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南ア 原子力発電所新設の環境許可の決定を維持

26 Aug 2025

桜井久子

クバーグ発電所 © Eskom

南アフリカのD. ジョージ林業・水産・環境相は88日、西ケープ州ドイネフォンテインにおける新たな原子力発電所の建設および運転に係る、環境影響面での許可を支持すると決定したことを明らかにした。同許可は南アフリカの国営電力会社であるエスコム(Eskom)に、2017年に発給されていたが、複数の環境団体などから異議申し立てを受けていた。

同相は、「これらの異議を検討するにあたり、発電所設備と付帯インフラが環境に及ぼす環境影響評価報告書を徹底的にレビューしたほか、本プロジェクトに関する独自のピア・レビューを実施し、最終的には、1998年国家環境管理法(NEMA、法第107号)の原則を踏まえ、環境的・社会的・経済的な考慮を十分に理解した上で決定をした」と述べた。また南アフリカの環境保護と保全は何ものにも優先されると強調した。

南ア政府は2010年の統合資源計画(IRP)に基づき、2030年までに計960kWの原子力発電設備を新たに建設することを計画。エスコムは20163月、候補に上がっていた5サイトから、西ケープ州のドイネフォンテインと東ケープ州のタイスプントの2サイトに絞り、サイト許可を国家原子力規制当局(NNR)に申請した。うち、ドイネフォンテイン・サイトについて、環境問題省(当時)は2017年10月、最大400kWe新設の環境許可を発給した。が、これを不服とする複数の環境団体や個人らが、詳細かつ包括的な意見書から簡潔なものまで、多様な内容の異議を提出していた。このたび、ジョージ大臣はNEMAの関連条項に基づき、これらの異議を却下し、エスコムへの環境認可付与の決定を承認した。

ただし、これにより直ちに、エスコムが原子力発電所の建設や運転を開始できるわけではなく、同社は依然として、NEMAの関連条項に従い、事業を進める前に以下の許認可を取得する必要がある。

  • NNRからの原子力施設許可
  • 南アフリカ国家エネルギー規制当局(NERSA)からの承認
  • 水・衛生省からの水利用許可
  • その他、鉱物・石油資源相による承認など

ジョージ大臣は、「林業・水産・環境省は、包摂的な成長、雇用創出、貧困削減を中核に据え、よりクリーンで持続可能なエネルギーへの移行を南アフリカが進めていくことを支援する」と語った。

南アフリカ原子力公社(NECSA)のL. タイアバッシュCEOは、ジョージ大臣による決定を受け、「原子力産業と、社会経済発展を可能にし、気候に配慮するバランスのとれたエネルギーミックスの実施に向けた南アフリカにとって重要なマイルストーン。原子力発電所の新設サイトの選定のプロセスの厳格さを示しており、原子力技術への信頼を反映している。NECSAは、原子力発電の利益を最大化するためにノウハウを提供する」と述べた。NECSAは原子力研究開発の平和利用を目的に、医学利用、ウラン化学、放射性廃棄物に関する研究を行っている。

現在、南アフリカでは、アフリカ大陸で唯一稼働する原子力発電所であるクバーグ1-2号機(PWR、各97kWe)がそれぞれ1984年と1985年からエスコムにより運転されている。1号機は2044721日までさらに20年間延長する認可をNNRから取得。同2号機についても現在、NNR20年間の運転期間延長に係る申請を審査中である。なお、上述のドイネフォンテイン・サイトはクバーグ・サイトに隣接している。

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