原子力産業新聞

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フィンランドの熱供給SMR 韓国地域暖房公社と協力へ

22 Dec 2025

佐藤敦子

MOU締結式
©Steady Energy

フィンランドの小型モジュール炉(SMR)開発企業、ステディー・エナジー(Steady Energy)社と、韓国最大の地域熱供給会社である韓国地域暖房公社は125日、熱供給専用のSMR分野での協定を締結したと発表した。今回の協力を通じ、石炭やガスの燃焼に依存しない原子力由来の熱供給技術について検討を進める。

ステディー社は、熱供給専用SMRLDR-50(出力5kWt」」を開発中。高さは約10メートルの地下建設型で、都市部の既存施設への導入を想定している。一方、韓国地域暖房公社は、韓国国内で約190万世帯に暖房用の熱を供給しており、都市部の脱炭素化に向けた新たな熱源の導入を模索している。人口密集地域での安定的な熱供給が課題となる中、原子力を活用した熱供給への関心が高まっている。

ステディー社のT. ナイマンCEOは、「人口1,000万人を超えるソウルでは、ヘルシンキにおけるSMR導入の進捗に注目が集まっている」と述べた。また、都市部では規模の制約により大型の熱供給プラントの立地が難しく、脱炭素化の障壁となっているとの認識を示した上で「特に設備を地下に建設する点が注目されており、密集した都市部でもクリーンな熱を供給できる」と、同社技術の利点を強調した。

同社はすでにフィンランド国内で15基分の契約を締結しており、設計はフィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)の評価を受けている。商業炉については2028年までに建設準備段階に到達することを目指す。これに先立ち、ヘルシンキ市中心部の旧サルミサーリ石炭火力発電所跡地に実証用のパイロットプラントを建設する計画も進め、今年7月には同プラント向けに3,200万ユーロ(約50億円)を調達したと発表している。

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