北極海航路経由で20日間 中国ー欧州間コンテナ輸送が最短記録
31 Oct 2025
北極海航路(Northern Sea Route=NSR)を経由した中国発、欧州向けのコンテナ輸送が10月13日、出港から20日間で到着、完了した。所要日数は従来の南部ルート(スエズ運河経由)の約半分の日数。既存のルートを補完するアジアと欧州を結ぶ、持続可能な物流回廊となり、大幅に移動時間と輸送コストを削減、海上物流の脱炭素化という世界的な課題に応える。
約25,000トンのコンテナ貨物を積んだ「イスタンブール・ブリッジ」号は、9月23日に中国浙江省の寧波舟山港を出港し、10月1日にNSRの海域に入った。ロシア国営原子力企業ロスアトム傘下のグラヴセブモルプチ(NSR総局)から航行ルートの情報やナビゲーションのサポートを得て、10月13日に英国サフォークス州にある同国最大のコンテナ港フェリクストウ港に入港。氷況が穏やかな時期であったため、原子力砕氷船の支援を受けずに航行したという。
ロスアトムのV. パノフ北極圏開発担当特別代表は、「NSRは急速に発展しており、実用的で効率的なグローバル物流ルートとなりつつある。先進技術の開発、新世代原子力砕氷船の建造、グローバルビジネスの荷主からの関心の高まりが背景にある。北極圏での作業は困難だが、NSRにおける航行の安全確保という最優先課題に加え、航路の通過速度と所要時間の管理といった重要な任務を担っていく」と語った。現在、北極圏におけるインフラと海運の開発は、ロスアトムの重要な活動の1つである。ロスアトムは2018年、ロシア政府からNSRインフラ運営の権限を正式に付与された。
ユーラシア大陸西部とアジア太平洋地域を結ぶ航路としては、NSR利用が最短。NSRは全長約5,600kmのロシアの国家輸送の動脈である。ロスアトムによると、2024年のNSR利用貨物量は、昨年を160万トン以上上回る約3,790万トンに達し、過去最高を更新した。また、ロシアと中国間のコンテナ輸送量は増加しており、2024年の夏から秋の航海シーズン中の国際コンテナ航海は前年の2倍の14回が実施。今年は予定の22回の内、すでに17回のコンテナ航海が行われ、輸送貨物は28万トンを達成、昨年全体の貨物輸送量(17.6万トン)の59%増となっている。
ロシアにとり、北極圏地域の開発は戦略的優先事項の一つとなっており、NSR輸送の強化は不可欠。この物流回廊は、定期的な貨物輸送、新型原子力砕氷船の建造、関連インフラの近代化によって発展しており、ロスアトムはこれらの取組みに積極的に関与していく方針である。中国においても、NSR経由の欧州までの航路は、「一帯一路」(The Belt and Road)イニシアチブ下の「氷上シルクロード」として、中国の先端製造、越境EC(Cross-Border E-Commerce)、新エネルギーなどの産業に、より迅速で低炭素の国際物流手段の選択肢と位置づけられている。
10月14日、中国黒竜江省ハルビンで開催された第2回ロシア・中国政府間NSR協力小委員会では、ロシア側からはロスアトムのA. リハチョフ総裁、中国側からは劉偉・交通運輸部長が出席し、輸送効率の向上や近代的な物流および技術ソリューションの導入などを盛り込んだ行動計画に合意した。リハチョフ総裁は、両国の協力により、世界の貿易ルートの多様化を可能にするだけでなく、特殊な条件を持つ高緯度地域の開発への先進技術の導入にもつながる、と期待を寄せた。
地球温暖化の影響で近年、北極海の海氷の融解によるNSRの開通期間が長期化する傾向にある。NSRには海賊行為の脅威がなく、政治的不安定な中東海域とは異なり安全かつ安定した航行が可能とされる。砕氷船による先導のコストはかかるが、航行距離の短縮と燃料コスト節約、海上物流の脱炭素化に向けて、今後、NSRの利用が一層、進むことが予想されている。











 
	 								 							 
	 								 							 
	 								 							