原子力産業新聞

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青森県 原子力立地交付金を観光・医療・防災に活用

18 Dec 2025

中西 康之助

六ヶ所再処理工場 ©日本原燃

原子力関連施設が多く立地している青森県は1212日、「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業交付金」を活用した地域振興の具体的な事業内容を公表した。交付金総額40億円のうち、約6.6億円の充当先の内訳が公開され、防災関連設備の整備や観光施設の整備、看護学科に特化した大学の運営費等に充てられる。残る約33.4億円については、今後策定される予定だ。

同交付金は、原子力発電施設等の稼働状況が相当程度変化した県を対象に、地域振興を目的として国から交付金が交付される制度。各都道府県が策定した地域振興計画に基づき交付される仕組みで、制度の根拠は「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業交付金交付規則」(経済産業省告示第222号)に定められている。

青森県には、建設中も含め、東北電力および東京電力の東通原子力発電所、大間原子力発電所(電源開発)、六ヶ所再処理工場(日本原燃)、使用済み燃料中間貯蔵施設(リサイクル燃料貯蔵)などが立地し、これら施設が今回の交付金の対象施設となっている。

同県は、これらの施設の再稼働等に向けた動きが進む一方で、稼働延期や停止の長期化といった状況に伴い、立地地域が将来像を描きにくい状況が続いてきた。

こうした状況を踏まえ、国、青森県、立地市町村、事業者が一体となり、地域と原子力施設が共生する将来像を描く場として、202311月に「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」が設置(資源エネルギー庁が主催)された。202410月の第3回会議では、2030年後を見据えた地域の将来像や基本方針、具体的な取組を示す工程表がとりまとめられ、これに基づき、交付金の配分の前提となる地域振興計画が策定、202511月に経済産業省から承認を受けた。

計画によると、六ヶ所村で、津波発生時の住民避難を円滑に進めるための誘導標識や目標地点標識の整備等に4,000万円が充てられる。

さらに、原子力災害への対応可能な医療体制の構築・強化を目的に、総事業費約14億円で弘前大学が整備を進める「放射線安全総合支援センター」に対し、1億円を支援する。むつ市では、看護師不足の解消を目的に、看護学科に特化した「八戸学院大学むつ下北キャンパス」の運営支援に、約1.9億円を充てる。

その他、農林畜産業の高度化を目指す「しもきたハイテクフードバレー推進事業」に3,000万円。むつ市役所本庁舎の未整備エリアを改修し、関係機関との連携の強化、情報収集・分析・発信機能の向上等、迅速かつ効果的な災害対応のための体制を確立することを目的とした「むつ市デジタル防災センター」の整備に200万円が充てられる。

その他、東通村では、名所である尻屋埼灯台周辺に、観光施設や駐車場を整備する計画があり、総事業費約7億円のうち3億円が交付金で賄われるという。

交付金の総額は40億円で、1会計年度あたりの交付上限は10億円。地域振興計画が認められた会計年度から最長10年間交付される仕組みで、青森県では2025年度から2034年度までの活用を見込んでいる。

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