原子力産業新聞

海外NEWS

韓KHNP セルビアと原子力および水素エネルギー分野で協力

12 Sep 2025

桜井久子

KHNPのファンCEOとMoMEのブラホビッチ次官がMOUに調印  © MoME

韓国水力・原子力(KHNP)は92日、セルビア鉱業・エネルギー省(MoME)と、原子力ならびに水素エネルギー分野における協力強化に向けた2件の了解覚書(MOU)を締結した。

MOUは、セルビアの首都ベオグラードで韓国貿易投資振興公社(KOTRA)主催による「韓国・セルビア戦略的エネルギー開発フォーラム」の開催を機に調印された。

今回のMOUに基づき、セルビアの原子力技術分野における人材育成・開発への支援を強化、両国間の技術情報・専門知識の定期的な交換を促進し、水素エネルギー分野においても、技術交流や人材育成で協力し、セルビアにおけるグリーン水素パイロットプロジェクト開発の可能性評価に向けて、共同作業を実施する計画である。

セルビアでは、総発電電力量の約60%は石炭・褐炭火力に依存し、大気汚染による環境・健康問題が深刻化している。そのため、炭素排出削減と再生可能エネルギーや原子力を含む、エネルギー源の多様化を図っている。2024年11月には、エネルギー安全保障の確保に向けて、エネルギー法を改正。これにより、旧ユーゴスラビア時代の1989年、チョルノービリ事故から3年後に施行された原子力発電所建設のモラトリアムが、35年ぶりに解除された。現在、原子力政策および人材育成を支援する法的枠組みを整備、また水素エネルギー開発に向けた基盤整備を進めているという。

原子力利用については、2024年3月にベルギー・ブリュッセルで開催された原子力エネルギー・サミットにおいて、セルビアのA. ブチッチ大統領が演説し、小型モジュール炉(SMR)を4基、出力計120kWeの導入への関心を表明。「セルビアには原子力利用に関するノウハウもなく、プロジェクトを実施する資金力も不足している」と述べ、他国からの支援に期待を示していた。

KHNPのJ. ファンCEOは、「両者の協力により、セルビアとKHNP双方の持続可能な成長が期待できる。特に、水素の実証プロジェクトはセルビアの水素産業の発展に重要な役割を果たすものであり、クリーンエネルギー分野全般における新たな協力の機会を切り開くものだ」とコメント。S. ブラホビッチMoME次官は、セルビアが原子力エネルギーを、クリーンエネルギーへの移行プロセスにおいて国のエネルギー安全保障の確保に寄与する潜在的なエネルギー源の一つとして検討しているとした上で、「原子力分野で世界をリードする国々や企業との協力により、知識と技術を交換し、専門家育成に投資することは極めて重要である」と述べた。

MoMEは202410月、フランス電力ならびに仏エンジニアリング・コンサル会社のEgis社と原子力利用の可能性に係わる予備的技術調査の実施に関する契約を締結。同月、A. ブリン副首相がロシアのロスアトムのA. リハチョフ総裁と原子力の非発電利用に関する協議を実施している。

cooperation