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NTTと北大 J-PARCを利用し宇宙線影響を解析

17 Mar 2023

ソフトエラー発生のメカニズム(NTT発表資料より引用)

NTTと北海道大学は3月16日、宇宙線起因の中性子が電子機器の半導体デバイスに衝突し誤作動を起こすソフトエラーの発生率を、低エネルギー領域(10meV~1MeV)において実測することに成功したと発表した。大強度陽子加速器施設「J-PARC」(東海村)を利用したもの。〈NTT・北大発表資料は こちら

中性子エネルギーとソフトエラーの発生率の関係(NTT・北大発表資料より引用)

これまでに両者は、名古屋大学とも共同し、高エネルギー領域(1MeV~800MeV)における同発生率の測定実績を得ており、今回の研究成果と合わせて、ソフトエラーの低エネルギー・高エネルギー領域を通じた発生傾向を分析。中性子エネルギーが0.1MeV付近で最も減少する傾向がみられ、ここから低くまたは高くなるにつれ増加傾向にあるという特性がわかった。

同研究成果は、「J-PARC」の物質・生命科学実験施設(MLF)に設置された中性子源特性試験装置「ビームラインNo.10:NOBORU」で、NTTが開発した高速ソフトエラー検出器を用いて測定し得られたもの。NTT・北大では、「ソフトエラーは半導体を持つすべての電子機器の誤作動を引き起こす可能性を持っている。今後、拡大が予想されるAIによる自動制御やスマートファクトリーなど、様々な業界・事業分野で重要な役割を果たすことが期待できる」としている。

MLFは産業分野での利用が顕著だ。高出力・大容量のセラミックス電池開発、タイヤ用新材料の開発など、実用レベルで多くの成果をあげている。ソフトエラーに関しては、近年、半導体デバイスの微細化・低消費電力化に伴い、透過性が高く中性子と比較し発生率の傾向が異なる宇宙線「ミュオン」の影響が深刻化しつつあることから、ミュオン科学実験施設「MUSE」を用いた環境放射線評価・対策技術に係る研究も行われている。

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