原子力産業新聞

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住友電工 核融合向けのタングステン技術を紹介

22 Jan 2024

石川公一

熱負荷試験後のタングステンモノブロックの対比

住友電気工業は、グループ各社の取組を紹介する未来構築マガジン「id」の最新号で、ITER(国際熱核融合実験炉)計画の推進に向けたタングステン材料の技術開発について取り上げている。

今回、同マガジンで取り上げたのは、トカマク型核融合炉を構成する重要機器の一つとなるダイバータの部材「タングステンモノブロック」に関するもの。ダイバータは、トカマク型核融合炉の真空容器内で最も高い熱負荷を受ける排気装置。その耐久性向上に挑戦した同社グループのアライドマテリアルによる「割れないタングステン」の開発経緯を、技術者の声とともに紹介している。

加盟各極が物納により貢献するITER計画で、日本は、ダイバータ(1体が長さ3.4m、幅1.5m、高さ2m、重量8トン)のうち、「外側ターゲット」と呼ばれる部位を調達する。同マガジンの中で、ITER計画の日本国内機関となる量子科学技術開発研究機構(QST)那珂研究所ITERプロジェクト部の鈴木哲次長は、「プラズマからの熱負荷や粒子負荷など、厳しい環境で使用される。表面は2,300℃に達するといわれており、材料には『高熱負荷で割れない』耐久性が要求される」と、ダイバータに求められる高い設計水準を強調。材料の選定に際しては、QSTが熱負荷試験を行った結果、「国内外メーカーが提供する材料の中で、唯一割れなかったのがアライドマテリアルのタングステンだった」と、同社の高い技術力を賞賛する。ITERのダイバータに用いられる「外側ターゲット」は、30×30×10mm程度の「モノブロック」と呼ばれるタングステン材で構成。「モノブロック」は、総計約20万個にも及び、1個でも熱負荷で溶融すれば大きなトラブルにつながることから、厳しい技術水準が要求される。

アライドマテリアルは、2000年に東京タングステンと大阪ダイヤモンド工業が合併して誕生。以来、高融点金属材料とダイヤモンド精密工具の製造を両輪に、住友電工グループの産業素材部門の一翼として事業を推進してきた。アライドマテリアルのタングステン製造技術は特に強みで、ITER用タングステンの研究開発には、1999年から20年以上にわたり取り組んでいる。

ITERに採用された耐熱衝撃タングステン「割れないタングステン」は、同社が強みとする粉末冶金技術を応用して開発された。開発に当たったITER技術グループマネージャーを務める飯倉武志氏は、同マガジンの中で、「ITER設計要求の3倍以上のサイクル数(2,300℃の電子ビームを10秒照射・10秒冷却を1,000回繰り返す)の試験」をクリアした経緯を強調。その上で、「巨大な国際プロジェクトであるITER計画を担う技術者の一人として、喜びと誇りがある。今後生まれてくる様々な課題に対しても意欲的に取り組んでいきたい」と話している。

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