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総務省が「宇宙天気予報」の高度化に向け報告書案、大規模太陽フレアなどを想定

16 May 2022

太陽の異常活動がもたらす障害(総務省発表資料より引用)

太陽フレア爆発などの極端な「宇宙天気現象」が通信・放送・測位、衛星・航空運用、電力網に異常を発生させ、社会経済に多大な被害をもたらすおそれがあることから、総務省の有識者会議では1月より「宇宙天気予報」の高度化に係る検討を行っている。このほどその報告書案が取りまとめられ、5月12日より意見募集が始まった。報告書案では、災害対策基本法に基づく対応や、「宇宙天気予報士」制度、宇宙天気予報オペレーションセンターの創設などを提言している。

情報通信研究機構(総務省所管の研究機関)によると、大規模な太陽フレアは平均で年1回程度の頻度で発生しており、電波や可視光、紫外線、X線などの電磁波だけでなく、放射線被ばくの原因となる太陽放射線が放出されることがある。同機構では、航空機乗務員の宇宙放射線被ばく管理・運行管理に資する「宇宙天気情報」の一つとして、太陽放射線被ばく警報システム「WASAVIES」の提供を2019年より開始するなど、「宇宙天気予報」の高精度化を図っている。なお、一般公衆の年間被ばく線量制限1,000マイクロSv(医療被ばくを除く)に対し、太陽フレア発生時(2005年1月)における高度12kmの最大被ばく線量率は260マイクロSv/hだが、地上1mでは同0.08マイクロSv/hと、日常生活を送る人々の健康に対する宇宙放射線の影響は無視できるほど小さいレベルだ。

太陽活動のピークと被害(総務省発表資料より引用)

総務省国際戦略局の説明によると、太陽活動はこれまで約11年周期で活発/静穏を繰り返しており、活発時には、大規模停電や人工衛星の障害多発など、世界各地で被害が発生しており、2025年夏頃に次回のピークが到来すると予想されていることから、各国で警戒の動きもみられている。

今回取りまとめられた報告書案では、「100年に1回または、それ以下の頻度で発生する極端な宇宙天気現象がもたらす最悪シナリオ」を想定。検討の結果、(1)通信・放送が2週間断続的に途絶し携帯電話も一部でサービスが停止、(2)衛星測位の精度に最大数十mの誤差が発生しドローンの衝突事故が発生、(3)多くの衛星に障害が発生し衛星を用いたサービスが停止、(4)航空機や船舶の世界的な運航見合わせが発生、(5)耐性のない電力インフラにおいて広域停電が発生――するおそれが判明し、「社会経済や国民生活に甚大な被害をもたらす」と警鐘を鳴らしている。

金子恭之総務相は、13日の閣議後記者会見で、報告書案について、「社会的な影響を考慮した新たな予報のあり方など、様々な提言が盛り込まれており、これを踏まえ総務省として必要な取組を進めていく」と述べた。

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