米TMI1号機 運転再開を前倒しへ
08 Jul 2025
米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は6月25日、予定よりも早く、最短で2027年にもスリーマイル・アイランド原子力発電所(TMI)1号機(同機は、クレーン・クリーン・エナジー・センター:CCECに改名)を運転再開する予定であることを明らかにした。
コンステレーション社は2024年9月、米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結しており、マイクロソフト社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給すべく、運転再開の時期を2028年と見込んでいた。TMI1号機(PWR、89万kWe)は1974年に営業運転を開始。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。
TMI1号機の運転再開時期が早まったことを受け、6月25日、400人を超える新規および復職したコンステレーション社のスタッフ、ペンシルベニア州の建設労働者がCCECに集まり、祝賀会が開催された。祝賀会には、J. シャピロ・ペンシルベニア州知事、地元有力者、マイクロソフト社およびコンステレーション社の幹部らも出席した。
コンステレーション社によると、ペンシルベニア州を含む地域の系統運用者PJMから早期連系申請が承認され、人員採用、運転員の訓練、主要機器の調達などが順調に進んでいる。シャピロ州知事は、PJMに早期連携の承認を促す書簡を提出し、このプロセスを後押ししたという。PJMは、ペンシルべニア州の経済成長により、2029年までにさらに1,000万kWeの追加設備容量が必要と予測している。
祝買会の席上、コンステレーション社のJ. ドミンゲスCEOは、「信頼性が高く排出ゼロの原子力エネルギーの新たな章が開かれ、数千の良質な雇用と、数十億ドルの経済効果がペンシルベニア州にもたらされる。PJMによる承認、マイクロソフト社の歴史的な投資、そしてシャピロ知事や地域の支援により、予定よりも早く運転再開への道を進んでいる。米国のエネルギー自立、経済成長、そしてグローバルなAI競争において勝利に導くものだ」と語った。シャピロ知事は、「TMI1号機の運転再開は、既存インフラを安全に活用しつつ、数千の雇用の創出と安定した電力網の構築を後押しし、ペンシルベニア州を国家的なエネルギーリーダーとしてさらに強化するものだ」と強調した。
CCECでは、すでに人員の64%以上が確保されており、400人近いスタッフが在籍、今後数週間でさらに58人が加わる予定。設備面でも、16億ドル(約2,340億円)を投資し、ディーゼル発電機、蒸気発生器、発電機、タービンなどの主要設備を更新し、検査は完了。事務棟の多くが改修され、訓練センターや制御室シミュレーターもほぼ完成している。新しい変圧器も来年搬入される予定で、これには数百人の地元の熟練工や電気技術者の技能が活かされると見込まれている。また、運転再開に向けて米原子力規制委員会(NRC)への許認可修正申請に係わる手続きが進行中であり、コンステレーション社はCCECの運転認可を少なくとも2054年まで延長したい考えだ。なお、「クレーン・クリーン・エナジー・センター」のクレーンは、親会社エクセロン社のC. クレーン前CEO(2024年逝去)にちなんで名付けられた。
同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、CCECの20年間の運転により、3,400人もの直接的・間接的な新規雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2.3兆円)増加、州税および連邦税も計36億ドル(約5,260億円)が増加すると予想されている。