原子力産業新聞

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レーザー核融合実現に向け協働研究拠点 東工大とEX-Fusion

13 Oct 2023

レーザー核融合商用炉の概念図(東工大発表資料より引用)

東京工業大学は10月12日、核融合エネルギーのスタートアップ企業「EX-Fusion」と、日本発のレーザー核融合商用炉の早期実現を目指し、協働研究拠点を設立したと発表した。〈東工大発表資料は こちら

核融合は、重水素や三重水素のような軽い原子核を融合させ、別の重い原子核になるときに発生する大きなエネルギーを取り出す。豊富な燃料資源、固有の安全性、高い環境保全性が利点だ。核融合エネルギー利用実現の技術的ポイントとなるプラズマ閉じ込め方式は、トカマク型、ヘリカル型、ミラー型に加え、これらとまったく異なるレーザー方式があり、国内ではそれぞれ、量子科学技術研究開発機構(QST)、核融合科学研究所、筑波大学、大阪大学が主に研究開発を進めてきた。

核融合の主な閉じ込め方式(文科省発表資料より引用、原子力機構の核融合研究は現在はQSTで行われている)

トカマク型の実証については、国際共同プロジェクトITER(国際熱核融合実験炉)計画が進められており、日本も機器類の物納で貢献している。

レーザー核融合の研究開発は、阪大が1972年から本格着手。パワーレーザー施設「激光12号」は世界トップレベルだ。阪大レーザー科学研究所が最近、文部科学省の専門家委員会で示した開発ロードマップによると、レーザー核融合エネルギーによる発電実証は2040年頃が見込まれている。

「EX-Fusion」は、レーザー核融合の実用化に向けた技術開発の加速化とともに、その実現に向けた過程で得られる最先端の技術・知見を活用し、エネルギー分野にとどまらず、様々な産業分野における技術開発への貢献を目指す、阪大発の若手研究者によるスタートアップ企業。豪州にもレーザー分野で「高い市場潜在力を持つ」と期待をかけ子会社を設立するなど、海外への事業展開も始めている。

このほど設立された「EX-Fusion liquid metal 協働研究拠点」の共同研究テーマは、「レーザー核融合商用炉実現に向けた液体金属デバイスの高度化研究」で、拠点の設置期間は2026年9月末まで。鉛とリチウムの液体合金に関する研究を通じ、エネルギーを取り出す重要機器「液体ブランケットシステム」の概念設計を行い、これらの技術成果を、「EX-Fusion」が開発するレーザー核融合へ統合させ、10年以内のレーザー核融合エネルギーの実現とともに、深宇宙探索、海水淡水化、環境保全など、多様な分野への波及効果も目指す。

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