原子力産業新聞

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米ホルテック ニューメキシコ州での中間貯蔵施設建設計画から撤退

27 Oct 2025

桜井久子

HI-STORE CISFの概観図  © Holtec International

米国のホルテック・インターナショナル社は1010日、エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)とのサイト購入契約を相互の合意により解約したことを明らかにした。ホルテック社はニューメキシコ州のELEA所有サイトで、使用済み燃料の中間貯蔵施設「HI-STORE CISF」の立地を計画していたが、今後は他の自治体との交渉が可能になる。ELEAとのサイト購入契約では、他自治体との協力が禁止されていた。

ホルテック社は、ニューメキシコ州南東部のエディ郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社であるELEA2015年に協力覚書を締結。ELEAが州の南東部、リー郡内に共同保有するサイトで、ホルテック社製の「HI-STORM UMAX[1]地下部分に使用済み燃料を安全に乾式貯蔵するためのシステムを備えたCISFを建設・操業することを目的に、20173月に同施設の建設・操業許可申請書を米原子力規制委員会(NRC)に提出。NRCは20235月に許可を発給した。同サイトから約19kmの場所には軍事利用で発生した超ウラン元素の高レベル・長半減期放射性廃棄物を処分する米国初の地層処分施設「放射性廃棄物隔離試験施設(WIPP)」がある。

HI-STORE CISFでは、その建設から廃止措置に至るまで全20段階の工程が設定されている。その第1段階として、ホルテック社は合計8,680トンの使用済燃料を封入したキャニスター500台を発電所から輸送して同施設で受け入れ、最終処分場が完成するまで貯蔵するため、40年間有効な許可を取得。残りの19段階で最大1万台のキャニスターを暫定貯蔵する計画だった。

その一方で、ニューメキシコ州のM. グリシャム知事(2019年~、民主党)は同施設の建設・操業に反対し、20233月、恒久的な処分場が存在しない限り、州による承認のない貯蔵・処分施設の建設を禁止する州法案に署名。さらにHI-STORE CISF建設に対する反対派からの訴えにより、米国第5巡回区控訴裁判所は20243月、NRCに対し、ホルテック社のHI-STORE CISFに対する許可を取り消すよう指示した。ホルテック社は、控訴裁の決定は使用済み燃料貯蔵施設の認可と規制に対するNRCの権限を含む、連邦法と明らかに矛盾しているとし、NRCおよび連邦政府と共同で米最高裁判所に対し、20243月の控訴裁の判決を覆し、HI-STORE CISFに対する許可を回復するよう求める請願書を提出していた。今年6月には最高裁において、Interim Storage Partners(ISP)がテキサス州アンドリュース郡で計画するCISF建設・操業に反対するテキサス州の主張が却下されたため、ホルテック社は、ニューメキシコ州においてもHI-STORE CISFの建設および操業許可の回復に期待を表明していた。

脚注

脚注
1 地下部分に使用済み燃料を安全に乾式貯蔵するためのシステム

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