米セントラス 濃縮施設の大規模拡張を計画
09 Oct 2025
米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)は9月25日、オハイオ州パイクトンにある米国遠心分離プラント(ACP)の大規模拡張計画を明らかにした。低濃縮ウラン(LEU)ならびに高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の生産を増強し、濃縮分野での米国のリーダーシップを取り戻す考えだ。
拡張計画には、連邦政府からの資金提供を含めて数十億ドル規模の官民投資が必要。同社は最近、既存炉向けのLEUならびに次世代炉向けHALEUの国内生産拡大に向けた米エネルギー省(DOE)の資金提供対象の選定プロセスに提案書を提出した。連邦政府による資金提供の決定を条件に、ACPに数千台の遠心分離機を追加導入する計画だ。この拡張を見据え、セントラス社は過去12か月間に2回の転換社債取引で10億ドル以上を調達し、国内外の電力会社顧客から20億ドル以上の条件付き購入契約を締結している。この他、韓国の韓国水力・原子力ならびにPOSCOインターナショナル社による投資協力の可能性も示した。
またセントラス社は、官民パートナーシップを見越して、連邦政府による選定に先立ち、採用活動を開始。建設段階で1,000人の雇用と操業段階で300人の新規雇用の創出を見込んでいる。さらに、同社がテネシー州オークリッジに有する遠心分離機製造工場における数百の雇用に加え、全米の製造サプライチェーン全体で数千の間接雇用を生み出すと予想されている。
同社のA. ベクスラーCEOは、「米国がウランを大規模に濃縮する能力を回復する時が来た。今まさにその目的のため、オハイオ州で数十億ドル規模の歴史的投資を計画している。外国の国有企業への依存をやめ、米国人労働者によって構築された米国技術への投資が始まる」と強調した。
オハイオ州のM. デウィン知事は、「パイクトンの施設の拡張・更新への取組みは、米国経済と国家安全保障を支える、オハイオ州の重要性を強調している。パイクトンにおけるウラン濃縮事業は冷戦初期から国防に重要な役割を果たしてきた。セントラス社の施設は、産業規模での国内濃縮体制を構築できる、現時点で唯一の技術を提供している」と拡張計画に期待を寄せた。
世界の濃縮能力のほぼ100%が外国の国有企業に属しており、それらの企業は海外で独占的に製造された遠心分離技術を使用している。パイクトンの濃縮施設は、国内製造の遠心分離機と関連機器を用いて稼働する唯一の米国施設。セントラス社の遠心分離機は、オークリッジにある敷地約4万㎡の技術製造センターで独占的に製造されており、13州の米企業14社の主要サプライヤーと数十の小規模サプライヤーが製造を支えている。製造された遠心分離機と関連機器は最終組立て、設置のためにパイクトンに送られている。連邦資金拠出の選定先となった場合、その資金は海外製造ではなく国内製造に向けられることになる。