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欧州SMR産業アライアンス 戦略行動計画を採択

07 Oct 2025

桜井久子

Ⓒ European Commission

欧州委員会の域内市場産業・起業家精神・中小企業総局は9月12日、ブリュッセルで開催された欧州小型モジュール炉(SMR)産業アライアンスの第2回総会において、初の「戦略行動計画(Strategic Action Plan)」を採択したことを明らかにした。本計画は、今後5年間の活動計画を包括的かつ詳細に示し、2030年代初頭までに欧州におけるSMRの開発・実証・展開を促進することを目的としている。

SMRの迅速な展開は、欧州産業の競争力の維持、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けたエネルギー移行の推進、さらにエネルギー分野におけるEUの戦略的自律性を高める上で極めて重要とし、戦略行動計画では今後5年間で実施する10の具体的かつ重点的な行動を提示した。SMR展開に関する主要課題として、発電以外での市場需要の開拓、サプライチェーンの再活性化、研究開発と人材育成の推進、資金調達の機会を創出、規制枠組みの簡素化などに焦点を当ててている。

10の重点行動と達成の目標とする達成時期は以下のとおり。

  1. SMR実証プロジェクトの枠組みづくり(~20266月)
    データセンター、エネルギー多消費産業、地域暖房などの用途でSMR実証プロジェクトを企画。公共部門・開発者・産業界の三者協定を検討。
  2. 研究・実験施設の整備計画(~202612月)
    SMRの研究開発に必要な試験施設を特定・評価し、既存設備の改修や新設に向けた計画と資金計画を策定。
  3. 規格・標準化と技術交流の促進(~20286月)
    SMR向けの共通規格・基準を提案し、EU域内での技術・データ交換を円滑化する制度を整備。
  4. サプライヤー連携プラットフォーム構築(~202612月)
    各国の有資格サプライヤーとSMR開発プロジェクトを結ぶマッチング機能を備えた支援プラットフォームを構築。
  5. EUサプライチェーン強化策の提言(~20266月)
    サプライチェーンの現状を評価し、NZIA(ネットゼロ産業法)やIPCEI(欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)を活用した強化方策を提案し、能力拡大を継続的に推進。
  6. 欧州「ネットゼロ・アカデミー」構想(~20271月)
    SMR・AMR(先進モジュール炉)開発に必要な専門スキルを特定し、欧州全体で人材育成を担う教育アカデミーの設立を計画。
  7. 公衆・関係者向けエンゲージメントツール(試行:20263月/完成:202612月)
    地域社会や関係者との対話を促進するためのツールキットを開発し、早期計画段階で導入。
  8. 共通安全評価の推進(2025年以降継続)
    規制当局間の協力を促し、安全性に関する「業界ポジションペーパー」を作成。早期審査を支援する体制を構築。
  9. 標準化燃料設計の支援(~202710月)
    軽水炉型SMRならびにAMR向けの標準化燃料の仕様策定を支援し、安全性と互換性の向上を図る。
  10. 投資リスク低減と資金支援策の提案(~20263月、以降毎年更新)
    初号機(FOAK)開発リスクを軽減するための資金支援・保証制度を提案し、EU基金・金融機関と連携して投資環境を整備。

同アライアンスは20242月に設立され、産業界のリーダー、研究者、政策立案者など、350を超える幅広いSMR関係者が結集。共通のビジョンと行動計画の下で協働することを目的としている。運営面では、ECNucleareurope(欧州原子力産業協会)、欧州の100名以上の科学者や環境専門家のグループの欧州持続可能な原子力技術プラットホーム(SNETP)が主要パートナーとしてアライアンスを支え、複数の具体的なSMRプロジェクト支援や戦略行動計画に基づく施策の実施を主導。アライアンスの運営は理事会が指揮し、戦略的助言や重要な意思決定を行っている。

戦略行動計画を成功裏に実施するには、産業界および公共部門の強力なコミットメントと、多様な関係者間の協力が不可欠であるとし、同アライアンスは、加盟団体、EC関連部局、他のEU機関、国際機関と緊密に連携し、欧州におけるSMRの迅速かつ円滑な展開を確実に行っていく方針である。

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