スウェーデン リングハルス新設でSMR 2社に絞る
27 Aug 2025
スウェーデンの国営電力会社バッテンフォールは8月21日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR、110万kWe級×2基)に隣接して建設を計画している新規炉について、供給候補4社から米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社と英ロールス・ロイスSMR社の小型モジュール炉(SMR)を最終候補に決定したことを明らかにした。
この決定を受け、バッテンフォールのA. ボルグCEOは、「40年以上ぶりのスウェーデンの原子力発電所建設に向けた新たな一歩。当社の目標は、ヴェーロー半島でのプロジェクトを成功させることであり、プロジェクトの成功は、さらなる原子力開発の基礎も築く」と強調した。
同社はこの2社について、妥当な期間と予算内で納入できる最適な前提条件を備えており、最終的な供給者を選定するプロセスは続いていると説明している。当初の75社から2024年秋には4社に候補を絞りこんでいた。
最終候補に残った炉型は、GVH製BWRX-300(BWR、30万kWe)とロールス・ロイスSMR(PWR、47万kWe)。BWRX-300×5基、またはロールス・ロイスSMR×3基で合計約150万kWを供給可能である。ロールス・ロイスSMRは、オスカーシャム1号機(BWR、2017年閉鎖)とほぼ同じ設備容量である。
候補企業・炉型の評価プロセスでは主に、技術面、サイトと物流、商業的側面の3つの観点から実施。2社を選定した大きな理由として、両社のSMRは実証済み技術と簡素化された設計を特徴とし、燃料についてはバッテンフォールがすでに確立しているサプライチェーンの利用が可能であることを挙げている。このほか、SMRは欧州でまだ建設実績こそないものの、初期投資が比較的低く、シリーズ建設による学習効果も期待できるため、コスト超過リスクが抑えられる点を評価。立地条件については、ヴェーロー半島は、送電網容量やインフラ、原子力エンジニアの存在、エネルギー供給の国家的重要地点に指定されている点で最適であるものの、サイト面積は限られており、現在自然保護区となっている土地の利用が必要になるという。さらにリングハルスの既存炉2基は、60年から80年への運転延長が計画されており、選定した2種のSMRの方が少人数の建設要員と小さいサイト面積で済むため、建設による既存炉の運転への影響が小さいことが考慮されたようだ。
同社のD. コムステッド副社長(新原子力担当)は、「選定にあたり、供給者と炉型を綿密に評価。SMRのシリーズ建設はコスト上の利点が明らかで、必要となるスペースも人員も少なく、物流もより管理しやすくなる。これにより建設段階における人員の確保・住居・輸送の課題も軽減され、コスト増加のリスクが低下する」と指摘した。
今後は、国の資金調達・リスク分担制度への申請を行い、2社との交渉を集中的に実施、最終的な供給者の選定に進む。環境法や原子力技術法に基づく申請準備も進行中。最終投資判断はプロセスがさらに進んだ段階になる予定。さらに次のステップとして、閉鎖済みのリングハルス1-2号機(2019~2020年に閉鎖。廃止措置中)に隣接するサイトで100万kWeの設備を追加建設する可能性も検討中であるという。
スウェーデン議会(リクスダーゲン)は今年5月、国内の新規原子力発電プラントの建設を検討する企業への国家補助に関する政府法案「新規原子力発電プラント建設の資金調達とリスク分担に関する法案」を採択した。新法は今年8月1日に施行されており、申請が可能となっている。本制度は、低利の借入コストである政府融資の利用により、資金調達コストの削減、ひいては原子力発電自体のコスト削減を目的としている。
スウェーデンでは電力供給問題と化石燃料を使わないベースロード電源の拡大のため、2023年11月に原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップが発表された。これには、総発電量を25年以内に倍増させるため、2035年までに少なくとも大型炉2基分、さらに2045年までに大型炉で最大10基分を新設することなどが盛り込まれている。2024年1月には、環境法の一部改正法が発効、新たなサイトでの原子炉の建設禁止や国内で同時に運転できる原子炉基数を10基までとする旧・制限事項が撤廃されるなど、原子力推進に向けた環境整備が着々と進められている。