ロシア 再処理実証を産業規模で開始
06 Aug 2025
ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下の鉱山化学コンビナート(MCC)において、7月25日、使用済み燃料の再処理を行う実験実証センター(PDC)の第2フェーズの施設が稼働を開始した。
MCCは、クラスノヤルスク地方の閉鎖都市ジェレズノゴルスクに所在。冷戦時代は兵器級プルトニウム生産炉(全3基、閉鎖済み)が稼働し、使用済み燃料はすべてサイト内の放射化学プラントで再処理された。PDCでは、高レベルおよび中レベル放射性廃棄物の量を大幅に削減する第3世代+(プラス)の革新的技術を用い、VVER-1000の使用済み燃料を再処理する計画であり、将来的には高濃縮度燃料や高速炉の燃料など、その範囲を拡大していく方針である。
PDCでは2015年に第1フェーズが完成。分析用ラボを備えた一連の研究用ホットセルで構成され、使用済み燃料の再処理技術と放射性廃棄物の取扱い方法の検証が実施された。今回稼働を開始した第2フェーズの施設は、第1フェーズの実験規模とは異なり、産業規模。使用済み燃料の再処理に加えて、MCCに建設予定の大規模な再処理工場(RT-2)を設計するためのデータ収集や設備の検証を実施する。第2フェーズは2024年11月に完成。技術開発と設計パラメータの達成により、世界初となる液体放射性廃棄物を発生しない再処理施設となることが期待されている。
ロスアトムのA. リハチョフ総裁は、「第2フェーズの稼働により、天然ウランの使用を大幅に削減し、使用済み燃料の再処理によって得られる資源の再利用によって、産業規模のクローズド・燃料サイクルを実現する」と強調した。なおMCCでは、ベロヤルスク原子力発電所4号機(高速炉BN-800)用のMOX燃料(混合酸化物燃料)を製造。再処理で生成されるプルトニウムの蓄積を減らすために原子炉で利用される。
またリハチョフ総裁は、第2フェーズの施設が設計通りの能力に達すれば、年間約200トンの使用済み燃料を再処理できると言及。チェリャビンスク州にある生産合同「マヤク」(再処理工場RT-1が1977年より操業中)と新たに計画している生産施設を考慮すると、今後15年以内に第4世代エネルギーシステム[1] … Continue readingの立ち上げが確実になるとの見通しを示した。
なお、MCCの閉鎖原子炉の跡地で、放射性毒性の高い物質であるマイナーアクチノイド(MA)の最終処分の実証を目的に、研究用熔融塩炉の建設が予定されている。今年7月に設計の第一段階が完了。主要な技術的な方針に関する資料はすでに整い、次の段階では、炉本体と燃料準備施設の技術設計、さらに設計と予算に関する書類一式の作成が行われる。設計作業は2027年まで継続され、並行して、設計文書に反映される技術的方針を裏付けるための研究開発も進める。炉の運転開始後も、技術の実用化や規模拡張に向けた研究を継続するという。
脚注
↑1 | 安全性の向上、放射性廃棄物の削減、資源の有効利用、経済性向上を通じ、原子力発電所のライフサイクル全体を通じてより高い持続可能性を確保するシステム |
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