アルマラス原子力発電所 2030年までの運転期間延長を要請
13 Nov 2025
スペインの原子力事業者であるアルマラス・トリリョ原子力発電会社(Centrales Nucleares Almaraz-Trillo=CNAT)は10月30日、環境移行・人口問題省(MITECO)に対し、アルマラス原子力発電所(PWR, 100万kW級×2基)の運転期間を2030年6月まで延長するよう正式に要請した。現行の閉鎖予定時期は1号機が2027年11月、2号機が2028年10月となっている。
CNATは声明で、同発電所の安全性や信頼性、効率性を確保しつつ、運転を継続する姿勢を強調。「世界でも高い運転水準を維持しており、引き続きその基準を維持していく」としている。同発電所は、世界原子力発電事業者協会(WANO)のパフォーマンス指標でも、最高評価にあたる「レベル1(エクセレンス)」を獲得。年間約5,000万ユーロ(約90億円)をバックフィットに投資している。発電所は、イベルドローラ(53%)、エンデサ(36%)、ナチュルジー(11%)の3社が共同所有する。
アルマラス原子力発電所は、ポルトガル国境に近いエストレマドゥーラ州カセレス県に位置し、スペインの電力消費量の約7%(約400万世帯分)を供給。同発電所および関連事業を含め約4,000人が就業し、燃料交換時期には約1,200人の雇用が追加されるなど、地域経済を支える重要な雇用基盤となっている。
スペインでは現在、5サイト・計7基、合計出力計739.7万kWeが運転中で、全基が40年超の運転認可を取得済み。2024年の原子力シェアは約20%を占め、稼働率は約84%。一方で、政府の脱原子力政策のもと、現行計画では2027~2035年までに順次閉鎖が予定されており、2030年までに約320万kWに縮小し(現在運転中の7基中4基が閉鎖)、2035年には0となる見込み。
こうしたなか、今年2月、スペイン国会(下院)は中道右派の国民党(PP)が提出した、同国の原子力発電所の運転期間延長と安全性向上を政府に求める決議を可決。さらに同月には、スペイン原子力産業界が、長期運転を支持するマニフェストを発表し、原子力の段階的廃止政策が与える産業競争力と社会への悪影響について懸念を表明した。また4月にイベリア半島で発生した大規模停電を機に、国内では2035年までの原子力廃止計画の是非をめぐる議論が再燃。スペインの原子力産業団体であるForo NuclearのI. アラルース理事長は、「原子力は電力系統の信頼性にとって不可欠であり、段階的廃止方針を再考すべき」と主張している。





