米国で先進炉と核燃料リサイクル開発を進めているオクロ社は1月17日、常用電源および非常用電源のプロバイダーであるRPower社と覚書を締結し、オクロ社が開発中の高速炉「オーロラ」発電所の電力とRPower社の天然ガス発電を組み合わせ、データセンター向けの電力供給モデルを展開していくことを明らかにした。RPower社は2021年に設立。重要インフラ企業に電力を提供することに特化しており、データセンターや石油・ガス産業を含むエネルギー集約型産業へのサービスに重点を置いている。オクロ社の顧客基盤は拡大しており、現在の受注残は1,400万kWに達しているという。オクロ社はRPower社と協力して、当面および長期的なエネルギー供給の問題に取り組む。将来的には天然ガス発電への依存から脱却し、拡張性のある持続可能な運用を可能にするとともに、原子力との組み合わせによって大規模容量の電力を必要とする既存のユーザーの他、新規の顧客も獲得したい考えだ。またオクロ社は1月28日、先進的な核燃料技術開発企業である米ライトブリッジ社と、燃料製造施設の共同建設に向けた実行可能性調査を実施、ならびに先進燃料リサイクルに関する協力を模索するための覚書を締結したことを明らかにした。両社は、オクロ社が開発する商業用燃料製造施設にライトブリッジ社の商業用燃料製造施設を併設することで、先行資本支出と継続的な運営費の両面で大きな相乗効果をもたらすことで合意。両社の持続可能な原子力エネルギーソリューションへの取組みは共通しており、先進的な燃料リサイクル技術開発において協力することによる新たなフロンティアの開拓に意気込みを示した。オクロ社は米エネルギー省(DOE)からアイダホ国立研究所(INL)敷地内に液体金属高速炉のマイクロ炉の「オーロラ」を建設するサイト使用許可を取得。INLから燃料材料の提供を受け、DOEおよび傘下の国立研究所と協力して先進的な燃料リサイクル技術の開発に取り組んでいる。ライトブリッジ社も二酸化ウランではなく金属ウラン合金を使用したLightbridge Fuelを開発。DOEの「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」プログラムから過去数年にわたり、Lightbridge Fuelの開発を支援する助成金の交付を受ける他、マサチューセッツ工科大学とテキサスA&M大学におけるDOEの原子力エネルギー大学プログラムを通じて、大学主導の研究に参加している。
31 Jan 2025
2005
英国で2021年に設立された先進炉開発企業のニュークレオ社は1月15日、スロバキアの主要な原子力企業であるJAVYS社とVUJE社各社と締結した枠組み協定の内容を明らかにした。同協定によると、閉鎖されたスロバキアのボフニチェ原子力発電所(V-1)1~2号機のサイトにおいて、ニュークレオ社が開発する第4世代の鉛冷却高速炉「LFR-AS-200」(20万kWe)を最大4基建設する計画。コストは32億ユーロ(約5,178億円)と試算されている。スロバキア国営のバックエンド企業であるJAVYS社との協定では、使用済み燃料管理を実施する合弁会社「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」設立に向けた条件を設定。JAVYS社が51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有する。ボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)はそれぞれ2006年、2008年に閉鎖され、現在JAVYS社が所有、廃止措置を実施中である。ニュークレオ社は、JAVYS社が所有・操業する施設で貯蔵されている使用済み燃料を、フランス政府の協力を得て、再処理する。その後ニュークレオ社がフランスで計画しているMOX燃料製造施設で燃料加工の上、CVPが開発・建設するLFR(鉛冷却高速炉)で再利用する方針である。深地層処分を必要とする放射性廃棄物の量を減らし、スロバキアにおけるクローズド・燃料サイクルの確立に貢献したい考えだ。スロバキアの大手原子力エンジニアリング企業であるVUJE社との協力では、VUJE社の数十年にわたる原子力発電所での経験、特に原子炉の建設と試運転、および高速炉技術開発分野での豊富な経験を活用。CVPが実施する初期の実現可能性調査とその後の活動への参画など、LFR開発に共同で取組むこととしている。ニュークレオ社のS. ブオノCEOは「原子力分野での50年にわたる経験と既存の原子力インフラを持つスロバキアは、先進的モジュール炉(AMR)の新技術の開発、試験、実用化において、非常に重要で戦略的なパートナーである」「本プロジェクトは、他の欧州諸国でも実施可能であることを例示するもの。使用済み燃料の再利用は、欧州の今後数百年のエネルギー自立を保証し、競争力のある安定した価格で、EU産業の競争力を高めるために必要なステップである」と述べ、スロバキアの産業にとっての機会であるだけでなく、欧州原子力エネルギー部門全体のパラダイムシフトであると強調した。欧州委員会が立ち上げた「欧州SMR産業アライアンス」は2024年10月、ニュークレオ社のLFRを、環境に優しく、安定し、コスト効率の良いエネルギー源の確保に役立つとして支援対象とする、9件のSMRプロジェクトの一つに選定している。ニュークレオ社は2023年以来、スロバキアの原子力産業および政府の主要企業と積極的に接触。同年12月には、スロバキア経済省およびJAVYS社と、協力機会の模索とAMR開発を目的とする覚書を結んでいる。2024年7月には、スロバキアのVUJE社と、スロバキアにおけるAMRと先進的な燃料サイクルの開発の協力強化で合意していた。
29 Jan 2025
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オンタリオ州政府は1月15日、同州のポートホープ自治体とファースト・ネーションズからの要望に応え、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社に、ウェスリービル(Wesleyville)サイトでの原子力発電所建設の可能性を探るよう要請した。ウェスリービル・サイトはオンタリオ湖のほとりにある、1,300エーカー(約5.26㎢)の敷地。OPG社の前身であるオンタリオ・ハイドロ社は、1970年代後半に石油火力発電所の建設を計画したが、1979年のオイルショックと不況のためにプロジェクトは中止。OPG社は、オンタリオ州での新設需要に備え、サイトを維持していた。ウェスリービル・サイトはすでに電源開発地に分類されており、既存の送電網、鉄道、道路インフラに近接している。OPG社の初期評価によると、サイトでは最大1,000万kWeの原子力発電所の建設が可能である。OPG社のN. ブッチャーCEOは、「新たな原子力発電の可能性を探るにあたり、透明性を徹底したプロセスと、多くの意見する機会、ホストコミュニティとこの土地を伝統的な領土とするファースト・ネーションズ(先住民族の一部)との強力なパートナーシップの構築を約束する。関係するすべての利害関係者と権利所有者の意見に耳を傾け、彼らの明確な支援によってのみ開発を進める」と語った。現在、原子力はオンタリオ州の電力の半分以上を供給する。オンタリオ州のS. レッチェ・エネルギー・電化相によると、オンタリオ州のエネルギー需要は2050年までに75%の増加が見込まれている。主に州の人口の急激な増加、新しい産業施設、人工知能(AI)向けデータセンター、産業の電化、電気自動車の充電エネルギーによる需要増だ。今後OPG社はオンタリオ州とともに、自治体とファースト・ネーションズがサイト評価プロセスに参加するための必要なリソースと資金を確保。炉型を選定し、環境影響評価を実施する。新規原子力プロジェクトを進めるためには、影響評価を含む規制当局の承認を完了する必要があり、連邦政府の手続きでは数年かかる可能性があるため、早ければ2025年内に影響評価を開始する予定だ。カナダ産業審議会は、原子力発電開発はその設計、建設、運用、保守を含む推定95年間の全期間を通じて、オンタリオ州のGDPに2,350億カナダドル(約25.4兆円)の経済効果をもたらすと試算する。また、ポートホープでの1,700人の新規雇用を含め、州全体で10,500人の雇用創出の可能性に言及。地元地域に最大20%の雇用増加を見込んでいる。オンタリオ州政府は2024年11月、増大する電力需要を対応するためOPG社に対し、ウェスリービル・サイトを含む3つの既存のサイトについて、権利保有者および自治体側が新規の発電所開発に関心があるか評価するように要請。ウェスリービル・サイトについては、ポートホープ議会とファースト・ネーションズがOPG社と協力して新規原子力発電開発への意思を示した。OPG社は、残る2つのサイトのあるナンティコーク(Nanticoke)ならびにラムトン(Lambton)のコミュニティとも話合いを続けていくとしている。
28 Jan 2025
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スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)は1月15日、フォルスマルクにある使用済み燃料最終処分場を、R. ポルモクタリ気候・環境相の立会いの下で着工した。最終処分場は2030年代に処分開始、2080年代に坑道の拡張完成を予定する。SKBは、スウェーデンの原子力発電所を所有・運転する電力会社が共同出資して設立した会社。SKBは2024年10月、国土環境裁判所から、フォルスマルクに使用済み燃料の最終処分場、ならびにオスカーシャムに地上の使用済み燃料封入プラントを建設・操業を可能にする、環境法に基づく許可を取得。年明けにフォルスマルクで初期作業の開始を可能とする施行令も受けていた。使用済み燃料最終処分場の建設には、処分が開始されるまでに10年を要し、その後、長期にわたって徐々に地下の坑道を拡張する。現在は、樹木の伐採、サイト掘削、岩石貯蔵スペースの建設、水処理施設、冷却水路に架かる橋の建設などの2年間にわたる地上での準備作業を開始したところであり、その後に地下の坑道掘削工事に取り掛かる。なお、岩盤の掘削工事を開始する前には、スウェーデン放射線安全局(SSM)による安全解析報告書(SAR)の承認が必要となる。使用済み燃料は現在、SKBの集中中間貯蔵施設CLABに一時貯蔵されている。使用済み燃料封入プラントはCLABに隣接して建設され、完成すると両施設合わせてCLINKと総称される。発給された環境許可は、スウェーデンの12基の原子炉(現在、6基が稼働中)からの使用済み燃料に適用され、計画中の新設炉には適用されない。SKBは、約12,000トンの使用済み燃料を含む約6,000体のキャニスターを最終処分場で処分する。最終処分場の操業期間を約70年と計画するが、既設炉の運転期間延長に応じて、延長される可能性もある。最終処分場の地表部分の総面積は0.24㎢。使用済み燃料キャニスターは19億年前の地下岩盤約500mの深さに定置され、2080年代の坑道完成時の全長は66km、地下の占有面積は3~4㎢を想定する。建設にあたり、230万㎥の岩石が掘削される見込みである。SKBは1月23日、フォルスマルク原子力発電所の沖合3kmの海底で操業する、短寿命の低中レベル廃棄物処分場(SFR)の拡張工事を正式に開始し、海底下45mの岩盤を掘削した。既存の貯蔵施設にはスウェーデンの原子力発電所から発生するフィルター、工具、衣類などの他、医療、産業、研究分野から発生する廃棄物が処分されている。拡張工事は将来的に、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物を処分するためのもの。1988年に操業を開始した既存の処分施設は、水深約5mの海底から約60mの岩盤内に設置され、処分容量は6.3万㎥。拡張施設は、海底から120〜160mの深さに設置。ドーム状の6エリアから構成され、処分容量は11.7万㎥。SFRの処分容量は最終的に18万㎥となり、年間3,000㎥の廃棄物受入が可能になる。2075年に閉鎖予定。拡張工事は岩盤掘削作業に3年、拡張施設の設置に3年の合計約6年を見込む。スウェーデン放射線安全機関(SSM)は2024年11月、SFRの拡張工事を認可していた。
27 Jan 2025
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米国の先進原子力エネルギー会社である、ナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)社は1月14日、新たに取得したモジュール式マイクロ炉(MMR)をKRONOS MMRに名称変更した。同社は、MMRを開発していた米国のウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)社から、原子力技術資産の一部を取得した。USNC社は2024年10月、米国破産法第11章第363条に従い、自社技術の売却プロセスを実施することを発表。競売により、NANO社がUSNC社の原子力技術資産の一部を現金850万ドル(約13.3億円)で買収、手続きが1月13日に完了した。USNC社のMMRは、ヘリウムを冷却材に使用する第4世代の小型モジュール式高温ガス炉。5エーカー(0.02㎢)未満のコンパクトな設置面積で、最大4.5万kWt(1.5万kWe)の出力で柔軟に動作するように設計されている。燃料は、低濃縮ウラン(LEU)またはHALEU燃料を使用する。NANO社のJ. ユー会長は、「MMRは、カナダ原子力研究所(CNL)および米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)で開発され、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の許認可の審査段階に入った最初の原子炉。当社は、MMRの規制当局への許認可手続きと最終的な商業化の取組みを継続する」と語った。NANO社は、カナダ初のマイクロ炉であるMMRの建設と実証運転を目的としたグローバ・ファースト・パワー(GFP)社のプロジェクトの一環として、CNLのオンタリオ州にあるチョークリバー研究所に設置、実証する計画を継続する方針である。GFP社は加オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNCが設立した合弁事業体。チョークリバー研究所でのMMR建設に向けて、2019年3月にSMR開発プロジェクトとしては初めて、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。またNANO社は、UIUCとの既存の協力を延長し、同大学におけるMMRの稼働を計画。加えて、NANO社は米原子力規制委員会(NRC)とのMMR許認可プロセスを継続するとしている。UIUCは2021年6月、USNC社製MMRを将来学内で建設するため、NRCに意向表明書(LOI)を提出している。NANO社は、MMRは開発段階が進んでいるため大幅な開発コストを回避しつつ、導入スケジュールを大幅に短縮することができると、今回の買収の意義を強調。今回新たに取得したMMRは、NANO社独自の可搬型マイクロ炉「ZEUS」ならびに「ODIN」(0.1~0.15万kWt)の設計開発を通じて確立した技術基盤を強化・補完するものであるとし、実証に向けた動きを加速したい考えだ。今後、大規模なデータセンターや人工知能(AI)センター、その他の製造およびインフラにおけるエネルギー集約型産業など、エネルギー需要の高い成長市場に幅広く対応をしていくとしている。また翌15日には、USNC社から併せて取得した可搬型の高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」をLOKI MMRに名称変更した。NANO社はLOKI MMRが10kWeから3,000kWeまで出力調整が可能な、着陸船に適した形状で設計されていることから、特に長期的な宇宙探査への原子力利用の取組みを補完したいとしている。NANO社は、米エネルギー省(DOE)の選定による、国立原子炉イノベーションセンター(NRIC)の基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED)を通じて、2027年までに米アイダホ国立研究所(INL)内でNRICが運営するマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドでのLOKI MMRの試運転を目指している。
27 Jan 2025
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エストニアの新興エネルギー企業であるフェルミ・エネルギア社は1月14日、経済通信省に、電気出力60万kWの原子力発電所建設に向けて、サイト調査手続きを開始する申請をした。同社のK. カレメッツCEOは「これにより安全性、環境影響、技術的実現可能性の要件を満たす、原子力発電所サイトの適地を見つけることが可能になる。手続き開始が原子力発電所建設とイコールではないが、近年の電力需要の増加により、エネルギーシステムの安定性を守り、今後数十年にわたって電力料金を引き下げるため、制御可能で信頼性の高いエネルギー源が必要であることは明白だ」と語った。本申請の準備に向けて、フェルミ・エネルギア社は過去6年間、住民を対象とした説明会を16か所の自治体で50回以上実施し、500人以上が参加した。西ヴィル郡ヴィル・ニグラ、ならびに東ヴィル郡リュガヌセの各自治体議会は、それぞれ2023年9月、2024年3月、サイト調査への参加を決定した。フェルミ・エネルギア社の考える原子力発電所の建設完了までの計画は以下のとおり。サイト候補地の事前選定(2025~2027年)候補地を評価するための関連調査と協議を実施。フェルミ・エネルギアが実施した予備調査によると、候補地は、西ヴィル郡クンダ近郊のヴィル・ニグラと、東ヴィル郡リュガヌセのアー村の人口の少ない地域に所在。自然保護区域は回避。サイト検証(2027~2029年)選定サイトと原子力発電所のサイト条件との適合性を確認するため、詳細な調査を実施。プラントの建設段階(2029年~)計画プロセスの完了。エストニア議会(リーギコグ)による原子力規制法の採択後、2029年に建設許可申請を管轄の規制当局に提出。手続きが順調に進めば2031年に着工。2035年後半には初号機が運転開始。今回の申請は、6年間にわたる詳細な計画と分析の結果であるという。32ものパートナー機関・企業との協力を得て、71件の調査を総費用140万ユーロ(約2.3億円)をかけて実施した。エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」(BWR、30万kWe)を2基備えた原子力発電所の建設を計画している。エストニアの現在の電源は、化石燃料、特にオイルシェールが大半を占める。2050年までに排出量実質ゼロを達成することを掲げており、国内のオイルシェール利用の段階的廃止を開始する2035年までにエネルギー・ミックスを多様化するため、信頼性が高く低炭素な電源の選択肢として原子力発電に注目。小規模なバルト海電力市場、再生可能エネルギー、供給目標、欧州の水素市場の発展の可能性を考慮し、水素製造が可能なSMRの導入可能性を検討した。炉型の選択にあたっては稼働実績と燃料供給の安定性を重視し、2023年2月にBWRX-300を選定した。リーギコグは翌年6月、エストニアにおける原子力導入支援に関する決議を採択。これにより、政府は原子力安全法の起草、必要に応じて既存の法律の改正・補足、原子力の規制組織の設立、および専門家の育成を実施していくこととしている。
24 Jan 2025
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米ウェスチングハウス(WE)社は1月7日、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)から月面に原子炉を設置する「月面原子力発電(FSP)」プロジェクト向けのマイクロ炉の概念設計開発を継続する契約を獲得したことを明らかにした。FSPプロジェクトは、NASAが米DOEとアイダホ国立研究所(INL)と協力して実施。月面や将来的には火星での使用も想定する、信頼性の高い電力供給源となる小型の発電用核分裂炉の概念設計の開発に重点を置いている。INLから獲得した今回の新契約は、フェーズ1でWE社が完了した設計作業をベースに、FSPシステムの設計と構成を最適化し、重要な技術要素の試験を開始するもの。NASAはフェーズ1の契約を延長して更に情報を収集、リスクの低いシステム設計をするための要件を設定し、フェーズ2で月面実証の最終的な原子炉設計の依頼を計画する。FSPプロジェクトの継続的な進展により、NASAが掲げる今後10年以内の月面実証という目標の達成が期待されている。NASAによると、FSPシステムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でFSPシステムの能力を実証し、火星等への長期ミッションに道を拓きたい考えだ。WE社は月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、マイクロ炉「eVinci」の小型版を開発している。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。近いうちにINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉のテストベッドで試験を行う予定である。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への継続的な電力供給や地表面での設置において、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的であると、WE社は指摘する。また、この頑丈な炉は可動部分が非常に少なく、故障箇所を減らすことでミッションに応じて柔軟に対応可能。また、操作が簡単で、過酷な宇宙環境にも耐える高い信頼性を実現するとしている。WE社は2022年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとDOEから、月面で稼働可能なFSPシステムの概念設計の提案企業に選定された。NASAの主導により有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」では、2020年代末までにFSPシステムを月面に設置するため、NASAとDOEはこれに間に合うようWE社を含む3社を選定。当初の仕様には、月面環境下で少なくとも10年間連続稼働する電気出力40kWであることのほか、システムが直径4メートル、長さ6メートルの格納シリンダー内に収まること、システムの総重量が6トン以下であること、月面着陸船のデッキまたは別の移動システムからの自律運転が可能であることなどが含まれていた。3社はシステムの初期概念設計を開発するため、INLと12か月契約を締結、各社に約500万ドルが支払われた。WE社は2023年6月、月着陸船やローバーの設計や配備を行うアストロボティック社と、NASAと国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムでの協力可能性を探る了解覚書を締結している。
23 Jan 2025
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国際エネルギー機関(IEA)は1月16日、報告書「原子力エネルギーの新時代への道(The Path to a New Era for Nuclear Energy)」を発表した。報告書は、世界的な電力需要の急増を背景に、政策支援や投資、小型モジュール炉(SMR)の技術開発などが原子力発電の成長を後押しする一方、コスト超過、プロジェクトの遅延リスク、資金調達などの課題に対処する必要があると指摘している。IEAは原子力について、24時間供給可能で大規模展開できる、クリーンで実証済みの電源・熱源であると評価、再生可能エネルギーを補完するとともに、エネルギー・セキュリティや排出量削減に寄与するエネルギー源であるとしている。<原子力発電の現況>2023年現在、原子力発電は世界の総発電電力量の約9%を占め、30か国以上で410基以上が運転中。水力発電に次ぐ第2位のシェアを誇る低排出電源である。IEAによると、現在、原子力3倍化に向けた取組みなど、40か国以上で原子力発電の利用拡大に向けた支援が行われており、原子力への関心は、1970年代の石油危機以来最高水準に達している。現在建設中の原子炉は63基、発電設備容量は7,000万kWを超え、1990年以降で最高水準の一つとなっている。また、ここ数年では、新規建設や既存発電所の運転期間延長の取組みも活発化しており、2025年には原子力発電量が過去最高を記録する見通しである。さらに、新規建設と既存発電所の運転期間延長の両方を合わせた、原子力への投資額は、2023年には約650億ドル(約10兆1,000億円)に上昇し、10年前のほぼ2倍の水準となった。一方で、IEAは、現在運転中の原子力発電所の70%以上が先進国に集中しているものの、平均運転年数が36年以上と比較的古く、原子力シェアも減少傾向にあると指摘。世界の原子力市場の勢力図が、中国をはじめとする新興国へと変化しつつあり、2017年以降に建設が開始された原子炉52基のうち、48基が中国(25基)またはロシア(23基)の設計であると分析した。また、現在建設中のプロジェクトの大半が中国で行われており、中国が2030年までに原子力発電設備容量で米国とEU(欧州連合)を上回るとの見通しを示している。IEAはまた、燃料供給に関するリスクにも言及しており、特にウラン濃縮については、世界の濃縮能力の40%をロシアが占めている現状を問題視。将来へのリスク要因であるとし、燃料分野におけるサプライチェーンの多様性を高める必要性を強調した。また、近年の米国やフランスなどでの大型炉建設における大幅な遅延やコスト超過などの課題も克服すべきとした。<原子力投資の見通し>IEAは、世界の原子力投資は今後増加すると予測しており、大型炉が主要な投資対象となる一方で、SMRが急成長する可能性に言及している。現行のエネルギー政策に基づく「公表政策シナリオ」(STEPS)では、SMRの発電設備容量が、2050年に4,000万kWに拡大すると予測。また、各国政府による誓約目標が期限内に完全に達成されることを想定した「発表誓約シナリオ」(APS)では、政府の支援強化により、2050年までに1,000基以上のSMRが導入され、総発電設備容量は1億2,000万kWに達するとの見通しを示した。これに伴い、SMRへの投資額も大幅な伸びが予想され、現在の50億ドル(約7,800億円)から2030年には250億ドル(約3兆9,000億円)を超え、2050年までに累計投資額は6,700億ドル(約104兆円)に達する見通し。IEAは、データセンター(DC)の拡大等を背景に、安定的で低排出な電源としてのSMRへの関心が高まっていると分析している。現在、DC向け電力供給として合計最大2,500万kWのSMR建設計画が進行中であるという。また、近年では10%未満にとどまっていた先進国の設計を採用する大型原子力プロジェクトの割合が、欧州や米国、日本での新規着工により、APSでは2030年までに40%に増加、その後は半数を超えると予測した。さらに、SMRの広範な導入により、2050年までに新規建設の60%以上が、米国または欧州の設計が採用されるとの見方を示した。但し、IEAは、SMRの成功と導入のスピードは、2040年までにコストを大規模水力や洋上風力と同水準にまで引き下げられるかどうかにかかっているとも指摘している。<原子力プロジェクトへのファイナンス>IEAは、APSでは、2030年までに原子力への年間投資額が1,200億ドル(約18兆7,000億円)にのぼると見ており、この投資の規模を考えると、公的資金に依存するだけでは不十分であり、民間投資の促進が不可欠であるとの見方を示している。一方で、原子力プロジェクトは、その規模の大きさや資本集約性、長い建設期間、技術的複雑さから資金調達が難しく、コスト超過や工期遅延が頻発しており、投資家にとって大きなリスク要因となっている。こうしたなか、IEAは、政府の支援が商業銀行による資金提供を後押しするカギと強調。予測可能なキャッシュフローの保証や建設リスクの政府負担が、プロジェクトの資金調達を容易にするとした。また、長期の電力購入契約や差金決済取引(CfD)、規制資産ベース(RAB)モデルといったリスク軽減策が、安定した資金調達を支える仕組みとして重要性が増しているとした。さらに、IEAは、新規の大型原子炉建設プロジェクトは、建設段階での資金調達が難しいとされる一方、既存発電所の運転期間延長プロジェクトは、運転中の資産を対象とするため、銀行からの資金提供を受けやすいと指摘。また、SMRについては、その規模の小ささから建設期間が短く、投資回収期間が従来型プロジェクトの半分程度に短縮される可能性があることから、投資コスト全体の大幅削減につながる可能性があるとした。また、昨今のグリーンボンドなどの環境金融商品が、新たな資金源として注目を集めており、原子力への資金調達の幅を広げる可能性も併せて指摘している。また、IEAは、原子力事故のリスクに関して、影響を十分に補償する体制を確保するとともに、原子力事業が持続可能に運営できる仕組みの重要性を強調。日本の原子力損害賠償法に言及し、例外的な事象による原子力事故を除き、原子力事業者に損害賠償責任を無制限に課す現行制度について、「大きな財務的テールリスク((統計的な分布における「尾(テール)」に該当するリスクを指す。発生確率は非常に低いが、発生した場合には甚大な影響を及ぼす可能性があるリスクを指す。))を伴う」と指摘した。 ※図表の入った詳細版を、こちらで公開しています
22 Jan 2025
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米商務省の産業安全保障局は1月15日、インド原子力省(DAE)傘下の3研究開発機関・公営企業を貿易取引制限リストから削除した。エネルギー安全保障のニーズと目標を共有する両国間の共同研究開発や科学技術協力などの先進エネルギー協力への障壁を減らし、原子力の平和利用協力および関連する研究開発の推進がねらい。同リストから削除されたのは、DAE傘下のインディラ・ガンジー原子力研究所(IGCAR)、バーバ原子力研究所(BARC)およびインド希土類公社。米国のJ. サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は1月6日、インド工科大学デリー校で講演。インドの主要な原子力機関と米国企業との間の民生用原子力協力を実質妨げてきた長年の貿易規制を撤廃するための必要な手続きが最終段階に入っていることを明らかにしていた。サリバン大統領補佐官は、「J. ブッシュ前大統領とM. シン前首相は20年前に民生用原子力協力のビジョンを打ち出したものの、我々はまだそれを完全に実現できていない」「平和的原子力協力への取組みを共有する戦略的パートナーとして、これまでの協力の歩みを継続していく」と述べ、貿易規制撤廃による両国間の民生用原子力協力促進への期待を示した。貿易規制の背景にはインドによる1974年の核実験の実施がある。核実験実施を契機にそれまで初期のBWRやCANDU炉の導入に協力してきた米国やカナダなどが原子力協力を停止。さらに国際的な輸出規制のための原子力供給国グループ(NSG)が設置されたため、インドは原子力関係の資機材や技術の輸入ができなくなり、ウラン燃料、重水、原子炉関係機器などの調達から、建設・運転・保守の技術に至るまで国産で賄わざるを得なくなった。その後、インドが核実験モラトリアムの継続をはじめ、核不拡散に協力する姿勢を見せたため、米国は大規模な原子力開発計画を持つインドでの商機を狙い、2005年に対印原子力政策を転換。2008年8月には国際原子力機関(IAEA)理事会が保障措置協定案を承認、同9月にNSGは核不拡散条約(NPT)未加入のインドに対する民生用原子力協力を容認(インド例外措置)し、翌10月に米印間で原子力協力協定(通称123協定)が締結され、原子力協力が進められてきた。なお、インドの原子力損害賠償制度は、海外の原子炉ベンダーにも一定の賠償責任を盛り込んでおり、技術協力の障害となっていたが、インドは2016年2月に原子力の損害賠償の補完的補償に関する条約(CSC)を批准し、国内の原賠法がCSC付属書の規定に適合すると宣言。同年5月、インドはNSGへの加盟を申請。米国はインドのNSG加盟を支援している。これらの動きを受け、インド東海岸のアンドラ・ブラデシュ州のコヴァダが米ウェスチングハウス社(WE)製のAP1000×6基の建設サイトに選定され、現在、サイトの準備作業とWE社との建設計画の協議が進行中である。
21 Jan 2025
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ロシアのM. ミシュスチン首相によるベトナム・ハノイの公式訪問に同行した、ロシア国営原子力企業ロスアトムのA. リハチョフ総裁は1月13日、ベトナムのファム・ミン・チン首相と会談した。双方は原子力発電開発だけでなく、原子力科学技術分野においても協力と支援を継続し、ベトナムの社会経済の発展に貢献することで合意した。ファム・ミン・チン首相は会談の中で、原子力発電分野の科学者や専門家の育成、ダラット原子力研究所における研究炉の設計と運用、がんの診断と治療のための放射性医薬品の供給など、ロシアのベトナムへの長年の協力と支援を高く評価。ロスアトムに対し、ベトナムの原子力技術部門の人材育成と技術移転を支援するよう要請した。リハチョフ総裁は、ロスアトムは、原子力発電所の建設、近代的な原子力科学技術センター(CNST)の設立、技術移転、ローカライゼーション、原子力科学と産業の発展の実現に向けて、長期的にベトナムに協力と支援を行う用意があると述べ、ベトナム側の期待に応えた。翌14日には、ベトナムとロシア両首相の立会いの下、ベトナム商工省傘下のベトナム電力公社(EVN)とロスアトム傘下のロスアトム・エネルギー・プロジェクト社(REP)との間で原子力発電分野における協力に関する了解覚書が調印された。REP社は大型炉からマイクロ炉までロスアトム製の原子炉を扱っており、世界市場での商業展開を目的に設立されている。2024年11月25日、ベトナム共産党中央委員会(CPV)は、国家エネルギー安全保障の確保のため、ニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開する政府提案に合意。11月30日、第15期第8回国会でニントゥアン原子力発電プロジェクトを再開するという政府提案が承認された。2016年11月、国会は、国の経済状況を理由にニントゥアン原子力発電プロジェクトの中止を決定していた。ベトナム政府は1月10日、原子力発電所建設プロジェクトの運営委員会を設立。同委員会委員長を首相、副委員長を副首相兼外相と商工相が務める。委員会は、ニントゥアン原子力発電プロジェクトの実施に責任を負い、原子力開発に関する法制面、原子力発電プログラムの研究と策定を指揮する。なおEVNは、政府から同プロジェクトの投資家に任命されている。委員会の初会合が1月15日に開催され、首相はニントゥアン原子力発電所の建設を5年以内に完成させるという目標を提示。党創立100周年にあたる2030年までに原子力発電所を建設するための各年のロードマップと作業を決定したという。
21 Jan 2025
1284
米ウェスチングハウス(WE)社は1月16日、韓国電力公社(KEPCO)ならびに韓国水力・原子力(KHNP)との間で、知的財産権に関する紛争の終結で合意したことを明らかにした。併せて、WE社は韓国の両社と協力して、現在係争中の訴訟をすべて取り下げる予定であると表明。なお、和解の条件については、当事者間の合意により機密事項となっている。WE社のP. フラグマンCEO(今年3月末にCEOを退任予定)は、「世界的にベースロード電源の需要が高まる中、この合意は両社による新たな原子力プロジェクトを推進するための協力関係の基盤となる」と述べた。一方、KHNPのJ. ファンCEOは、「今回の合意は、両社のより一層緊密な協力関係を構築する契機となる」とし、世界市場での協力体制と競争力を強化する方針だ。この和解を受け1月16日、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官は声明を発表、「民生用原子力部門で数十万人の雇用創出を維持し、数千億ドルの協力プロジェクトを進める道を開く可能性のある大きな成果。私はこれら関係企業とリーダーたちの献身、決意、忍耐力に感謝している」と述べた。WE社は、韓国のAPR1000やAPR1400が同社の技術を組み込んでおり、KHNPはWE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有しておらず、米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけであると主張。知的財産権と輸出管理をめぐり、2022年以降、KEPCOならびにKHNPと係争を繰り広げてきた。国際仲裁ならびに米国での訴訟が進行しており、WE社は仲裁が2025年後半までに決着する可能性は低いとみていた。こうしたなか1月8日、米DOEと韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2024年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印。両政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性が指摘されていた。
20 Jan 2025
1445
フランス電力(EDF)の子会社であるNUWARD社は1月6日、同社製小型モジュール炉(SMR)である「NUWARD」の再設計作業を開始したことを明らかにした。EDFとNUWARD社は2024年6月、プロジェクトの遅延や予算超過を避けるためにNUWARD SMRの設計を見直し、既存の実証済みの技術を利用し、設計を最適化する計画を決定。その後まもなく、英国の原子力発電所の新設計画を牽引する政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が実施するSMR支援対象選定コンペから撤退した。NUWARD社は、「ここ数か月に実施された研究は極めて重要であり、当社は電力会社と産業界の期待に完全に応えるべくSMR戦略を見直してきた。NUWARD SMRは、電気出力40万kW、熱出力約10万kWのコジェネのオプションを提供する。市場のニーズに適合した安全な製品を提供するため、原子力部門でよく知られ、完全に習得された実績ある技術コンポーネントのみから構成される設計に見直す」と説明。「NUWARD SMRの付加価値は、競争力と建設時間の最適化を目的とした、シンプルさとモジュール工法にある」と強調した。同社は現在、2026年半ばまでに概念設計を完成させ、2030年代に市場投入し、国内に初号機の建設を計画している。2019年9月、EDFは仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)などと協力して、欧州主導のSMR「NUWARD」(電気出力17万kWの小型PWR×2基)の開発を発表。2基の独立した原子炉圧力容器(RPV)を鋼製格納容器内に収納、格納容器は水中設置を特徴とし、基本設計段階に進んでいた。
17 Jan 2025
1449
カザフスタンの国営原子力企業カザトムプロム社は1月6日、東カザフスタン州ウスチカメノゴルスクにある燃料集合体(FA)製造工場「ウルバ-FA」の年間製造能力が2024年12月末までに設計容量の200トンに達したことを明らかにした。同工場は、2021年11月に操業開始。3年以内に設計上の生産能力到達を目指すスケジュールで、計画的に増産してきた。同工場を操業するウルバ-FA 社には、カザトムプロム社傘下のウスチカメノゴルスクにあるウルバ冶金工場(UMP)が51%、中国広核集団有限公司(CGN)傘下のウラン資源開発企業である中広核鈾業発展有限公司(CGNPC URC)が49%出資しており、同工場は実質的に中国の原子力発電所専用のFA製造施設となる。200トンは、原子炉6基の再装荷に必要な燃料量に相当。同工場は中央アジアで唯一の原子力発電所用燃料製造施設でもある。同工場が製造したFAはカザトムプロム社とCGNが結んだ協力契約に基づき、CGNPC URC 向けに全量(年間200トン)を20年にわたり供給することとなっている。なお中国向け初出荷は2022年12月に実施されており、2023年以降も出荷されている。同工場のFA製造技術は仏フラマトム社から移転されたもので、フラマトム社は「AFA 3G型燃料集合体」の製造ライセンスとともに、主要な製造機器やエンジニアリング文書、関連人材等を提供。一方、FAの構成要素である燃料ペレットは、カザフスタン産のウランを原料にUMPで製造している。カザフスタンは世界最大のウラン生産国で、旧ソ連時代からウラン原料の輸出だけでなく燃料加工が重要な産業となっている。燃料ペレットは、ソ連時代よりUMPで主にロシア向けに製造・出荷されていたが、ソ連崩壊後、核燃料サイクル産業の高度化に必要な燃料集合体の製造技術の習得を志向していた。
16 Jan 2025
1293
インド原子力発電公社(NPCIL)は12月31日、22万kWeのバーラト小型炉(BSR、バーラトはヒンディ語で「インド」の意味)の建設に向け、民間部門からの提案依頼書(RFP)募集を開始した。提案締切りは2025年3月31日。BSRは、自家発電用に設計された国産の加圧重水炉(PHWR)。鉄鋼、アルミニウム、銅、セメントなどのエネルギー集約型産業における石炭火力発電所の代替を目指している。インドにおけるPHWRは22万kWから54万kW、70万kWと進化し、すべての出力サイズで順調に稼働している。これらのPHWRに必要なコンポーネントや機器を供給する国内サプライ・チェーンも成熟している。BSRは工場での部品製造、現地組立てによって建設時間を短縮。堅牢な安全性と効率性を実証済みであり、費用対効果に優れ、脱炭素化が困難な分野において安定したクリーンな電力供給源として期待されている。NPCILは、BSRは経済的利点、特に炭素排出税に関連するコストの削減によってインドの産業の国際競争力が強化されるとの考えだ。2024年7月、N. シタラマン財務相は2024~25年度の連邦予算で民間部門と提携し、BSRの展開やバーラト小型モジュール炉(BSMR)の研究開発等を支援する方針を発表。今回のRFPの実施は、現行の法的枠組みと合意されたビジネスモデルに基づき、初の民間部門の参入を認める原子力開発計画の一環である。1962年制定の原子力法により、原子力部門は中央政府に独占的権限が与えられ、民生用原子力発電所の設置と運転を許可されているのは、原子力省(DAE)傘下のNPCILとバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム社(BHAVINI、高速増殖原型炉PFBRの建設と運転主体)のみ。2015年の原子力法改正によりインド国営火力発電会社(NTPC)のような政府系公社だけがNPCILと提携が可能となった。民間部門の原子力発電への関与はエンジニアリング/調達/建設(EPC)の役割に限定され、原子力インフラ開発の補助的役割を担ってきた。原子力安全や放射性廃棄物管理の問題、核拡散リスクの面から、民間部門の参入は依然として制限事項が多いものの、今回、民間部門との提携が認められたことで、新規原子力発電所の資金調達に新たな道が開かれた意義は大きい。NPCILは、BSRの設計、品質保証、運転と保守、廃止措置までを実施。原子力発電所の立地、建設、試運転、および運転と廃止措置の認可は、NPCILが原子力規制委員会(AERB)から取得。選定された民間事業者は、NPCILの監督・監督下で資金調達と土地取得の上で2基のBSRを建設する。建設完了後、BSRはNPCILに移管され、長期にわたる運転・保守管理(O&M)契約の下で運営される。発電した電力は事業者が使用でき、DAEが承認した価格での売電も可能。なお事業者は、プロジェクトの開始から、損害発生時の復旧作業および廃止措置を含むライフサイクル全体に必要なコスト(税および保険費用込み)をすべて負担する。燃料や使用済み燃料、重水の所有権はDAEが有する。インドは、2070年までにネットゼロの実現を掲げている。エネルギーミックスにおける原子力シェアの拡大に向けて、DAEは原子力発電設備容量を現在の818万kWから2031年までに2,248万kWの約3倍に、2047年までに1億kWに増強するという野心的な目標の達成を目指しており、民間部門の原子力参入は重要な一歩となる。
16 Jan 2025
1049
チェコ政府は2024年12月20日、欧州委員会(EC)に「国家エネルギー・気候計画」(NECP)の最終文書を提出した。2033年までに電力や熱生産における石炭利用を全廃し、再生可能エネルギーとともに、原子力発電を拡大する方針を明示。原子力を、対外エネルギー依存の低減や脱炭素化戦略の重要な柱と位置付けた。NECPは、EU加盟国が脱炭素化やエネルギー効率、再エネなどの実施計画を含む、気候変動目標と行動を詳述した文書。今回チェコ政府は、再エネの総発電電力量に占める割合を現在の約12%から2030年には31%、2050年には52%まで引き上げるとともに、原子力は、現在の約40%から2040年には68%にまでシェアを拡大させる方針を表明した。原子力の増分は、大型炉と中小型炉(SMR)の導入により賄うとしているが、まずは、既存原子力サイトのドコバニ(VVER-440、51.0万kWe×4基)とテメリン(VVER-1000、108.6万kW×2基)での増設を優先させる。チェコ電力(ČEZ)は2024年7月、最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者として、韓国水力・原子力(KHNP)を選定、今年3月末にも正式契約が調印されると見られている。現在、同プロジェクトの入札手続きについては、WE社が、韓国のAPR1000やAPR1400は同社の技術を組み込んでいると主張し、知的財産権と輸出管理をめぐってKHNPと係争中だ。こうしたなか、2025年1月9日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、昨年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印した。今回、両国政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性を指摘する向きもある。NECPはまた、石炭火力全廃後の、特に2035年以降のSMRの役割を強調、石炭火力をSMRに順次リプレースすることにより、地域暖房を含めたSMRの活用方針を打ち出した。既にČEZは、SMR初号機の建設サイトとして、テメリン・サイト南西部を選定済みで、地質調査など建設準備作業が進められている。2024年9月には、チェコ政府とČEZがSMR供給者7社の中から入札によって、英ロールス・ロイスSMR社をSMRの建設プロジェクトの優先サプライヤーに選定。SMR初号機の運転開始は2030年代半ばを予定しているが、大型原子炉の建設状況次第では、最大300万kW導入する可能性もあるという。そのほか、ČEZは、国内2基目、3基目のSMR建設候補サイトとして、チェコ北東部のポーランド国境に近いジェトマロヴィツェ(Dětmarovice)と北西部のドイツ国境付近のトゥシミツェ(Tušimice)を暫定的に指定している。両地点とも、ČEZの石炭火力サイトである。
15 Jan 2025
1483
中国・福建省で昨年11月から試運転中だった、中国核工業集団公司(CNNC)の漳州(Zhangzhou)1号機(PWR、112.6万kWe)が2025年1月1日、営業運転を開始した。炉型は、中国開発のPWRである華龍一号(HPR1000)。同機は2019年10月に着工、国内の商業炉としては57基目となり、基数では世界第2位のフランス(56基)を抜いた。華龍一号としては国内5基目となる。漳州サイト内では、今回運開した1号機のほか、計3基が建設中。2号機が2020年9月に着工し、漳州第Ⅱ発電所1、2号機は、2024年2月と9月にそれぞれ着工した。さらに、CNNCは、華龍一号を2基採用した漳州第Ⅲ発電所を計画中である。総投資額1,000億人民元(約2兆1,500億円)超の漳州プロジェクトは、CNNC(51%)と中国国電公司(49%)の合弁企業である国電漳州エナジー社が運営している。華龍一号は、中国が知的財産権を有する第三世代の原子炉。設計上の運転期間が60年で、運転サイクル期間は18か月。安全系に動的と静的両方のシステムを装備し、格納容器は二重構造となるなど、中国は最高の国際安全基準を満たす原子炉と誇っている。また、中国の主力輸出炉としても位置付けられ、海外への輸出実績もある。既にパキスタンのカラチ原子力発電所で2021年5月に2号機が、2022年4月に3号機がそれぞれ営業運転を開始している。昨年末には、同じくパキスタンで、華龍一号を採用したチャシュマ5号機が着工したばかり。そのほか、2022年2月には、アルゼンチンの国営原子力発電会社(NA-SA)とCNNCが、アルゼンチンへの華龍一号の建設に向けてEPC(設計・調達・建設)契約を締結したほか、トルコなどへのプラント輸出の動きもある。
10 Jan 2025
1436
ロシア国営原子力企業ロスアトムは12月25日、鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」の燃料加工/再加工モジュール施設の試験操業を開始したことを明らかにした。同施設は、BREST-OD-300と再処理モジュールと並んで、パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)を構成する3施設のうちの1つ。PDECは、ロスアトムが進める戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の一環として、西シベリアのトムスク州セベルスクにあるシベリア化学コンビナート(ロスアトム燃料部門の企業)のサイト内で建設が進められている。BREST-OD-300は冷却材に鉛を使用、ウラン濃縮の副産物である劣化ウランと使用済み燃料から抽出したプルトニウムを利用した、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。燃料加工/再加工モジュールでMNUP燃料を製造。併設される再処理モジュールでBREST-OD-300の使用済み燃料のリサイクルを繰り返すことで、ウラン濃縮工程で生じた劣化ウランの蓄積分を処分し、放射性廃棄物の発生量と放射能レベルを低減する。濃縮工場に貯蔵されている劣化ウランを除けば、単一のサイト内でクローズド・サイクルが完成する。MNUP燃料は、二酸化ウランベースの従来の原子燃料とは異なり、標準的技術と設備では製造できない。非標準的な燃料組成に加え、使用済み燃料から抽出したプルトニウムからの高線量被曝を防ぐため、燃料製造工程は可能な限り自動化される。MNUPの製造にはウランとプルトニウムの混合窒化物の炭素熱合成ライン、燃料ペレットの製造ライン、燃料棒の組立ライン、燃料集合体の製造ラインの4つのラインがある。施設のスタッフは250人。燃料製造施設では2024年4月、ロシアの産業・原子力規制当局であるロステフナゾルからの許認可を得て、劣化ウラン窒化物燃料を用いたBREST-OD-300向けモックアップ燃料集合体を初製造するなど、製造技術の習得に取組んでいる。ロステフナゾルがプルトニウムの取扱いを承認後、MNUP燃料の生産を開始、200体のMNUP燃料集合体を製造する計画だ。すでにMNUP燃料を使用した試験用集合体は、ディミトロフグラードの原子炉科学研究所にある高速実験炉BOR-60とベロヤルスク原子力発電所3号機(高速炉BN-600)に装荷され、燃料の燃焼度合いなど、BREST-OD-300の初期炉心装荷の妥当性を確認済みである。なお、PDECでの燃料製造支援に向け、特にBREST-OD-300初期炉心装荷やモックアップの燃料集合体の金属部品の生産拠点として、ロスアトムの燃料部門の企業群である、グラゾフのチェペツク機械工場(ウドムルト共和国)、エレクトロスタリのエレマシュ機械製造工場(モスクワ州)、ノボシビルスクの化学濃縮プラント(西シベリア)が協力している。
08 Jan 2025
1555
パキスタンのチャシュマ5号機が12月30日に着工した。同機は、中国核工業集団公司(CNNC)製の「華龍一号」(PWR=HPR-1000、110万kWe)を採用。パキスタンではカラチ2、3号機もCNNC製の華龍一号を採用しており、それぞれ2021年5月、2022年4月に運転を開始している。なお、カラチ2号機は、中国国産の華龍一号の初輸出プロジェクトである。チャシュマ5号機の着工を受け、パキスタンのS. シャリフ首相は、パキスタンと中国の戦略的協力における新たなマイルストーンであると自身のソーシャルメディアで表明。初コンクリート打設の式典に出席した、A. チョードリー計画・開発・特命相は、両国の持続可能な開発とエネルギー安全保障への取り組みを再確認するものだと強調した。同式典には、パキスタン原子力委員会(PAEC)のA. アリ委員長、姜再冬・駐パキスタン中国大使、CNNC張凱副総経理らも出席した。PAECとCNNCは2017年11月、チャシュマ5号機の建設協力に係る協定を締結。2023年6月には、PAECとCNCCは総額48億ドル(約7,570億円)の建設契約を締結した。翌7月、シャリフ首相の指揮の下、起工式が挙行されている。PAECは2024年4月、パキスタン原子力規制庁(PNRA)に建設許可を申請、PNRAは関連する国内および国際基準に準拠した規制要件に照らし徹底的な審査評価を行い、12月26日に建設許可を発給した。建設ピーク時には直接ならびに間接的に4万人の雇用創出が見込まれている。華龍一号は、中国が知的財産権を有し、国内外展開を目指す第三世代炉。設計上の運転期間が60年、運転サイクル期間は18か月、安全系に動的と静的両方のシステムを組み合わせ、格納容器は二重構造。CNNCは、国際的に最も厳しい安全基準をクリアしているとうたっている。パキスタンでは現在6基の原子力発電所が運転中で、総発電電力量に占める原子力シェアは17%。政府の「原子力ビジョン2050」に基づいて、2050年までに合計約4,000万kWの原子力発電所建設を目指している。しかし、カシミール地域の帰属問題を巡って長年インドと対立しており、インドと同じく核不拡散条約(NPT)に加盟していない。欧米の原子力先進国から技術面、資金面の支援が得られないなか、中国はこれらの両面でパキスタンに支援を提供しており、すでにチャシュマ発電所の1~4号機ではCNNCの協力により、30万kW級PWR(CNP300)が運転中である。カラチ発電所1号機(CAUDU炉、13万kWe)はカラチ2号機の運転開始後、2021年8月に閉鎖された。
07 Jan 2025
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ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は12月19日、同社が運転するチェルナボーダ原子力発電所の1号機(CANDU、70.6万kWe)の30年間の運転期間延長に向けた改修工事に係る、エンジニアリング、建設、調達(EPC)契約を、カナダ、イタリア、韓国企業のコンソーシアムと締結した。契約額は19億ユーロ(約3,109億円)。SNNと、カナダのアトキンス・リアリス社、イタリアのアンサルド・ヌクレアーレ社、カナダ商業公団(CCC)、韓国水力・原子力(KHNP)の4社からなるコンソーシアムとの契約。EPC契約の主な内容は、具体的な設計・施工内容の策定、設備・資材の調達、改修工事の実施、および改修工事に必要なインフラの構築である。CANDU炉の技術管理者であるアトキンス・リアリス社が原子炉システムを担当し、アンサルド・ヌクレアーレ社がタービン発電機システムの設計と機器調達、KHNPは主要設備の交換や放射性廃棄物貯蔵施設などの主要インフラ施設の建設を担当する。1号機の運転期間は30年間延長した2061年までを想定。1号機の運転停止は2027年に予定されており、改修プロジェクトの完了は2030年の見込み。ルーマニアで唯一稼働するチェルナボーダ原子力発電所では、1996年と2007年にそれぞれ1、2号機(カナダ製CANDU-6炉、各70万kWe級)が運転を開始した。ルーマニアの総発電電力量に占める原子力シェアは約20%(2023年実績)。同発電所の3、4号機(CAUDU-6、各70万kWe級)は1984年~1985年にかけて着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊によって建設工事は中断し、現在は保全状態におかれている。SNNは同3、4号機建設の再開に向けて、今年11月に米・加・伊の企業から構成される合弁事業会社とエンジニアリング・調達・建設・管理(EPCM)に係る契約を締結している。ルーマニアはCANDU炉のほか、同国南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、米ニュースケール・パワー社製SMRである出力7.7万kWeの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kWe)の建設を計画している。プロジェクトは、SNNと民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社のとの合弁企業であるロパワー・ニュークリア社を中心に進められており、米フルアー社、韓サムスンC&T社、米サージェント&ランディ社も参画している。
25 Dec 2024
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米国で先進炉開発を進めているオクロ社は12月18日、データセンター・キャンパスの設計、建設、運営会社であるスイッチ(Switch)社へ2044年まで電力を供給するため、計1,200万kWの先進炉を導入することで合意した。本合意は、AI(人工知能)により増大する電力需要をクリーンで持続可能な電力で満たす協力体制の枠組みを確立するもの。プロジェクトの進捗に応じて、個別に拘束力のある電力購入契約(PPA)を締結し、米国全土のスイッチ社のデータセンターにオクロ社の開発するマイクロ炉「オーロラ」発電所を建設・運転し、電力を供給する。オクロ社のJ. デウィット共同創設者兼CEOは、「今後20年間に、先進炉の導入規模の拡大に向けた財務およびインフラモデルを開発し、開発から展開、規模拡張まで、スイッチ社とともに取り組んでいく。スイッチ社との提携により、初期のオーロラ発電所の開発が加速されるだけでなく、今後数十年にわたる顧客需要が加速的に拡大していく」と指摘した。オクロ社は、生成AIを用いたテキスト生成サービスである「Chat GPT」を開発した、米オープンAI社のS. アルトマンCEOが会長を務め、取締役には米国のトランプ次期大統領にエネルギー省(DOE)長官に指名されたC. ライト氏が名を連ねる。オクロ社はオーロラ発電所による発電電力の供給取引について、既にエクイニクス社の他、米国内の複数のデータセンター関連企業と基本合意書(LOI)を締結している。オーロラはHALEU燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5万~5万kWeの範囲で調整が可能。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。米エネルギー省(DOE)は2019年12月、先進的原子力技術の商業化を支援するイニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の一環として、アイダホ国立研究所(INL)敷地内でオーロラ発電所の建設を許可。これを受けてオクロ社は翌2020年3月、原子力規制委員会(NRC)にオーロラ初号機の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、NRCは、審査の主要トピックスに関する情報がオクロ社から十分に得られないとして、2022年1月に同社の申請を却下した。オクロ社は2025年にもCOLの再申請をする準備を進めている。
25 Dec 2024
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米国の原子力開発ベンチャー企業であるテラパワー社は12月18日、同社が開発する先進炉「Natrium」の主要機器の製造契約を締結したと発表した。製造されるコンポーネントと契約先は以下のとおり。原子炉ヘッド:スペイン・Equipos Nucleares(ENSA)炉心バレル、原子炉容器ガードベッセル、炉内構造物:韓国・斗山エナビリティ(旧斗山重工業)原子炉容器:韓国・HD現代重工業回転プラグ:カナダ・Marmenテラパワー社のC. レベスクCEOは、「Natriumはゲームチェンジャーな先進炉。初号機の建設に向けた適切なベンダーチームの結成により、この先進炉を商業化し、世界的なエネルギー需要の高まりに応えていきたい」と抱負を語った。Natriumは34.5万kWeのナトリウム冷却小型高速炉。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを備え、負荷追従運転が可能。ピーク時には電気出力を50万kWまで上昇させ5.5時間以上稼働する。初号機は、電気事業者パシフィコープ社がワイオミング州南西部のケンメラーに所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに建設される。テラパワー社は、Natriumがクリーンエネルギーを生産するだけでなく、閉鎖する石炭火力発電所に代わり、エネルギー生産地域の経済を支え、建設やその後の運転期間における雇用を促進すると見込んでいる。同社は今年3月、米原子力規制委員会(NRC)に建設許可を申請、6月には起工式を挙行し、非原子力部の建設工事を開始した。Natriumは2020年10月、米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の「5~7年以内に実証可能な炉」に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。テラパワー社はARDPを通じて、Natriumの設計、建設、運転特性を検証する。原子力部の着工は早くて2026年、運転開始は2030年を予定している。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
24 Dec 2024
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フランス電力(EDF)のフラマンビル3号機(欧州加圧水型炉=EPR、165万kWe)が12月21日、送電網に接続し、送電を開始した。同機は、今年9月3日に初臨界を達成。その後、一連の試験と検査を実施しながら、原子炉の出力を徐々に上げ、25%出力に達した時点で、送電網に接続された。EDFのL. レモント会長兼CEOは、「フラマンビル3号機の送電開始は、原子力業界全体にとって歴史的な瞬間である。このプロジェクトで直面した課題に粘り強く取り組み、安全性に妥協することなく取組んできたすべてのチームに敬意を表したい」と述べた。同機は2007年12月に着工。フランス国内で初のEPR建設だったこともあり、土木エンジニアリング作業の見直しのほか、福島第一原子力発電所事故にともなう包括的安全評価の実施、原子炉容器の鋼材組成の異常(炭素偏析)、2次系配管溶接部の品質上の欠陥等により、完成が当初予定の2012年から大幅に遅れた。建設コストも当初予定の4倍になるなど大幅超過した。同機は今後数か月間にわたり、100%の出力に達するまで、仏原子力安全規制当局(ASN)の監督の下、試験および送電網への接続・切断を繰り返す。EPRはフランス国外ではすでに営業運転を開始している。中国の台山発電所では1、2号機がそれぞれ2018年12月、2019年9月に運転を開始。続いて欧州では、フィンランドのオルキルオト発電所3号機が2023年5月に運転を開始した。英国ではヒンクリー・ポイントC発電所の1、2号機が建設中だ。2022年2月には、フランスのE. マクロン大統領が、同国のCO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するという目標の達成に向け、フランス国内で改良型の欧州加圧水型炉(EPR2)を新たに6基建設、さらに8基の建設に向けて調査を開始すると発表している。
23 Dec 2024
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米国貿易開発庁(USTDA)は12月13日、ブルガリアの2件の原子力プロジェクトに対する助成支援について、ブルガリアの関係機関との合意書に調印した。1件目は、ブルガリアの原子力発電所から発生する使用済み燃料の地下処分に向けた、米ディープ・アイソレーション社との実行可能性調査(FS)の実施。2件目は、小型モジュール炉(SMR)の導入に係る、ブルガリア国営のブルガリア・エナジー会社(BEH)への技術支援を対象にしている。USTDAは、インフラプロジェクトに対する技術支援やFS、実証実験の支援等を活用し、新興国等の経済開発と米国製品・サービスの輸出の促進を通じて米国外交政策の推進を支援する米国の政府機関。ディープ・アイソレーション社は、USTDAの助成支援を得て、既存および将来の原子力発電所からの発生する使用済み燃料を地下1 km以上の深地層に処分するためのFSの実施に協力する。USTDAのE. エボン長官とブルガリアの国家放射性廃棄物取扱企業(DPRAO)のS. ツォチェフ理事長が合意書に調印した。エボン長官は、「米国の最先端技術を利用して、使用済み燃料の安全な長期処分オプションを作ることで、さらなる発電所建設への扉を開くことにもなる」と述べた。ツォチェフ理事長は、「ディープ・アイソレーション社との提携は、最先端技術を活用し、放射性廃棄物の安全な管理のために革新的で持続可能なアプローチを探求するという我々の長期的なビジョンの一歩となる」と今回の支援合意を評価した。もう一方の技術支援では、ブルガリアが計画する1基以上のSMRの原子力発電所の導入に対し、米国製のSMRの詳細な技術的分析をBEHに提供する。これに加え、BEHが計画しているSMR発電所の建設候補地の調査や、資金調達方法など実施までのロードマップの策定も行うという。BEHは米ウェスチンングハウス社のAP1000×2基の新規建設が計画されているコズロドイ原子力発電所も含め、ブルガリアの主要な発電所を所有している。ブルガリアのV. マリーノフ・エネルギー相は、「今回の助成支援の合意は、国民の繁栄とブルガリア経済の競争力を確保するために、予測可能で安価なエネルギーを供給するという我が国の政策を成功へ導き、最先端技術の導入を可能にするもの」と、USTDAとの合意の意義を強調した。USTDAはこれら支援を、2024年2月に締結されブルガリアの民間原子力発電プログラム開発における協力関係を定めた「米-ブルガリア政府間協定」を推進させるものと位置付けている。
23 Dec 2024
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ポーランド産業省のW. ヴロースナ次官兼戦略エネルギー・インフラ担当全権代表は12月11日、ワルシャワで記者会見を行い、ポーランドの第1原子力発電所の運転開始について、当初の予定より3年遅れ、初号機が2036年の営業運転開始を想定していることを明らかにした。同会見には、同省のP. ガイダ原子力局長も同席。2023年12月の政権交代を機に、これまで気候・環境省の所掌にあった原子力政策・開発分野が産業省に移管された。会見でヴロースナ次官は、2020年に閣議決定された原子力発電プログラム(PPEJ)の更新作業が最終段階にあり、更新版では、ポーランド初の原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を想定していると述べた。また、第2原子力発電所の建設計画は継続しており、競争入札によってパートナーを選定すると強調した。また、数週間以内に、欧州委員会(EC)による第1原子力発電所への国家補助の承認手続きが開始されるだろうと指摘。ポーランドは今年9月、ECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知していた。これに対してECは12月18日、ポーランドの計画がEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査の開始を明らかにした。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。ガイダ原子力局長は、第2原子力発電所の計画について、現在、旧石炭火力発電所の4サイトを建設候補地として検討していることを明らかにした。システム要件に合致し、閉鎖後の投資も呼び込みやすいため、だという。同原子力局長はまた、今年11月に産業省の委託により実施された原子力に対する国民の世論調査の結果について、回答者の92.5%がポーランドでの原子力発電所の建設を支持し、回答者の79.6%が原子力発電所が自分の居住地の近くに建設されることに同意していると言及。これは、2012年より毎年実施されている世論調査の中でも最高の数値を記録したという。現行のPPEJでは、総発電設備容量600万~900万kWeの、2サイトでの原子力発電所の建設を想定している。前政権は、第1原子力発電所のパートナーとして米国のウェスチングハウス(WE)社とベクテル社によるコンソーシアムを入札を経ずに指名した。第1原子力発電所(WE社製AP1000×3基、合計出力375万kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設が計画されている。第1原子力発電所の建設プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.3兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.3兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済取引(CfD)により、プロジェクトを支援するとしている。PEJによると今年12月に入ってから、第1原子力発電所のプロジェクト支援に向けて、カナダ輸出開発公社から最大14.5億米ドル(約60億ズロチ、約2,294億円)の融資可能性の意向書を受け取り、フランスの輸出信用機関のBpifranceや公共開発銀行であるSfilからも37.5億米ドル(約150億ズロチ、約5,736億円)もの融資への関心が示されたという。今年11月には、40億ズロチ(約1,530億円)規模の融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印。米輸出入銀行(US EXIM)も約700億ズロチ(約2.7兆円)相当の融資支援を実施することになっており、これまでにPEJが海外の融資機関から資金拠出の意向表明を受けた総額はおよそ950億ズロチ(約3.6兆円)になる。PEJは、機器供給国を中心とする、輸出ファシリテーターである各国の輸出信用機関と緊密な協力関係を築き、資金調達の構造における輸出信用機関のシェアを最大限に高めたい考えだ。
20 Dec 2024
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