スロバキア 鉛冷却高速炉の導入に進展
12 Jun 2025
英国発の先進炉開発企業で、現在仏パリに本社を置くニュークレオ社は6月3日、スロバキア国営の原子力廃止措置企業であるJAVYSと、合弁会社の「使用済み燃料利用開発センター(CVP)」の設立に向け、イタリア・ローマで株主間契約を締結した。スロバキアでJAVYSが所有、廃止措置を実施する閉鎖済みのボフニチェ原子力発電所(V-1)の1、2号機(VVER-440、各44万kWe)のサイトで、ニュークレオ社が開発する第4世代の先進モジュール炉(AMR)である鉛冷却高速炉(LFR)の建設プロジェクトを進める。
今回の契約は、2025年1月にニュークレオ社とJAVYSが締結した枠組み協定に続くもの。契約締結式には、スロバキアから、R. フィツォ首相、D. サコヴァ副首相兼経済相、イタリアからはG. ピケット=フラティン環境・エネルギー安全保障相が出席した。ニュークレオ社は現在、フランス、英国、イタリア、スイス、スロバキアを拠点とし、自社の先進炉開発プロジェクトだけでなく、サプライチェーンの開発も支援するなど、活動の場を広げている。
設立された合弁会社は、JAVYSが51%、ニュークレオ社が49%の株式を保有し、ボフニチェV-1サイトに、ニュークレオ社が開発する鉛冷却高速炉LFR-AS-200(20万kWe)を4基建設する。その燃料には、スロバキア国内の既設炉から回収された使用済み燃料を再処理、MOX燃料として加工製造して利用。再処理はフランスで行い、燃料棒の組立はニュークレオ社がフランスで建設を計画するMOX燃料製造施設で行う。ニュークレオ社は、既存の使用済み燃料は、欧州の電力需要を数千年にわたり支える可能性があり、放射性廃棄物の量および放射性毒性を大幅に削減し、長寿命の放射性物質を高コストの深地層処分場に処分する必要性も大きく軽減されると指摘。この新たな運用モデルが、熱中性子炉と高速炉の相乗効果を生みだし、使用済み燃料の再利用によってクローズド・サイクルの確立に貢献すると強調している。同社は、欧州のエネルギー安全保障と自立を高めるソリューションとして、スロバキアのみならず、原子力発電を運用する他の国においても同モデルの事業展開を進める考えだ。
合弁会社CVPが今後、ボフニチェV-1サイトでのLFR-AS-200配備に向けた包括的な実現可能性調査を開始するのと並行し、両社はフランス政府および燃料サプライチェーンとの連携を継続し、使用済み燃料の輸送・再処理事業の開発・展開、ならびにフランス国内におけるMOX燃料製造施設の建設プロジェクトを進めていくとしている。
なお、ニュークレオ社は6月10日、LFR-AS-200の英国の包括的設計審査(GDA)への参加申請が受理されたと発表した。原子力規制庁(ONR)、環境庁(EA)、およびウェールズ自然保護機関(NRW)がLFR-AS-200設計の安全性、セキュリティ、および環境影響面について、英国の基準を満たしているかを2段階で評価する。ニュークレオ社は2024年12月、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に、商業規模となるLFR-AS-200のGDAを申請。AMRとしては今回が初の受理となった。現在、ニュークレオ社の英国のプロジェクトチームが、英国内で建設可能性のあるサイトについて調査しているという。
ニュークレオ社は、LFRの非核先行炉を2026年までにイタリアで完成させ、実証炉(LFR-AS-30、3万kWe)をフランスで2031年末までに、商業炉(LFR-AS-200)を2033年に稼働させる計画だ。