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緊迫する中東情勢 原子力の再評価が高まる-パリで原子力エネルギー・サミットが開催

11 Mar 2026

桜井久子

© @EmmanuelMacron/ X

フランス・パリで310日、フランス政府と国際原子力機関(IAEA)共催による第2回「原子力エネルギー・サミット」が開催された。原子力エネルギー利用に対する世界的な関心が高まる中、国家元首や政府首脳、国際機関や金融機関のリーダー、業界の専門家が一堂に会し、主要なエネルギーおよび気候課題に対処する上での民生用原子力エネルギーの役割について議論した。

原子力は現在、世界の総発電電力量の約10%を占めており、多くの国で低炭素かつ安定した電源として、再生可能エネルギーを補完する重要な役割を担っている。2025年9月、IAEA5年連続で原子力拡大の予測を上方修正し、世界の原子力発電設備容量が2050年までに倍増する可能性があるとの見通しを発表。電力需要の増加、脱炭素化の必要性、エネルギー・セキュリティを背景に、同サミットは国際協力を強化し、民生用原子力の安全かつ持続可能な発展にむけた具体的な解決策を模索する重要な機会と位置付けられた。

2024年3月にベルギー・ブリュッセルで開催された前回のサミットをふまえ、本サミットでは原子力発電国と、原子力導入を検討している新興国との間で国際協力を推進するとともに、国家、国際機関、金融界、産業間のパートナーシップを促進させて、気候目標に沿った、安全で経済的に実現可能な民生用原子力エネルギーの開発の基盤を築くことを目的としている。さらに、2026年春に開催される核拡散防止条約(NPT再検討会議に先立ち、最高レベルの安全、安全性、核不拡散の確保という国際的な公約に沿った原子力エネルギーの平和利用を強調している。

サミット冒頭、フランスのE. マクロン大統領は、民生用原子力発電がエネルギー・セキュリティの確保に寄与しており、「フランスの2025年の原子力発電電力量は約3,700kWeを記録し、900kWe以上のカーボンフリー電力を輸出した。原子炉の国内における新規建設プログラムも前進している。より不安定で、断片化し、不確実な世界において、それは主権の選択であり、競争力の選択であり、未来への保証でもある。フランスはこの選択をした」と強調した。

続けて、IAEAR. グロッシー事務局長は、「原子力は、低炭素で天候や燃料供給の混乱の影響を受けにくい安定した電源として、エネルギー・セキュリティと電力システムの安定に寄与する。再生可能エネルギーの導入を支えるベースロード電源として、AIの普及などによる電力需要の増加にも対応可能。現在、約60か国が導入を検討しており、原子力の拡大には予測可能な政策、強固なサプライチェーン、資金調達、標準化の推進が重要となる。IAEAは国際金融機関と連携し、各国の原子力導入を支援している」と語った。

欧州委員会のU. フォンデアライエン委員長は、欧州は、化石燃料を高価で不安定な輸入に完全に依存し、現在の中東危機はその脆弱性を痛烈に思い知らせたと言及。「1990年は欧州の電力の3分の1が原子力由来だったが、現在は15%程度に過ぎない。欧州が、信頼性が高く廉価な低排出電源である原子力に背を向けたのは戦略的な誤りだった」と述べた。「欧州には自国産の低炭素エネルギー源が必要だ。原子力と再生可能エネルギーの組み合わせが重要であり、原子力は24時間、年間を通じて電力供給が可能である」と原子力の優位性を強調。そのうえで、「欧州には主導権を握るための全てが揃っている。原子力分野には50万人の高度な技能を持つ労働者がいる。欧州が次世代原子力エネルギーの世界的拠点となるために、我々は迅速かつ大規模に前進する意欲がある」とし、「2030年代初頭までにSMRの欧州における実用化を支援するため、革新的原子力技術への民間投資を後押しする2億ユーロの保証枠を創設する」と新たなSMR戦略を明らかにした。

その後、各国首相および政府首脳の声明が行われ、午後には、パネルおよび円卓会議で、エネルギー転換およびカーボンフリー電力へのアクセスにおける原子力の役割、特に新規導入を検討する諸国の原子力プロジェクトを支える資金調達、SMRを含む先進炉技術とイノベーション、産業利用の可能性のほか、燃料供給保証、使用済み燃料や廃棄物の管理、施設の建設・運営に必要なスキルやサプライチェーンの開発などについて議論された。

なお、同サミットにおいて、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28、於UAE・ドバイ)で署名された、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にするという「原子力の三倍化宣言」にあらたに、ブラジル、ベルギー、中国、イタリアが署名した。今年3月初めに署名した南アフリカと併せ、署名国は38か国[1] … Continue readingに拡大した。

脚注

脚注
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アルメニア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、チェコ、エルサルバドル、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、イタリア、ジャマイカ、日本、カザフスタン、ケニア、韓国、コソボ、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ナイジェリア、ポーランド、ルーマニア、ルワンダ、セネガル、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、スウェーデン、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、英国、アメリカ合衆国 (以上38か国)

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