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仏規制当局 地層処分施設シジェオの安全評価を公表

19 Dec 2025

佐藤敦子

「Cigéo」施設の全体図
©ANDRA

フランスの原子力安全・放射線防護局(ASNR)は124日、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が20231月に提出した、高レベル放射性廃棄物(HLW)と長寿命中レベル放射性廃棄物(ILW-LL)を対象とする地層処分施設「Cigéo(シジェオ)」の設置許可申請に関する安全性評価について、最終的な意見書を公表した。

Cigéoは、ANDRAが進める放射性廃棄物の深地層処分場プロジェクトで、フランス東部のムーズ県とオートマルヌ県にまたがるビュール地区周辺に建設される計画。地下約500メートルの粘土層に、合計約83,000立方メートルの高・中レベル放射性廃棄物を処分する想定となっている。施設は、放射性廃棄物の発生事業者であるフランス電力(EDF)、フラマトム、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)等が処分費用を負担し、ANDRAが管理、運営する。本格的な処分作業は20402050年ごろに開始し、約100年間にわたって続くことが想定されている。

ASNRは20233月、仏政府のエネルギー行政当局から審査を委託され、申請書の技術的審査を実施した。審査は、安全評価に用いる基礎データ、施設操業中の安全性、閉鎖後の安全性の三つの観点から行われた。審査過程で地域の委員会や市民の代表者らとの対話が行われたほか、意見案に対する公開意見募集(パブリックコメント)も実施された。意見募集では、安全性の立証、処分対象廃棄物の範囲、今後の公開審査の進め方などに関する懸念が寄せられたという。

ASNRは最終意見で、安全性の説明は設置許可申請の段階としては成立していると評価した。一方で、操業開始前にも追加の検証が必要だと指摘し、操業は当初、試験的な段階に限定されるべきだとしている。その上で、審査過程で示された対応方針に基づき申請内容が補完されれば、今後の公開審査に進むことは可能であるとの見解を示した。

ANDRAのL. エヴラードCEOは、「プロジェクトの開発において重要な一歩を踏み出した。30年にわたり安全基準を遵守し、設計や住民参加、地域社会との対話にベストを尽くして開発を進めてきた」とコメントしている。

ASNRの意見書と公開意見募集の概要は、国会の科学技術評価委員会(OPECST)および原子力安全に関する透明性・情報公開委員会(HCTISN)に提出され、今後の政策判断や社会的議論に付される。

フランスでは2006年、放射性廃棄物等管理計画法により、高レベル放射性廃棄物および長寿命中レベル放射性廃棄物について「可逆性のある地層処分」を基本とする方針が定められた。処分事業の各段階で得られる知見を踏まえて設計の変更や廃棄物の回収を可能とし、将来世代に判断の選択肢を残す考え方だ。ANDRAでも、操業を当初から全面的に行うのではなく、可逆性と安全性を検証する「パイロット操業フェーズ」から開始する計画となっている。

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