
英原子力産業協会(NIA)は9月15日、英国の民生原子力産業における雇用者が2026年に初めて10万人を超え、10万2,606人に達したことを、年次報告書「Jobs Map」で明らかにした。2021年の61,371人から5年間で67%増加し、2025年からも4,433人増えている。雇用拡大の主な要因として、今後の原子力プロジェクトに対する政府の継続的な投資を挙げている。建設が進むヒンクリー・ポイントC(欧州加圧水型炉: EPR, 172.0万kWe×2基)に加え、政府が株式の45%を保有するサイズウェルCプロジェクト(EPR, 172.0万kWe×2基)では過去1年間で雇用が62.6%増加したほか、建設期間中に1,500人の見習いが採用される予定。北ウェールズのアングルシー島で計画されるロールス・ロイス社製SMR採用のグウィネズ(Gwyndod)発電所(ウィルヴァ・サイトに隣接)建設プロジェクト(PWR, 47.0万kWe×3基)では、英国全土でさらに8,000人、うち地元で3,000人を雇用する見込みだ。地域別では、原子力関連雇用の86%がロンドンと南東部以外にあり、特にイングランド南西部と北西部での増加が目立つ。南西部の雇用は2021年の12,934人から2026年には34,084人へ163.6%増加し、ヒンクリー・ポイントC建設プロジェクトが大きく寄与している。北西部も30,445人に達し、セラフィールドを中心に燃料サイクル、発電、廃止措置など幅広い分野で雇用を支えている。原子力産業の雇用は英国各地に広がっており、稼働中の原子力発電所で約5,000人の雇用を支えている。また、オックスフォードシャーには世界有数の核融合研究拠点があり、英国原子力公社(UKAEA)が3,000人近くを雇用している。西側諸国で最大の濃縮業者であるウレンコ(Urenco)社を含め、原子燃料関連の雇用も増加。廃炉事業においてもイングランド、スコットランド、ウェールズ全域で数千人の雇用を支えており、地域社会に雇用や技能、投資をもたらしていると分析している。NIAのT. グレイトレックスCEOは、「原子力セクターは引き続き成長と投資をけん引し、原子力産業が地域経済にもたらす波及効果により、特に沿岸地域で数万人規模の専門性の高い雇用が創出されている」と指摘。政府が原子力規制改革を全面的に実施し、新規原子力プロジェクトのコストと工期を削減することで、さらなる成長と雇用拡大につながるとしている。
30 Sep 2026
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米国の濃縮事業者であるセントラス社は、米マイクロ炉開発事業者であるラディアント・インダストリーズ社およびアンタレス・ニュークリア社と、それぞれ高純度低濃縮ウラン(HALEU)の複数年供給契約を締結した。ラディアント・インダストリーズ社とは9月9日に契約を締結。同社が開発する、ヘリウムガス冷却マイクロ炉「カレイドス」(電気出力約0.1万kW)は、遠隔地やデータセンター、米陸軍の「ヤヌス計画」などの防衛やその他の商業・産業用途を想定した可搬型マイクロ炉。ラディアント社は「カレイドス」の試験を経て、商業利用や国家安全保障分野への展開をめざしており、今回の契約によりHALEUを確保し、原子炉本体の開発と並行して燃料供給体制を強化したい考え。一方、アンタレス・ニュークリア社とは9月17日に契約を締結した。同社は、ナトリウムヒートパイプ冷却マイクロ炉「R1」(電気出力100kW~1,000kW)を開発しており、今回の契約により、宇宙・国家安全保障分野を含むR1の開発・展開に必要なHALEUを確保する。R1は、ノースカロライナ州フォート・ブラッグにおける米陸軍の「ヤヌス計画」やテキサス州サンアントニオ統合基地における米空軍の「先進原子力プログラム(ANPI)」にそれぞれ採用されている。また、宇宙用原子炉の実証を目的とした宇宙軍の「戦略的ブレークスルー賞」にも選定されている。セントラス社は米エネルギー省(DOE)とのHALEUの実証生産に関する2022年の契約に基づき、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離濃縮プラント(ACP)で2026年6月末までに累計1,900kg以上のHALEUを生産した。現時点でACPは西側諸国で唯一、HALEU生産の認可をもつプラントである。米国が最後に所有した大規模なウラン濃縮工場(ガス拡散法)は1950年代に建設され、2013年に永久に閉鎖されており、米国は現在、濃縮ウラン供給を海外企業に完全に依存している。今後数年で原子力発電向け需要の増大が予想され、2028年からロシア産濃縮ウランの輸入が完全に禁止される中、米国所有のウラン濃縮能力の拡大が喫緊の課題となっている。こうしたなか、セントラス社は2025年12月、HALEUおよび低濃縮ウラン(LEU)の大規模生産を含む、数十億ドル規模の拡張計画を開始。今回の供給契約では代金の前払いが定められ、同社の生産能力拡大を資金面で後押しする。同社は商業利用や国家安全保障分野向けの可搬式マイクロ炉の展開に向けて、2020年代末までにHALEUの供給を開始する計画だ。なおセントラス社は、同社のAC100遠心分離機について、実用化段階にある唯一の米国発祥の技術であり、製造も国内のサプライチェーンに依存していると強調。このため、海外起源の技術や資材使用による平和利用上の制約を受けず、国家安全保障/防衛用途に使用可能になるとしている。
30 Sep 2026
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国際原子力機関(IAEA)の輸送拒否に関する作業部会(Denial of Shipment Working Group, DoS WG)は9月16日、第70回IAEA通常総会に合わせ、「放射性物質の安全かつ確実な輸送の円滑化に関する白書(White Paper on the Facilitation of the Safe and Secure Transport of Radioactive Material)」を発表した。放射性物質の輸送の遅延・拒否の低減に向け、加盟国や国際機関などが取り組むべき対策をとりまとめた。国際・国内の規則に適合した放射性物質であっても、輸送事業者や港湾、空港などが輸送や取扱いを拒否する事例が続いており、特に短寿命の医療用放射性物質(RI)や放射性医薬品への影響を問題視している。医療用RIの中には半減期が短く、製造後、速やかに医療機関などへ届ける必要があるものもある。白書は、輸送の遅延や拒否が、救命目的で使用される短寿命の医療用RI、とりわけ放射性医薬品の利用に影響を及ぼし、患者や事業者、加盟国に具体的な影響をもたらしていると指摘した。白書はDoSの主な原因として、放射性物質の輸送に対する過度に否定的な認識、医療用放射性物質や社会的便益への理解不足、国ごとに異なる規制要件の複雑さや調整不足、保険や経済面での障壁、運送事業者の商業的判断、放射性物質を取り扱う港湾・空港や訓練を受けた人員の不足などを挙げた。その結果、サプライチェーンへの影響や輸送ルートの長期化、コストの増大、物流の不安定化を招き、特に医療用放射性物質では診断・治療への影響が生じていると指摘。さらに長時間の保管・輸送は安全・セキュリティ上のリスクや規制違反のリスクも高めるとしている。こうした分析をふまえ、DoSの低減に向け、以下の8つの緩和策を提言している。「放射性物質の安全かつ確実な輸送の円滑化に関する共同声明」への関心国の自発的な支持IAEAや産業界、関心国による各国窓口(National Focal Point=NFP)の持続的なネットワークの維持各国の規制上の相違点をまとめた公開リストの作成・維持IAEA、IMO(国際海事機関)、ICAO(国際民間航空機関)、UNECE(国連欧州経済委員会)などの国際機関間との連携強化あらゆるレベルでのアウトリーチ活動の継続や関連ウェブページでの最新情報の提供を通じた、放射性物質への過度なリスク認識の改善放射性物質の輸送に関する規制インフラが未整備または不十分な加盟国の能力強化医療用放射性物質の輸送円滑化に向けた、物質・輸送物の国連分類の変更提案訓練を受けたスタッフの配置を含め、放射性物質の輸送を取り扱える空港・港湾の確保白書は、DoSを完全に解消することは困難としながらも、各国の継続的な政治的関与や規制の調和、適切な国内インフラの整備、NFPなど国内実施体制の強化や国際機関との連携により、その影響を大幅に低減できると指摘。IAEAや国際機関、産業界などによるこれまでの取組だけでは持続的な解決は難しいとして、今後は加盟国自身が主体的かつ継続的に取り組む必要性を強調した。DoS WGは12月7~11日の最終会合までに、白書の勧告の実施を継続的に支援するため、安全・セキュリティを確保した国際輸送の円滑化に関する国際フォーラムの設置を提案する方針。
29 Sep 2026
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欧州投資銀行(EIB)は9月15日、フィンランドを拠点とするスタートアップ企業ステディ・エナジー社に最大4,000万ユーロを融資することを明らかにした。この融資により、同社は熱供給専用のSMR「LDR-50」(PWR, 5万kWth)の開発を加速させる。EIBにとって、小型モジュール炉(SMR)プロジェクトへの初融資となる。欧州のクリーンエネルギーイノベーションや競争力、エネルギー安全保障の強化に向けたEIBの取組みの一環であり、2030年代初めまでに欧州初のSMRを稼働させるという欧州委員会の戦略を支援する。EIBは欧州連合(EU)の政策金融機関で、世界最大級の多国間開発銀行の一つ。今回の融資には、イノベーションとグリーン・トランジションへの投資を支援するEUの「InvestEU」プログラムによる支援が活用されている。過去には加盟国間の原子力に関する意見の相違から、新規原子力プロジェクトへの資金提供は事実上、制限されてきたが、2025年にはルーマニアのチェルナボーダ原子力発電所1号機(CANDU-6, 70.6万kW)の改修プロジェクトに8億ユーロ、フランス南部のジョルジュ・ベスII濃縮プラント拡張プロジェクトに4億ユーロを融資している。LDR-50は、地域熱供給ネットワークに低炭素の熱を供給するよう設計されている。実績のある既存の軽水炉技術を基盤に、受動的安全機能とシンプルな設計を組合せた地下設置型。エスプレッソマシン並みの安全な低圧設計で、熱を電気に変換する必要がなく、生産した熱のほぼ100%を地域暖房システムに直接供給できる。設計の簡素化により、設備投資や生産コストの削減も図られている。また、EUの最終エネルギー需要のほぼ4割が冷暖房向けで、その大部分を化石燃料に依存していることから、LDR-50の導入による輸入燃料への依存低減が期待されている。ステディ社は2023年、フィンランド国営のVTT技術研究センターからスピンアウトして設立された。現在、ヘルシンキの旧サルミサーリ石炭火力発電所サイトに実証用パイロット施設(燃料装荷なし)を建設中。同施設では、主要な安全システムの動作実証や、商業展開前の技術試験、認可取得に必要な検証などを行う。EIBの融資は、2026年~2028年にかけて実施されるこれらの活動を支え、商業化を後押しする。EIBのK. ネハンマー副総裁は、「我々は、欧州で有望なSMR先駆者を積極的に支援していく。SMRは再生可能エネルギーと併せて安定的で低炭素なエネルギーを供給し、化石燃料への依存やエネルギー価格の変動リスクを低減するとともに、より安全で強靭な欧州のエネルギーミックスの構築に寄与できる」と述べた。
29 Sep 2026
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イタリア議会上院は9月23日、「原子力発電再開に向けた法令整備に関する権限を政府に委任する法案」を賛成81票、反対51票、棄権7票で可決、法案は成立した。国家エネルギー戦略の策定および先進原子力技術の導入を目的とした近代的な規制枠組みの整備が進められる。同法は政府に対し、12か月以内に発電や燃料管理、既存発電所の廃止措置、放射性廃棄物の管理、さらには核融合技術の開発に至るまで、原子力セクター全体を包括的に規制する施行令を策定するよう義務付けている。法案は、G. メローニ首相およびG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相の提出によるもの。下院では今年6月4日に可決された。同法案では原子力政策について、2050年までの気候中立の達成、エネルギー安全保障とエネルギー自立の強化、エネルギーシステムのレジリエンス向上、国民や企業のエネルギーコストの抑制といった明確な目標が掲げられている。特に、従来の大型炉ではなく、小型モジュール炉(SMR)や先進モジュール炉(AMR)などの革新的な原子力技術を対象に、欧州および国際的な最高水準の安全基準に沿って、適切な許認可・規制手続きの下で評価できる体制の構築を重視。原子力分野の再始動にあたり、研究機関、大学、国内産業界の参画により、蓄積された科学・技術面の知見を活用する方針である。さらに、原子力安全、放射線防護、放射性廃棄物の責任ある管理、原子力発電所のライフサイクル全体にわたる必要な資金の確保を求める考え。国民や関係する地域社会に対する情報公開と透明性にも大きな重点を置き、情報提供や意見聴取を行うほか、原子力分野を担う新しい人材の育成や国内産業のサプライチェーンの強化に向けた措置も盛り込まれている。本法案の可決を受け、メローニ首相は、「ほぼ40年ぶりに原子力でエネルギーを生産するための規制枠組みを取り戻す、勇気ある良識的な選択だ」と評価。現在、近隣諸国の原子力発電による電力を輸入しているが、原子力導入により海外への依存を減らしてエネルギー安全保障を強化するとともに、再生可能エネルギーと組み合わせて、安定した電力供給と脱炭素化を実現していく考えを示した。ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相は、原子力の導入時期について「2033年から2034年」の期間を示唆し、再生可能エネルギー、原子力および化石燃料との適切なバランスを取ることで価格を抑え、競争力のある国にすると述べた。政府は2024年7月、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出。文書の中で原子力(SMR、AMR、マイクロ炉)と核融合の発電規模は2050年までに約800万kWe(原子力760万kWe、核融合40万kWe)となり、国内の総電力需要の約11%を供給し、さらに最大22%(1,600万kWe)に達する可能性もあると予測。また、原子力を利用した場合、原子力を利用しない場合と比較して、約170億ユーロのコスト削減につながるとともに、気候中立目標の達成に寄与すると推定している。
28 Sep 2026
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米国防総省(戦争省)は9月9日、インディアナ州にある戦闘能力の開発・高度化を担う拠点の一つであるクレーン海軍兵器基地(Naval Weapons Station Crane)に、次世代マイクロ炉(Micro Modular Reactor, MMR)を初配備すると発表した。国家安全保障に不可欠なミッションに必要なエネルギーインフラの整備を図る。このプロジェクトは、2025年5月に発令された大統領令「国家安全保障のための先進炉技術の導入」と「原子力産業基盤の再活性化」に基づくもの。一般の送電網に依存せず、サイバー攻撃や災害などで停電が発生した場合でも、基地の重要作戦(電子戦や兵器技術開発など)を継続できるレジリエンス(回復力)を高めるのが目的。大統領令で定められた2028年9月までに配備を完了する。採用炉は現時点では未定。なお、MMRは政府所有ではなく、民間企業が所有・運用する。国防総省は最も厳しい条件下でも重要な作戦を中断なく遂行できる能力を維持するため、米国の原子力産業基盤を最大限に活用して基地への電力の安定供給を確保するとともに、高度な人材の雇用創出や原子力サプライチェーンの強化を通じ、国防に必要な産業能力の再構築をめざしている。インディアナ州にとって発電炉の配備は初。米陸軍のヤヌス計画(Janus Program)が実施主体となり、海軍、国防イノベーションユニット(DIU)、国防総省重要技術担当次官補室による軍種横断的な取組みに、インディアナ州政府が加わり、共同でプロジェクトを実施する。ヤヌス計画は当初から陸軍以外への展開も想定されており、国防総省内で原子力エネルギーを所管する陸軍の専門知識や規制権限に、NWSクレーンにおける海軍の運用任務、DIUが持つ民間の技術革新へのアクセス、国防総省の重要技術に関する取組みを組合わせ、統合軍全体の任務遂行能力の強化を図る。インディアナ州のM. ブラウン知事は、クレーン海軍兵器基地が米国の先進原子力開発の中心地となり、国防のハブとしての地位をさらに確立するとして、今回のマイクロ炉の配備決定を歓迎している。
28 Sep 2026
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豪サイレックス・システムズ社は9月14日、同社が51%を保有する米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社と加カメコ社が、独占的オフテイク契約((将来生産される電力・資源・商品などを、買い手が一定量・一定条件で長期的に引き取ることを約束する契約。プロジェクトの収益安定化と資金調達(プロジェクトファイナンス)の基盤となる仕組み。))を締結したことを明らかにした。カメコ社は同契約に基づき、GLE社が米ケンタッキー州で建設計画中のパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)で生産予定の天然ウラン級UF₆から濃縮ウラン製品まで、生産品の100%を購入し、独占的に販売する。GLE社はサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の独占的に使用する権利を保有。サイレックス社は、本契約によりGLE社の将来のすべての燃料製品の販路が確保され、PLEFの将来の最終投資決定(FID)につながる重要な商業基盤になると期待している。なおカメコ社は、GLE社の株式49%を保有している。GLE社は2024年11月、米エネルギー省(DOE)が所有するケンタッキー州のパデューカ・ガス拡散工場(PGDP)跡地に隣接する665エーカー(約2.7㎢)の土地をPLEFの建設サイトとして取得。2025年7月に米原子力規制委員会(NRC)にPLEFの建設と操業に向けた認可を申請しており、認可取得後、2030年までにPGDPにある劣化六フッ化ウラン(DUF6)の再濃縮を開始する計画。GLE社は、サイレックス法によりDUF6を濃縮して天然ウラン級のUF6形態にするほか、低濃縮ウラン(LEU)およびLEU+、次世代炉(小型モジュール炉を含む)向けの高純度低濃縮ウラン(HALEU)などの生産が可能となり、既設炉や新設炉向けの燃料の需要増に応えていく方針である。
25 Sep 2026
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米エネルギー省(DOE)のエネルギー主導融資局(Office of Energy Dominance Financing, EDF)は9月8日、アイオワ州にあるデュアン・アーノルド・エネルギー・センター(旧デュアン・アーノルド原子力発電所、BWR, 62.4万kWe)の運転再開を支援するため、同発電所を所有する大手電力会社ネクストエラ・エナジー社に対し、最大19億ドルの融資を行うことを明らかにした。アイオワ州リン郡にある同州唯一の原子力施設であるデュアン・アーノルド発電所は、1975年に営業運転を開始。45年以上にわたり稼働したのち、経済性の悪化を理由に2020年に閉鎖された。当初は2034年までの運転が認可されていたが、地域電力会社との売電契約期間の短縮と同年に発生した自然災害による設備損傷により、閉鎖が前倒しされた。しかし、AIやデータセンター需要の急拡大により電力需要が増大するなか、ネクストエラ社は運転再開に向けた検討を開始。2025年1月に米原子力規制委員会(NRC)に運転再開を申請しており、NRCの承認を条件として、遅くとも2029年第1四半期までに同センターを運転再開させたい考えだ。ネクストエラ社は2025年10月、米IT大手のGoogle社とデュアン・アーノルドの運転再開後、25年間にわたる電力購入契約(PPA)を締結している。同PPAの下、Google社が25年間にわたり電力を固定価格で購入することで運転再開に必要な巨額投資を長期収益で回収できる見通しを得ていた。今回のDOEによる融資は、運転再開に向けた資金調達をさらに後押しすることになる。同発電所の運転再開は向こう25年間でアイオワ州に90億ドル以上の経済効果をもたらし、建設および改修期間中に約1,500人の雇用を創出、運転期間中は450人以上の高賃金の常勤雇用を支え、プロジェクトの全期間を通じて約7,500万ドルの税収を生み出すと見込まれている。米国では電力需要の増大と無炭素電源への関心の高まりから、閉鎖した原子炉の運転再開をめざす動きが広がっている。経済性を理由に2022年5月に閉鎖されたパリセード発電所(PWR, 85.7万kW)は、現在の所有者であるホルテック・インターナショナル社が15.2億ドルの政府の融資保証の支援を受け、運転再開の準備を進めている。コンステレーション・エナジー社は、Microsoft社とデータセンター向けの20年間のPPA契約締結し、同じく経済性を理由に2019年9月に閉鎖したスリーマイル・アイランド1号機(現クレーン・クリーン・エネルギー・センター、PWR, 89.0万kW)の運転再開を決定、NRCへ運転再開に向けた申請手続きを行っている。さらに2025年11月には、政府から10億ドルの融資支援を受けている。
25 Sep 2026
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中央アジアのウズベキスタン、カザフスタンでは、原子力発電所の新規建設を単独の発電プロジェクトとするのではなく、技術・人材・インフラ整備を含め、国内の原子力産業を体系的に発展させる契機と捉えている。■ウズベキスタンウズベキスタン原子力庁(ウザトム)は9月2日、同国のS. ミルジヨーエフ大統領に、「国内初となる統合型原子力発電プロジェクトの進捗」を報告。今年6月の小型モジュール炉(SMR)初号機の着工後、これまでに原子炉建屋基礎への916㎥のコンクリート打設や、建設・据付拠点の100haにわたる土木工事を完了した。今後、発電所で必要となる製品・機器の現地調達率を現状の21%から少なくとも30%へ引き上げるほか、周辺インフラの整備、原子力発電所周辺への工業団地建設、人材育成などを一体的に進める計画だ。同国東部のジザク州ファリシュ地区では、ロシア製大型PWR=VVER-1000×2基と小型モジュール炉(SMR)RITM-200N(PWR, 5.5万kWe)×2基を組合わせた総費用95億ドルの統合型原子力プロジェクトが進行中である。建設工事が本格化するなか、道路や鉄道などの周辺インフラの整備を進めるとともに、建設資材、金属構造物、ケーブル製品などの供給面で国内企業を広く参画させる計画。周辺インフラ整備における現地調達・サービスの比率を60~70%とする目標を掲げるほか、発電所で必要となる製品・機器の現地調達率を30%超とするため、発電所から25kmの地点に面積200haの専門工業団地を建設する。同団地には少なくとも100社の合弁企業が立地し、技術移転を通じて生産の現地化(ローカライゼーション)を進め、最大2,000人の新規雇用の創出を見込む。さらに建設のピーク時には現場で10,000人の雇用が予想されている。人材育成については、将来的に発電所を運転することになる高度な専門性を持つ運転員、エンジニア、放射線安全の専門家を育成するため、ロシアの国立原子力大学/モスクワ工科物理大学(MEPhI)のタシケント分校での履修に加え、国際的なパートナーと共同で実務者向けの研修プログラムの実施も計画。さらに、プロジェクト管理能力の向上やエンジニアリングに関する専門知識の強化を図り、技術面の検討を発注者の立場からも行える体制を整えるため、海外の主要エンジニアリング企業との合弁会社の設立を計画している。■カザフスタンカザフスタンの有限責任会社カザフスタン原子力発電所は9月3日、ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下のエンジニアリング企業アトムストロイエクスポルト社とカザフスタン初の原子力発電所「バルハシ発電所」のEPC(設計・調達・建設)契約を締結した。この契約の調印式には、カザフスタン原子力庁のA. サトカリエフ長官と、ロスアトムのA. リハチョフ総裁が立会った。同国初の原子力発電所となるバルハシ発電所(ロシア製PWR=VVER-1200, 120万kWe×2基)がアルマティ州のジャンブール地区、バルハシ湖近くのウルケン村で建設予定であり、2025年8月から建設予定地でエンジニアリング調査が実施されている。2027年にサイト許可を取得し、建設工事を開始する予定。約10年以内に工事を完了し、初号機を稼働させる計画である。カザフスタンにとって原子力発電所の建設は、エネルギー安全保障の強化、産業・技術基盤の発展、人材の育成、技術的自立の強化に向けた長期的な方針の一環であり、戦略的に重要な意味を持つ。経済、産業、インフラ、デジタル化、AIの発展を背景に、信頼性の高い持続可能な電力への需要は着実に増加することが予想され、原子力の導入により、今後数十年にわたり安定した基幹電源を確保したい考え。バルハシ発電所の建設では、国内企業、専門家、製品、工事およびサービスを最大限に活用する現地化(ローカライゼーション)に特に重点が置かれ、国内産業の発展や先端技術の導入、高度な技能を持つ人材の育成につながることが期待されている。
25 Sep 2026
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経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)と米国は、9月17日~18日にフランス・パリで第4回となる「新原子力へのロードマップ2026」ハイレベル会議を共催した。同会議には、閣僚、政府高官、産業界のリーダー、投資家、専門家ら350人以上が参加。世界的な電力需要の増加に対応するため、多くの国が既存の原子力プログラムの拡大、新規プロジェクトの開始、先進的な原子力技術の導入を検討している。このような中、経験やベストプラクティスを共有し、新たな原子力プロジェクトの展開に向けた国際協力の強化を図り、必要な政策や市場、制度的条件など、実践的な解決策を見出すために協議した。NEAのW. マグウッド事務局長は開会に際し、原子力がエネルギー安全保障の強化と経済成長の支援に果たす役割を強調。同会議が野心的な目標を具体的な行動に移し、大規模な新規建設を実現するための条件を整備する重要な場となる、と述べた。同会議では主に、原子力サプライチェーンの強化や人材開発、資金調達、燃料確保などに焦点を当てて協議。また、発電、産業用途、燃料サイクル、船舶推進を目的とした小型モジュール炉(SMR)の導入を推進する道筋についても検討した。なお同会議の開催に合わせ、原子力産業を代表する8業界団体((日本原子力産業協会(JAIF)の他、カナダ原子力協会(CNA)、仏原子力産業協会(GIFEN)、韓国原子力産業協会(KAIF)、米原子力エネルギー協会(NEI)、英国原子力産業協会(NIA)、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)、世界原子力協会(WNA)の計8団体。))は9月17日、共同声明を発表。地政学的な不確実性やエネルギー安全保障への懸念が高まるなか、原子力が経済成長、脱炭素化、エネルギーシステムの安定に貢献できると指摘。そのうえで、既設炉の長期運転と新設炉の導入を同時に進めることが必要との共通認識に立ち、政府に対し、以下の環境整備を求めている。長期的かつ一貫したエネルギー政策の推進エネルギー安全保障とレジリエンスの確保原子力プロジェクトへの資金調達の促進国際的な規制協力の強化信頼性が高く強靱な原子力サプライチェーンの構築人材・産業基盤の構築とイノベーションの促進
24 Sep 2026
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中国の海南省では9月17日、昌江(Changjiang)原子力発電第Ⅱ期プロジェクトとなる3号機(PWR=華龍一号「HPR1000」, 120.0万kWe)が営業運転を開始した。今年8月に送電を開始しており、年間最大180億kWhの発電が見込まれている。同機は2021年3月に着工。同プロジェクトでは同省初となる華龍一号を2基建設、設備の国産化率は98.1%に達している。同発電所第Ⅱ期は、中国華能集団(CHNG)51%、中国核工業集団(CNNC)49%の共同出資で建設され、CHNGが初めて過半数の出資比率で建設した大型炉。CHNG主導の華能海南昌江核電がプロジェクト所有者として、建設・運営管理を行う。運転中の第Ⅰ期の1-2号機は、PWR=CNP-600(65.0万kWe)を採用。CNNCが51%、CHNGが49%を出資し、CNNC主導の海南核電がプロジェクトを担う。
24 Sep 2026
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タイ電力公社(EGAT)は9月14日、首都バンコクで、米貿易開発庁(USTDA)と、小型モジュール炉(SMR)発電所プロジェクトの予備的な実現可能性調査に関する助成協定を締結した。これにより、EGATはタイにおけるSMR技術の導入計画推進に必要な候補地の予備評価やコスト、規制手続き、要件などを検討する。EGATのN. ポアワニッチ総裁とUSTDAのT. ハーディ副長官が調印した。調印式には、P. エーカナット・エネルギー相、J. ダンリー米エネルギー省副長官らが立会った。タイは、2050年までに温室効果ガス排出ネットゼロ達成をめざすとともに、エネルギー安全保障の強化、長期的な電力の安定供給をめざしている。国内電力需要の増加を受け、SMR技術を同国の長期的な発電構成に組み込み、電力網の柔軟性と安全性を高め、持続的な経済成長と産業発展につなげたい考え。EGATのポアワニッチ総裁は、今回の合意がタイにとってSMR技術の実現可能性を評価する上で極めて重要な基盤となるとし、米国のイノベーション、専門知識と経験を活用し、両国間のより強固な協力関係を構築するものと評価した。USTDAのハーディ副長官は、このパートナーシップについて、米国のイノベーションを推進し、原子力の平和利用や先進原子力技術で主導的役割を果たす米国の姿勢を示すものだと強調。同盟国やパートナーと協力して信頼性の高いエネルギー技術へのアクセスを拡大、インド太平洋地域全体のエネルギー安全保障強化という、米国の外交政策目標とも合致していると述べた。なお、2025年7月には、タイと米国間の原子力平和利用に関する協定(いわゆる123協定)が発効している。米国務省は同年5月発令の大統領令「国家安全保障強化のための先進炉技術の導入」に沿って、タイと強固な民間原子力パートナーシップを発展させていくと表明している。タイの発電電力量(2025年)は天然ガスが主要燃料で、全体の約54%を占める。輸入量が約17%、石炭が約15%、再生可能エネルギーが約10%と続く。エネルギーの海外依存度は高い水準にあり、国際ガス価格の変動による電気料金の高騰を踏まえ、天然ガス依存からの脱却や再生可能エネルギーの拡大が課題となっている。タイ・エネルギー省エネルギー政策計画局(EPP)が策定中の新たな電力開発計画(PDP2026)草案では、2026~2037年の新規発電設備容量として、計5,090万kWe(天然ガス複合火力: 910万kWe、SMR: 30万kWe、太陽光: 2,430万kWe、風力: 270万kWe、バッテリーエネルギー貯蔵システム: 1,450万kWe)を増強し、2050年のクリーン電源比率は少なくとも65%とすることを目標としている。
18 Sep 2026
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経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は9月14日、46か国の国別報告を基に、ウラン資源、探鉱、生産および需給状況をまとめた「2026年版 ウラン:資源・生産・需要」(Uranium 2026: Resources, Production and Demand:通称「レッドブック」)を共同で刊行した。2023~24年の世界のウラン鉱山生産量は2021~22年比で約20%増加。報告書は、2050年以降の需要を満たすのに十分な資源が存在する一方、将来の供給確保には新規生産に向けた適時かつ継続的な投資が欠かせないと強調している。レッドブックは1965年からほぼ隔年で刊行され、今回で通算31冊目。2026年版には46か国の国別報告が収録され、2023、24年のデータを中心に、一部2025年、26年の情報も含まれている。2025年1月1日時点で、回収コストが260ドル/kgU未満の既知資源量((鉱床の規模・品位・形状が明らかな「確認資源」と、データが不十分な「推定資源」の合計))は810万4,500トンUで前版比2.1%増加。130ドル/kgU未満では、586万4,500トンUとほぼ横ばいだった。世界のウラン鉱山生産量は2023~24年の2年間で11万6,487トンUとなり、2021~22年の9万6,851トンUから約20%増加。2024年単年では6万1,924トンUと、2016年の約6万3,000トンUに迫る水準まで回復した。増加を押し上げたのは、カナダの鉱山の本格生産への復帰や、カザフスタンでの新規生産能力の立ち上がり、そして2030年までに生産量を3,500トンUから7,000トンUへ倍増させる大統領令を受けたウズベキスタンの増産など。2024年には鉱山生産で、世界の原子炉所要量の約96%を賄った。ウラン価格の回復などを背景に、探鉱・開発投資も回復している。2023~24年の世界の探鉱・開発支出は約18億ドルと、2021~22年比で46%増加した。ウラン価格は2021年初頭の1ポンド当たり30ドル(U3O8)から2024年1月に106ドルまで上昇した後、2025年3月には約64ドルまで下落、2026年1月には再び約94ドルへ戻している。ウラン需要も大きく伸びる見通しだ。世界の原子力発電設備容量は、2024年の3億9,800万kWから2050年には5億6,500万kW~9億1,600万kWに増加すると予測。これに伴い、年間ウラン所要量も現在の約6万4,500トンUから約8万4,800~14万3,900トンUに拡大する見通しで、特に中国を中心とする東アジアで大幅な増加を見込む。現在確認されている資源量はこうした需要を満たすのに十分なものの、NEAとIAEAは、鉱山開発には長いリードタイムを要すると指摘。将来の供給制約を回避するには、短・中期的に新規プロジェクトを具体化し、開発を進めるとともに、継続的な探査を支える十分なウラン価格と投資が不可欠としている。
18 Sep 2026
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フランス原子力産業協会(GIFEN)は9月16日、パリ郊外で第2回「GIFEN International Day」を開催した。日本を含む10か国(フランス、日本、イタリア、ベルギー、オランダ、ウクライナ、ドイツ、ポーランド、トルコ、インド)から約180人が参加し、各国の原子力産業の最新動向や国際協力について情報共有、意見交換を行った。冒頭、GIFENのオリヴィエ・バール事務局長は、「世界で原子力を巡るモメンタムが加速している。こうした中、国際的な協調と協力が不可欠である」と述べ、原子力産業の国際連携の重要性を強調した。その後、イタリア原子力産業協会(AIN)とGIFENのMOUが締結された。日本からは、日本原子力産業協会の増井理事長が「日本の原子力の最新動向」について、三菱重工フランスの加古原子力担当部長が「三菱重工の原子力事業概要」について、それぞれプレゼンテーションを行った。発表後の質疑では、日本の原子力関連の輸出動向について質問が寄せられた。増井理事長は、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、減少が続いていたものの、2021年度を境に反転し、増加傾向にあると説明した。次回のGIFEN International Dayは、2027年3月17日にパリで開催される予定。
18 Sep 2026
559
国際原子力機関(IAEA)の第70回通常総会が9月14日から18日の日程で、オーストリアのウィーンで開催されており、各国政府、国際機関、NGOなどから168か国・3,200人以上が参加している。開会の冒頭にスピーチしたIAEAのR. グロッシー事務局長は、IAEA創設から70年を迎えた今も、原子力安全、保障措置、がん治療支援、災害時の緊急支援などを通じ、各国がIAEAを通じて協力する姿を日々、目の当たりにしていると述べ、IAEAが果たす幅広い役割を強調した。IAEAは発電のみならず、医療、農業、環境など幅広い分野で原子力科学技術へのアクセスを世界に広げ、新興加盟国では安全で信頼性の高い原子力発電の導入支援を続けている。グロッシー事務局長は、国際情勢が分断と緊張に直面する中においても、IAEA初代事務局長W. スターリング・コールが1957年10月の第1回総会で表明した原子力の平和利用に向けた「共通の献身の精神」に立ち返り、国際協力を継続することの重要性を訴えた。また、世界的な原子力発電への関心の高まりを反映し、着工・運転開始に至る基数が着実に増えていると指摘。IAEAが本総会に合わせて公表した最新予測では、電力需要の増加や脱炭素化、産業・運輸の電化、デジタル経済の拡大などを背景に、世界の原子力発電設備容量が2060年までに、現在の3倍以上になる可能性があるとの予測を紹介した。特に、IT大手企業が原子力発電への投資を進めていることに注目。原子力は、低炭素で信頼性の高い電力を安定して供給できるため、AIやデジタルインフラとの親和性が高く、両者の結び付きは偶発的なものではなく、構造的な連携になっているとの認識を示した。また、原子力発電の導入を検討する国が増えるなか、IAEAは現在、「マイルストーン・アプローチ」に基づき43か国の新規導入を支援し、さらに20か国が導入を検討していることに言及。小型モジュール炉(SMR)への世界的な関心の高まりについては、国際的な普及に向け、各国で異なる規制手法の調和や設計の標準化が必要だと指摘。IAEA主導の原子力の調和および標準化イニシアチブ(NHSI)を通じ、複数国の規制当局が参加する事前許認可のパイロット事業などを紹介した。また、世界貿易の約80%を担う海運の脱炭素化における原子力の役割を強調。今年8月に海洋分野における原子力技術の応用(ATLAS)イニシアチブを立ち上げたほか、国際海事機関(IMO)とも協力し、海洋におけるSMR利用に関する法的、規制的、技術的および保障措置上の課題を検討していくとした。さらに、World Fusion Energy Groupを通じて、核融合発電の研究、開発、実証、展開の加速を支援していくとしている。こうした原子力利用拡大の機運は「確かなもの」だとする一方、野心的な目標と実際の設備容量の伸びのギャップを埋めるためには、資金調達の抜本的な変革が必要だと強調。世界銀行が原子力への融資を認める方針に転換したことを歓迎し、国際金融機関の原子力プログラムに対する理解促進に向けた能力開発事業を進めていると紹介した。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本代表として、小野田紀美科学技術政策担当大臣が登壇。日本がIAEAとの協力を通じ、原子力の平和利用と核不拡散を推進する決意を表明した。また、日本はエネルギー安全保障と脱炭素に貢献する原子力発電について、安全性を最優先に最大限活用するとした。そのうえで、今年7月に閣議決定された「日本成長戦略」の下、海外の原子力発電所建設プロジェクトへの日本企業参画の促進や次世代革新炉の開発・導入を進め、さらに、2030年代のフュージョンエネルギーの発電実証に向けて、IAEAとの連携を強化すると述べた。福島第一原子力発電所の廃炉では、使用済み燃料の取出しや燃料デブリの試験的取出しなどの進展を説明し、ALPS処理水の海洋放出についても計画通り安全に実施されており、IAEAによる安全性確認が継続していると強調した。加えて、IAEA保障措置の強化、追加議定書の普遍化、人材育成と技術開発にも取組むと表明。北朝鮮やイランの核問題、ウクライナの原子力安全・セキュリティへのIAEAの関与を支持し、NPT体制の維持・強化と核兵器のない世界の実現に向け、日本としてIAEAを最大限支援していく考えを示した。 ◇ ◇例年通りIAEA総会との併催で加盟国等による展示会も行われている。 日本のブース展示では、「クリーンエネルギー、イノベーション、レスポンシビリティ」をテーマとし、革新軽水炉やSMRなどの次世代革新炉開発、フュージョンエネルギー社会実装への道筋、核セキュリティや緊急被ばく医療分野における能力構築を目指した国際協力、放射性医薬品の開発・製造・利用を取り上げた内容を展示するとともに、福島第一原子力発電所の最新の廃炉進捗状況も紹介している。 展示会初日には、日本政府代表の小野田紀美科学技術政策担当大臣がブースのオープニングセレモニーに出席し、挨拶の中で日本政府がエネルギー安全保障と脱炭素に寄与する原子力の最大限の活用を方針としていることをあらためて強調するとともに、ブース展示については有益で魅力的な内容を備えているとアピールした。 福島復興をアピールする観点から日本ブース展示に参加している復興庁は福島産の農産物や民芸品を多数提供するほか、ブース・オープニングでの日本原子力産業協会の増井理事長による乾杯でも福島県産の日本酒が用いられブース来訪者に振舞われた。 一方、翌日にはIAEAのグロッシー事務局長が初めて日本ブースを訪問した。同局長は、IAEAの協力イニシアチブに対するこれまでの日本の貢献を評価し、日本と加盟国の強い連帯の表れであると述べるとともに、ブースで提供されている福島県産食品を試食するよう来訪者に勧めるなど、今総会での日本ブースは従来以上に福島復興を後押しする機会となっている。
16 Sep 2026
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国際原子力機関(IAEA)は9月14日、ウィーンで開催中の第70回IAEA総会で、最新報告書「2060年までの世界のエネルギー・電力・原子力発電予測」(第46版)を公表した。 IAEAは高・低の2ケースで今後の原子力発電設備容量を予測し、世界の原子力発電設備容量は2060年までに、高予測ケースで2025年末の約3.4倍にあたる12億8,400万kWe、低予測ケースでもほぼ倍増の6億9,600万kWeに達する見通しを示した。 予測は6年連続で上方修正された。 なお、報告書のエネルギー・電力予測はネットゼロへの経路を示すものではなく、1.5℃・2℃目標と整合するシナリオでもないとしている。今回の版では、2010~2025年版で2050年までとしてきた予測の対象期間が、2060年まで10年延長された。 現在運転中の設備容量の67%は運転開始から30年以上の炉、46%は40年以上の炉によるもので、今後の退役や運転期間延長の動向が長期的な設備容量の見通しを左右する。 IAEAが同報告書で2050年より先の見通しを示すのは、今回が初。2060年までの退役と新設を比べると、高予測ケースでは1億2,800万kWeが退役する一方で10億1,700万kWeが加わり、純増は8億9,000万kWe。 低予測ケースでは退役が2億2,000万kWeに増える一方、新設は5億2,100万kWeにとどまり、純増は3億100万kWeまで縮小する。 低予測ケースの退役規模は2025年末の設備容量の約6割、新設容量の約4割に相当する。 IAEAは、既設炉の運転期間延長は、実行可能な場合、低排出のベースロード電源を確保するうえで最も費用対効果の高い選択肢の一つであり、高経年化した原子炉群を抱える地域ではとりわけ重要だと指摘。 長期運転に向けた経年化管理プログラムの実施例が増え、自由化された電力市場で既設炉の競争力を支える政策措置も導入されつつあるとした。 IAEAのR. グロッシー事務局長は「この潜在力を実現するには、新規建設への投資と既設炉の運転期間延長が不可欠になる」と強調している。見通しが上方修正される一方、実際の世界の原子力発電設備容量は、前版の起点となった2024年末の417基・3億7,700万kWeと今回の起点となる2025年末の413基・3億7,710万kWeで、ほぼ横ばいだった。 2025年は12基・1,430万kWeが着工したものの、送電開始は3基・300万kWe、閉鎖は7基・280万kWeで、設備容量ではほぼ相殺された。 発電電力量は前年比1.1%増の2兆6,891億kWhと増えたが、世界の総発電電力量が2.7%増とこれを上回るペースで伸びたため、原子力の占める割合は2024年の8.7%から8.4%へ低下している。低予測ケースでは世界全体の設備容量が増える一方、北・西・南欧は8,100万kWeの退役を3,400万kWeの新設で補えず、主要地域で唯一、4,700万kWeの純減となる。 これに対し、中央・東アジアは低予測ケースでも2025年の1億1,380万kWeから2060年に2億7,900万kWeへ拡大する。 日本もこの地域に含まれるが、報告書は国別の将来見通しを示していない。2060年までの新設容量に占める小型モジュール炉(SMR)の割合は、世界全体で高予測ケース28%、低予測ケース23%となる見通し。 地域別では北米で両ケースとも約60%と世界全体の割合を大きく上回り、東南アジアと中南米・カリブ海地域では約40%を占める一方、中央・東アジアでは約10%にとどまるなど、導入割合には大きな地域差がある。2060年の原子力発電設備容量の拡大が見込まれるなか、原子力発電電力量は高予測ケースで2025年の約3.9倍の約10兆kWh、低予測ケースでも2倍超の約5.7兆kWhとなる。 IAEAは、世界の総発電電力量も同期間に2.5倍に伸びると推計している。 このため報告書では、原子力のシェアは、高予測ケースでは現状の8.4%から13.2%へ上昇する一方、低予測ケースでは7.2%へ低下するとしている。
16 Sep 2026
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英ロールス・ロイスSMR社は9月3日、英国の北ウェールズ・アングルシー島ウィルヴァで建設を計画している同社製SMR(PWR、47.0万kWe)×3基の高圧タービンやバルブケーシングなどの主要な蒸気タービン部品を、同国ニューカッスルにある独シーメンス・エナジー社の施設で製造することを明らかにした。ロールス・ロイスSMR社によると、欧州全域においてSMR向けのこれら部品製造は初。同社は今後、ニューカッスルの施設を同社のSMRフリート向けの主要部品の供給拠点とする計画である。ロールス・ロイスSMR社は2025年2月、シーメンス・エナジー社をタービン・システムのパートナーに選定しており、今回の措置は、熟練した550人以上の雇用を支え、同社が進める英国内のサプライチェーンの構築と製造拠点の現地化、製造業の国内回帰に向けた取組みの一環である。ニューカッスルでの製造能力を国内向けだけでなく、将来的には拡大するSMR輸出市場にも活用し、エネルギー安全保障の強化、国際ガス市場への依存低減、英国の再工業化につなげたい考えだ。ニューカッスルにあるシーメンス社の施設は、かつてのC. A. パーソンズ・アンド・カンパニーを継承したもの。19世紀末からタービン製造を続けてきた英国のエネルギーインフラ史上、重要かつ歴史的な拠点である。1956年に初号機が運転を開始した英国初の商用原子力発電所であるコールダーホール(ガス冷却炉GCR, 8万kWe×4基, 2003年閉鎖)の蒸気タービンもここで製造された。
15 Sep 2026
574
英国のロイド船級協会(LR)、デンマークのコンテナ船大手のA.P. モラー・マースク(Maersk)社、米国東海岸のチャールストン港、英国最大のコンテナ港フェリクストウ港は9月2日、将来の米英間における原子力コンテナ船の運航を想定し、運航、セキュリティ、保障措置などの要件を検討する「ピンク・コリドー(Pink Corridor)」((エネルギー分野で原子力発電を示す色として「ピンク」を使用していることに因む。))プロジェクトを開始すると発表した。同プロジェクトは、将来、関係者が原子力商船の航路を検討する場合に、実務上の要件や制度上の空白、さらに今後必要となる作業を理解できるよう支援することを目的としている。海事業界では、一定の技術的・安全上の前提を満たした原子力船が港に寄港する際、主要な障壁は技術そのものより、規制・責任体制・保険・港湾手続きなどの制度整備にあるとされる。本プロジェクトの成果を将来の規制策定につなげ、大西洋横断の商業海運における原子力利用の安全かつ確実な導入を支援したい考えだ。同プロジェクトの初期段階では、米チャールストン港と英フェリクストウ港間の仮想航路を航行する原子力コンテナ船を想定し、両港への入港や運航に必要となる要件について、船舶のセキュリティ、保障措置、サイバーレジリエンス、緊急時対応、保険制度、海事規制と原子力規制の整合性などの観点から検討する。初期段階の成果を踏まえ、原子力商船に関する工学、規制、法制度、セキュリティー、保障措置の枠組みにおいて、さらなる検討が必要な分野を含め、続く第2段階の実施範囲を決定していく方針である。なお、本プロジェクトは構想段階であり、船舶の設計や就航スケジュールは未定である。米英両国は2025年9月に、科学技術・産業分野の包括的な協力枠組である「Technology Prosperity Deal, TPD」を締結。これにより、両国がAI、量子コンピューティング、原子力分野における協力拡大をめざす中、「ピンク・コリドー」プロジェクトを通じて、航路の開拓を含む、民生用海事における原子力利用の検討に向けた二国間の取組みを支えることが期待されている。
15 Sep 2026
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フィンランドの電力会社フォータム(Fortum)社は9月9日、同社が運転するロビーサ原子力発電所(VVER-440×2基、各51.3万kWe)の長期運転を支える電力購入契約(PPA)を、米IT大手Google社と締結した。PPAは22年間にわたる。2028年に小規模で始まり、2030年から2049年にかけてロビーサの発電設備容量の最大50%に相当する規模に拡大。フォータム社は長期の収益確実性を得ることで、同発電所の2050年までの運転継続に必要な投資を進めやすくなるとしている。なお、同発電所の運転認可は2050年末まで延長済みである。ロビーサ発電所1-2号機は、それぞれ1977年、1981年に営業運転を開始。フォータム社は同発電所の運転期間延長に向けて、約10億ユーロ(1,782億円)の投資計画を進めているが、必要なプロジェクトの約80%、金額にして7億ユーロ(1,247億円)については、投資決定が行われていない。PPAはこれらの投資を支える収益基盤となるほか、2028年に予定される3.8万kWeの出力増強に加え、さらに1万kWeの出力増強を可能にするとしている。ロビーサ発電所は現在、フィンランドの電力需要の約10%を供給しており、2050年までの運転継続によって、脱炭素電源の維持と電力系統の安定化にも寄与するとしている。両社はさらに、新たな発電設備や蓄電システムなどの柔軟な電力設備を共同検討するための覚書も締結。まず、Google社はカヤーニのデータセンター隣接地に9.4万kWeのバッテリー蓄電システムを設置し、フォータム社がその運用最適化を担う。またロビーサ・サイトでの新規建設を視野に、需要や共同投資、リスク分担などを含め、競争力のある事業モデルを検討することとしている。Google社は、南部のハミナでデータセンターを運営するなど、過去15年間にわたりフィンランドで事業を展開している。2027~2028年にはハミナに加え、北部のムホス、ヴァーラ、カヤーニでのデータセンターや関連インフラ、クリーンエネルギープロジェクト、地域とのパートナーシップ活動に130億ユーロ(約2.3兆円)を投資する計画も発表。Google社にとって欧州最大規模の投資案件である。AIやデータセンターによる電力需要の増加に伴い、低炭素電源への需要も高まるとみられている。フォータム社のM. ラウラモCEOは、「Google社との長期的なパートナーシップは、電力価格が大きく変動し、将来の見通しが立ちにくい現在の市場環境において特に重要。長期契約によって収入や需要の見通しが立ち、低炭素電源への投資やエネルギー安全保障の強化が進めやすくなる。データセンターなどのデジタル・産業分野への投資を呼び込み、フィンランドの雇用やイノベーションにもつながる」と今回のPPA締結の意義を強調した。
14 Sep 2026
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米テネシー州のB. リー知事は8月31日、テネシー州環境保全局(TDEC)が核融合開発企業のタイプ・ワン・エナジー(Type One Energy)社に対し、核融合装置の運転に必要な副産物物質ライセンスを発給したことを明らかにした。核融合装置に特化した新たな規制制度に基づくライセンス発給は全米初。同州オークリッジ近郊にあるテネシー峡谷開発公社(TVA)のブルラン・エネルギー・コンプレックス(旧ブルラン火力発電所サイト)で進められる、ステラレータ技術((複雑にねじれたコイルだけでプラズマ閉じ込めに必要な磁場を作る方式。))を採用した商用核融合プロジェクト「プロジェクト・インフィニティ」(Project Infinity)が今回のライセンス発給の対象。同プロジェクトは段階的に進められ、工学的検証・訓練用プラットフォーム「Infinity One」に続き、40万kWeの商用核融合設備「Infinity Two」の建設を計画している。タイプ・ワン・エナジー社は2025年2月、TVAと「Infinity Two」の計画策定に関する協力で合意し、同年9月には同計画をブルラン・エネルギー・コンプレックスに展開する意向書(LOI)を締結。同社とTVAは密接に連携し、今年1月にライセンスを申請していた。米原子力規制委員会(NRC)は2023年4月、核融合装置を商用核分裂炉と同様の規制ではなく、既存の副産物物質(Byproduct Material)規制を基に管理する方針を決定。NRCとの協定に基づき副産物物質の規制権限を持つ「Agreement State」であるテネシー州では、TDECにある放射線保健部門が核融合装置および核融合関連活動のためのライセンスプログラムの策定を主導し、今年6月に全米初となる核融合装置専用の規制制度を施行した。今回のライセンス発給は同規制制度の初適用事例。同州は今後、同制度を他の州が核融合発電を規制する際の参考モデルにしたい考えだ。プロジェクト・インフィニティは段階的に進められる。第1段階では、工学的検証・訓練用プラットフォームの「Infinity One」を年内に着工し、2029年の運転開始をめざす。続く第2段階では、「Infinity Two」を2028年に着工し、2034年の全面運転を計画している。タイプ・ワン・エナジー社の商業用地は、オークリッジ国立研究所(ORNL)、TVA、テネシー大学などとのプロジェクトを通じて核融合開発キャンパスとして整備される予定だ。リー知事は、「テネシー州は原子力エネルギーの世界的中心地として、次世代の原子力イノベーションを牽引するために必要な人材、インフラ、規制の枠組みを整備している。核融合のような新技術に向けた明確な道筋を示し、今後何世代にもわたり信頼性が高く豊富なエネルギー源を推進している」と強調した。
11 Sep 2026
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中国の山東省煙台市で9月5日、中国広核集団(CGN)の招遠(Zhaoyuan)原子力発電所2号機(PWR=華龍一号「HPR1000」、121.4万kWe)が着工した。招遠1-2号機は2024年8月に国務院がI期工事として建設を承認。国家核安全局(NNSA)が同年11月13日に建設許可を発給後、1号機は同月18日に着工している。同サイトでは6基の「華龍一号」建設を計画しており、省内の原子力・風力・太陽光・蓄電を統合したクリーンエネルギー産業クラスターの形成を担う重点プロジェクト。地域暖房にも利用され、今後、産業用蒸気や水素製造、海水淡水化などでの利用も検討されている。同建設プロジェクト完了後、発電量は年間500億kWhに達し、約500万人の年間電力需要を満たす見込みである。本プロジェクトでは、華龍一号としては初となる二次系循環冷却技術を採用し、高さ203m、散水面積16,800㎡となる自然通風冷却塔6基を設置する。この冷却塔により、タービン建屋の直接冷却源は海水から大気へと切り替えられ、海水は補給水としてのみ使用し、水資源の消費を大幅に抑える。また、原子炉側には原子力級の機械通風冷却塔を採用し、冷却安全性を一層強化するという。中国の原子力発電所は招遠発電所を含め、通常は沿海部に立地しているが、海水冷却に依存しない大型炉の冷却方式を沿海部で実証し、その技術を今後の立地拡大に活用しようとしている。
11 Sep 2026
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スウェーデンでは今年8月下旬から9月初めにかけて、新規建設に向けた動きが相次いでいる。スウェーデンは2035年までに小型モジュール炉(SMR)や大型炉を含む新規原子力発電設備容量を250万kWe、2045年までに1,000万kWeの拡大をめざしており、新規建設向けの政府の支援制度が2025年8月1日から施行されていることが背景にある。政府融資や差金決済契約(CfD)など、リスクと利益の分担を通じて事業を支える国家補助の枠組みが整備され、複数の事業者がプロジェクトを政府に申請する段階へ移行している。まず8月25日、同国の先進炉開発企業であるブリカラ(Blykalla)社は、ウプサラ県ティエルプ市のウントラ(Untra)に、同社が開発を進める先進モジュール炉(AMR)の鉛冷却高速炉「SEALER」(5.5万kWe)×6~8基、最大合計出力44.0万kWeの建設計画について、政府に承認を申請した。年間発電電力量は約36.8億kWhと想定される。同社は今年5月に、イェヴレボリ県イェヴレ市のノルスンデット(Norrsundet)で「SEALER」×6基、合計33.0万kWeの同国初となる先進炉を採用した商用発電所の建設計画の承認申請をしており、ウントラでの計画はそれに次ぐもの。国内で複数の原子力パークを展開する動きの一環である。8月31日にはブリカラ社が全額出資するプロジェクト会社のウントラ・ニュークリア・パワー社がウントラでの建設計画に対する国家補助を申請した。8月27日には、フィンランドの電力大手フォータム(Fortum)社傘下で、スウェーデンにおける新規原子力発電のプロジェクト会社であるNuCore Energi社が、同国南部のオスカーシャム市で計画する新規建設に向けて国家補助を申請した。建設規模は120万kWe~340万kWeで、SMRと大型炉の双方を選択肢として検討している。フォータム社は2年間にわたる新規原子力発電の実行可能性調査の結果、大型炉ではフランス電力および米ウェスチングハウス(WE)社/韓・現代E&C社、SMRでは米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社との協力を強化。2025年6月にそれぞれ先行作業契約(EWA)を締結している。NuCore Energi社は今回の政府への申請を契機に、支援条件などに関する協議を開始する方針。なお、国家補助の申請はブリカラ社とNuCore Energi社の申請を含め、今年8月末の時点で6件となっているが、国家補助対象は最大約500万kWe、およそ大型炉4基分相当と限られている。9月3日には、スウェーデンの原子力技術サービス企業スタズビック(Studsvik)社の主導下で、GVH社、韓国サムスンC&T(サムスン物産)などがGVH社製SMR「BWRX-300」(BWR, 30万kWe)×4基、計約120万kWeの建設プロジェクトを共同開発することで合意した。建設候補地はスタズビック社の既存の原子力施設がある同国南部ニショーピング(Nyköping)とヴァルデマルスヴィーク(Valdemarsvik)のマルメ(Målma)の2か所。複数の拠点で展開する新規原子力開発プログラム「ReFirm」の初プロジェクトとして、いずれかのサイトで2030年代半ばには初号機を運転開始する計画だ。今回の合意により、独占交渉期間中に、商業面や技術面、規制面、資金調達面などに関する共同作業を開始する。スウェーデンの新規原子力発電開発では、制度整備の段階から複数の事業者が具体的な建設案件を競う段階に入った。大型炉だけでなくAMRやSMRも計画されており、今後は政府による支援案件の選定や許認可、資金調達などが焦点となる。
10 Sep 2026
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世界原子力協会(WNA)は9月7日、「世界原子力発電見通し」(World Nuclear Outlook Report)の第2版を発表。各国政府の目標や具体化している案件が実現し、既設炉の運転が継続すれば、2050年の世界の原子力発電設備容量は14.57億kWe(グロス)となるとの見通しを示した。COP28で打ち出された「原子力三倍化」目標(約12億kWe)を上回るとの結論は、今年1月の初版と変わらないが、第2版では各国が目標を実際に達成できるかを測る実行能力の評価が新たに加わった。WNAは各国を「政策枠組みの整備状況」「制度・インフラの整備状況」「プロジェクト・プログラムの成熟度」「目標達成の見通し」の4基準で評価し、原子力開発の状況が近い国々を5類型に整理。 日本が分類されたのは、相当数の原子炉を運転し、成熟した制度を持ちながら、近年は継続的な建設が行われていない「リスターター」(Restarter、原子炉の建設能力を再構築する「再始動国」)で、ベルギー、オランダ、スウェーデン、ブラジル、南アフリカなど12か国が並ぶ。リスターター全体では、制度・インフラの整備状況は比較的高く評価される一方、関係機関の業務の重心は既設炉の運転継続に置かれており、規制機関が新型炉の設計審査に十分対応できる体制にない場合があると指摘している。こうした国々では、当面の設備容量の上積みは、運転期間延長や改修、出力増強、再稼働から生じる公算が大きいと分析。またWNAは、一基ごとの個別対応から、複数案件を継続して進める「プログラム型」の仕組みへの移行を優先課題に挙げた。資金調達だけでなく、許認可、サプライチェーンの整備、人材計画についても、後続案件に繰り返し適用できる枠組みが必要だとしている。こうした課題がある一方、報告書は再始動国について、原子力開発に必要な制度的基盤の多くはすでに存在しており、見通しは明るいと評価。既存の産業・制度基盤と再び強まった政策支援を、継続的な原子力発電所の建設につなげられるかが鍵になると指摘した。これが実現すれば、2050年までに相当規模の原子力発電設備を追加できる可能性があるとしている。また報告書によると、2025年の世界の原子力発電電力量は2兆7,020億kWhで過去最高を更新し、世界の総発電電力量の約9%を占めた。平均設備利用率も83.7%へ上昇し、原子炉の高経年化による全般的な低下は見られなかった。一方、着工は11基(中国9基、ロシア2基)と、過去40年でも高い水準だったが、三倍化には2030年代半ばまでに現状の約6倍の着工ペースが必要になると分析した。 2050年見通しのうち5.59億kWeは、建設中・計画中・提案中のいずれにも該当する具体的な案件をまだ伴っていない。さらに報告書は、12分野の政策提言を示したうえで「目標はすでに掲げられている。今問われるのは、それを達成するための体制を築けるかどうかだ」と総括している。
09 Sep 2026
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仏パリに拠点を置く先進炉開発企業のニュークレオ社は8月26日、同社が主導するコンソーシアムの「n-Floating」プロジェクトが、フランス政府系金融機関Bpifranceの「フランス海事部門の脱炭素化支援」の公募事業に採択されたことを明らかにした。同プロジェクトでは、ニュークレオ社が開発を進める複数の20万kWe級の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」を搭載。航行機能を持たない浮体式原子力発電施設の概念設計を行う。コンソーシアムには、主要な船級協会であるビューローベリタス・マリン&オフショア社や海事・原子力両分野に専門知識を持つフランスのエンジニアリング企業ABMIグループが参加。すでに約100万ユーロ(約1.78億円)の助成金を獲得して作業は開始されており、約18か月間継続する見込みだ。ニュークレオ社は、浮体式原子力発電の産業化と大規模展開を念頭に、海事・オフショア産業、とりわけ石油・ガス部門で培われた、エネルギー生産、貯蔵、液化、再ガス化の浮体式インフラの設計・建設・運用手法を活用する方針。成熟した海事技術と先進原子力技術を組合わせ、造船所で統合した後に設置場所へ輸送することで、競争力のある低炭素電源の開発をめざしている。n-Floatingプロジェクトの初期段階では、原子力バージの概念研究に焦点を当て、遠隔地、港湾および関連する産業拠点や沿岸地域へのエネルギー供給に加え、海水淡水化や低炭素燃料の生産といったエネルギー集約型用途など、幅広く実現可能性を調査。ビューローベリタス・マリン&オフショア社は船級、リスク評価、認証に関する専門知識を提供し、浮体式原子力発電開発に伴う安全性、規制、技術的な課題の評価を支援する。一方、ABMIグループは、原子力・海事分野でのエンジニアリングやプロジェクト遂行の経験を提供する。ニュークレオ社は2036年までの産業展開に向けて今後の開発計画とロードマップを策定し、フランス国内で建設、同国の産業化と脱炭素化の取組みに貢献したい考えだ。海洋原子力用途の展開には、原子力と海洋の安全要件の両方を統合することに加え、適切な許認可、保安、運用に関する枠組みが必要であり、国際的な協調の取組みも加速している。ニュークレオ社は、このほど発足した国際原子力機関(IAEA)の「ATLASイニシアチブ」を通じ、革新的な原子力利用とそれに伴う規制・安全上の影響について、対話や技術的理解が深まることに期待を寄せている。
08 Sep 2026
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