原子力産業新聞
02 飢餓をゼロに

原子力は害虫を減少させ
より良い品質の作物を開発する

原子力の貢献
具体的には
原子力テクノロジーを用いた害虫駆除により、ザンジバルの畜牛は1997年以来ツェツェバエによる被害を受けていない
  • 原子力テクノロジーは害虫に打ち勝ち、強力で有害な農薬に頼る必要がなくなる。
  • 原子力テクノロジーで新しい植物品種を開発することは、農家がより少ない水の利用で、気候変動の影響に耐性のある作物を育てることを可能にする。
  • 生鮮食品は放射線を照射するとより長持ちし、照射により大腸菌、リステリア菌、サルモネラ菌などを減菌する。

世界では8億2,200万人もの人々が栄養不良に悩まされ、毎年約900万人が飢餓および飢餓に起因する病気により、命を落としている。毎年、生産された作物の最大約4割、そして数百万の家畜が害虫や病気で失われている。

「不妊虫放飼法(The sterile insect technique: SIT)」では、放射線を利用して特別に繁殖させたオスを不妊化して野に放ち、野生のオスと競合してメスの繁殖相手となる。不妊化したオスと交尾したメスの卵は無精卵となるため、害虫の数が減っていくのである。この手法によって被害が深刻であったメキシコミバエとチ チュウカイミバエの2種類のミバエの根絶に成功したほか、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国に生息する家畜の命を奪う害虫も制御できるようになった。

放射線を用いて、種の進化をもたらす「偶発突然変異」の自然発現を早めたり模倣したりすることにより、作物の突然変異育種法での新種作物の育種を加速することができる。ペルーではこの手法によってオオムギとアマランサスを品種改良し、高地の気候にも適応できるようにした。この新種オオムギにより生産量が増え、アンデス山脈の農民たちは年間およそ3,200万ドルの恩恵を受けている。

放射線照射により、食糧をより長期間保存できるようになる。この技術を利用して大腸菌、リステリア菌、サルモネラ菌といった病原菌のほか、食糧の腐敗を早めるバクテリアも殺すことができる。

このように農業分野において用いられている原子力テクノロジーによって、作物の収穫量が増え、害虫による損失が減り、食糧をより長期間にわたり新鮮な状態に維持することができる。こうして、世界の食糧供給を高めることができるのである。

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