原子力産業新聞

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米オクロ社 2件のパートナーシップを発表

04 Aug 2025

桜井久子

オクロ社の「オーロラ」発電所完成予想図 © Oklo

米国で先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ社はこのほど、2件の新たなパートナーシップを発表した。同社が開発中のマイクロ炉「オーロラ」発電所の商業展開を実現し、クリーンな電力で次世代データセンターや工場での大規模な電力需要に応えていくという。

オクロ社は722日、デジタルインフラ向けの冷却システムを開発するヴァーティブ(Vertiv)社と、オーロラ発電所からの蒸気と電力を用いて、大規模データセンターと発電設備を併設したコロケーションに特化した、エネルギー効率の高い電力と冷却ソリューションを共同開発する提携契約を締結したことを明らかにした。オーロラ発電所の基本設計は変更せずに、原子炉から発生する熱をヴァーティブ社の得意とする冷却システムに利用。エネルギー効率を大幅に向上させ、このパイロット技術のオーロラ発電所初号機での実証を計画している。米国で急増する電力需要に対応するため、両社は電力と冷却を統合的に最適化することで、データセンターの運用の革新を目指す。

加えて、オクロ社は723日、革新的なエネルギーサービスと技術を提供する、リバティ・エナジー(Liberty Energy)社と、データセンター、工業施設、公共事業規模のサイトなどの大規模かつ高需要の顧客を対象とした、段階的かつ統合型の電力ソリューションの導入を加速する戦略的提携について発表した。初期段階では、リバティ社の天然ガス発電と負荷管理ソリューションにより、即時に、信頼性ある電力を供給し、柔軟なエネルギーサービスを実現。最適化とレジリエンスの向上を目指したグリッド管理サービスも行う。オーロラ発電所が稼働すれば、クリーンで持続的なベースロード電源として、リバティ社の天然ガス発電を補完するという。オクロ社のJ. デウィットCEOは、「発電・バックアップ・グリッド管理・最適化をすべて単一のプロバイダーで完結するもの」と、提携の意義を強調した。リバティ社は、2023年にオクロ社に1,000万ドルを出資した初期の投資家。数ある先進的原子力企業から、オクロ社を選定した。

オーロラは、高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)燃料を使用する液体金属高速炉のマイクロ炉で、出力は顧客のニーズに合わせて1.5kWe5kWeのユニットで柔軟に調整。少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給が可能である。オクロ社は、2027年末までに米アイダホ国立研究所(INL)サイト内でオーロラ発電所初号機の導入を目標に、米原子力規制委員会(NRC)との間で許認可申請前活動を実施。717日には、建設運転一括認可(COL)フェーズ1に関する事前審査を完了したと発表NRCによる評価では、オクロ社のCOL申請の受理を妨げるような重大な不備は見つからず、今後の申請の最終化に向けて有益な観察・助言も示され、効率的かつ効果的な審査を促す一助になったと評価。このNRCによる事前審査の完了は、規制プロセスを近代化し、先進原子炉のタイムリーな展開を可能にするというADVANCE法と最近の関連する大統領令によって強化されたNRCの広範な取組みを反映したものと捉えている。オクロ社は年内にCOLの申請を予定している。

なおオクロ社は最近、INLサイトでのオーロラ発電所の筆頭建設業者として、キウィット ニュークリア ソリューションズ社(Kiewit Nuclear Solutions)を選定。同社は北米最大級の建設・エンジニアリング企業キウィット社の子会社。大規模な産業・インフラプロジェクトでの豊富な実績と経験を活かし、オーロラ発電所の設計、調達、建設を支援するという。建設準備を年内に開始し、2027年後半から2028年初めの運開を見込んでいる。

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