原子力産業新聞

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ポーランド 原子力導入プロジェクトをECへ通知

22 Jul 2025

桜井久子

第1原子力発電所の完成予想図 © PEJ

ポーランド国営原子力事業者であるPEJ714日、ポーランド初の原子力発電所建設に関する投資プロジェクトについて、欧州原子力共同体(ユーラトム)条約に基づき、正式に欧州委員会(EC)に通知した。

ユーラトム条約に基づく、投資プロジェクトについての通知は、国家主導で進められる国家補助の通知手続きとは別のプロセス。EU加盟国における原子力プロジェクトでは、ユーラトム条約に基づく事前の通知が法的義務とされており、当該プロジェクトがユーラトム条約の目的である、安全保障、持続可能な発展、資源の効率的な利用などに適合しているかが評価される。

国家補助に係わる手続きとしては、ポーランド政府は20249月にECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)であるPEJを支援する計画を通知していた。ECは同年12月、同プロジェクトがEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査を開始した。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。

第1原子力発電所(米ウェスチングハウス社製AP1000×3基、合計出力375kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区に建設が計画されている。同プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.8兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.4兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済取引(CfD)によって、プロジェクトを支援するという。

ポーランドのW. ヴロースナ産業省次官兼戦略的エネルギーインフラ担当政府全権代表は「ユーラトム条約第41条に基づく通知は、投資プロジェクトの準備段階における重要なステップの一つ。ポーランド初の原子力発電所プロジェクトの実現に向けた進展は、ポーランドが何十年にもわたって安全で安定したエネルギー源を確保するという我々の決意を反映している」と語った。

通知手続きの結果としてECから示される意見は、ポーランドの原子力規制当局である国家原子力機関(PAA)長官が発行する建設許可の取得などの手続きに必要となる。

なお現在、ポーランド原子力発電プログラム(PPEJ)更新版の草案に関する公開協議が行われており草案によると、第1原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年に予定されている。

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