原子力産業新聞

海外NEWS

ロシア 米国とのプルトニウム処分に関する協定から正式離脱へ動き出す

23 Oct 2025

桜井久子

© The State Duma

ロシア国家院(連邦議会下院=Duma)は10月8日、米政府との余剰兵器プルトニウム処分に関する協定から正式離脱する法案を採択した。同協定は2000年に両国によって署名され、米ロ双方でそれぞれ34トンの余剰兵器プルトニウムを軍事目的に利用できないように並行して処分することを目的とするもの。ロシア政府は2016年10月、米政府が協定に基づく義務を履行できないことを理由に、連邦法により同協定の履行を停止していた。

同協定は、20009月に米ロ両国により署名され、20117月に発効。20104月の議定書により、両国ともMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して原子炉で燃焼処分するとしていたが、米国は、サウスカロライナ州にあるエネルギー省のサバンナリバー・サイトにおけるMOX燃料製造施設建設のコスト増加と計画遅延から方針を転換し、不活性物質で希釈して埋設処分する計画を提案した。協定では、両国で合意があれば処分方法の変更が可能であるとされていたが、ロシアは米国の示す方法では不可逆的な処分にはならないと主張し、2016年に同協定の履行を停止した。

今後、連邦院(上院)で法案を承認後、大統領の署名を経て、協定からの正式離脱となる。一方で、露大統領は来年2月の期限後も新戦略兵器削減条約(新START)の1年延長を提案し、米大統領が興味深い考えだと述べたことから、一部の議員からは何らかの軍備管理に関する対話が再開され、状況の変化によっては、本協定に関する再検討の可能性があるかもしれないとする見方が示された。

米ロ間では余剰兵器プルトニウム処分の他に、ロシアの解体核兵器から生じた兵器級ウラン(高濃縮ウラン、濃縮度90%)500トンを20年にわたり原子力発電所向けの低濃縮ウラン(濃縮度4.4%)に希釈し、原子力発電所の燃料として米国に販売する、いわゆる「メガトンからメガワットへのプログラム」が、19932月に締結された協定に基づき実施され、2013年末に完了。15,000トン以上の低濃縮ウランが米国に納入された。

cooperation