EDFがSZCへの投資を表明 今夏最終決定か
16 Jul 2025
フランス電力(EDF)は7月8日、英国のサイズウェルC(SZC)プロジェクトに最大11億ポンド(約2,200億円)を投資することを正式に表明した。この投資は、英政府および他の投資家との合意交渉が最終化される、最終投資決定(FID)を待って実施される予定で、これによりEDFの出資比率は約12.5%となる見込みである。
EDFは英政府と並ぶ最初の出資者。英政府は今年6月の歳出見直しの一環で142億ポンド(約2.8兆円)の投資表明をしていた。さらなる投資家や資金調達の詳細は、今夏に予定されるFID時に発表される予定だという。
この発表は、7月10日の英仏首脳会談に先立ち、K. スターマー英首相がE. マクロン仏大統領を英国に迎えるタイミングで行われた。両国は、エネルギー、経済成長、防衛・安全保障、移民などの共通課題で協力を強化。スターマー首相は昨年の就任以来、英国の国際的地位の強化と近隣諸国との関係改善を目指している。英政府は今回の発表は、英国が投資先としてますます魅力的な国であり、信頼できるパートナーである証と強調している。
またフランスの輸出信用機関Bpifranceは、SZCプロジェクトへ50億ポンド(約1兆円)の債務保証を提供する予定で、商業銀行からの融資を後押しするという。これは、消費者・納税者・民間投資家でコストを分担する新しい資金調達方式であるRABモデル[1] … Continue readingの適用によって可能になる。
SZCプロジェクトは、既存のサイズウェルB原子力発電所サイトに欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設する計画。これは、現在建設中のヒンクリーポイントC(HPC)のEPR×2基の複製版。SZCプロジェクトは業界の技術力向上や量産効果を促進し、フランスの原子力産業やEPR2×6基の新設計画(パンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの各原子力発電所サイトに2基ずつ建設)にも貢献すると期待されている。
英政府は、原子力は再生可能エネルギーと並ぶ低炭素エネルギーの中核をなし、英国が化石燃料依存から脱却し、エネルギーコストを恒久的に引き下げる唯一の手段と考えており、引き続きプロジェクトの重要な株主として、進捗管理と遅延の最小化に努めるとしている。スターマー首相は、「私はSZCプロジェクトにこれ以上の迷いや遅れは許さないと明言してきた。EDFの投資により、国民に恩恵をもたらすための一歩を踏み出せた。エネルギー料金の引き下げ、雇用・技能育成の機会創出、エネルギー安全保障の強化-これは英国が投資先として信頼されている証であり、『変化に向けた計画』(Plan for Change)の実行そのものだ」と語った。
SZCの建設ピーク時には、1万人の雇用を支え、国内のサプライチェーンでも数千の高度技能と高レベルの雇用を創出すると言われている。
英仏のエネルギー協力としては、英国に本拠地を置く濃縮事業者のウレンコ社がEDFと15年間にわたる燃料供給の数十億ユーロ規模の契約を締結。ウレンコUK社の1,400人超の雇用を支え、2023年には2.56億ポンド(約512億円)を超える経済効果を英国にもたらしている。仏エンジニアリング企業のAssystem社も、英国での原子力事業の人員を2030年までに倍増し、サンダーランド、ブラックバーン、ダービー、ブリストル、ロンドンを含む国内10拠点で新たに1,000のエンジニア、IT、マネジメントの職を創出する計画だという。
脚注
↑1 | 規制資産ベース(RAB)のコスト回収スキーム。個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収する。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。 |
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