原子力産業新聞

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大林組 4足歩行ロボにも搭載可能な放射線計測システム開発

26 Feb 2024

石川公一

検出器を搭載した自律4足歩行ロボットSpot

大林組は2月22日、ドローンおよび自律4足歩行ロボット「Spot」を用いた放射線計測システムを開発したと発表した。原子力災害被災地の復興にも貢献する技術で、福島県浜通りの飯舘村に活動拠点を置く菊池製作所他との共同によるもの。〈大林組発表資料は こちら

除去土壌の中間貯蔵施設における放射線量の計測は、モニタリングポストによる定点観測や歩行調査などの手法が採用されており、広大な敷地に対し、面的に計測を行う技術が確立されていないことから、大林組では、被ばく低減とともに、人手不足に対応する省力化の必要性にも着目。現地(大熊3工区土壌貯蔵施設)での実証試験を通じ、「局所的に放射線量の高い箇所が発生していないか」など、放射線量の計測を高度化・省力化させる技術を実現したもの。同社は、これまでもフレコン(除染廃棄物を保管した袋)の放射能濃度測定で、車両積載のまま運用可能な測定ゲートの開発を、放射線測定機器メーカーのキャンベラジャパンと手がけた経験を有している。

実証試験を行った中間貯蔵施設は、除染作業で発生した土壌を覆土。「地表面に局所的に放射線量が高い箇所が発生していないか」観測する調査を、鉛の遮蔽体が装着された検出器を搭載するドローンおよび「Spot」で行った。ドローンは広大な面積を迅速に計測。一方、自律4足歩行ロボット「Spot」はより詳細に異常箇所を特定でき、ドローンの飛行できない建屋内にも立ち入り計測することも可能だ。現地では、1メガベクレルの線源を地表面に設置。ドローンおよび「Spot」を直上に走行させたところ、6か所のピークで線源を特定し、十分に小さな放射線量でも検出できることが実証された。

今回の計測技術開発を受け、大林組では、除去土壌の中間貯蔵施設や減容・再生利用だけでなく、原子力発電所の廃止措置における建屋周辺および内部のモニタリングや、放射性廃棄物の地下埋設後の点検作業にも有用、と期待を寄せている。実証試験では、狭あいエリアを詳細に検査する有効性も確認。1時間当たり約4,500㎡の速度で計測したほか、通常の人による歩行調査(約1,100㎡/人・時間)の約4倍の効率性を実現した。さらに、日常業務として、広範囲の計測にドローンを使用する場合、1時間当たり約40,000㎡(東京ドームの約8割の面積に相当)の計測も可能となると見込まれ、今後は他分野への波及効果も期待できる。

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