原子力産業新聞

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欧州熱波 フランスとスイスで原子炉が運転停止

07 Jul 2025

桜井久子

ゴルフェッシュ発電所 Ⓒ EDF

欧州における記録的な熱波の影響で、冷却水に利用される河川の水温上昇を受け、フランスとスイスの原子炉の一部が停止した。停止した原子炉はいずれも内陸部に立地し、冷却に河川水を利用している。フランスとスイスの規制では、河川の水温が地域の生態系に影響を及ぼす可能性がある場合、原子力発電所の出力制限や停止が義務付けられている。

フランスのゴルフェッシュ原子力発電所(PWR136.3kWe×2基)では、630日にガロンヌ川の水温が28℃を超える見込みとなったため、29日深夜に1号機を停止した。同発電所では冷却水をガロンヌ川から取水し、出力に応じて平均で0.2℃高い温度で、大部分が川へ戻される。20069月の規制により、発電所下流のガロンヌ川の日平均水温が28℃を超える場合には、全国送電系統管理会社(RTE)の要請に応じて、原子炉の出力調整、または一時的に停止が要求されることがある。同2号機は現在、3回目となる10年毎の定期安全レビューにより停止中。さらに、フランス南西部のジロンド川沿いのル・ブレイユ発電所1号機(PWR56.1kWe)では、出力を低下して運転しており、今後も暑さが続くようならば停止する可能性があるという。

フランスの電力の約70%は、18サイトで57基の原子炉から供給されている。フランスは自国の消費電力よりも多くの電力を生産し、近隣諸国にも輸出するなど発電量は豊富。熱波による原子力発電所の運転への影響はこれが初めてではない。EDFによると、2003年以降の環境要因(河川の高温化、低流量)による生産ロスは、年平均で発電量の0.3%で、現在の発電量の削減は電力網に深刻な影響を与えていないものの、2050年までに生産ロスは34倍に増加すると予想されている。会計検査院は2024年の年次公開報告書で、フランスでは2014年から2022年の間に、原子力発電が総発電量の62%から77%を占め、その運営と安全性は地球温暖化の影響を受ける水資源に依存している、と言及。気候変動による影響は中長期的には強まるとし、2050年までに熱波による原子力発電所の運転停止や出力抑制の回数増加への懸念から、気候変動に適応する水効率の高い冷却システムの導入の加速を勧告している。

スイスでも熱波の影響で原子炉2基が運転を停止した。スイスの電力会社Axpo社は、アーレ川の水温上昇を受け、発電所からの冷却水排水による過度の水温上昇からアーレ川の生態系を保護するため、6月29日、同社が所有・運転するベツナウ原子力発電所の1、2号機を50%出力で運転、7月1日には1号機の運転を停止した。2号機も、7月2日には運転を停止した。原子炉の出力制限や停止の措置は、スイス連邦エネルギー庁(SFOE)の指示に従って実施されている。Axpo社は、水温の推移を常に監視しており、当面は現状の措置を維持するとしている。

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