており、今回の議会判断に対する発言が注目されそうだ。原子力発電所の再稼働をめぐる住民投票条例案に関して、最近では、茨城県議会で2020年6月に日本原子力発電東海第二発電所について議論となった経緯がある。いわゆる「NIMBY」施設に関する住民判断の事例として、沖縄県の辺野古米軍基地の前例が俎上にあがったものの、「国策である原子力発電は国が責任を持って判断すべき」といった意見が大勢を占め否決となった。
22 Apr 2025
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経済産業省の「使用済燃料対策推進協議会」が4月17日、1年3か月ぶりに開かれた。同協議会は、核燃料サイクル事業の推進について、事業者と話し合う場として、2015年以来、行われている。今回は、武藤容治経済産業相他、資源エネルギー庁幹部、電力11社および日本原燃の各社社長が出席。〈配布資料は こちら〉今回の同協議会開催は、2月の「第7次エネルギー基本計画」閣議決定後、初めてとなる。新たなエネルギー基本計画では、 (1)使用済み燃料対策の一層の強化 (2)再処理等の推進 (3)プルトニウムの適切な管理と利用 (4)高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化 (5)立地自治体等との信頼関係の構築――に基づき、バックエンドプロセスの加速化を図ることとされている。前回の協議会開催以降、核燃料サイクルをめぐる動きとしては、六ヶ所再処理工場およびMOX燃料工場のしゅん工目標について、日本原燃は2024年8月29日、審査に時間を要していることから、それぞれ「2026年度中」、「2027年度中」と、見直すことを発表。また、リサイクル燃料備蓄センター(むつ市)では、2024年9月26日に柏崎刈羽原子力発電所から使用済み燃料を入れたキャスク1基の搬入を完了し、同年11月6日に事業を開始している。また、最終処分については、北海道の寿都町と神恵内村に続き、佐賀県玄海町で2024年6月10日より文献調査が開始されている。武藤経産相は、事業者より、使用済み燃料対策の進捗について報告を受け、六ヶ所再処理工場のしゅん工目標達成に向けた支援、使用済み燃料対策強化に向けた連携強化とともに、高レベル放射性廃棄物最終処分の取組強化、国・原子力発電環境整備機構の協力について要請。具体的には、 (1)六ヶ所再処理工場のしゅん工目標達成に向けた日本原燃への支援 (2)使用済み燃料対策 (3)事業者間の連携を通じたプルトニウム利用のさらなる促進 (4)最終処分およびガラス固化体の搬出期限遵守 (5)地域振興――の5項目をあげた上、六ヶ所再処理工場のしゅん工に向けては、人材確保、サプライチェーンや技術維持の必要性を指摘。使用済み燃料対策としては、再稼働が進む関西電力による「使用済み燃料対策ロードマップ」の確実な実行や地元への丁寧な説明などをあげている。
18 Apr 2025
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年度の国内原子力発電所の平均設備利用率は32.3%、総発電電力量は934億8,290万kWhで、それぞれ対前年度比3.4ポイント増、同11.2%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2024年度中は、東北電力女川2号機(2024年11月15日発電再開、同年12月26日営業運転再開)がBWRとして初めて新規制基準をクリアし再稼働したのに続き、中国電力島根2号機(2024年12月23日発電再開、2025年1月10日営業運転再開)も再稼働。これら2基のBWRを合わせ、再稼働した原子力発電所は、東北電力女川2号機、関西電力美浜3号機、同高浜1~4号機、同大飯3、4号機、中国電力島根2号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3、4号機、同川内1、2号機の計14基・1,325.3万kWとなった。再稼働していないものも含めた国内の原子力発電プラントは、いずれも前年度と同じく計33基・3,308万kWとなっている。因みに再稼働した14基のみでの設備利用率は80.5%となる(女川2号機と島根2号機は年度当初を期首として算出)。国内の長期運転プラントは、関西電力美浜3号機、同高浜1、2号機に加え、新規制基準をクリアし再稼働の先陣を切った九州電力川内1号機が2024年7月4日に、関西電力高浜3号機が2025年1月17日に40年超運転入りとなった。2024年度は、11月14日に高浜1号機が国内初の50年超運転入りしたことも特筆される。2025年度中には、同2号機もこれに続き運転開始から50年に入る見込みだ。原子力発電所の高経年化対策に関しては、2023年5月31日に成立した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)に基づき、2025年6月6日に高経年化した原子炉に対する新たな規制が施行される。同法により、30年超運転のプラントについて、10年以内ごとに「長期施設管理計画」の認可を受けることが義務付けられた。現在再稼働している計14基のうち、12基が施行日時点で、同計画を認可されている必要があり、事業者からの申請を受けて、現在、原子力規制委員会で審査が進められている状況だ。*2024年度の各プラントの稼働状況は こちら をご覧ください。
17 Apr 2025
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