ベルギー チアンジュ1号機が永久閉鎖
02 Oct 2025
ベルギーのチアンジュ1号機(PWR、100.9万kWe)が50年間の運転の後、9月30日に永久閉鎖した。現在、ベルギーで運転を継続するのは3基となった。
チアンジュ1号機の閉鎖は、ドール3号機(2022年閉鎖)、チアンジュ2号機(2023年閉鎖)、ドール1号機(2025年2月閉鎖)に続き、4基目。ドール2号機(PWR、46.5万kWe)は今年11月末に閉鎖予定であり、ドール4号機(PWR、109万kWe)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kWe)の2基のみが、運転期間を10年延長し、2035年まで運転することになっている。
チアンジュ1号機は1975年10月1日に営業運転を開始した。運転事業者であるエンジー・エレクトラベル社とフランス電力(EDF)が共同所有するこの原子炉は、2015年に閉鎖される予定だったが、エネルギー供給上の懸念から、運転期間は2025年まで10年間延長された。同機では今後、廃炉に向けた準備作業が行われる。使用済み燃料を燃料プールで冷却してから乾式の一時貯蔵施設に移し、一次系の化学洗浄を行う。これらの準備作業に5年かかる見通しで、その後、2040年にかけて解体作業を実施する計画だ。事業者は、連邦と地域レベルの双方で、解体許可に必要な申請書を提出する必要があり、すべての許可が下りてから解体作業を開始する。
ベルギーでは今年5月、連邦議会(下院)が原子力発電の段階的廃止を撤回し、新規建設を認める法案を可決、原子炉の運転期間を40年に制限していた、2003年の脱原子力法は撤回された。現在の地政学的な不確実性に照らして不可欠となるエネルギーミックスの実現や、エネルギー移行に貢献する原子力部門を再活性化すると同時に、雇用創出を目的に、政府は原子炉をより長く稼働させ続けることを望んでいる。M. ビエ・エネルギー相は、エンジー社に対し、不可逆的な廃炉作業を行わないよう求め、地元の市長と市議会議員も、原子炉の解体許可申請に反対する意見を表明するなど、運転延長に関する議論が進行中であるという。
一方のエンジー社は、ドール4号機とチアンジュ3号機以外の運転継続には繰り返し難色を示している。チアンジュ1号機の運転延長には、高コストなバックフィット作業を実施した上で、10年間の安全性審査を受ける必要があり、また、チアンジュ1号機の解体を停止すると、チアンジュ2号機の解体には1号機のスペースが必要なため、その作業が妨げられるという。
チアンジュ1号機の閉鎖を受け、ベルギー原子力フォーラムのS. ドービー代表は、「閉鎖はナンセンス。閉鎖は何年も前に下された政治的決定の結果であり、この決定は現在の状況ではもはや意味をなさない」と述べ、世界的に不安定な地政学的状況からみても、低炭素で制御可能な電力供給は不可欠であり、ベルギーは原子力発電プラントを維持・強化すべきと訴えた。また、市民と産業界の双方の利益のために連邦政府と既存の事業者間で合意は可能、と期待を示した。
同フォーラムによると、ベルギーの今年8月の総発電電力量に占める原子力の割合は34%。再生可能エネルギーが44%で、火力が22%。さらに電力需要を満たすために22%を輸入しなければならなかったいう。チアンジュ1号機の閉鎖により、同国は100万kW級の低炭素電源を失ったことになる。