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シンガポール 原子力導入の再検討へ 

10 Nov 2025

佐藤敦子

シンガポール国際エネルギー週間に出席するタン・シー・レン大臣
©SINGAPORE INTERNATIONAL ENERGY WEEK

シンガポール通商産業省(MTI)は1027日、報告書「シンガポールの原子力評価能力の構築(Developing Singapore’s Nuclear Energy Assessment Capability)」を発表した。報告書はMTI、持続可能性・環境省(MSE)、エネルギー市場庁(EMA)、国家環境庁(NEA)の4機関が共同で作成。原子力導入の可能性を科学的・客観的に評価するための手順と視点を体系化している。

同国は再生可能エネルギー資源に乏しく、総発電電力量の約95%を天然ガスに依存している。太陽光発電の導入を進めても10%程度にとどまる見通しで、水素、地熱、先進原子力の3つを将来有望な低炭素エネルギー源として位置づけている。

同国は2012年にも原子力発電の実現可能性を調査したが、国土が狭く人口密度が高いことを理由に、導入が見送られた経緯がある。その後小型モジュール炉(SMR)など安全性と柔軟性を高めた次世代技術が進展したことから、政府は検討を再開。報告書では、原子力が同国のエネルギー政策の三本柱である「エネルギー安全保障・経済性・環境の持続可能性(エネルギートリレンマ)」に対応し得ると評価している。

同日開幕したシンガポール国際エネルギー週間(SIEW)の開会スピーチでタン・シー・レン大臣(人材大臣兼 通産省エネルギー・科学技術担当大臣)は、「SMRなどの新技術を含む原子力エネルギーは、安全で信頼性が高く、コスト競争力のある選択肢になり得る」と述べた。さらに、米国やフランスとの協定締結、米アイダホ国立研究所や米バテル記念研究所との協定を例示し、ノウハウ共有と人材育成を通じた評価体制の整備を進める方針を示した。

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