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原産協会、「原子燃料サイクルを考える座談会」を八戸で開催

17 Jun 2022

開会挨拶に立つ原産協会・新井理事長

「原子燃料サイクルを考える座談会」(原産協会主催、東奥日報社共催)が5月12日、青森県八戸市内のホテルで開催された。原子燃料サイクルの中核となる施設の一つ、日本原燃六ヶ所再処理工場の2022年度上期しゅん工に向け、地元関係者を対象とした座談会開催を通じ同社の県内における理解活動を支援するもの。NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長の秋庭悦子氏(モデレーター)、ユニバーサルエネルギー研究所社長の金田武司氏、八戸工業大学工学部教授の佐藤学氏の3氏が登壇し、地元の行政関係者、商工団体関係者、地域オピニオンリーダーら約70名が来場・傍聴した。

「暮らしの視点でエネルギーを考える」をモットーに全国で原子力・エネルギーに係る理解活動に取り組む秋庭氏は、「資源の有効利用の観点から今、リサイクルは大変重要な問題となっている」と議論に先鞭。てい談に先立ちまず、金田氏と佐藤氏がそれぞれ、昨今のエネルギーを取り巻く世界情勢、地元のエネルギー教育からみた原子力の意義を説くショートスピーチを行った。

世界のエネルギー事情を力説する金田氏、スクリーン上にはテキサス州の電気料金暴騰を示すグラフが

「サボテン、砂漠、西部劇を連想させる米国テキサス州で雪が降るなんて想像できるだろうか」と切り出し、金田氏は、2021年2月にテキサス州を襲ったまさかの大寒波、それに伴う380万件以上に上った大規模停電の要因を分析。当時の状況は、「州の電力供給のうち、約4分の1を占めている風力発電設備が寒波で凍りつき大停電が発生。コートも着たことがないような人たちが、マイナス18℃の極寒にさらされ死者も出た」という。テキサス州は米国最大の天然ガス生産地であることから、海外メディアの報道を引用し「食料品店で餓死するようなもの」と例えた。また、「一般家庭で月180万円の電気代が請求され払えない人が続出した」背景として、州の外から入る送電線がほとんどなく自由化の進むテキサス州の電力事情に触れた上で、市場原理から「選択肢があるときは一番安いものを選べるが、選択肢がなくなったとき、価格が高騰し自由が仇となってしまう」と説明。寒波を教訓としてテキサス州では発電事業者に対し冬季対策を要求する法律・ガイドラインを制定している。この他、金田氏は、ウクライナ危機に伴う欧州における天然ガス価格の急騰、日本に関しては、政情不安なホルムズ海峡を含む「オイルロード」を経由し輸送される石油への依存などに触れ、「エネルギーの問題は昨今の世界情勢と非常に深く関っている」と強調した。

八戸工大の原子力基礎教育について語る佐藤氏(表は青森県制作のパンフレットより引用)

続いて、佐藤氏は、八戸工業大学が取り組んできた地域のゼロカーボン化を図る地産地消の電力供給「再生可能エネルギー100%による自営線マイクログリッド実証システム」(新エネルギー・産業技術総合開発機構〈NEDO〉のプロジェクト)への協力や、原子力基礎教育について紹介。同学は学科横断型プログラムの一つとなる「原子力工学コース」を開講しており、佐藤氏は、「機械、電気、情報など、それぞれの工学分野の課題解決力に加え、原子力・放射線の知識も養うことで、原子力立地地域で貢献できる人材育成に努めている」と、原子力基礎教育の意義を強調。座学だけでなく、県内に多数立地する原子力関連施設での実習や他大学との連携なども通じ、「学生の原子力に対する関心や知識が高揚するとともに、原子力関連分野への従事意欲も高まっている」とした。また、同氏は、今回の座談会のテーマに関連し、小坂製錬の複合リサイクル製錬所(秋田県)に言及。同所はかつて、同和鉱業小坂鉱山として非鉄金属を産出し、市街地を温泉経由で結ぶ鉄道が知られていたが、現在では、廃品から金、銀、銅、亜鉛など、約20種類の有価金属を回収し製品化する「都市鉱山」として機能している。

トークセッションが開始、秋庭氏(左)はスクリーン上に原燃サイクル施設の概要を示し「これだけ集結しているのは世界でも六ヶ所村が唯一」と強調

トークセッションに移り、座談会前日に六ヶ所再処理工場を訪れ安全性向上に向けた取組についても説明を受けたという秋庭氏は、「なぜ日本は原子燃料サイクルを推進しているのか考えてみたい」と問題提起。これに対し、金田氏は、「エネルギー資源のない国だからこそ、リサイクルするのは当然」としたほか、「廃棄物の量・有害度を低減することもできる」と、そのメリットを強調。さらに、安全性の理解に関し、「まず、再処理工場で何が行われているのかを知って欲しい。原子力発電所と異なり、再処理工場は基本的に一種の化学工場、そこで核分裂反応が起きているわけではない」と説明した。また、大学で教鞭を執った経験もある秋庭氏は、教育の観点から原子燃料サイクルの地域貢献に関して質問。これに対し、佐藤氏は、「直接的に事業者に関連した仕事だけでなく、やはり地域経済に深く関った産業だと思う」とした上で、地元で人材を育成する意味でも初等中等教育段階から原子力・放射線の知識を養っていく必要性を改めて強調した。

来場者からは、昨今の世界情勢からエネルギーだけでなく食料供給に関する不安の声も

来場者との質疑応答の中で、昨今の原子力教育の低迷を危惧する声があがったのに対し、佐藤氏は、八戸工大で企業の定年後に大学院聴講生として勉学に励む人がいることを紹介し、「『学ぶ』ことはいつからでもできる」と繰り返し強調。一方で、「教える側がしっかり存在している必要がある」と、高等教育における教員の確保や実験・実習設備の維持に係る懸念を示した。また、六ヶ所村の原子燃料サイクル施設の一つ、廃棄物管理施設では、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)を、最終処分に向けて搬出されるまでの間、冷却・貯蔵しているが、地元の女性団体のメンバーからは、その資源化に係る研究に取り組む藤田玲子氏(元日本原子力学会会長)を囲む勉強会に参加した経験を踏まえ、「私たちは、『核のごみ』ではなく、将来使えるものを預かっている」と、さらなるリサイクルの必要性を強調する声もあがった。

結びに秋庭氏は、「一番大事なことは国民の理解と信頼だと思う」と述べ、原子燃料サイクルの確立に向けて、全国レベルでの理解・支援が進むことを期待し締めくくった。

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