ウクライナ SMR導入に向けた準備が進行
29 Oct 2025
ウクライナ・エネルギー省のA. ネクラーソフ第一次官は10月9日、ウクライナ最高会議におけるエネルギー・住宅・公共サービス委員会で、小型モジュール炉(SMR)の導入は、ウクライナのエネルギー安全保障を強化し、脱炭素電源に移行するための有望策であると発言。SMR導入の行動計画(ロードマップ)を策定するため、幅広い利害関係者を含む省庁間の作業部会を設立したことを明らかにした。なお、同委員会は同日、ウクライナにおけるSMR導入の原則に関する一部法律の改正法案を議会に提出しており、同第一次官は、法案の条項の策定に積極的に貢献する意向を表明した。
エネルギー省主導による同作業部会では、ウクライナ初のSMRプロジェクトを実施するための制度的および技術的枠組みの確立を目的に、包括的なロードマップを策定。以下の側面から詳細な分析を実施するという。
- 国際標準なベストプラクティス
- 潜在的なリスク
- SMR設置の候補地
- エンジニアリング、社会、産業インフラ
- 人的資源と科学的潜在力
- 財務能力と投資手段
なお、エネルギー・住宅・公共サービス委員会による法案は、民間投資を誘致し、設計と建設の手続きを合理化するための法的枠組みの確立を目指すもの。ネクラーソフ第一次官は、14日に開催された省庁間作業部会において「ロードマップの策定は、最高会議で現在検討されている法案と調整されている。ロードマップと併せて、2050年までのウクライナのエネルギー戦略を実行するための実用的なツールとなる」と述べた。
エネルギー省は、SMRは有望であるが比較的新しい技術であり、世界的には研究と実証段階のものが多く、実用化に着手している国はわずかであると指摘。SMRの導入には、経済的実行可能性、技術的能力、使用済み燃料および放射性廃棄物の管理を慎重に評価しつつ、最高水準の原子力および放射線安全の確保が不可欠であり、広範な科学者および専門家の参加を得ながら取り組んでいく方針を示している。
ウクライナは現在、米国務省と協力して、「SMRの責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラムの下で、①フェニックス・プロジェクト(ウクライナのエネルギー部門を石炭火力発電からSMRに移行させ、より広範な脱炭素化およびエネルギー安全保障を支援)、②ヘパイストス・プロジェクト(SMR導入により、ウクライナの鉄鋼産業を近代化し、排出量の削減、エネルギー効率を向上)の2つのプロジェクトを実施している。





