原子力産業新聞

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「保全遺産」12件をパンフで紹介 保全学会

26 Apr 2024

石川公一

昨年度「保全遺産」に認定された中部電力「失敗に学ぶ回廊」の1エリア、事故で損傷した部材を展示

日本保全学会はこのほど、原子力発電の健全性維持に係る技術や活動などを対象に2020年度より認定してきた「保全遺産」を紹介するパンフレットを作成し公表した。〈これまで認定された「保全遺産」一覧は こちら

「保全遺産」の認定は、表には見えにくいところで原子力開発に貢献してきた技術や活動、いわば「縁の下の力持ち」を表彰し啓発するものとして、同学会が2020年度に開始。これまでに12件が認定されており、原子力発電に係る保全を支えてきた機材や工法の研究・開発にとどまらず、後世に教訓を伝えるための施設・活動も含まれている。

例えば、初回に認定された「原子力発電所のピーニングによる応力腐食割れ(SCC)抑制技術」は、日立GEニュークリア・エナジー、東芝エネルギーシステムズ、三菱重工業のそれぞれが開発した原子炉容器内部構造物の保全に関する装置に対し与えられた。保全学会が今回、作成したパンフレットによると、日本で商業用原子力発電の運転が30年を超えつつあった1990年代、炉内構造物などのSCCが数多く報告されていたという。溶接時に生じる引張残留応力発生要因の一つとなっていたことから、その改善手段として、ウォータジェットまたはレーザを用いた「ピーニング技術」を各社が開発し、実機にも適用されてきたことを評価。いずれも水中遠隔操作による施工で、作業者の被ばく低減にも資するものだ。その中で、東芝エネルギーシステムズによる「レーザピーニング」は、光ファイバーの利用で水深数十mにおける遠隔操作を可能とした。狭あい箇所や複雑な形状など、多様な環境に対応できることから、原子力分野以外への適用も見込まれている。

原子力発電所の長期運転に向けた技術も「保全遺産」に認定された。2022年度には、「BWRの炉心シュラウド等の交換工事」(東京電力、中国電力、日本原子力発電、東芝エネルギーシステムズ、日立GEニュークリア・エナジー)が選ばれている。BWR固有の炉心シュラウド交換工事は、高経年化が課題となった1990年代に行われてきた。同技術が適用されたプラントは、既に廃炉が決定しているものもあるが、その要素技術は、現在、進められている福島第一原子力発電所の廃炉にも応用されている。

計装制御関連では、同じく2022年度に認定された「中央制御盤等の総合デジタル化更新工事」(四国電力、三菱重工業)があり、四国電力伊方発電所1・2号機(既に廃炉が決定)の中央制御盤を含む総合デジタル式への一括更新を、「世界初」の歴史的意義として評価。18,000本にも及ぶケーブル工事、シミュレータによる運転訓練などで得られた知見は、後続のPWRにおける工事にも活かされている。

原子力開発においては、これまでに多くの事故・トラブルが発生しており、その教訓が保全活動の改善に活かされてきた。2023年度には「失敗に学ぶ回廊」(中部電力)が「保全遺産」の一つに認定。2001年11月に発生した浜岡原子力発電所1号機(既に廃炉が決定)の配管破断事故を受けて設置されたもので、パネル・模型展示の他、事故当時に関わったOBからのメッセージを振り返るコーナー、膝を突き合わせ話し合う「車座の間」などが設けられており、社員研修とともに、学生・海外視察団による意見交換の場としても活用されている。パンフレットでは、「技術と地元との共存共栄を示す歴史的博物館」、「失敗を財産として扱い、恥と感じるのではなく、前向きにとらえることが技術者育成において重要」と、その意義を強調。同施設は、「Learning from SHIPPAI」として、海外にも発信されており、世界原子力発電事業者協会(WANO)も良好事例として評価している。

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