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アルメニア 米国と民生用原子力協力協定交渉を完了

17 Feb 2026

桜井久子

© The Office to the Prime Minister of the Republic of Armenia

アルメニアのN. パシニャン首相は2月9日、首都エレバンで、同国を公式訪問した米国のJ. ヴァンス副大統領と会談し、原子力の平和的利用に関する協力協定(123協定)の交渉完了に関する共同声明に署名した。ヴァンス副大統領は、これまでアルメニアを訪問した米国高官としては最高位となる。

交渉の完了は、20258月に米ワシントンD.C.で締結された両政府間のエネルギー安全保障パートナーシップ覚書の主要な柱である「民生用原子力パートナーシップの深化」に向けた重要な節目と位置づけられる。今後、協定署名に向けた両国それぞれの国内承認の手続が進められる。

パシニャン首相は共同記者会見で、「本協定は両国のエネルギーパートナーシップに新たな章を開くものであり、安全で革新的技術の導入により、アルメニアのエネルギー源の多様化に寄与する」と強調。一方、ヴァンス副大統領は、「協定の締結後、両国の企業が民生用原子力プロジェクトで契約を締結する道が開かれる」と期待を示した。米国側は、特に小型モジュール(SMR)の輸出を想定している。初期輸出額が最大50億ドルとなることに加え、燃料供給および保守契約を含む長期支援は40億ドル規模になるとの見通しも示された。そして、米国内での雇用創出にもつながるとして、両国にとって「Win-Win」の関係になると強調した。

ロシアも包括的協力を提案

一方、本会談に先立つ26日、ロシア国営原子力企業ロスアトムのA. リハチョフ総裁は、ロシアを公式訪問したアルメニア国民議会のA. シモヤン議長と会談。アルメニア西部のメザモールで唯一稼働する、アルメニア原子力発電所2号機(ロシア製PWR=VVER44044.8kWe)の運転期間延長に向けた改修作業の進捗状況について説明した。併せて、アルメニアに対し、大型・中型または小型の原子力発電所の建設、および非原子力分野を含む関連プロジェクトの実施を含む、包括的な協力実施を提案している。

2号機は19805月に営業運転を開始。1988年のスピタク地震後に一時停止したが、深刻な電力不足を背景に1995年に再稼働した。2021年10月、アルメニア原子力規制機関(ANRA)は同2号機の20269月までの運転期間延長を認可しており、現在は20369月までのさらなる延長を目指し、ロスアトムの支援の下で2度目の大規模改修が進められている。

アルメニアの人口はおよそ300万人。自国資源に乏しく、天然ガスや石油の大半をロシアから輸入している。総発電電力量の約3分の1を原子力が担っており、既存炉の運転期間延長と再生可能エネルギーの拡大がエネルルギー政策の柱だ。

旧ソ連構成国であるアルメニアは、これまで政治・経済・軍事的にロシアとの関係はこれまで緊密であった。しかし、2020年にナゴルノ・カラバフで発生したアゼルバイジャンとの軍事衝突を機に、ロシア離れを志向。パシニャン政権は新欧米路線をとり、欧米との関係強化が加速している。今回の米国との原子力分野における関係構築もその流れといえる。

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