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米DOE 第3世代+軽水炉SMR早期導入支援で2企業を選定

11 Dec 2025

桜井久子

パリセード・サイトにおけるSMR-300×2基の完成予想図 © Holtec International

米エネルギー省(DOE)は122日、米国における先進的な第3世代+(プラス)軽水炉小型モジュール炉(SMR)の米国内導入を加速する「ファースト・ムーバー・チーム支援(First Mover Team Support)」の対象として、テネシー峡谷開発公社(TVA)とホルテック・ガバメント・サービス社を選定したと発表した。本支援は、2025年3月にDOEが募集した総額9億ドルの助成金支援のうち、最大8億ドルを活用するもので、電気事業者、炉メーカー、建設会社、エンドユーザーなどがコンソーシアムを組んで参加することが条件。これによりDOEは、2030年代初めの導入と国内サプライチェーンの強化を目指す。

DOEのC. ライト長官は、「先進的な軽水炉SMRは、原子力ルネサンスの到来と米国のエネルギー支配の拡大に向けた大統領令の前進を後押しする。データセンターとAI産業の成長を促進し、より強固で安全な電力網を強化するために不可欠な、信頼性の高い24時間稼働の電力を供給する」と強調した。

DOEは、米国の電力需要は、消費者のニーズ、データセンターの成長、AI利用の増加、産業部門の恒常的な電力需要によって、今後数年間で急増すると予測。SMRはエネルギー集約型部門に信頼性の高い電力の提供とコンパクトなサイズおよびモジュール設計により柔軟な設置が可能であり、特に、軽水炉型SMRが、米国の既存の軽水炉を支えるサービスとサプライチェーンの活用により、短期間で導入可能な利点を指摘する。第3世代+炉の実証を前倒しし、既存の軽水炉と先進炉とのギャップを埋めたい考えだ。

TVAは、GEベルノバ日立ニュークリアエナジー社製の「BWRX-300」(BWR、30万kWe)をテネシー州クリンチリバー・サイトへの配備を進めるとともに、インディアナ・ミシガン・パワー社およびエレメンタル・パワー社の追加ユニットの配備を加速する計画である。さらに、国内の原子力サプライチェーンパートナーであるスコットフォージ社、ノースアメリカン・フォージマスターズ社、BWXテクノロジーズ社、エーコン社と協力する。その他の支援パートナーには、デューク・エナジー社、オークリッジ・アソシエイテッド・ユニバーシティ、電力研究所(EPRI)などがある。

ホルテック・ガバメント・サービス(ホルテック)社は、ミシガン州コバートにある運転再開にむけて準備中のパリセード原子力発電所サイトに、同社製SMR-300(PWR、30万kWe)を2基配備し、国内外での追加受注の実現可能性を評価する計画。ホルテック社は、技術ベンダー、サプライチェーンベンダー、韓国の現代E&C社との提携による原子力プラント建設業者、プラント運営者、近隣の電力会社やエンドユーザーに電力を販売する電力販売業者という役割を全て担うことで、SMR導入に向けた革新的なワンストップショップ方式を推進している。

DOEは両社に4億ドルを配分。残りの1億ドルについては、「ファスト・フォロワー・導入支援(Fast Follower Deployment Support)」として、第3世代+SMRのさらなる配備の促進に向け、設計、許認可申請、サプライチェーン、サイト準備などの分野で国内の原子力産業の発展を妨げてきた主要課題の解決に充てるべく、支援対象を今年末までに決定する予定。 

 

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