原子力産業新聞

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原子力機構が報告会、将来ビジョンや福島復興・再生について討論

13 Nov 2019

日本原子力研究開発機構が最近1年間の活動について紹介する報告会が11月12日、都内で開催された。
冒頭、同機構が10月末に取りまとめた「将来ビジョン『JAEA2050+』」について、児玉敏雄理事長が説明。最新の研究開発成果の発表とともに、同ビジョンが描く「原子力機構の研究と社会との関わり」をテーマにトークセッションも行われ、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会委員長を務める持続性推進機構理事長の安井至氏、日本エネルギー経済研究所原子力グループマネージャーの村上朋子氏らが登壇。産業界からは、中性子線解析でリチウムイオン電池の研究開発などに取り組む日産アークの松本隆常務より、「JAEA2050+」で実現を目指す未来社会「Society5.0」を展望し、AIを活用した材料分析の将来像が披露された。

また、「福島の復興・再生」をテーマとするトークセッションも合わせて行われ、飯舘村復興対策課専門員(農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員)を務める万福裕造氏、福島イノベーション・コースト構想推進機構専務理事の伊藤泰夫氏、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座講師の越智小枝氏、経済産業省福島復興推進グループ長の須藤治氏らが討論に臨んだ(=写真)。

福島第一原子力発電所事故後、被災地での医療活動に取り組む越智氏は、事故発生から8年以上が経過した現在、病院や商店などの復旧が未だ進まず、「『日常を生きる』ということが一番難しいと感じる」と強調。また、行政の立場から、須藤氏は、「一人一人が幸せに生活できて復興は達成する」として、被災地の約8,000もの事業所を訪ねる取組を通じ、「廃業したところもあるが、徐々に事業が再開している」と、産業復興の現状を述べた。これに対し、伊藤氏は、「企業にとって働く人がいないことが最大の課題」と憂慮した上で、南相馬市に整備を進めている「福島ロボットテストフィールド」を中核として、産業の集積が促進することを期待した。

再生資材化した除去土壌による農地造成の実証事業について説明した万福氏が、「高齢化が進み危機的状況。若い人たちを呼び込む施策が必要」と営農再開が滞る現状を訴えると、須藤氏は、南相馬市小高区で進められるスマート農業に相馬農業高校から2人の卒業生が就職したことをあげ、「浜通りでしかできない新しい一次産業の形を作り出すこと」などと、今後の課題を指摘。

原子力機構で福島研究開発部門を担当する野田耕一理事は、福島県内の機器メーカーやマリンレジャー企業との協力で得られた無人船開発の成果を例に、「地元企業と連携し福島の復興につなげていきたい」と述べた。

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