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AI時代に原子力再び Googleが大型炉再稼働に投資へ

11 Nov 2025

佐藤敦子

デュアン・アーノルド発電所
©NextEra Energy, Inc.

米大手電力会社ネクストエラ・エナジー社は10月27日、米IT大手のGoogle社と共同で、アイオワ州のデュアン・アーノルド原子力発電所(BWR, 62.4kWe)の再稼働に向けた協定を締結したと発表した。

Google社は同発電所の再稼働後、供給される電力を25年間にわたり購入する電力購入契約(PPA)を結び、AIやクラウドサービスの拡大に伴い急増する電力需要を、エネルギー企業とIT企業が協力して支える新たなモデル構築を目指す。

このPPAにより、Google社が25年間にわたり電力を固定価格で購入することで、ネクストエラ社は再稼働に必要な巨額投資を長期収益で回収できる見通しを得た。再稼働にかかる費用は州の電力料金に転嫁されず、一般家庭や地域企業への負担は生じない。電力需要家と発電事業者が直接契約を結ぶ仕組みは再生可能エネルギー分野では一般化しているが、原子力に適用されるのは異例であり、政府補助に依存しない「民間資金による原子力再稼働」として注目を集めている。

アイオワ州唯一の原子力施設であるデュアン・アーノルド発電所は、1975年に運転開始。45年以上にわたり稼働したのち、経済性の悪化を理由に2020年に閉鎖された。当初は2034年までの運転が認可されていたが、地域電力会社との売電契約期間短縮と同年の自然災害による設備損傷により、閉鎖が前倒しされた。AIやデータセンター需要の急拡大により電力不足が顕在化し、ネクストエラ社は再稼働の可能性を模索。今年1月に米原子力規制委員会(NRC)への運転再開を申請しており、現在は2029年の運転再開を目指して審査が進められている。今回のGoogle社との契約は、同計画の実現に向けた“決定打”と位置付けられる。

Google社にとってアイオワ州は、米国中西部におけるデータセンター運営の中核拠点である。同社は2007年に最初のデータセンターを開設し、AIやクラウドサービスの主要拠点として運営。今年5月には約70億ドル(約1兆円)の追加投資計画を発表し、データセンター新設や既存施設の拡張、人材育成プログラムなどを進めている。今回のPPAは、こうしたインフラ投資を持続可能に支えるクリーンで安定した電力確保策として位置づけられる。

これまで民間企業による原子力投資は次世代炉の開発支援が中心だった。Google社が既存の大型炉に対し長期的なPPAを結ぶのは異例であり、投資の焦点が「新技術の開発」から「既存炉の再評価・再活用」へと移りつつあることを象徴している。AI時代の電力需要に応えるため、既存原子力資産を“クリーンで即応性の高い電源”として再評価する動きは、今後他の地域や事業者にも波及する可能性がある。

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