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カザフスタン初の原子力発電所 エンジニアリング調査を開始

21 Aug 2025

桜井久子

Ⓒ Atomstroyexport, JSC

カザフスタンのアルマティ州ジャムプール地区のウルケン村において88日、同国がソ連から独立後、初となる原子力発電所の建設プロジェクトのエンジニアリング調査が開始された。

同発電所建設プロジェクトの主契約者は、ロシア国営原子力企業のロスアトム。VVER-1200PWR120kWe)を2基建設する。ロスアトムは6月、カザフスタン原子力庁(KAEA)により、国際コンソーシアムのリーダーとなる主契約者に選定されていた。今回のエンジニアリング調査は、最適な建設サイトを選定し、大規模発電所の設計文書の準備を目的とする。

今年6月のロシア・サンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいて、KAEAとロスアトムの間で「原子力発電所建設プロジェクトの指針となるロードマップ」が承認。エンジニアリング調査の実施、設計文書の作成、EPC(エンジニアリング、調達、建設)契約の締結など主要な段階を定めている。また、カザフスタン原子力発電所(KNPP)とアトムストロイエクスポルト(ASE。ロスアトムのエンジニアリング部門)の間で、プロジェクト実施のための主要な協力枠組み協定が締結された。

調査では土壌サンプルの採取のために、合計50本以上、深さ30120mのボーリングを実施する。発電所の信頼性と安全性確保の必須条件となる、地質学的、地震学的、水文学的、環境的な観点から評価し、それに基づき最終的な建設サイトを決定。本調査の実施により、国際的および国内の基準への適合、環境的・技術的リスクを最小化し、効率的な設計の基盤を築く方針だ。

調査の開始にあたり開催された式典には、KAEAA. サトカリエフ長官とロスアトムのA. リハチョフ総裁が出席。サトカリエフ長官は、「本調査の開始は、カザフスタンが新たなハイテク産業を経済に形成していく道を定めるもの。原子力発電所の建設は、近代的なインフラ整備から、新しい学校や幼稚園、社会施設の誕生に至るまで、地域発展を強力に推進し、国全体の長期的な経済成長を牽引するものだ」と指摘。リハチョフ総裁も「原子力発電所建設の適地であるかを確認するため、徹底的に調査を行う。カザフスタンにとって戦略的に重要な本プロジェクトの実現に向け、蓄積したすべての経験を活用する」と強調した。

建設されるVVER-1200は、第3世代+(プラス)、国際的な安全基準に厳格に準拠した設計。ロシアでは4基、ベラルーシで2基が稼働中であり、トルコ、バングラデシュ、エジプト、中国で建設中、ハンガリーでは建設準備段階にある。原子炉の設計寿命は60年で、さらに20年間延長することが可能。なおカザフスタンでは、1973年から1998年までカスピ海沿岸のアクタウ市(マンギスタウ州)で高速炉BN-35015kWe)が稼働。発電に加えて、世界最大級の海水淡水化施設を備えていた。現在、BN-350は廃止措置中である。

K.-J. トカーエフ大統領は今年3月の演説3サイトでの原子力発電所の建設を示している。先のベンダー選定作業における潜在的な候補には、露ロスアトム、中国核工業集団公司(CNNC)、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力 (KHNP) が含まれており、KAEAはロスアトムの提案の採用に次いで、CNNCの提案を2番目とした。KAEAのサトカリエフ長官は、「中国は間違いなく必要な技術をすべて備えており、完全な産業基盤を持っているため、次の優先事項は中国との協力だ」と述べ、中国側との交渉が行われることを強調した。カザフスタンのR. スクリャル第一副首相は731日の合同記者会見で、KAEAKNPPが第2および第3発電所のサイト候補を評価中であり、今年後半にも評価結果が明らかになるとし、CNNCが第2発電所に続き、第3発電所も建設するだろうと述べた。

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