原子力産業新聞

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「原子力人材育成ネットワーク」がシンポ開催

16 Feb 2022

パネルディスカッションを進める日立・吉村氏(ZOOM撮影)

「わが国の原子力界を支える人材の確保」を掲げ産学官が連携し活動する「原子力人材育成ネットワーク」のシンポジウム(2021年度報告会)が2月15日、オンラインで開催された。

「原子力人材育成ネットワーク」は2021年度、発足から11年目に入り、参加機関は、新たに日本原子力文化財団を加え、計84機関(国際機関を除く、関係省庁、自治体、企業、大学など)となった。最近の活動成果としては、主に初等中等教育向けに全国39の原子力発電所PR館や研究施設などを紹介したパンフレットの作成があり、原産協会ウェブサイトでも公開されている。

シンポジウム開会に際し、同ネットワーク運営委員長を務める原産協会・新井史朗理事長が挨拶に立ち、「原子力産業界が抱える課題解決に向けて共通の思いを新たにし、ネットワークの輪をさらに広げ、今後の機関横断的な活動の成果が一層実り多いものとなるよう期待する」と述べ、議論に先鞭をつけた。

「原子力人材育成ネットワーク」では現在、今後の活動に向けた戦略ロードマップの改定が検討されている。これを見据え、シンポジウムでは、「原子力産業界のグローバル化」、「原子力分野の学びの機会拡大」をテーマにパネルディスカッション。座長を務めた日立製作所原子力ビジネスユニット事業主管の吉村真人氏は、同ネットワーク戦略ワーキンググループ主査を務める立場から、「戦略ロードマップに魅力ある産業としての展望をしっかりと描いていく」と強調し議論を進めた。

「原子力産業界のグローバル化」の関連でパネリストとして登壇した日立GEニュークリア・エナジー原子力国際技術本部の吉江豊氏は、欧米の原子力開発プロジェクトに参画した経験から、「プロフェッショナルエンジニア」(PE)取得の意義を強調。技術的発言の信頼性や顧客ニーズの理解など、PEのステイタスに関し「海外プロジェクトに参画できる資質の証明となるもの」と述べた。

これに対し、新興国への協力事業を行う原子力国際協力センター・センター長の鳥羽晃夫氏は、海外プロジェクトにおける日本の弱みとして、(1)国としての一貫性に欠ける、(2)資金面での制約がある、(3)実務面での長期的研修システムが確立されていない、(4)インターンシップの受入れが難しい、(5)国内に建設中・試運転中のプラントが少ない-――ことを指摘。技術的な資格制度の認知度が低いことも課題としてあげた。

また、国際機関でのキャリア形成に関し、原産協会人材育成部長の喜多智彦氏は、自身のIAEA勤務経験を紹介。日本人職員数(専門職)について、1993~2000年の赴任時を振り返り「出向者を含めて40人前後で今もあまり変わらない」と、拠出金分担率に比して少ない状況を憂慮した上で、雇用形態の壁、極めて高い競争率、言語や生活の違いなどを課題として指摘。求められる資質として、専門分野の高度な知識・経験、コミュニケーション能力、異文化に対する受容性などをあげた。

閉会挨拶を行う原子力機構・大井川理事、「原子力の持続可能性と人材育成は『車の両輪』」と(ZOOM撮影)

「原子力分野の学びの機会拡大」に関しては、「原子力人材育成ネットワーク」高等教育分科会委員で富山高専電気制御システム工学科教授の高田英治氏が、現場で教育に携わる人材の高齢化・退職が進む現状から、若手・中堅の教員育成に向け「まず原子力に関し理解してもらうことが必要」と強調。大学・研究所や企業からの人材登用の可能性にも言及した。また、同初等中等教育分科会主査で長崎大学教育学部教授の藤本登氏は、「教育現場は旧態依然のところもある」などと懸念し、教育行政への働きかけ、教科書の内容充実化に関し、学会が連携して取り組む必要性を述べた。

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