印モディ首相 原子力拡大計画を改めて表明
05 Sep 2025
インドのN. モディ首相は8月15日、首都ニューデリーで開催された独立記念日の式典で演説。原子力開発がエネルギーの安定供給確保や、化石燃料依存の低減に寄与するとし、自身が掲げる「ヴィクシット・バーラト」(先進インド構想)の目標達成年に掲げる、独立100周年となる2047年までに、原子力発電設備容量を現状の十倍以上とすると表明した。インドはエネルギー自立の強化、持続可能な成長を目指しており、原子力部門を民間企業に開放する改革を実施するなど、エネルギーと技術において前例のない機会を創出していると強調した。
シタラマン財務大臣は今年2月、2025年度(2025年4月~2026年3月)連邦予算を発表する中で、原子力発電設備容量を2047年までに現状の約880万kWeから少なくとも1億kWeに引き上げるとともに、2,000億ルピー(約3,500億円)を投じて小型モジュール炉(SMR)の研究開発を推進する「原子力エネルギーミッション」を開始、2033年までに少なくとも国産SMR×5基の運転開始をめざす方針を表明した。さらに、民間企業がこのセクターに参入するための大きなハードルとなっていた原子力法および原子力損害賠償法の改正を進め、民間部門との連携強化を図る考えを示していた。
政府で原子力や科学技術を担当するJ. シン閣外専管大臣は、7月24日付の上院議会への答弁書で、2047年までに原子力発電設備容量を1億kWeへ拡大することは、2070年までに炭素排出量をネットゼロにするという公約の実現に大きく貢献するものであると言及。原子力発電所を新規開発地域(グリーンフィールド)だけでなく、既存開発地域(ブラウンフィールド)へ建設することも想定しているとした。
ブラウンフィールドではより小さな容量、最大でも30万kWeの小型炉の配備を計画するという。原子力設備の迅速な追加配備のために、二本立ての戦略、①70万kWe級の加圧重水炉(PHWR)や海外製の大型炉をグリーンフィールドのサイトに配備、②バーラト小型原子炉(BSR、PHWR、22万kWe)、バーラト小型モジュール炉(BSMR-200、PWR、20万kWe)や小型モジュ―ル炉(SMR-55、PWR、5.5万kWe)のような小型炉の国産設計と開発、導入を進めていく方針を示した。
なお現在、3種類の実証用のSMR(BSMR-200、SMR-55、水素製造用の0.5万kWthの高温ガス冷却炉)がバーバ原子力研究所(BARC)で設計・開発中であり、これら実証炉はプロジェクトの行政認可を取得後、60~72か月以内に建設される見込みである。BSMRとSMRの初号機はインド原子力発電公社(NPCIL)との連携により原子力省(DAE)所有のサイトに設置予定で、DAEの技術的支援の下、主要設備の大半は国内サプライチェーンの範囲内にあるという。これらSMRは、自家発電所として導入、廃止予定の火力発電所のリプレース、遠隔地へのオフグリッド配置、および輸送部門向けの水素製造を想定して設計・開発されており、産業・輸送部門における原子力の普及拡大によって脱炭素化をめざす構想だ。
さらに、シン閣外専管大臣の答弁書によると、現在のインド国内の原子力発電設備容量は、25基の計888万kWe。さらに18基、総出力1,360万kWe(BHAVINIが建設中の50万kWeの高速増殖原型炉PFBRを含む)が建設や計画中の段階にあり、これらが順次完成すると、原子力発電設備容量は2,248万kWeに達する見込み。原子力発電の総設備容量1億kWe達成の目標を、既存技術ならびに開発中の先進技術に基づく原子炉の導入により実現させる方針を示した。
なお、同国南部のタミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初となるPFBRでは2024年3月にモディ首相の立会いの下、燃料装荷を開始した。同プロジェクトの完成の遅延については、主に統合試運転段階で直面した前例のない技術的問題に起因し、問題は設計者と緊密に連携し体系的に解決中であると回答している。